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2つの楽器の話

見る人が見たら簡単に特定できちゃうのですが、それでも吐き出したくなったので。

私は一介のトロンボーン吹きです。中高6年間、吹奏楽部を一緒に生き抜いてきました。
大好きなんです。中低音と呼ばれる音域も、絶対1番カッコいい(私見)音質も、ソロにもメロディーにもハモリにもリズム隊にも化ける役者性も。スライドとかいう圧倒的な個性も、舞台上で一番後ろの一段上から全体を見渡せる快感も。ビジュも天才的で金色のボディに長い足(スライド)、無駄な管が削ぎ落とされたスレンダー美人。なのにそんな美人さんからバカデカ音量出ちゃうのも最高に刺さる。舞台の1番後ろから客席の最後列まで、空気を裂いて産地直送です。直管きもちええ〜🥰🥰🥰

しかし2年半、オケサークルでボーンではなくコントラバスをやってきました。色々あって…
特にこの1年、練習はそれなりに頑張ったはずなのに、上手くなったという実感はほぼ1度も持てなかった。理由は明白で、サークル活動のうち楽器や音楽以外のこと、運営や人間関係を優先してきたから。身体も頭もいっぱいになりすぎて、結局心が折れた。だからこんな時期に、サークルごとコンバスを辞めてしまいました。コンバスを辞めたかったわけじゃないんだけど…
うーんいや、それはきっと後付けで、勿論コンバスの魅力も理解できてたけど、やっぱりどうしてもボーンの方が好きでした。記事を書き出した最初に「コンバス弾きです」と名乗れなかったのは、この2年で本当に1度も「自分はコントラバス奏者だ」と思えなかったから。思えなかった理由は、勿論腕前が酷すぎることもあるし、環境が苦しかったのもあるけれど、それ以上に「私の相棒はボーンだ」と思いすぎていたからなんじゃないか。そしたらコンバスは何も悪くないのに、愛されない2番目の妻状態だったわけですよね…?失礼なやつ……………

でも、もし私がこの2年ほども、愛機のボーンと一緒だったら。私はどうなっていたんでしょう。今の「この未来」と比べて、どんな良いことや悪いことを経験していたのだろう。
例えば楽器に限れば、とある曲のボーンコラールが羨ましくて羨ましくて仕方ないなんてことも無かったかもしれない。新世界の4楽章なんかも全力で吹き散らかしていたかもしれない。金管アンサンブルだって、あんな回りくどいことしなくたって当然のように出演できた。曲をさておいても、もっと基礎練に精を出して苦手な低音域を広げたり、いつまでもイマイチ苦手なリップスラーを克服したり、ビブラートを演奏で使いこなせるように練習したり、そんな時間が取れたのかもしれない。少なくとも、「コントラバスできなさすぎる」で無力感や罪悪感を感じずには済んだだろう。
でもそしたら、私は同じ新世界の2楽章で、Vn・Va・Vcのトリプルソロをあれだけの万感を込めて見守れただろうか。文化祭でゲーム音楽をやりたいと動いてくれた後輩とは知り合えただろうか。あの子が弾くコンバスの音に、人生を丸々懸けた命の重みを感じるような機会はなかったんじゃないか。

楽器そのものに限らなければもっとあります。私がコンバスを始めなければ、出会えなかった大好きな人たち。逆に出会わずに済んだはずのあの子たち、あいつら。出会うはずだった、知り合えなかった人たち。
考えなくて済んだこと。考えられなかったこと。知らないままでいたであろうこと。知らずに済んだこと。知れなかったこと。
病んだかな。病んでないのかも。でも、こうやって自分の心と向き合う時間を作れているのは、1年間傷を負ってきたおかげでもあるじゃないか……

過ぎたことは変わらないからこそ、変えたいという祈りも消えない。それでいて、それでも今の私が零さずに掴んだこの未来が変わってしまうことも、また惜しく感じる。
ただの無いものねだりですね。ただの我儘かも。

どうすれば良かったんだろうね。今を受け入れたくないわけじゃないのに、もっと上手くやれたんじゃないかとも思っちゃうね。
でもコンバスをやったこと、コンバスパートに入ったことを後悔したくもないんだよな…そこでしか得られない知見もご縁も貰ったし。

うーん…でもやっぱり、私はあのサークルのCbパートの1人だった一方、コントラバス奏者ではなかったんだろうな。そんな気がします。

中高の吹部同期に、「うちの大学オケにエキストラで乗るから見に来てよ」と誘われました。
曲目はドヴォ9、新世界。よりによって、それか。
どう考えてもコンバスが下手で、それでも前向きにやってこれた一昨年。初学者なので下手で当然ですが、それでも下手すぎて申し訳なさでいたたまれなくて。それでもその前にやったシベ2に比べたらずっと良心的な気がして安心したし、なのにめちゃかっこいい曲だから好きだった。コンバスでやった交響曲の中だったら多分1番好き。でも2楽章のラストの4重音失敗した気がしてるし、他にも色々出来なかったことあるから、やり直したい。新世界にまたコンバスで挑戦する機会だったら欲しい気がする。そしたらやっぱり嫌いなわけじゃないんだなコンバス自体は。それとも、新世界やってた時期は本当に何不自由なく過ごさせてもらったからなのか………
でも新世界にボーンで乗るってなったらそっちもちょっとやりたいかも。分裂する??

吹奏楽で一緒にやってきた同期が、卒業した後にそれぞれの形で新世界と出会ったというのも、名曲のなせる不思議な縁だなあと。
例えばあの頃の吹部同期ともう1回やるなら、ボーンか?コンバスか?…どっちでもいいかな。うん、どっちでも頑張れる気がします。吹部同期ともう1度やれるワクワクでそんなのどうでもよくなるでしょう。もちろんコンバスよりボーンの方が腕は自信あるし自前の楽器があるから、主軸がボーンだと嬉しいけれど、コンバスやりたくないって訳じゃあないな。とある数名にさえ見つからなければまたやりたいですね………まあ下手くそなのでほんとにやるなら練習頑張んないといけなくて、それが辛いってことはありえそうだけど……

心安く、あんまり厳しくなく(ぬるいことを言って申し訳ないですが)、自分のペースで音楽や合奏を楽しみ直したい。レベルなんて高すぎなくていい。運営に苦労することなく、意識の擦り合わせのためにお互いが歩み寄りながら、緩やかに活動したい。そんな団体にいずれ所属して、また音楽をやりたいですね。

という、2つの楽器への心中でした。

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