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じゃあ、『お笑い第7世代』を陰で普及させた人のこと知りたくないですか?

今やテレビやお笑い界だけでなく、一般の方にも認知され、Wikipediaにも掲載されている言葉『お笑い第7世代』。元々は、霜降り明星のせいやさんが「同世代を盛り上げていこう」という意図で軽く発言しただけの言葉だったが、今や親の手を離れどんどん一人歩きしていき、立派な大人へと成長していった。

ただ、この言葉がここまで普及した要因は、一人の放送作家による、テレビ局への数多なるプレゼンのおかげでもあるというのはご存知でしょうか?

その放送作家とは、29歳にして『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』『霜降りミキXIT』などの有名番組を担当し、さらにYouTube方面では、登録者数が100万人を超える『しもふりチューブ』、千原ジュニア・小藪一豊・フットボールアワーの『ジュニア小藪フットのYouTube』なども担当する、"越境"放送作家の白武ときおさんである。

白武さんは霜降り明星さんの番組も担当しており、せいやさんの『第7世代』という発言を聞いた数日後、そのキャッチーなフレーズを押し出す為お笑い芸人を世代別に分けたフリップを作成し番組内で取りあげたり、テレビ局への企画書にどんどん『第7世代』を盛り込んでいったりと、『第7世代』における陰の立役者である。

粗品さんからは『3人目の霜降り明星』とも言われる白武ときおさん。
そんな白武さんの著書『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』という本が、コンテンツ面だけでなくビジネス面においても、とても勉強になる内容だったので、一部を紹介させて頂きたいと思います。​

誰がコンテンツを面白くしているのか?

白武さんはコンテンツの見え方について

コンテンツは、「誰が作っているのか」ということが重要な意味を持つ時代になってきています。

と述べられています。

YouTuberの場合だと、視聴者は『誰が面白くしているのか』『誰に才能があるのか』ということを意識して見るようになってきているので、演者と作り手が同じというところが重要だと分析されていました。

これについては僕自身、視聴者の立場で観ている時には意識していなかったことだったので、その見方に新鮮さと納得感を感じました。
確かに、HIKAKINさんや東海オンエアさん。本田翼さんなど演者自身が編集を行っているチャンネルは、中身の面白さに加え、本人たちの熱量などが視聴者にも伝わるため、ファン意識が高まり、結果的にチャンネルへの愛着度も増していくということに気付かされました。

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「しもふりチューブ」の作り方

「しもふりチューブ」は基本的に、霜降り明星さん、白武さん、映像作家の柿沼キヨシさんの4人で撮影を行っている。
採用される企画の出所は3つで、

①霜降り明星 ②白武さん ③視聴者リクエスト

上記から撮影する企画を選出しているらしい。
そして僕自身共感できたことですが、企画は本人たちの熱量が高いものから撮影をしていくそうです。

白武さんも

YouTubeはなるべく少人数で、同じ熱量を持ったメンバーとやるのがベストだと思っています。気心が知れて、知らないスタッフも見学していない価値観を共有するメンバーで楽しく撮影できたら最高です。

と本著で語られていました。

これは僕も共感できる部分で、TVでもお笑いライブでもそうですが、どんなに企画が良くても演者がノッていない企画というのは一定の盛り上がりまでしかいかないと僕は思っています。
逆に、よくわからない企画でも演者の熱量がノッかっていると、スベったりするリスクは高まるが、どっちに転んでも大盛り上がりがしやすい傾向があると考えています。

しかもYouTubeは、視聴者は既に演者が好きで視聴しているので、スベらないことより、演者のテンションや盛り上がりというのがより重要となってくると思います。

僕も実際に「しもふりチューブ」をよく観ますが、本人達の実力は勿論言うまでもありませんが、演者の熱量をバランスよく上手に扱っている、白武さんの作家能力も素晴らしいと感じました。

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テレビ局の課題

今やYouTubeやHulu、Netflixなど、コンテンツはテレビ以外のプラットフォームで多く見られ、若い方はそもそもテレビを持っていないというのが珍しくなくなってきました。

自ずと若い層のテレビの視聴率は下がっていき、若い層の視聴率の低下はテレビ局のここ十何年の課題でもあります。

ただ白武さんはこれから、YouTubeとテレビは差が無くなっていくかもしれないと述べており、テレビ以外のデバイスでの視聴を前提とするようになれば、テレビの作り方にも変化がでてくると考えています。

現状のYouTubeは、チャンネルそのものというより、チャンネルの演者にファンが付いていますが、今後「ジュニア小藪フットのYouTube」のように、「にけつッ!!チャンネル」や「すべらない話チャンネル」といった、番組単位のチャンネルが成立しはじめれば、YouTube上にテレビ番組のようなものがたくさん存在する未来がやってくると推測しておられます。

そこで重要となってくるのが、テレビ局の存在意義です。

白武さんは

テレビ局は今、「我々はテレビ局だ!」というプライドを捨ててでも、テレビという媒体以外の領域でコンテンツメーカーになろうという覚悟があるか否かが試されているように思います。

と述べられています。

たしかに、TVerやYouTubeなどの各種プラットフォームに合わせたコンテンツ制作や提供は大事だと思います。
ですが、それはプラットフォーム上でのコンテンツ視聴者数を増やすという枠の中での打開策だと感じました。僕自身、視聴者のコンテンツの見方が変化したのなら、既存の尺や枠で作成するのではなく、現代のコンテンツ視聴者に合うように、編成自体の大きな改革が必要ではないかと僕は考えます。

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お笑い界初の無観客ライブを配信

今やライブのニューノーマルとなっている『無観客ライブ配信』
この『無観客ライブ』をいち早く開催したのが、マセキ芸能社所属 かが屋さんのYouTube生配信『みんなのかが屋 無観客お笑いライブ』です。
2020年3月4日時点で、恐らくお笑いライブでは前例がないであろう『無観客ライブ』の実施とのことで、結果的に、同時接続2000人以上の視聴を記録し大成功を収める配信となりました。

このライブは、今のお笑いライブのオンライン配信の形の基を作った、2つ功績があると考えております。

一つ目は、無観客お笑いライブ配信という新しい視聴体験の構築
二つ目は、視聴者のお笑いライブへの投げ銭機能利用の意識改革

以前から、「みんなのかが屋」ではライブの生配信を行っていましたが、2月頃に大きく『無観客お笑いライブ生配信』を打ち出したおかげで、お笑いファンのオンライン配信視聴のハードルがぐっど下がり今のオンライン配信需要に繋がったと思います。

もう一つ「みんなのかが屋」が残した功績は、課金システムの導入/充実です。
本著でも語られていますが、アイドルや声優さんの配信と違い、お笑いライブに投げ銭をするというのは、芸人のイメージが崩れたり、ファンの方に媚を売っているように見えダサいという風潮がありました。
ですがこのコロナ禍でも、お笑いライブを楽しんでもらいたい/楽しみたいという需要と供給がマッチし、たくさんの方に投げ銭や物販購入など様々な形で応援して頂いたそうです。

このライブのおかげで、ファンの方のお笑いライブへの課金意識が良い意味でガラッと変わり、今の「お笑いライブオンライン配信」に繋がっているとのだと思います。

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第7世代的仕事論

ここからは実際白武さんが、どのように仕事と向き合っているのか。どのようにして企画を考えているか紹介させて頂きます。

【仕事との向き合い方】
まえがきで

フリーランス作家として、メディアにこだわらず、楽しそうな場所へフットワーク軽く"越境"することで、仕事が増えてきました。

と述べられているように、自身を表す言葉として"越境"というワードが度々登場します。
これは白武さんの目指す、サステナブルにやっていくという考えに関係しているかと思います。

白武さんは過去に『バイキング』を1か月でクビなったという忘れられない経験があるそうです。当時の『バイキング』は今のワイドショー路線ではなく、主婦層に向けた番組作りをしていました。
白武さんも慣れないなりに番組にあった『タメになる企画』を提案したのですが、全く通らず、1か月でプロデューサーからクビ宣告をされたそうです。
以来、白武さんは自分に合っていない/向いていない分野で戦っても勝てないので戦わないようにしようと考え、自分のモチベーションが上がる仕事に専念していったそうです。
フリーランスだから仕事を選ぶのは普通のことのように思いますが、25歳の若手作家がその決断を下すのは、かなり勇気のいる決断だったと思います。

ですが、自分のモチベーションを優先し、やりたいことをできる場があれば、YouTube/AbemaTV/テレビなどメディアにこだわらず、蜜蜂のようにコンテンツを"越境"していったからこそ、放送作家 白武ときおが形成されていったのだと思います。

【企画の作り方】
白企画の作り方の一つに『過去のパターンを組み合わせて新しく見せる』という方法があります。
例えば、散々こすり倒されたコーラーにメントスを入れる『メントスコーラ』でも、「飲み干せるか」「噴射するドッキリ」「メントスで作ったコップにいれてみた」など、「ドッキリ」や「検証」と組み合わせることで、まだまだ新しい切り口が見えてきます。
こういったように、過去にヒットしたものや人気のあるコンテンツを上手く企画に取り入れることで、新しい且つ面白が見込める企画が生まれていきます。

そこで重要になってくるのは知識と情報の蓄積です。この2点に関して白武さんはズバ抜けたものを持っています。
というのも白武さんは、話題になっているものや人から勧められたコンテンツは食わず嫌いせず、必ず全てチェックするようです。
しかも自宅では、料理をしながらiPadでNetflixを視聴し、料理が完成するとiPadからテレビに切り替えて視聴するなど、常に何かしらのコンテンツに触れている状態で過ごしているそうです

そういったインプットを常に続けているからこそ、話題作の中に潜んでるヒットの要因が見えてきて、次のヒット作を生み出す企画が考えられるのでしょう。

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最後に

今回、『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』の一部を紹介させて頂きました。
本著では『放送作家』としての「物の見方」や「考え方」などを紹介されておりますが、テレビ業界の将来や新たなライブ配信を成立させるための仕掛け術など、エンタメ業界に関わる方にも参考になる部分が多いにある書籍だと存じます。

エンタメ業界を志す方や現在携わっている方などは、是非お読みになって下さい!

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