ひだまりのきみ 鳩岡小恋

続編じゃないけど続きみたいなエッセイ




 前回、ユメノグラフィアという世界について書いたので、今回はキャストに焦点を置いてみようと思う。
 鳩岡小恋ちゃん。彼女は私にとって、一番輝いていて、とても可愛くて、ひだまりのような女の子だ。
 ユメノグラフィアで一番、と言えば他のキャストを蔑ろにしてしまうように見えるのではないかと思ってあまり言っていないが、この機会なので告げてしまうと、ユメノグラフィアで一番好きなキャストは小恋ちゃんだ。
 それは多分、初めてが彼女だったからで、恐らく初めてが彼女でなければ、彼女は私の一番にはなっていなかった気もする。でも結局一番だったような気もする。どちらにせよ今の私の中での一番は、鳩岡小恋ただ一人だけだ。
 他のキャストを蔑ろにするつもりは毛頭なく、どのキャストにも魅力があって素晴らしい方が多い。ただその中で初めてというのはやはり一等輝いている金星のような存在だった。


 少し寄り道をすると。
 かつて「ヴィーナスの棺」というタイトルで小説を書き始めたことがあった。途中で着地点が見えずに執筆を止めている作品ではあるが、これは元々私の“推し”という存在について表した何かを書こうと決めて執筆を始めたものだ。
 ヴィーナス=金星=一等星
 一等星は自分の中で一番輝く存在、すなわち推しというものだと考えた結果である。作中ではその概念を出さずに、それに類似したような雰囲気を出そうと画策していたが失敗に終わっている。
 執筆をやめてから数年経った今、推し=ヴィーナスとは言い得て妙だと感じることがある。なぜなら私にとって、鳩岡小恋という存在こそが金星のように輝く存在であるからだ。
 いつも楽しそうにツイッターをしている姿も、配信ではしゃいでいる姿も、ユメノグラフィアで笑って話をしてくれたり、話を聞いてくれたりする姿も、そのどれもが輝いて見える。
 彼女が初めてで良かったと思える瞬間は、毎日のように訪れている。


 初めて小恋ちゃんとリプを交わして初めて小恋ちゃんのファンアートを描いて、初めてのユメノグラフィア体験を小恋ちゃんとして。それらの初めては全て小恋ちゃんだった。
 私の性格上、小恋ちゃんのようなタイプは苦手とする側に近かった。自己紹介動画を見た記憶がないので、恐らく設定(と言っていいのかわからないが当作中では設定と言う)からして好みではないと判断していたように思う。絶対にこの子のところには行かないだろうとさえ確信していたかもしれない。
 しかしその考えを覆したのは、ユメノグラフィアについてのツイートに対するいいね通知だった。
 ユメノグラフィアのキャストってめっちゃエゴサするやん。
 そんな気持ちで小恋ちゃんを見た。設定や性格、声や話し方はさておき、正直、ビジュアルはとても好きだった。見た目がまず可愛い。こんな可愛い子おるか? いやおらんやろ。謎の反語でツイッターを眺めていた。そこで小恋ちゃんの見た目が好きだと呟けば、いいねとリプがきたような気がする。若干記憶改変しているかもしれない。
 リプを交わした感想は、「めちゃくちゃ可愛いな、推すわ」というものだった。リプやいいねをもらったり、自分を認知してもらえると喜んで尻尾を振るようなチョロい人間にはその存在は推す以外になかった。
 その流れの勢いでファンアートを描けばすぐにリプといいねを貰い、すでに推していた彼女を更に推したいと思った。


 数週間後、初めて小恋ちゃんのチケットを取って、毎日そわそわしていた。
 小恋ちゃんのことを心の中では小恋ちゃまと呼んでいた。呼び方が可愛かったから。そのことをツイッターで呟けば、またいいねをもらった。
 そうして迎えたユメノグラフィア初体験。
 圧倒的な緊張に、コミュ障丸出しの返答。なんだか自分が恥ずかしくなって、しきりに髪を触った。それでも小恋ちゃんは優しく話しかけてくれた。
 ファンアートについても直接ありがとう、嬉しいと感想を言ってもらえて、恥ずかしくて死にそうになった。
 敬語を貫こうと思っていたのに、敬語じゃなくていいよと言ってくれた。これがきっかけで現在私がタメで話すのは小恋ちゃんだけである。
 私が小恋ちゃまと心の中で呼んでいたことを掘り下げて、呼んでみて、と言われて呼んでみた。声に出したらなんかもっと可愛かった。それから私は小恋ちゃんのことを小恋ちゃまと呼ぶようになった。ノリで彼女も私をちゃま付けで呼んでくれて。
 私と彼女だけの、関係がそこにできた。
 ユメノグラフィアという世界は、キャストとゲストの世界、関係を作り出す空間だと感じた。
 10分、また10分と時間が経つにつれ私の緊張は当初よりは減っていた。終わりを迎えてzoom画面を閉じると、一気に現実に帰ってきた感覚に陥る。ライト版であるが故にスマホの小さい画面を見て過ごしていたにも関わらず、終われば元いた世界に戻ってしまう。
 夢見心地のような、そんな感覚のままクロッキー帳を取り出して、絵を描く。あっという間の30分を終えた脳は「小恋ちゃま可愛い」しか記憶していなかった。自分の記憶力のなさに絶望した瞬間だったが、幸い顔だけは覚えていたので記憶の限り可愛い彼女を描くことに専念する。
 そうしてできた体験レポートをツイッターに投稿して、その夜はふわふわしたまま眠りについた。


 翌日以降もふわふわした感覚のままだった。翌日は休みを取っていた為にふわふわしたまま買い物に出かけたりしていたが、以降は仕事をしていても小恋ちゃまのことを考える頻度が上がった。
 気付けば3日も経たないうちに別のキャストのチケットを取っていて、ユメノグラフィアの沼に足を突っ込んでいた。
 その次にはまた日も経たないうちに、2回目の小恋ちゃまのチケットを買っていた。それも次は連続枠で。今度は1時間も話せることに、楽しみで浮き足立っていた。話したいことがあったわけではない。ただ、彼女に会いたかった。
「レポートありがとうね!」
 お礼を言ってもらって、褒めてもらって。見てもらえたらいいとは思ってタグをつけてはいたが、どうしてもそれを見てほしくて描いたわけでもなかった、自分の記録としての体験レポート。それを喜んでくれたことが何より嬉しくて、満たされた気持ちになった。直接褒められることに慣れていなくて、自己評価も低くて、すぐに謙遜してしまうけど、彼女はそれを上回る力でたくさんの言葉をくれた。
 preciousという言葉を使うと、小恋にとっても七ちゃまはpreciousやで、と返してくれるその優しさに胸を打たれた。

 
 しばらくして、仕事が忙しかったり、自分の創作技術の未熟さなどからネガティブな気持ちに囚われることが多くなった。もう筆を折ろうとも思うことも多い。毎月のことなので、またかと思いつつそうやって毎月自己嫌悪から逃れられない自分が不甲斐なくて、悲しかった。
 ツイッターにそのネガティブな感情を吐き出せば、何故かリプがきた。驚くことに、小恋ちゃまは私のネガティブなツイートを見て、わざわざリプをくれるようになった。
 自分が推している子に自分のネガティブな感情を見られたことに、当初恥ずかしさを感じた。綺麗な人には、綺麗な部分だけを見ていてほしいと願うからこそだ。
 だけど彼女は、私のネガティブな部分を見て、心から励まして、私の作品を好きだと言ってくれた。そんなリプを見て、涙が出た。
 ネガティブな感情を出している人間に声をかけるのは、きっと相当の勇気がいる。私には勇気がないので大体スルーしてしまうか、当たり障りのない言葉で励ましをする。ネガティブな時に、励まされたとしても心の底から救われる訳ではないことを知っているからだ。卑屈になった時、励まされたとしても“どうせ”という言葉が頭の中をぐるぐる回る。だからこそ誰かに励まされても、それを真に受け止める事ができないのだ。
 それでも、彼女の言葉を受け止められるほど、小恋ちゃまの言葉は強かった。何かを作り出せることはすごいことだから自信を持って、と言われ、嬉しさと不甲斐なさ、感謝の気持ちで溢れて泣いてしまった。
 ユメグラで会った時、直接そのことに触れられ、どこか落ち着かないながら小恋ちゃまの話す言葉に耳を傾ける。リプで告げられた言葉と同様のことが多かったが、直接声に出して語りかけられるそれに、私はまた泣いてしまった。すぐに涙を拭ったので、気付かれてないと思うが、もしかしたら気付かない振りをしてくれたかもしれない。
 その後も何度かネガティブになったが、リプをくれる度に涙が出た。暗い闇の底から手を差し出して引き上げてくれるような、そんな気持ちになった。
 あの時たしかに、私は鳩岡小恋という存在に救われた。


 思えば私は彼女に救われてばかりだ。ネガティブな部分についてだけでなく、その他にも。いつも何かに不安になったりした時には、直接励ましてくれる。ありがとうとどれだけ言っても足りないくらい、彼女には感謝している。
 私はそんな彼女に何かできるだろうか。たまに見る小恋ちゃまのネガティブに近い言葉。それに掛けてあげられる言葉を今の私は持っていない。直接言う勇気は、私にはないので、ここに記しておく。



 小恋ちゃま、あなたは私を救い出してくれて、今もあなたの存在が常に私を救ってくれている。小恋ちゃまが何かを頑張っている姿を見て、私も頑張ろうと思える。
 月並みなことしか私には言えないけれど、私にとって小恋ちゃまはたとえ何かを頑張っていなくとも、小恋ちゃまが小恋ちゃまでいるだけで、輝いて見える存在です。私にとってあなたはたった一人のヴィーナスです。
 星ほど遠くないけど、手にできるほど近くもない距離にいる小恋ちゃま。それでもいつも心に寄り添ってくれてありがとう。いつも元気をくれてありがとう。いつも勇気をくれてありがとう。いつも救ってくれてありがとう。
 たくさんのありがとうを言います。



 21年5月現在、夏までユメグラお休みに入る小恋ちゃま。
 ユメグラで会えなくても、私生活を頑張っている小恋ちゃまを応援する。また会える時、今度はちゃんと笑顔でありがとうと言えるように。
 一等星の鳩岡小恋ちゃんをずっと応援できるように。



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