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灯火を見上げる(わたしのための備忘録)


番組で彼女を知った人からの印象と、過去の彼女を知ってる人が抱いていた印象が全然ちがっていたのは不思議な感覚だった。画面のむこうの笠原さんはたしかにわたしの知ってる笠原さんなのに。
気丈にふるまう笠原さんは、時にわたしの知らない表情をうかべていた。ぎりぎりのスケジュール、視聴者からの反応、日を追うごとに減っていく練習生、前例のない自らの立ち位置、気の抜けない、どこかにずっと力を入れ続けているような日々に、わたしなら到底耐えられそうにない。本当に全身全霊で頑張っていたことがなにをみても伝わってきた。
デビューの日を心待ちにする今、笠原さんの柔らかい、わたしが大好きだったあの頃の笑い方を画面越しにみてよりそう思う。それはほんの少しだけ大人びたようにも感じた。

アイドル活動を既に経験していた彼女は、たとえ空白期間一般人だったとしても決してそうは扱われなかった。過去の自分以上、アイドルの完成系、もう一度ステージに立つ意味をデビュー前から常に求められて、他人に評価される日々だった。ずっと胸になにかつかえてるような、息苦しい時間があったのかもしれない。頑張ってくれたことに、本当に労いと感謝しか伝えられない。この手の番組はどうしても一定数否定されがちだけれど、笠原さんはそういう面もきっとだれよりわかっていて選んだ場所で、ファイナルのコメントが全てだと思っている。たった1人にしか渡されない、三角形の頂点に立つ権利を得た彼女が選んだ言葉は、関わったすべての人への愛情だった。

笠原さんが番組の重圧や過密なスケジュールでどうにかなってしまって、フォローしきれないとんでもない大きなミスとか失言を100個ぐらいしていたとしても、投票をやめたり、距離をおいたりはできなかったと思う。笠原さんは番組中一定数の中傷めいたものを確実に避けられない経歴と順位だった。出演するまで無名の、番組序盤で映してもらえなかったら覚えてもらうチャンスすらろくにない練習生と、過去の情報がいくらでも出てくる笠原さんが同じように扱われないのはどうしようもない。snsで笠原さんを応援する人たちが心無い言葉に傷ついてしまってるのを何度も見かけた。一方私といったら、投げられる言葉と状況と、それに対する実体が結びつかなくて、全部がまるっきり体を通り抜けていく感覚だった。画面の向こうで起きてる、見えない他人の言葉の数々にずっと現実味がなくて、かといってそれをやめろとかそれは正しくないとか、反論したいという欲すらなかった。良いのか悪いのか、傷ついたり疲弊したりするにはあまりにも、笠原さんに対する感情を長いこと積み重ねすぎてしまった。周りの人に投票をお願いすることはあっても、わたしは結局番組やSNSを見てああだこうだ言いながら毎日携帯を触っていただけの人だ。彼女が記した、一緒に闘っている人に私は入れたのかはわからない。
環境がかわるとこんなにも違う言葉が現れるのだと思った。安住の地、何不自由ない箱庭をひとり飛びだして、新しい居場所を掴み取った笠原さんを本当に尊敬する。他人の未来、アイドルになる人間を選ぶとき、人は簡単に他人を見下したり攻撃したりできる。怒りとか不満とか、自分が信じる正義でなにかを切り捨てたり、正しくないこと、正しくない人にしたりするのは本当に楽で造作ないことだ。アイドルは「そういうことを言ってもいい」対象にされる。広い世界で知られれば知られるほど、自身の正解からはずれたアイドルを許せない人が現れる。

ずっとまっすぐな目線でいたい。
やっぱり、とか笠原さんだから、ではなくて、笠原さんがその時々で選んだもの、みせたいもの、伝えたいことをまっさらな気持ちでうけとめたい。たくさんの言葉がSNSには溢れていて、自分の気持ちがなんなのか、時折分からなくなることもあるのかもしれない。感動でも葛藤でも、自分自身のなかで答えをみつけられたらと思う。

笠原さんが頼もしくうつればうつるほど、弱いところも受け入れられる人でいたいと思った。時には正しくいられなくてもいいんだってどこかで思える隙間が残されていてほしい。ファンという立場ではどうしたって同じように感じ取れないことがあるからこそ、直面してる物事や感情をむやみにひっかきまわしたくない。ずっと柔らかいことばだけ届けたい。
確かな正しさみたいなものを、実体のない誰かに求められ続けるオーディション番組だったからこそ、思えたことでもある。アイドルを一度卒業した笠原さんにとってのプロのアイドルがいったいどんなものなのか、今から待ち遠しい。良い姿をみせようと苦心する日々だと思うけれど、肩の力を抜いた姿とか、うまくいかない日々も時には話してくれたらいいなあと思う。笑いたい時に笑っていてほしい。

昔の私は自分の大切なものとか好きなものが誰かに蔑ろにされるのが本当にものすごく嫌で、適当に扱われるぐらいなら好きだということすらまるっきり全部隠していたけれど、なんだか変わったなあと思う。わたしにとっての笠原さんへの好きは誰かに認めてもらいたいものでも、自慢したいそれでもなくて、笠原さんが好きって今思えてること自体が嬉しいから言葉にしている。天気が心地良くて嬉しいみたいに、笠原さんを人としてアイドルとして好きでいられることがものすごく心地よくて嬉しい。

私が感じてる気持ち以上に、笠原さんにとってアイドルでいることが幸せであってほしい。
笠原さんはいつだってどんなことしたって頭からつま先まで笠原さんで、わたしたちの元にはいつも溢れるほどの愛情がやってくる。本当にいつもいつも幸せにしてもらっている。アイドルというお仕事、ステージの上という場所を選んでくれて本当にありがとう、を何度だって言葉にしたい。感謝や愛情は勿論、笠原さんの努力がいろいろなところで沢山実を結ぶように、これからもたくさん笠原さんの話をするのだろうなあと思う。これは笠原さんに出会ってからずっとそうなのだけれど、思ってることをどんどん書き留めたいと思った。今の感情って本当に一瞬で、形を変えたり消えたり忘れたりする。書き出したら見えてくることもある。

デビューが決まったファイナルの観覧はなんだかあっという間で、目の前で進む物事が嘘みたいで、感情が全然おいつかないまま、気づいたら終わっていた。笠原さんは1位という順位とデビューの道を手に入れていた。
大好きな人の夢が叶った瞬間はもっとわたし自身泣くとか騒ぐとか取り乱してしまうかもと思っていたけれど、あまりのスピード感にその場ではなんとなく感情がふわふわしていた気がする。目の前で白熱していた毎日に対して、思っていたよりはずっと淡々と人の未来が決まっていくと感じた。

脱落者とデビューメンバーを隔てる道のりはステージの上でも長い。残された子達をみていると、届かなかったという事実をより鮮明に感じてしまった。選んだこと、選ばなかったことが作り上げた結果は目の前にするとあまりにも残酷だった。

印象的だったことはいくつかあるけれど、選ばれないことを覚悟しているようにもとれた手の甲のメッセージ、名前を呼ばれた後、ふるえが止まらない掌を咄嗟に抑えファンに小さく笑っていた清水さんが記憶に残っている。人生が変わる瞬間、人の掌はあんなにもふるえるのだと思った。最後の11人目を祝うムードの中、清水さんはふいにひとり、後ろに残された練習生を振り返っていた。わたしが気づけていなかった、彼女の心の形が少しだけ見えた気がした。あの日から清水さんのことをもっと知りたいと思う私がいる。
清水さんのプラメを読んでいると、難しい言葉や特徴的ないい回しのない、生活に馴染む言葉が家族みたいな柔らかい温度感でならぶ。ファーストサインのメッセージにも感じたけれど、日常にあることばを特別にしてくれる、優しさと温かさをいつも感じて、すごく好きだなあと思う。だれかの言葉に特別さを感じたのはわたしには久しぶりの感覚で、笠原さんが清水さんと親交があったこと、お互いとても大切に思っていることにもとても納得してしまった。

番組中笠原さんを支えてくれた人たちが、私が知ってるだけでもデビューメンバーにはたくさんいて、本当にずっとこの先心強いなあと思う。メンバーのことを知る度に、あんなに長くてあっという間だった番組中、私たちが知れたことは本当にごくごく一部なのだと思い知らされる。
今は櫻井さんと加藤さん、先述の清水さんのみせてくれるものが特に楽しみだなあと思っている。好きになるきっかけは個々のシーンだったのに、なぜか笠原さんとかかわりの多い人ばかり気になっている。もちろんこれから変わるかもしれない。

櫻井さんの日誌が個人的にはすごく嬉しかった。
櫻井さんの心のありように笠原さんが変化をあたえたんだなあと思った。きっと逆もあったのだと思う。
番組中は固定された一面しか映ることの少なかった笠原さんの人となりを、ふいに立体的に引っ張り出してくるのが櫻井さんだったなあとなんとなく思った。櫻井さんが年上なことや、彼女の性格も関係あるのかもしれない。普段の歯に衣きせない言葉選びがいつも少し面白くて、可愛い人だなあと思う。ブログでも本当に櫻井さんらしい言葉で笠原さんの話をたくさんしてくれて嬉しかった。メンバーの良いところを話したり、それをファンにたくさん教えてくれたりすることが素敵だし優しいなあと思う。他のメンバーにも当てはまることだけれど、優しい人がいた時に、その優しさに気づける人がちゃんといることが心強い。そして櫻井さんはそういうことを言葉にするのがとりわけ上手な人だ。
櫻井さんといる笠原さんをみてると、そういえば笠原さんにはグループに同期がいなかったんだったということを思い出した。この人とだからこそみせる顔みたいな、いろんな笠原さんがいてとても嬉しい。またひとつ笠原さんの人となりを知れている気がする。

人の心の持ちようを変えるって、ただ明るくて元気とか、物事を知ってるとか、スキルがあってその人の助けになるとか、それだけでできることじゃない。変えた人自身も、柔軟さや素直さがないとそうそう変えられることじゃない。
笠原さんの言葉はその芯みたいなものがいつも強くて、それと同時にとても柔らかさも感じる。誠実で、正しさで突き放す人ではなくて、言葉に嘘偽りなくたしかな重みをもたせて相手に伝えてくれるところが本当に大好きだなあと思う。どんな言葉でも、不特定のぼんやりした多数じゃなくて、本当に真剣に、それを聞くたくさんのあなたにむけていると感じる。笠原さんの言葉をうけとると、奥の方で縮こまっていた感情が引っ張り出されて、もう使い物にならなかったところをほぐしてくれるみたいなそんな温かさがある。

これからはずっと一緒なので、といってくれたことも、長くアイドルとして活動することを求めていたのも、アイドルって存在を愛している笠原さんの口から発されたことが嬉しかった。
より高いところを目指して、いろんな天井をこわすアイドルを笠原さんが形にしてくれたら、きっとすごく良い景色が待ってる気がする。
ここまで好きとか期待をふくらませておいて、いつかふとした瞬間に自分が膨らませた期待とのギャップに勝手に失望してしまうんじゃないかと少し怖かったりもする。見た目の変化や活動規模、これからきっと目まぐるしくやってくるものに私は何を思うのだろう。
笠原さんに出会ってから、知ることとかみえること、気づくことの大きさをすごく感じる。
美しいものにどれだけ気づけるか、どれだけの感情に立ち止まれるか、どれだけのことを体感として知っているか。

空白の時間もなにか好きな音楽とか本とか言葉とかに触れた時、笠原さんならどんな言葉を使うんだろうなあとか、これ笠原さん好きそうだなあとか、そういうことを考えることが何度もあった。音楽が好きとか雰囲気が好きとか、考え方言葉が好きとかこそあれ、自分自身の生活とか人生観とかにここまで影響を与える人って初めてで、いまだに不思議に感じる時がある。笠原さんのことを考えると同時に自分のことをものすごく考える。影響をうけるっていうと簡単だけれど、自分のことを表現するのが本当に苦手だったわたしが、自分のことを考える時間が増えた。笠原さんもどこかで頑張ってるだろうからわたしも頑張ろう、だった日々は、もっと確かな形をもった、今も頑張っている、私はどうする?に変わった。

もしかしたらいるかもしれない、と18時YouTubeを待っていたあの日、現実か確かめるみたいにチッケムを何度も再生していた通勤電車、歓声の中で久しぶりにその姿を人混みの隙間からみたお披露目、歌って踊る笠原さんを楽しみに、大慌てで仕事を終わらせていた木曜日、笠原さんの言葉を何度も読み返していたスクリーンショット、1番高いところで前を見据える姿を見上げたファイナルの観覧、家族写真みたいにメンバーに囲まれた振袖姿、デビューを待ち遠しく思う今。なにもかも全部が濃密な日々だった。なんでもなかった日も笠原さんがそこにいるだけで特別になった。

デビュー本当におめでとう。
笠原さんの夢がひとつ叶ったこと、夢を追い続ける笠原さんをこれから応援できることが本当に心から嬉しい。

少し前にTWICEの新曲ONE SPARKを聴いた時、
笠原さんに重ね合わせながら歌詞を眺めていた。きっと笠原さんも素敵に歌い踊ってくれる曲だろうなあと思う。

このまま永遠を望んでしまうくらい、大好きで特別で愛おしい時間があること。
この先も消えることはない、あなたと言う存在がアイドルとして、人として輝く軌跡。
あなたが今もこの先も美しい人だということ。
昔も今も、きっとこの先もずっと、私の心を柔らかく照らしてくれる人だということ。

灯火は今も燃え続けている。


Don't lose this spark ,baby 💌

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