食物繊維グアーガムは、炎症性腸疾患の複数の実験モデルにおいて、大腸の炎症を悪化させる


動物モデル。腸の炎症の前臨床治療| 第160巻 第3号付録 , s3, 2021年02月01日号
食物繊維グアーガムは、炎症性腸疾患の複数の実験モデルにおいて、大腸の炎症を悪化させる
Divek V.T. Nair
デベンドラ パウデル
Margherita Cantorna
Vishal Singh DOI:https://doi.org/10.1053/j.gastro.2021.01.039
PlumX メトリクス

炎症性腸疾患(IBD)患者における発酵性食物繊維の役割については、まだ解明されていない。ここでは、様々な加工食品に一般的に添加されている食物繊維グアーガムの大腸炎症への影響を解明した。3種類のIBDモデルを用いて、免疫亢進[IL-10受容体(IL-10R)中和]、上皮障害[デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)]、感染[Citrobacter rodentium(CR)]による炎症といったヒトIBDの様々な側面に対するグアーガムの効果を検証することができた。
野生型(WT, C57BL/6)マウスに、コントロールのセルロース(不溶性繊維、別名非発酵性繊維)またはグアーガム(水溶性繊維、別名発酵性繊維, 7.5% w/w)を与え、IL-10R中和抗体(α-IL-10R)を週4回注射して免疫過活動による慢性腸炎の誘発を行った。グアーガム投与マウスは、α-IL-10Rを介した強固な大腸炎を発症した。グアーガム投与マウスは、対照のセルロース投与マウスと比較して、脾臓腫大、大腸腫大、全身性炎症マーカー[血清アミロイドA(SAA)、リポカリン2(Lcn2)、ケラチノサイト由来ケモカイン(KC)]の上昇、大腸Lcn2およびインターロイキン(IL)-1β、病理組織のスコアが上昇した。同様の結果は、微生物叢依存性大腸炎を発症しやすいToll様受容体5欠損マウスでも観察された。次に、上皮傷害モデルに対するグアーガムの効果を調べるため、マウスをDSS(飲料水中1.4%w/v)で7日間処理した。グアーガム投与群では、対照群に比べ、体重減少、下痢、直腸出血、結腸長の短縮、炎症性マーカー(Lcn2、KC、SAA)の上昇など、重度の大腸炎を発症していた。最後に、感染症誘発性大腸炎モデルを検証した。感染症の除去には炎症が必要であることから、グアーガムを与えたマウスは対照群よりもCR感染症を除去できるかもしれないという仮説を立てた。驚いたことに、グアーガムを与えたWTマウスは、セルロース群よりも多くのCRを糞便中に排出した。グアーガム給餌マウスは、対照群に比べ、低体重、大腸肥大、大腸および血清Lcn2レベルの上昇、血清SAAの上昇を認めた。総じて、グアーガムはCR誘発の大腸病理から保護することができなかった。以上より、グアーガム摂取は、免疫不全、化学物質、感染症による傷害の後に大腸の炎症を悪化させる可能性があることが明らかになった。IBD患者にグアーガム繊維の摂取を監視するよう注意することが、腸の炎症の重症化を抑える方法となるかもしれない。
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DOI: https://doi.org/10.1053/j.gastro.2021.01.039

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