京都大学数学教室&数理研(RIMS)の院試を受けました.

2024/08/20~24に実施された,京都大学数学教室&数理解析研究所(RIMS)の院試を受験しました.以下のことを目的としてこれを書きます.

  • 承認欲求を満たすこと.

  • 数理解析研究所の受験記が(数学教室に比して)少ないので,そこに関して何かしかの情報を残すこと.

事務的な事項(いつ説明会があって…出願締め切りはいつで…出願の注意事項は… とか)は,以下の理由で省略しています.

  • 書くのが面倒 そこまで書くと文量が多くなりすぎる

  • どうせ受験するときになったらこんなホラ吹きの可能性がある記事じゃなくて募集要項読むでしょ.というか読んで.

  • こういう記事を読む人(受験生)が求めているのは事務事項の説明ではなくて,対策とか試験本番のことだろう.

  • (試験内容もそうだけど,)事務事項は毎年変わりうるし,なんか分かんなかったら事務の人に聞いてください.

まず,こんな承認欲求マシマシ記事よりも需要が高いであろう,「対策ゼミで出た専門(解析)の回答集」を貼っておきます.2000年から今年実施された院試の,主に函数解析と測度論の解答を書いています.


院試なんてやめましょう

はじめに愚痴を大事なことを言います.院試はカスです.個人的な院試カスポイント(ド主観)を書きます.

・学部入試と違い,院試浪人は世間で一般的でないので,合格が最低限
・なぜか「院試は簡単」「院試はまず落ちない」みたいな印象を持ってる人が多い中で,数学科(と物理?)では意味不明な殴り合いを強いられるというストレスがある
・これまでの勉強が''正しかった''か?の答え合わせをする試験という感じがあり,精神的な負荷がでかい.
・問題が解けなかったら自分の不勉強を責め,解けたら解けたで(解けたのは簡単に思えてしまうので)「これが解けて何になる」とか「''解ける問題''として出されたから解けただけで,実力ではない」とか思ってしまう

自己紹介

・京都大学理学部数理科学系4回生
・専攻は確率論
・志望は数理研

院試対策

院試についてお話したことのある先生全員から「京都の院試は内部でも関係なくバッサリ落とされるから,ちゃんと対策した方がいい」といったことを言われたので,なにかしら対策はした方がいいんだと思います.(とくにQE免除とか数理研を狙うのなら.)

僕(僕ら)がどんなことをしたのか書きます.

基礎科目

所属している,数学をしようぜ~みたいなサークルの友人が発起人となって,基礎問題を解くゼミが始まりました.人によっては最初から過去問を解くのではなく,過去の講義の課題や適当な教科書の演習問題を解くこともあるようですが,(特に理由はなく,)いきなり過去問にしました.

  • 解く年度は毎回ルーレットでランダムに決める.

  • 問題の発表者もランダムに決める.

  • 頻度は週1

という形式でやっていたので,楽しかったです.あまり古いと出題範囲が違うので,2000年以降のもののみをやり,やってない問題が少なくなってきたらQE(院試基礎の親戚みたいなやつ.京大生なら問題が手に入る.なんと!解答も公開されている!ありがたい.)を解いていました.7月あたりに自然消滅?しました.基礎問題って面倒でストレスですからね,仕方ないです.

さて,(最近の)京大の基礎問題はだいたい次のようになっています.

出題されるのはだいたい学部2回までの内容で,合計6題

具体的な内容と頻度は
・簡単な微積線形   多分毎年
・多様体(正則値定理),複素解析(留数計定理)   極稀に出ないが,基本毎年
の4題は典型で,あと2つが
・群論,難しい微積線形,常微分方程式,位相空間
から出ている印象.位相は1回しか出ていないはず.

数学1,2や,基礎科目1,2の時代はこの限りでない.

簡単な微積線形,多様体,留数定理は定番なので,少なくともどういう操作をすればいいかは早いうちに把握して,得点源にした方が良さそうです.

あとの2題はお祈りです.気合で解きましょう.
微分方程式については具体的に解が求められる方程式しか出ていないはず(微分方程式解けますか?+微積の議論はできますか? の2点を聞くような問題?)なので,基本的な解法は抑えた方が良さそうです.
群論はシローの定理とか,構造定理を要求されることはあまりないですが,こういう問題,考え方が定番,刺さりやすい!というのも特になさそうで,代数を勉強していない自分にとっては対策しにくかったです.
難しい線形代数はジョルダン標準形,固有値と固有多項式,最小多項式(と対角化可能性)あたりのことを考えるとよさそうだなぁという印象です.微積は知りません.C^1級ってあったら平均値の定理をグッと睨むといいかもしれないくらい?あと「コンパクト上の連続は一様連続」とかもよくつかう?しりません.

計算ミスに目をつむれば5完前後は安定していたので,計算に時間を割けばなんとかなるだろ~とは思いつつも,難しい線形代数とか代数はその場でコネコネしてたらなんかできちゃった(笑)みたいなのばっかだったので,結構不安でした.
あと,過去問演習をするときは時間を計り,(ipadなどではなく)紙に書いてやったほうがいいような気がします.あと,可能なら,途中で切り上げることなく時間をフルに使って解きましょう.理由は以下.

・時間の感覚がつかめる.たとえば,最初の積分計算に3,40分使っても,多分だいぶ余裕をもって解き終わる.
・ケアレスミスに対して「残りの時間で見直ししてれば気づけたから~」という言い訳をさせない.
・ipadだと文字を消すのは簡単だけど,紙に消しゴムだとそうはいかず,結構煩わしい.

専門科目

4月の頭から基礎と同じ形式でゼミを始めました.こちらもいきなり過去問演習で,新しい方から…とか古い方から…というのは基本的に気にしませんでした.

京大の専門科目(解析学)は次のようになっています.

積分論
→ルベーグ積分のこと.測度そのものに関する問題は1回しか出ていない.難易度は,やや取り組みにくいかも…?くらいで安定してる?

函数解析
→コンパクト作用素に関する問題が頻出.アスコリアルツェラの定理もよく出る.難易度は比較的安定していて,(傾向がはっきりしているのもあり,)積分論よりは取り組みやすい印象.

偏微分方程式
→よくわかりません.フーリエするだけだったら選択しよ~ってだけ.pde専攻なら問題なく解けるんですかね,pde無知だからわからない.難易度は(僕がpde知らないのもあり,)かなり上下している印象です.フーリエ級数を計算して適当に評価するだけのときもあれば,2024みたいに意味不明なこともある.

2003だけ複素解析,函数解析,pdeの構成.

なんと!!!!!!!!確率論の問題がありません!!!!!!つらいよ~確率論専攻はどうしたらいいんだよ~…こら!!!!「積分論あるからいいじゃん」じゃないの!!!!!!!!!!

積分論は傾向も何もないので,日頃鍛えた†解析力†(かいせきぢから)が試されるのかも~という感じ.函数解析はコンパクト作用素の基本的な事項を勉強して,ちゃんと慣れれば(標準的な難易度なら)解けるようになると思います.pdeはフーリエするだけの問題じゃなかったら触らないようにしていました.うまく部分積分やら何やらすればいいらしいですが,うまくできないときが怖いし…

毎年函数解析か積分論のどちらかは取り組みやすい問題だったので,そっちをちゃちゃっと済ませて,残り時間でもう片方をぶん殴る戦法をとっていたらだいたい運よく2完できていて,基礎よりは絶対大丈夫だな,と思っていました.

解析の問題について,ゼミで出た2000~2025の答案を僕がtexで清書したものがあるのでどっかで外に出したいですね.多分僕のnoteで出すと思いますが,もし欲しいのに見当たらない場合はなんか頑張って僕に連絡してください.

起床

本番の開始時刻が9:00とかいう常識では考えられない時間だったので,本番の一週間前から仲間内の何人かで起床チャレンジ(頑張って起きて9:00までに大学に行く.起きられなかったら晒し首.)をしていました.効果あったのかな.

当日のこと

寝坊回避のためにバカデカアラームをかけましたが,アホ豪雨の音で夜中の3時すぎとかに起こされました.無事寝坊回避です.
感覚を忘れないためにこれは筆記試験の日に書いています.やや問題のネタバレがある(かもしれない)ので,そのことを先に注意しておきます.

基礎科目

まずは各問題の所感を書きます.

1(積分計算).
なんだこれ,と思ってとりあえず2番に行ったけど2番を解いてる最中に解法を思いついたのでよかった.

2(固有空間の次元).
今年唯一の(?)典型題

3(難しい線形代数).
こういう系苦手なんだよな~と思って飛ばした.あとで帰ってきて,気合の成分計算で片付けた.

4(積分の収束判定).
原点近傍の評価はいいとして,遠方がよく分からず,しかも答えの予想を間違えていたので噓を書いてしまった.

5(留数定理).
なんか留数定理使わずとも部分分数分解でできるらしい.

6(位相).
解けたつもりでいたが,どこの位相でopenなのか?とかをごっちゃにしていて(1)をミスってた.(2)はたぶんいけてる…

こんな感じなので,多分4完2半で,よくて230/300?

全体的に``典型題''が少なく,やりにくかったです.全部目を通した上で,1時間経っても3つしか解けていなかったときは本当に最悪の想像をしてしまいました.幸いだったのは,(噓を含んでいたが,)一応正しいと思い込んだ記述を全問に書いたので,わんちゃん満点いけたかも~と思ったまま専門に挑めたことくらい.答え合わせをする過程で満点でないことがわかったわけですが,なんだかんだ満点は無理だろうと思っていたし,こんなもんだろう,という具合.

専門科目

所感を書きます.

6(測度論).
むずかしい.
7(函数解析).
破滅.

なんですかこれ.本番デバフはあるんでしょうけど,どの過去問よりも難しく,「本番でこんなんやらせんなよ,これ試験として機能したんですか?」というのが正直な感想です.先生たちこれ出ると知ってて「頑張ってね」とか言ってたのマジ?どんな気持ちだったんですか.優秀な院試ゼミの全員が破滅していたので,少なくとも試験場で解くにはかなり難しい問題だったんだと思います.

6は,初手は恐らく正しく選べたのですが,そのあとの記述でまごついてしまい,それでも何とか完成はさせたものの,微妙なミスがあって…といった具合.大筋はあってるし高得点くれ~.というかこの問題,小問なしの一発勝負だからやることが分からないと本当に一切の得点が入らなさそうで,かなり厳しそう.

7は,(1)はすぐなんですが,(2)の作用素が謎すぎて(見た目が汚くて)うまく評価できず…そもそもコンパクト性を示すのに何をすればいいのかもいまいちつかめず,アスコリアルツェラは厳しそうだし,完全連続性で示そうとしたけど評価できんし…でかなり難しかったです.正直何も有効打は打てていないと思う.(2)を解けた人,いるんだろうか…いるんだろうな…

これは異様に難しい年を引いてしまった…と思い,フーリエが出てることに賭けてページをめくってpdeの問題を見たんですが,地獄絵図が広がっていて,おしまいです.
0.8完+0.5完で,130/200あれば御の字(多分7-1の配点はほぼ無いので実際は100あるかないか?)という感じ.この難易度を考慮したらだいぶ善戦した方だと信じたい.

英語

これやる意味あるんですか?試験時間15分て

筆記が終わってから

院試ゼミのメンバーと学生控え室に集まって答え合わせ&解き直しをしました.専門も含めてここですべての答案が出そろいましたし,口頭試問で解けなかった問題の解き直しをさせられるという噂があるので,これはやって良かったです.

口頭試問

筆記試験の翌日に口頭試問対象者が発表されます.
発表当日の朝起きたとき,前日の筆記を振り返って,ちゃんと解き切れなかったことが情けなく,応援してくれた人に合わせる顔がなくて泣いてしまったので,口頭試問では泣き落としをすることにしました.

(一次合格者発表までの待機時間)

とりあえず数学教室も数理研も口頭試問への挑戦権はもらえていたので安心しました.本当に安心しました.基礎があんまよくないので,専門ひとつ取ったのがデカかったのかな.
数学教室には落ちたが数理研には進んだ人がいるのを見る限り,

・数学教室…全体的に筆記重視で成績をつけていて,面接で大きく変わることはないし,志願者も多いので,筆記でバッサリ切ってる.面接はQEと合否ボーダー用?
・数理研…面接の受け答えも重視し,面接で逆転のチャンスがある分,筆記のボーダーは低い

とかなのかなぁ,と妄想しました.(あくまで個人の妄想ですからね.)

発表の15分後に面接の人とかいて大変そうだぁ~って思いながら口頭試問の時間割を見ていたら,「待機部屋&集合時間が僕と同じ人」が僕以外に存在しないことに気がつきました.なんですかこれ,拷問確定演出???しかも,数学教室の面接に進み,3号館を待機部屋に指定された数理研志望者のうち,僕だけ違う部屋(151号室.他は109号室.全体で見ても151号室は少ない.ちなみに数理研志望者で6号館を指定された人は1人だけ.)なのがもっと怖い…これはどういう意味なんだ…この文を書いてるのは面接前日なので,明日になったらどんなんだったか書き足します.

数学教室の口頭試問

受けてきました.1時間弱かかったので,いわゆる「詰められ」をされた側になるんだと思います.試問の流れと受け答えを大雑把に書きます.口頭試問当日にこれを書いていますが,既に記憶がやや曖昧なので(主に会話した順序と発言した教員について)事実と違うところはあると思います.

教員A(指導教員に希望した教員)
「名前,受験番号,出身大学,進路の希望(などの事務事項)を教えてください」
僕「hoge」
A「研究したい内容は」
僕「空間の複雑さ,ランダムネスがその上の数学的構造にどう影響するのかに興味があるのでそれに触れていたい」
A「興味を持った定理,トピックは」
僕「Z^d上の単純ランダムウォークの再帰性が~…こう証明されてるのが面白くて~」
A「それに興味を持ったきっかけは」
僕「この本(ランダムウォークの再帰性を扱ってる)を見ました」
A「その本はランダムウォークを扱ってはいますが空間の複雑さとかはあんまりですよね」
僕「それに関しては○○先生の数学セミナーの記事を読んで…」
A「その先生のご専門って空間の複雑さとかじゃないですよね」
僕「(そうなんだ)数学セミナーの記事の内容はこんな感じだったと思います」
A「さて,Z^d上の単純ランダムウォークの再帰性はさっきの方法で示されますが,それはZ^dという構造に強く依存していますね.一般の場合について何か知っていますか.」
僕「お~ん…(可算集合上の時間的一様マルコフならグリーン函数で再帰性の判定ができることを答えた)」
A「今述べていただいたのは離散時間での話ですが,連続時間,たとえばブラウン運動とかの再帰性関連は何か知っていますか?」
僕「お~ん…(ランダムウォークと同様に,次元2が境目になってるみたいな話は聞いたことがあります.証明を追ったとかはないです.)」
A「確率論のは複数の収束があると思いますが,それについて述べてください」
(名前を言えばいいんですか?と確認をする)
僕「概収束,L^p収束,確率収束,弱収束です」
A「確率収束と弱収束の定義を教えてください」
僕「hogeです」
A「いま弱収束の定義を書いていただきましたけど,いくつか同値条件がありますよね.どれでもいいのでひとつ挙げてください.」
僕「hogeです」
A「では複数の収束の間の関係はどうなっていますか」
僕「hogeです」
A「いま『○○収束ならば××収束』と言いましたが,その部分的な逆が言えることは知っていますか?」
僕「hogeとかがありますね(ここで一つ言い忘れたことにあとで気づいた.''部分的な逆''の意味するところがいまいちわからない)」
A「ほかの先生方は何かありますか?」
僕「(やったー意外と早く終わる)」
教員B(少し面識がある)
「確率解析を勉強したことがあると思うんですが(←か,か,確率解析ィ!?!??!?!????!?!?!?!?!!??!?!??!?!??!??!?!!??!??!??!?!?!?!??!??!?!?????!?!?!!!!!????!???!?!)何を勉強しましたか」
僕「(流れ変わってきたな)三回生後期の講読で少し本を読み,定義と基本的な性質,伊藤の公式,解の一意存在とかを扱いました.」
B「では伊藤の公式を書いてください」
僕「こんなんだったと思います(係数の1/2を書き忘れた気がする)」
教員C(講究を見てもらってる)
「確率解析を勉強したとのことですが…」
僕「チョットダケ…」
C「ちょっと…笑   では,解の存在や一意性が担保されるための十分条件をひとつ挙げてください」
僕「(やべ~覚えてね~)ええと…あまり覚えていませんが,線形増大条件とリプシッツ条件があったと思います.具体的な内容は…ええと…」
B「(わからないようなので,)では確率微分方程式を書いてみてください」
僕「(まごつきながら書く)」
B「その係数になにか条件があるわけですよね,わかりますか?」
僕「(泣き出す)」
B「では係数がこんな形をしていたらどうですか?」
僕「(泣き止む)あ~,じゃあこうですかね… てことは一般の場合はこうですかね… すみません,手助けして頂いても確信をもって答えることはできません」
B「確率解析や,今まで話していたランダムウォークのほかに勉強した確率論のトピックは何がありますか?」
僕「これら以外のトピックですか…(トピックってなんだ…そら基礎的なことはちゃんと勉強したけどそういうのも言うべきか…?)ええと…マルチンゲールとかですかね.あと,現在進行形でマルコフ過程をゼミで勉強しています.」
A「話を元に戻しますが,単純ランダムウォークは数理モデルとしてはどのように定式化しますか?」
僕「こんなiidをとって…あ,これは拡張定理から構成できて…」
A「いま拡張定理を可算個の直積に用いましたけど,拡張定理自体は可算個でなくともいいですよね.典型的な応用例は知っていますか」
僕「応用例ですか,そうですね,たとえば今やったみたいにiidの構成とかはありますね.あとは時間的一様マルコフも構成できます.う~ん(ブラウン運動の構成も言おうかと思ったけど結局マルコフなのでやめた)このくらいです.(ここで具体的に構成をしようとマルコフの構成に使う拡張定理の主張を書く)」
A「その記号(stochastic kernelのproduct,composition)や,拡張定理の主張にある''マルコフ半群''というのは何ですか」
僕「hogeです」
A「さて,数学教室には何人か確率論の先生がいらっしゃいますが,なぜ私を指導教員に希望したのですか?」
僕「数学教室にいらっしゃる,空間の複雑さやら何やらに関連した確率論を研究してる先生ということで希望しました.」
A「それは私の何を見て私が空間の複雑さとかを扱っていると判断したんですか?」
僕「去年の最前線(先生が自分の研究について話す講義)で先生の講義を受けました.」
A「そうなんですね,去年って私どんな内容を話しましたっけ」
僕「半年前なのであまり覚えていませんが,こんなんだったと思います」
A「ほかの先生方は何かありますか」
教員D(全く関わりはない.確か解析学系の主任の先生.)
「試験の出来はどうでしたか.自己評価を教えてください.」
僕「(泣き出す)」
D「コンパクト作用素の定義を書いてください」
僕「(泣き止む)」
A「ではこれで口頭試問を終わります.板書を消してから退室してください.」

う~ん,長いですね.個人的な感想としては

・最低限答えるべきところはちゃんと答えたし,分からないところは「断言はできないけどこんなんだったと思います.」という形で答えたので,とりあえずそこはok

・確率解析の質問をされ始めたときはもう帰ろうかと思った.自信が全くないから出願書類に一切書かなかったのに…てかこれ完全に先生の個人的な興味で聞いてませんか?

・緊張しないために結構な頻度で「(黒板に何か書くときに)これ消しても大丈夫ですか」って聞いた.数学以外の会話(?)ができると気が和らぐ.

・時間が経つにつれて自分の受け答えを忘れてしまい,噓を書いてないか不安になってきた.

・確率解析関連がちゃんと答えられず,(面識があり,いつもお世話になっている)B,C先生を(そもそも何の期待もされていないかもしれないが,)失望させてしまったであろうことが情けない.「その他に勉強したトピック」もあんま答えてないし,「こいつ何勉強してきたん?」って感じですわ.今度会ったとき謝ろう.

といったところです.解析系の教員がほぼ全員?いたので迫力がありましたが,結局メインでお話ししたのは最前列に座っていたA先生だけでしたし,立ちながら数学の話をする(eg.ゼミ発表)は楽しめるタチなので,思ったよりは緊張せずに済みました.
他の友人は「QEに通らなかった場合どうしますか」みたいな質問をされたのに僕は何もなく,なのに結構質問されて,なんですかこれはって感じ.QEとか考える権利もないくらい筆記の出来が悪かったのかもしれない.う~ん,まぁ明日の数理研に備えます.

数理研の口頭試問

受けてきました.こちらも1時間くらいでした.数学教室と同様にやり取りを書きます.

教員E(確率論の教員)
「名前,受験番号,その他に受験した大学院などを教えてください」
僕「hoge」
E「学部での学習について伺いますが,集合と位相の教科書を途中までしか読んでいませんよね.それ以降の内容がかなり大事だと思うんですけど,そこは学習しましたか?」
僕「その本の残りを通読することはしていませんが,他のことを学習する過程で色々集合と位相の内容は出てくるので,そこで適宜勉強できていると思います.」
E「履修した講義について,代数学I,IIを履修していませんが,これはなぜですか」
僕「1回生のときの代数学入門という講義で代数に苦手意識を持ち,そこから代数を避けがちになりました.また,代数Iの開講されている火2,3には函数解析続論があるので,その当時すでに解析を専門にすると決めていたのもあり,そちらを優先しました.」
E「それは3回生のときの話ですよね.今期はどうしましたか」
僕「今期も履修していません.院試対策や講究の準備に時間を割きたかったからです.」
E「それでは筆記試験の内容に移ります.まず,6番の答案で『①の収束が起きている集合をXとすると…』と記述していますが,Xは何ですか」
僕「これこれです」
E「ではそれは可測ですか」
僕「一般に可測函数f_n,fに対して{ x\in R : lim f_n(x)=f(x) }が可測であることを示せばよいです.これは{ x\in R : (f_n(x))_n がコーシー列 }という集合に一致するので…」
E「本当ですか」
僕「えっ…(少し考えて)あぁ,これだとf_nが別の函数に収束する集合も入ってるんですね.なのでこうすれば良いです.」
E「はい.それであなたは6でこんな議論をしていますが…(それは正しいんですか みたいな質問)」
僕「(何か適当な回答をした記憶がある)」
E「続いて7番ですが,あなた(1)をYoungの不等式に押し付けていますけど,もっと初等的にできますよね」
僕「それは積分型のミンコフスキーとかも使わず,ということですか」
E「はい」
僕「(おーん…少し右往左往して)こうすればよいです」
E「はい.それでは(2)の解き直しはしましたか.していれば今解いてください」
僕「しました.(説明をする)ここで,事実Aを使えば証明ができて…」
E「そうですよね.その事実Aってこの本に載っているはずで,あなたはこの事実の載った箇所を読んだって志願書に書いていますよね」
僕「そうですね…すみません,本番思い出せず…」
E「はい.では回答の続きを書いてください」
僕「(回答を書く.ここでも少し問答があった)」
E「では専門分野の学習について聞きます.確率論には様々な極限定理がありますが,中心極限定理の正確な主張を述べてください」
僕「hoge」
E「その証明は大雑把にはどうしますか」
僕「hoge」

ここでもうひとりの確率論の教員Fに質問役が代わります.F先生は英語でお話しされていたので,その発言内容は聞き取れた範囲かつ,僕の解釈で書いています.また,回答は基本的に英語でしましたが,難しい単語は日本語でも構わないという注意がありました.

F「レポートではZ^d上のランダムウォークの再帰性とパーコレーションについて書いていますね.これらのことはどこで勉強しましたか.」
僕「hoge」
F「主にランダムウォークについて聞きます.Polyaの定理の主張はなんですか」
僕「hoge」
F「その証明はどうしますか」
僕「事実BとCを組み合わせればよいです.(ここのBについて,G(x)=(xに依存しない式)みたいなのを書いた気がするが,指摘はなかった.)」
F「それは(認めてしまえばPolyaの定理は明らかという意味で?)結構強い事実ですね.では事実Bはどう証明しますか」
僕「マルコフ性を使えばよいです」
F「ランダムウォークがk回出発地点に帰ってくる確率を求めてください」
(↑今気づいたんですが,これは事実Bを証明させようとしていたんですかね)
僕「(お~ん…)こうですかね」
E「それはk回以上原点に返ってくる確率ですよね」
僕「あ,確かにそうですね.なので求める確率はこうですね」
F「はい.事実Cについて,あなたはレポートで『非整数次元空間上のランダムウォークについても同様のことが成り立つのか気になる』と書いていますが,非整数次元空間の例を挙げてください」
僕「たとえばカントール集合とか,シェルピンスキーのガスケット(以下SGと書く.),カーペットとかのハウスドルフ次元は整数でなかったはずです」
F「たとえば,Z^dの辺を少し足したり消したりしたときに再帰性はどうなりますか」
僕「うーん…多分Z^dのと変わらないと思います.というのは,そのくらいの変化がランダムウォークの分布に大きな変化をもたらすとは思えないからです.」
F「その厳密な証明のアイデアは何かありますか」
僕「うーん…すみません,ちょっと僕には難しいです.」
F「では非整数次元の例としてSGを挙げていますがそこでの再帰性はどうなるかわかりますか」
僕「うーん…SGの次元は2より小さいはずで…でもこの次元ってハウスドルフ次元だし…すみません,わかりません」
E「ほかの先生方は何かありますか」
教員G(確率論の教員ではない)
「なんで次元2が出てくると思ったんですか」
僕「ええと…たとえばZ^d上で考えるとd=2が境目ですし…あとは以前読んだ数学セミナーの記事にそのようなことが書いてあったような記憶が…」
G「そうですか.大数の法則の分母には何がありますか」
僕「(1/n を書き始める)」
G「そうですか?」
僕「(え,そうじゃないんですか?みたいなやり取りをする)」
G「正規化するのに分母になんかありますよね,平均からのずれがどのくらい,みたいな…」
E「中心極限定理のことですか?それはさっき書いた通りですよ」
僕「(√n で割るのをG先生は言わせたかったんだなぁということからDonskerの不変原理を思い出し,なんか言うが多分伝わってない)」
E「まぁ専門的なことなので大丈夫です.熱核の評価が云々…」
僕「^^」
E「これで口頭試問を終わります.板書を消して退室してください.」

F先生の後半の質問はやや高度で,E先生から2,3度(?)「まぁ専門的なことですから…」とフォローして頂きました.
以下,感想です.

・思ったより(正解を要求された)専門的なことは聞かれなかった.そういう意味では数学教室の口頭試問の方が苦しかった.

・筆記試験の内容に入るまでは椅子に座って受け答えをしていたんですが,緊張のせいか視界がぐにゃぐにゃしていて大変でした.

・緊張と吃音のせいで,なにか事務的な事に答えるのに時間を要したんですが,そしたらE先生に「大丈夫ですよ,落ち着いて」と言っていただいて,ほかの先生からも柔らかい笑いが起きたのが少しありがたかったです.

・大問6の可測性のところをミスったのは(修正できたとはいえ,)悔しい.言い訳をすると,7月に受けた先端数理の院試で{ x\in R : (f_n(x))_n が収束する}の可測性を証明させられて,これだ!!!!!と思ってしまいました.

数学教室と数理研の口頭試問を比較すると,

・共通点
どちらも志願書,レポートに書いた内容に関する質問(ランダムウォークの質問)と,確率論の基礎事項に関する質問(数学教室は各種収束について,数理研は中心極限定理について)がなされた.

・相違点
数学教室の方が「正解を求められている質問」が多いように感じた.具体的には,F先生の後半の質問は「なにか予想,アイデアがあったら教えてください」といったニュアンスの質問だったのに対し,数学教室の方は「あなたはこういうことを勉強したはずなので,それに関して確認を行います」といった雰囲気の質問だった.(これは教室と数理研の特徴というよりは,試問を担当した先生の性格の影響が大きそう.)

といった感じ?

結果発表までのこと

口頭試問で答えられなかったの悔しいし,結果発表まで確率解析の勉強するぞ~と思ってたら,試験が終わった翌日からあり得ないくらい体調を崩してしまい,なんもできませんでした.→コロナでした.マジかよ.

受験者データ

合否発表まで暇なので(これを書いているのは発表の90分前です.),最後に受験人数とかその辺のことを書こうと思います.欠席者がいたかもしれませんが,そこまで覚えてないので,そこは考慮していない記述になります.
また,「hoge番台」(hoge=00,500,1000,1500)は受験番号を表し,たとえば受験番号が3の人,501の人はそれぞれ00番台,500番台です.

・定員
数学教室42     数理研10

・志願者
00番台(教室専願) 97人
500番台(教室>数理研) 14人
1000番台(数理研専願) 8人
1500番台(数理研>教室) 9人

・筆記合格者
数学教室 69人 (00番台54人,500番台 9人,1500番台 6人)
数理研 21人 (500番台10人,1000番台4人,1500番台7人)

500番台で,
数学教室には通ったが,数理研には通らなかったのは0人
数理研には通ったが,数学教室には通らなかったのは1人
両方に通ったのは9人
1500番台で,
数学教室には通ったが,数理研には通らなかったのは0人
数理研には通ったが,数学教室には通らなかったのは1人
両方に通ったのは6人

面接の集合場所が3号館なのか6号館なのかでもなんかあるのかもしれないけど,ちょっと集計が面倒なので略.やる気が出たら書くかも.

・最終合格者
数学教室 47人(うちQE免除は13人  500番台の合格者は4人で,うちQE免除は2人)
数理研 11人(500番台は3人,1000番台は3人,1500番台は5人)
(そらそうなんだけど,)数学教室と数理研両方に合格した人はいない.

多少の数え間違いはあるかも.

結果

数理研に合格しました.安心.よかった.嬉しい.すごい笑顔.


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