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『風立ちぬ』は 風がモンタージュする 超絶技巧の 最高傑作です。

蚊帳で寝る少年。
その夢から映画が飛び立ったと思ったら

夢を見る
夢から覚める
帽子が飛んで
帽子をつかまえて
大地震
地面が割れる
大火事
灰が舞う
タバコを吸って
タバコを消して
出逢う
別れる
異国へ行って
日本に帰る
図面を引いて

飛行機が飛ぶ
飛行機が墜ちる
汽車が走る
汽車が止まる
自転車が走る
自転車が止まる
バスが走る
人が走る人が歩く人が立ち竦む

屋根の上と空
山の上と山の下
バルコニーの上と下
バルコニーともっと上のバルコニー
庭と窓
汽車の車両と車両
窓の外と中
丘の上と丘の下
ホテルの窓と路地
ホテルの二階と一階
階段の下のテーブル

朝と夜
夕方と夜
朝と昼
昼と夜
今と昔
今と未来
昨日と今日
10年
2年

時も空間も
自由自在に
縦横無尽に

帽子やらパラソルやら本のページやら
紙飛行機やらドアやらカーテンやら
木々や草や花や水面や着物や
髪や火の粉やらを

風が吹きぬけ
風が吹き飛ばし
風がさらっていくと

どうやって繋がっているのかを忘れてしまうほどに
すべてが鮮やかにモンタージュされていく

どうしてこんなものが繋がっていくのか

用水路
小川
夢のように現れる菜穂子と小さな貯水池
あの森はどうやって思いついたんだ

ただ圧倒的な演出に眩暈を起こしているだけで
画と画がどんどん繋がってしまい
物語が一生懸命その後ろを追いかけている

アキレスと亀のように

その狭間で
まるでホークスのように
「唯一度だけ」を極めて自然に歌わせ

「風立ちぬ」「生きなくては」
などと言わせ

駅の人込みを掻き分け走らせ

手を握らせ

右から左へのパンで山を見させて

男がただただ格好良く
女がただただ美しく

冒険活劇であり
儚いメロドラマであった

『コンドル』と『脱出』を思い起こさせ

映画が終わった時

僕はすっかり放心状態で


なんだこれは

なんとすばらしいのか

すべては風のように駆け抜けてしまった。

『風立ちぬ』は
風がモンタージュする
超絶技巧の
最高傑作です、
宮崎駿という作家の、
最高傑作です。

というわけで
僕はまだ夢のなかにいます。


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