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尊敬なのか好きなのか

通常ほとんどの人に興味を持つことがない私だが、極稀に思考も心も奪われてしまうような人物に出会うことがある。私はそれを「恋愛感情」などとして分類したくはない。そうではなく、「尊敬」「憧れ」といった言葉で表したい。肉体的なものではなく精神的な存在として、天に輝く一等星のように、常に目標としていきたい人物。

その人と初遭遇した時、私は彼をあまり良く思ってはいなかった。決して悪い印象という訳ではない。ただ、初対面の人間には大抵身構えて接してしまうので、防御態勢の色眼鏡で見ていただけかもしれない。

その人は英語も日本語も話す。バイリンガルと実際に会ったのはこれが初めてだった。これだけでも非常に興味深いのに、彼はさらに議論好きで人の意見に突っかかるのが純粋に好きなようだった。池に小石を投げまくる少年のような、静謐を湛える湖に突如現れるネッシーのような、そんな表現をしたくなる人物であった。

その人は時間通りに事を進めるのがあまり得意ではなく、議論を膨らませ過ぎて毎回のようにタイムオーバーしては残念そうに去っていく。そして、周りの人は「やっぱりな」と毎回思っていただろう。自分の興味関心に一途なその人は、大人というより中学生くらいの少年のように見えた。

多くの人が彼の自由奔放な話の伸縮性と掴めなさに疲れたのか、離れていってしまった。だが、私を含め何人かは残った。我々は恐らく、彼の波長を受け取れる型であったのだと思う。compatibleというか。

私はその人と2回、対面で小一時間ほど会話をする機会を得た。とにかく彼の新奇性のある話を聞きたくて聞きたくて、まるで別惑星に住んでいた人間にインタビューしに行くかのように、前日からそわそわしていた。その人の元を訪れると、笑顔で少し照れたように挨拶してくれ、すぐに本題に入って話が始まった。

本当は20分だけとアポを取っていたが、そのことについて確認をすると快く時間を延ばして下さった。

私は普通、他人と一時間もそんなに長く会話をすることがないし、したいとも思わない。だが、この対面は私自身からお願いし、そして本心から望んでそうしていた。この原動力は何なのか。知的好奇心?自分の課題解決のため?純粋な憧れ?それとも...


あなたはそんな人物に出会ったことはあるだろうか?もしそうであれば、その出来事を生涯の宝のように大切にしていってほしい。

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