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【VCJ プレイオフ直前ガイド】 VALORANT Challengers Japan 2023 Split 1 Main Stageから抜粋した2試合(FENNEL vs. SCARZとCrazy Raccoon vs. Sengoku Gaming)の分析レポート #VCT #VCJ


はじめに

この記事では、プレイオフ直前ガイドとして、VCJ Split 1 Main Stageで活躍した上位4チームの試合を分析していく。Main Stageの後半の試合かつMAPが被らない2試合を選んだ。FENNEL vs. SCARZCrazy Raccoon vs. Sengoku Gamingである。(選手名は敬称略させていただきます。最後まで読んでくれると嬉しいです。)

英語版は現在翻訳作業中です。完成次第、ここにリンクを貼ります。
The English version is currently being translated. As soon as it is completed, I will post a link here!!!


大会全体のデータ

その前に、まず大会全体のデータを少しだけ見てみよう。プレイオフ観戦の手助けになるかもしれない。

データ1: ACSが高い上位20人のFKPR/ACS

データ1は、Main StageのACSが高い上位20人のラウンドごとのファーストキル発生率(FKPR)である。上に行けば行くほど、ACSが高く、右のプレイヤーは左のプレイヤーと比べてファーストキルを取ることが多い。各選手のロールを考えながら見てほしい。特徴的なのは、プレイオフに進出した6チームのエース的な役割を担っている選手たちが右上に固まっていることだろう。そして、サポートで活躍している選手たちが左下に固まっている。SG Vici、FL SyouTaはスモークプレイヤーだがACSは他チームのエース級であり、彼ら2人のFKPRはほぼ倍のスコアとなっている。これは同じスモーク使いであるがチーム内での役割や立ち位置が少し違うことを意味しているのだろう。

データ2: クラッチ勝数/クラッチ成功率

データ2はクラッチに関するデータだ。このデータを見ると今大会のクラッチマスターは誰なのか、理解することができる。CR makibaである。他の選手の追随を許さないクラッチ能力、オペレーターを持ち帰ることを忘れたこともネタにできるレベルの大活躍である。まだ1つのMAPを落としていないCRのメンバーが右上で目立つが、その下にはSZのメンバーが勢揃いである。英語でのコミュニケーションはクラッチ時には必要では無くなる。それが影響しているのかもしれない。

データ3: FENNELのマッププレイ回数
データ4: SCARZのマッププレイ回数
データ5: Crazy Raccoonのマッププレイ回数
データ6: Sengoku Gamingのマッププレイ回数

上のデータ3〜6は今回試合分析する4チームのマッププレイ回数である。BO3のリーグ戦はこのようにチームそれぞれがプレイしたいMAPがしっかり見えてくるので良い。「ふ〜ん、まぁこんな感じなのね」と流し見をしたいところだが、CRのデータには他のチームが良くプレイするMAPが1つ無い。Ascentである。CRの主にBANしているMAPはBreezeで、Ascentは3MAP目に残っていることが多いのだが、もちろん一度もMAPを落としていないのでAscentをプレイしていないのである。 もしプレイオフでCRはHavenやIceboxを落とすようなことがあっても、まだ配信試合で1度も見せていない、つまり他のチームが分析できていないAscentを有利な条件でプレイすることができるのである。ちなみに下の画像はオープン予選で1度だけプレイしたAscentでの構成である。

画像1: オープン予選でプレイしたAscentの構成 (vlr.gg)

これ以上大会全体のことを書いても時間が惜しいので、本題の試合分析に入っていこう。まずは堂々の2位(6勝1敗)でリーグを終えたSCARZと、4位(4勝3敗)のFENNELの対決だ。試合アーカイブを2倍速で観たりしながらこのレポートを読んで欲しい。(ここから長いので好きなチームの試合だけでも楽しんでください。)


FENNEL vs. SCARZ (マップ: Icebox, Ascent)


選んだ理由・テーマ

FLはこの2MAPの勝率がよろしくない。Main StageにおけるAscentは33%、Iceboxは50%である(この試合を含む)。なぜ他のチームより劣ってしまっているのか、実際にSCARZに2-0されてしまった試合を観察して、的外れであろう小生の稚拙な見解を述べさせていただきたい。


Icebox

構成

画像2: Iceboxの構成・スタッツ (vlr.gg)

8-13で終わったこのIceboxは、お互いの構成にチームの色が出ている。まずはFL、OmenとKAY/Oを採用、このMAPで一般的であるSageやJettを削った構成になっている。攻撃時にゆっくり攻める構成であり、プラントにかかった時間の平均は71.875秒(プラント回数: 8、それぞれにかかった時間: 69,60,73,94,70,66,82,61)である。時間回復系スキルを何度も使用することで、この構成の真価が発揮されるため、このような時間になっている。ちなみにSZのそれは55秒(プラント回数: 7、それぞれにかかった時間: 76,58,76,33,23,54,65)であった。


データ

データ7: FL vs. SZのIceboxにおける攻撃時と守備時のRating

攻撃時と守備時のRatingがどれくらい違うのか、それがこのデータで分かる。特徴的なのはやはりJemkinだろう。それとSyouTaが攻撃時と守備時のRatingの差が非常に異なるのが気になる。

データ8: IceboxにおけるFK/FD

ファーストキル(FK)とファーストデス(FD)のデータ。Killjoyを使用したYoshiiiが最初の撃ち合いをすることが多かったことが分かる。FLはCLZが主にその役割を担ったようだ。


FENNELの戦術

画像3: FLの攻め時の最初の配置、Bメインを取る場合

FLは構成の強みを活かし、身体で場所を取るときはしっかりと人数をかけていた。画像3のように、KAY/OのナイフをAメインに刺し、そのままスパイクを持ち本陣の味方と合流することが多かった。ViperのSyouTaはミッドを監視、引き目で守った後に本陣に合流するパターンと、そのままミッドでラークを行うことを使い分けていた。Killjoyのhiroronnは主にAメインの監視、Bに行く時はViperの代わりにラークすることがあった。

画像4: イエローを取るセット

FLは用意していたセットがいくつかあった。例えば画像4のセットでは、イエロー裏にリコンを使用して相手のサイトのViperに壊されたためイエローにいるのではないかと判断。KAY/Oのフラッシュに合わせてOmenがシュラウドステップをしてイエローにピークした。Omenのスキルを活かしたセットである。

画像5: チューブ進行のセット (ラウンド5)

画像5は5ラウンド目に見せたチューブ進行のセットである。ラウンド開始時に、両方のメインに圧を出し、その後ゆっくりチューブを進行したラウンドだが、ここでもOmenのシュラウドステップを活かし、キッチンのタレットを破壊している。その際、OmenはAにスモークを使ってAに本陣がいるように見せ、独りでラークをしているフリをしていた。FLはゆっくりメインを取ってくる。その先入観に引っかかったSZはエントリーされ、武器が有利のラウンドを落としかけるが、Kr1stal、Jemkinの活躍で難を逃れた。

このラウンドにFLのアタックの強みと弱みが隠れている。ゆっくりとした攻め方はVALORANT、特にIceboxにおいて情報量で相手を上回り、全てのラウンドで布石になる。前半の数ラウンドでそれをされると、相手としては敵が遅く来るならとスキルを出し渋ったり、相手が目の前まで来ているのでは無いかという考えが頭に浮かび、リテイクに遅れることが多くなる。おそらくFLのIGLが好きなのは。それを利用することなのだろう。だからこそ、ラウンド中に入手した情報を整理してどこを攻めるか選択できる構成を今回は選んだのだ。しかし、それは攻めを遅らせれば遅らせるほど仇となる。設置をしなければいけない性質上、少しの事故で遅延が発生して設置が出来なくなったり、今回のように状況が良くない設置しかできなくなってしまうのだ。それを防ぐためにFLは密集しカバーを発生させながらサイトを攻撃しているのだが、やはり事故は発生してしまう。強い相手ならなおさらだろう。今回のIceboxの攻めはとにかくゆっくり攻めることを徹底しすぎてしまったのかもしれない。せっかく、FLの構成は誰が落ちてもサイトに進行できるモノになっているので、4vs5になるリスクを取ってでも序盤にキルを発生させて、そこから考えてもいいのではないかとも感じた。最終ラウンドでそれを修正したのか、4ラウンド目で見せたウルトを使用したアグレッシブな攻めを相手が寄ってくる前に実行した。グダることのない素晴らしい攻撃だった。もう少しAに対しての効果的なアプローチがあればラウンドは7-5くらいで折り返していただろう。

FLは守りがうまく機能しなかった。ミッドを重要視し、ドローンやダブルピークなどでミッドを奥まで見に行くことが多かったのだが、そこにSZはいなかった。Ascentでもそうだったが、FLは取られたエリアをSovaのドローンを他のキャラと一緒に進行させることでで取り返す、ということを徹底している印象だった。リテイクでは、Omenのスモークを活かしたかったようだが、Reynaがディスミス後に隠れるための素晴らしい利敵スモークになっていた。まともに取れたラウンドは武器有利のラウンドとSovaウルトを活かしたA詰めのラウンドくらいである。FLはSovaウルトからの乱戦がお好きのようだ


SCARZの戦術

SZはFLの攻めに最初は苦労したが、解決策を出したと言える。

画像6: 遅延用のKilljoyのセット、AからロテートするReynaとSova

本来、Killjoyのナノスワームはプラント位置に置いていたのだが、それをラウンド7から画像6のように変更した。まずTORANECOがBメインを雪だるまなどから身体で確認し、死なないように撃ち合って引く。そしてアラームボットが反応したらナノスワームを展開し、少しでもAからのロテートが奥まで進行できるようにしたのだ。その判断が功を奏し、このラウンドは獲得することになる。TORANECOがアラームボットより先にBメインと撃ち合うことで、アラームボットが生きている時間を伸ばすことに成功したのだ。AはJemkinがいるのでほぼ問題なかった。

アタッカーサイドのSZはとにかく5人でシンプルに攻めまくった。スピード感があり、トレードの意識がSZの方が高かったと言えるだろう。人数をかけてセージがプラントをし、その後はメインに引きすぎることもなくトレードを繰り返して勝利を重ねて行った。Reynaが撃ち合いに勝利すればディスミスで相手のトレードの機会を減らすことができる。Jemkinの個人技を活かした構成だったと言える。

アタッカーサイドで特に注目したいのが最後の2ラウンドで見せたYoshiiiの素晴らしいミッドラークである。12-7で迎えたラウンドでは、相手のViperウルトがAに展開されたので本陣はB進行を選択した。Yoshiiiはミッドラークをすることになっていたので、TORANECOのミッドスモークを利用しなぜかチューブにいたhiroronnをキルする。この後、FLはKilljoyが落ちた穴を埋めるためにミッドを取り返すのだが、YoshiiiはFLのSovaのドローンをうまくかわし、タレットを回収するところを相手に見せることで、「ラークは引いた」と判断させることに成功した。そしてまたミッドを進行し、キルを発生させることになる。ラウンドは落とすことになるが、素晴らしい判断能力を披露した。そして、最終ラウンドではプラント後にメインでロックダウンを発動してミッドにラーク、相手のウルトを壊すことに成功する。タレットを信頼しすぎたのか、hiroronnのウルト設置場所はミッドから丸見えだった。もしミッドから見えない位置に設置したとしてもFLは遅れた時間を取り戻すためにメインへ急がねばならない。その隙をYoshiiiは逃さないだろう。1人で2つのラウンドをコントロールしたと言っても過言ではない。


Ascent

構成

画像7: Ascentの構成・スタッツ (vlr.gg)

Ascentではどちらも良く見慣れた構成を採用してきた。AstraとOmenの違いは攻めで特に顕著に現れ、本陣で戦闘するOmenと反対側のメインを監視するAstra、といった感じである。


データ

データ9: Ascentにおける攻撃時と守備時のRating

少し前のIceboxのデータと似ている気がする。特にSyouTaやTORANECO、JemkinのRatingである。やはりSyouTaの攻撃にはインパクトがあり、チームを支える柱になっている。

データ10: AscentにおけるFK/FD

Jemkinである。


FENNELの戦術

FLの攻撃は彼らのやりたいことができたといった意味では成功だったのではないだろうか。AstraがAメインから自由に動き、KilljoyがBメイン側をスキルで監視、本陣はJettとKAY/OとSovaがとにかく密集し、Bリンクからスタートすることが多かった。緩急も良く、ミッドを起点にAショートに流れていく印象だった。ただ、FLのAscentにはすごいシンプルな特徴があるように見えた。それは進行するサイトの選び方である。『ミッドを取れたらショートから挟んでA、取れなかったらB行こう!』といったシンプルなものだ。面白いようにこのルールを遵守していた。Bリンクにスモークが来ただけでミッド進行をキャンセルし、相手を交わすようにBメインに集合、そのまま進行していた。それをSZに読まれて数ラウンド落とすことになってしまうが、SZ相手に6-6折り返しできたのは素晴らしいことだろう。

画像8: FLが"やりたくないであろう"マーケット取り

せっかくAstraを採用しているのだから、画像8のようにピザにスキルを入れてマーケットまで取りにいくといったラウンドも挟めば、これが良いアクセントになってさらにラウンドを取れたのでは無いかとも思ってしまうが。FLはサイトに入るまでにできるだけエージェントを落としたくないようなので、考え方が合っていないから採用していないのだろう。

防衛ではAstraのスキルがサイトでの耐えを行う際に非常に効いていた。そしてhiroronnとXdllが素晴らしいディフェンスを披露した。Bでの硬い守りはもちろんだが、それが崩された後にhiroronnはAにタレットを置き味方のミッド取りを陰からサポートしていた。それが出来たのはKilljoyのウルトが溜まっていたためAはリテイクできるという考えからだろうが、そこでミッドで戦闘を行おうという判断をFLが出来たことは非常に大きいだろう。


SCARZの戦術

SZはSyouTa対策のような守り方を実行していた。Aメインに彼がいることが分かっているので、KAY/OとOmenでそこを狙おうという考えが最初はあったようだ。しかし、それをしたラウンドで勝てなかったので、Aメインに人数をかけることをやめ、全ての道を一人ずつで監視することに切り替えた。そして最後の2ラウンドでJemkinとYoshiii、TORANECOの3人でミッドでキルを発生させることを選択し、それが相手の最も嫌がることだということが分かって前半が終わることになった。その際、Kr1stalはアビリティをAに置き、SyouTaのラークとAラッシュを警戒していた。

攻めでも柔軟な対応を見せたのはSZの方だった。ピストルラウンドでの人数不利からのヘブン詰めであったり、ミッドを取ってマーケットからB挟みをすることもあれば、ショートに流れて行くこともあり、シンプルなメイン攻めも有効活用していた。常に効果的な攻めを行う方法を考えながらラウンドを進めている印象だった。SZが13-8や13-10で勝利する可能性も十分にあっただろう。しかし、FLのサイトでの耐えとロテートしてきたプレイヤーの素早いカバーによって苦しめられることになった。やはりAstraがいるとサイトでの耐えというものがOmenのそれより容易になる。そこを最終的にいなしきることに成功したSZの勝利だった。


FENNEL vs. SCARZのまとめ

簡単にまとめるとこんな感じである。

  • FLはゆっくりと攻撃をした。それが機能したが最終的にに対応されてしまった。

  • SZはFLのやりたいことに付き合いつつ、効果的な対策を実行できた。

それでは、次にCR vs. SGを見ていこう。


Crazy Raccoon vs. Sengoku Gaming (マップ: Haven, Fracture)


選んだ理由・テーマ

CRのHavenがなぜ強いか、洗練されてきているであろう最後の試合を見て理解したかったから選んだ。そしてSGはFractureをプレイすることが今大会多い。彼らのクセを捉えるためである。(小生が捉えることができるか甚だ疑問であるが)


Haven

構成

画像9: Havenの構成・スタッツ (vlr.gg)

お互いが同じ構成でHavenに挑んだ。前半をCRは9-3で折り返すのだが、どのようなところにその勝因があったのだろうか。


データ

データ11: Haventにおける攻撃時と守備時のRating

サポートキャラを使用したnethとpopogachiが攻守で活躍した試合だった。お互いのチームで活躍した選手のロールが異なっている。

データ12: HavenにおけるFK/FD

somethingは攻撃時に4回、守備時に5回FKを成功させている。


Crazy Raccoonの戦術


画像10: CR、開始後すぐの攻め配置 (ラウンド4)
画像11: CR、開始後すぐの攻め配置 (ラウンド8)

これら2つの画像は、最終的にAにプラントして勝利したラウンドでのCRの初期配置である。スパイクを持っているnethは、戦闘の起こりやすいAロングをMeiyと一緒にじわじわとラインを上げていく。ラウンド4では、Sovaのドローンをショートに使用し、Killjoy(Vici)を視認したのでAロングの2人についていくと判断。最終的にmakibaがアンカーとなってショートをゆっくりとクリアした。ここで重要な役割を果たしているのはMedusaのタレットとmakibaの裏監視である。Medusaはミッド窓にタレットを設置、makibaはCからの詰めを見ている。この状況だけで、CRはSGに対してエリアの優位を完全に獲得しており、相手が何もしてこないならそのままAにセットをする流れができていた。ラウンド8では、Viciにタレットを壊されてしまうが、ドアからの詰めを警戒することを辞めたMedusaはB前まで進行する。落とされはするものの、本陣のセットには何も支障が無かった。難なくラウンドを取り切ることになる。

この2つのラウンドから、CRがこの試合の勝者である理由はSGが何もやってこなかったからだ、ということが見えてくる。SG視点で考えていこう。まず、4ラウンド目の方でこの攻め方をやられた際、AはViciのKilljoyウルトでのリテイクを想定していた。しかし、それはCRお得意の曲芸(ただのスキル2つ)で壊され、サイトに放ったスタンも誰にも当たらない。その後、makibaの素晴らしい耐えスモークの中に雑に入っていき、当たり前のように敗北した。8ラウンド目ではその反省を活かしたのか、サイトでぶつかろうとするが、Meiyの動きに完全に翻弄されてしまった。はっきり言ってどちらのラウンドも原因はnobitaとMisayaにあるだろう。4ラウンド目ではなぜかAにスモークが来たタイミングでドローンをミッドに使用したために、サイトでのリテイクに使用できなかった。もしヘブン下に3人いることをドローンが視認できていたら、スタンとアフターショックの位置は変わっただろう。さらにリコンでデフォルトと落書きに誰もいないことが分かっているのに、おそらくLOUDの試合を観て勉強したであろう斜めのスタンをMisayaは脳死で選択している。よかったらこのラウンドをスローで観てみると私の言いたいことが分かるだろう。そしてラウンド8ではまたこの2人がサイトで戦闘するのだが、明確なアイディアがないままサイト裏でスキルをくらいまくってしまった。またここもスローで観て欲しいのだが、CRは玉ねぎとポット(マップ名称はZETA様のやつを参考にしています、見ましょう)をまともにクリアしていない。せっかくの5vs4のチャンスを彼ら2人は棒に振ってしまったのだ。ヘブンにはsomethingがカバーに来ていた。玉ねぎやポットで撃ち合いを発生させ、注意を引いているうちに彼なら破壊してくれただろう。しかしそうはならなかった。明らかに勝てたラウンドだろう。

画像12: 対策案①
画像13: 対策案②

さて、CRのこの攻め方に対してどのようなアプローチが出来るだろうか?AロングはnethとMeiyがおり、popogachiもすぐにカバーできるだろう。そしてmakibaとMedusaのポジションは不安定(良い意味で)なので、キルを安定して発生できそうなのはショートと花瓶とポットあたりでカバートレードを行い、勝てた場合はmakibaを狙いに前に詰める、というのが得策ではないだろうか。パラノイアを食らっても近距離なので勝てなくはないし、サイトにエントリーするMeiyに付き合う必要はない気がする。対策案①,②のような配置を組めたら良いが、CRが件の攻め方をこのラウンドでしてくるかどうか、といった読みが必要になってくる。実際にCRは敵味方がフルバイしているラウンドで実行していたので。その時は「あ、CRこの攻め方してくるかもな、相手チームはどう対応する?」と読者諸君は持ち前のIQ 200の素晴らしい脳みそで考えながら観て欲しい。

守りでは、Aの人数を柔軟に変更し、詰める時は詰め、リテイクする時はリテイクに必要なキャラを残すことを徹底しているように見えた。

画像14: KilljoyをAに置いたAリテイク配置
画像15: KilljoyをAに置いたAリテイク配置

画像14のように、Aを薄くすることもあれば、画像15のようにCとBを薄くしてAで受けて立つこともできるという。さまざまなバリエーションでの守り方を高度に行うことができていた。特にAをMeiyが詰めて、popogachiがドローン破壊といったカバーを行ったラウンドでは、SGがCRのエコラウンドに対してネガティヴなエリア取りを行なっていることを逆手に取り、キルを重ねることができた。


Sengoku Gamingの戦術

SGの守りについては先のCRの攻撃パートで充分に語ったので、割愛させていただく。曖昧なスキルの使い方が目立った、とだけ書いておこう。(プレイオフまでにこの記事がみなさんにお届け出来るか不安だからこその割愛であり、そろそろ1万字を越えてきてダルくなってるだとか、早く終わらせてLOCK//INが観たいからだとか、そういった気持ちは決してない。)

攻撃時、SGはCとBに対して素晴らしいエントリーを行っていた。Breachの1度目のスタンでサイトに進行するためのスペースを作り本陣がエントリー、Viciが最後尾からサイトの撃ち合いに遅れて参加し、味方とのトレードを成功させているラウンドが多かった。両者フルバイラウンドでは、C設置からのロング引きでうまくブリーチをウルトを使用し、somethingが活躍する時間を作ることに成功していた。CRと比べて密集しながら攻めている印象があり、それがCRを苦しめたが、設置までにキルをされてしまうと上手くいかなくなるというSGの弱点を突かれ、重要なラウンドを落とすことになりこのマップは敗北してしまった。まだ何かを隠し持っている節があり、守備を改善すればより良い結果がHavenで生まれるだろう。


Fracture

構成

画像16: Fractureの構成・スタッツ (vlr.gg)

どちらもセンチネルはCypherを選択、KAY/OとNeonの違いだけである。SGはこの構成を今大会初めて使用した。

画像17: Main StageにおけるSGのFractureの構成遍歴 (vlr.gg)

前まではCRを同じ構成だったが、NTHに負けたからなのかCR対策なのかはよく分からないがこの試合でよりディフェンシブでゆっくり攻めそうな構成に変えてきたというわけだ。


データ

データ13: Fractureにおける攻撃時と守備時のRating

まさにRaze Diffである。

データ14: HavenにおけるFK/FD

デュエリスト勢が目立つ。


Crazy Raccoonの戦術

画像18: 武器有利ラウンドでのゆっくりとしたAメイン取りセット
画像19: 武器有利ラウンドでのAセット

CRはピストルラウンドを勝利し、2ラウンド目で画像18,19のセットを使用した。ルンバがオーブ付近の壁にぶつかった瞬間にスタンを発動、GeT_RiGhT(またもやZETA様のマップ名称をお借りさせていただいている)には誰もいないと確信したMeiyがダッシュし、Aサイトからのアングルを監視する。その後、スモークを展開した後にドアを開け、画像19のようにエントリーしていく。このとき、SGはフォースバイをしており、スティンガー4本がBで待っていたのだが、その事故が起こらないサイトを選択して勝利出来たのは理由がある。シンプルに、Aサイト内でエコ集団がスタックしている確率が低いからだ。このMAPでの守りのエコやフォースバイは、Aメインなどのクロスを組める位置でのスタックや、サブリス挟み、Bメイン詰めをするチームが多い。というかAサイト内でクロスを組めないからそっちの方に流れていくのだ。画像のようにNeonのスタン1つでサイトの半分ほどは身動きが取れなくなる、さらにBreachのスタンなんて来た時にはサイト壊滅は免れないだろう。だからSGはBにサイファーしかいないというフリをカメラでしながら、ゴキブリ戦法でトレードを行おうとしていたのだ。しかしそれは読まれており、Aメインに敵がいない時点でCRの勝利はほぼ確定していた。

画像20: サブリス配置
画像21: 相手がAメインを詰めているという情報から選択したドロップラッシュ

nethレイズのスーパークラッチの次のラウンド、CRはCypherだけをメインリスに置いたサブリス配置を取る。SGがBメインとAメインを詰めているという情報をMedusaは獲得し、をれを味方に伝えてすぐさま本陣はアンテナに集合する。ラウンド開始前はどちらに攻めるか決めていなかっただろう。CRはサブリスから両サイトに攻め入る策を持っているからだ。相手がAメイン詰めの場合はこのセットをすると決めていただろう美しいサイトエントリーからヴァンダル持ちのsomethingを落とし、すぐさまMeiyがタンク役になりつつ後続が続く形でAメインを取り返すことに成功した。このセットは非常に強力に見えた。

画像22: ルンバとスタンでドロップコントロール
画像23: Cセット、Viciとsomethingのジャッジに破壊されてしまう

画像22から画像23に移行する形でおこなったCセットはタワーに人数を割かなかったため、相手に挟まれるかたちを取られてしまった。同じような攻めを行ったラウンド9では、タワーをスムーズに取ることでこのアーケードからのセットを成功させたのだが、今回はラウンドを落とした。なぜこうなってしまったのだろうか。おそらくMeiyのサイトからのリレーボルトでタワーを取ることができたのだろうが、Meiyはサイトに流れることなくsomethingの待つカンティーン側のスモークの中に入って倒されてしまう。nethもタワーで1vs1を2回も行ってしまったため、流石に相手が調整バイでも勝てない。デュエリスト2人が独りでエリアを確保しようとした結果、無意味な1vs1を繰り返したのだ。popogachiやmakibaはトレードの意識が非常に高いプレイヤーだが、スモークの焚かれたBサイトのように障害物が多い場所では、デュエリストとの良い距離感を確保するのが難しいのだろう。CRと戦うときは、この一瞬のスキを見逃さないようにしなければならない。ラウンド12ではそれを修正したような密集した攻めを見せたので、やはりCRの試合中の調整力には脱帽しかない。あと、nethの使用するルンバの周りにはいつもCypherはいないので、そのタイミングで別のどこかを詰めてトレード行うのはアリかもしれない。最低でもカメラやワイヤーを壊したり、そこのエリアに誰もいないという情報を獲得できるからである。

守りでも、CRはSGの一枚も二枚も上手だった。たとえばお互いフルラウンドで迎えたラウンド16、前半で見たような配置になってドロップからA設置をしたSGをうまくいなし、Aメインを詰めることを判断、popogachiにスタンを要求し、Viciをキル。そこからはエリアが少ないSGを一人ずつ倒していった。このように、片方が取られたら別のエリアを広げていくという守り方をSGができていれば、もっと良い試合が観れたのだろう。


Sengoku Gamingの戦術

SGの守りは思ったよりも受け身で、Fractureらしさを感じなかった。戦術はスタックしか無く、おそらくその原因はFiskerやnobitaが普段使わないエージェントを使っていたからだろうし、構成がそもそも違うからだろう。これまで勝利を重ねてきたのはCRと同じ構成だからであり、それが持つスムーズなエリア取りは守りでも機能する。メインリス挟みのようなモノを見せたが、それはまるでコンペティティブのようなsomethingのドライピークであり、スキルをガンガン使ってサブリスを挟むといった作戦も無かった。おそらくこの構成はプレイオフで使用しないだろうが、イニシエーターの理解度の低さをViciやsomethingがカバーしきれなくなる時がすぐにやってくるだろう。守りのViciは情報整理能力と判断スピードが他のプレイヤーのそれを凌駕しており、ほぼ独りの活躍でラウンドを取ったときもあった。彼はマップ全体を俯瞰できるイーグルアイのようなものを持っているのだろう。それを試合中にうまく言語化し他の選手に伝えることができれば、惜敗の試合を減らすことができるだろう。

まぁ、ほとんど消化試合のような気だるい試合展開をしていたSGは、おそらくどちらのマップにも隠している作戦があり、それをプレイオフで実行してくるだろう。今回のFractureのような不甲斐ない結果は、いつもの構成に戻した場合起こらない可能性が高い。IGZ戦が楽しみである。


まとめ

簡単にまとめるとこうなる。

  • CRが用意した作戦に対するSGの有効的な対策が無かった。


さいごに

ここまで読んでくれてありがとうございました。誤字脱字や文法ミス、データの間違いがあったらすぐに編集して訂正します。プレイオフはBO5?なので、おそらく今回分析したMAPが使用されることでしょう。私の優勝予想はCRですが、SZが勝つ可能性も25~33%くらいはあると思います。他のチームで言うと、NTHがオフラインの参加券を得ることを期待しています。個人的にSplit 2で優勝レベルの活躍をするだろうと期待しているチームの1つがNTHで、今回のプレイオフではMaufinさんの活躍が勝敗の鍵を握ると思っています。FL戦はリベンジマッチになるので(前回は0-2でボコボコに負けた)、非常に楽しみです。


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作成/編集: nolozy
文字数: 13,831字

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