金魚のトリートメントについて

極光金魚展です。いつもありがとうございます。

今日は弊社で行っている、金魚の管理、とくに温室への導入からお客様にお届けするまでの間に行っているトリートメントについて説明します。

ここで言うトリートメントとは、主に輸送のダメージやストレスに対して行う手あてという意味です。

よろしければご一読いただき、安心できる金魚の迎え入れに役立てていただければ幸いです。

●トリートメントを行う理由

金魚は生産者(市場)→卸問屋→小売店→飼育者という流通の過程で、多くの場合ビニール袋に入れて輸送されます。輸送とは航空機や車両です。輸送時間はその都度24時間~48時間程度でしょうか。パッキングされてから飼育水槽に放されるまでで考えると丸2日を超える場合もあると思います。
まあこれは自分の想像ですが、人間に当てはめて言うなら、疲れているんだろうな、と捉えています。
従って自分の温室では、金魚たちや、関わる方々のお仕事に深い感謝の気持ちを持って、旅路の疲れを労り、癒やし、元気になってもらって、また次の旅へと送り出す、という意味でトリートメントを行っています。

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では実際に金魚が弊社の温室に届いたときの作業をご説明します。あまり特殊なことはしていませんので、これからやってみる方は同じようにやっていただくと良いかもしれません。

●金魚を迎えいれる設備を整えます

・舟か水槽、金魚の大きさと個体数に対して余裕のある容器を使います。
・塩素中和済みの新水に、塩0.3~0.5%、にがり0.015~0.02%を溶かす。
・粘膜保護剤を規定量入れる(中和剤等の入っていないもの)
・細菌感染症用の薬品を規定量溶かす

濾過環境は、洗浄が簡易な濾過器(投げ込み、スポンジフィルター等)を使用しています。

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●金魚を水に放します

・水温を合わせる

大きめの金魚で、袋に入っている個体数が少ない場合は、金魚が入っている袋を飼育水槽に1時間ほど浮かし、水温を合わせた後、金魚だけを放します。袋の水は廃棄します。

・状況によって水質を合わせる

過密状態で袋に入っていたり、到着まで時間がかかっている金魚は、袋の水のpHが著しく低下していることがあるので、その場合はエアレーションができる別の容器を使い1時間ほどかけて、少しずつ袋の水と準備していた新水を混ぜ、金魚だけ飼育水槽に放します。混ぜ合わせた水は廃棄します。

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●薬浴と水換えについて

トリートメント時に薬浴をなぜするのかというと、疲れていればその分病気に罹りやすいのではないか、と思っているからです。

過密輸送は、皮膚のスレも起きやすくなります。見た目は元気でも、薬浴を行うことで、病気の原因を減らし、伝染を未然に防ぐことを期待しています。

・細菌性感染症対応薬での薬浴(用法に従って2回)

ヒレやからだが充血したり、ただれてぼろぼろになったりする病気を防ぐためです。

・寄生虫の駆除剤での薬浴(用法に従って2回)

表皮や、内臓器官に寄生し、水温の上下などがきっかけで活性化し、金魚を弱らせる小さな(目視できないものもいるらしいです)寄生虫をできるだけ減らすことが目的です。

・一度目の水換えをします

だいたい薬の効能が切れる頃に全量の水換えを行い、二度目の薬浴を開始します。二度目の薬浴時には、塩0.3%、にがり0.015%を加えます。

・二度目の水換えをします

薬の効能が切れる頃、全量の水換えを行います。魚の状態をみながらになりますが、この後は粘膜保護剤、塩、にがり、薬品類は入れません。大体ここまでで7~14日くらい経過しています。

その後の水換えは、状況を見ながらになりますが、平均すると夏期は週二回位、それ以外の時期は週一回位の頻度です。換える水の量は、これも状況次第ですが30~90%です。

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●給餌について

給餌はトリートメントを開始して2~3日目から行います。給餌初日は金魚の様子を見ながらごく少量。その後しっかりと与え始めます。日々与えているフードについては、以前の記事でこのように書いています。

フード自体は淡水魚の養殖現場で使われているものに、幾分味付けを施したもので、ほどほどによく食べること、大量に与えなくても痩せないこと、油膜が浮かないこと、バクテリアとの相性がよいと感じること、などが理由で使っているものです。全シーズンこれのみで管理しています。
バクテリアとの相性とは、水が臭くなりにくい、糞の形が水槽内にいつまでも残らない、投げ込みろ過器の目詰まりがしにくい、などです。

弊社の温室は夏は28度以上にならないように、冬は16度以下にならないように管理していますが、通年このフードを与えています。

一度目の水換えのあと、5~7日目にバクテリアをまぶしたフードを与えます。このあとバクテリアをまぶしたフードは週に1~2回のペースで与えていきます。バクテリアをまぶしたフード与える理由は、整腸作用と、濾過の促進を狙ってのことです。

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以上、こんな感じで概ね2週間、長くて1ヶ月程度かけてトリートメントを行い、それぞれ本来の調子を取り戻してもらいます。

できれば、以前よりも育ち、より元気になって、それぞれ新しいお家へと旅立って行って欲しいと願っています。これからの飼育者様との素晴らしい生活が待っていることでしょう。

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最後に、長い説明をお読みいただきありがとうございました。目が疲れましたよね。

以上の考え方や作業は、現在の知識や環境をもとに、最善でありたい気持ちで行っていることで、より良い、新たな方法を随時取り入れながら、日々更新していかなければならないと考えております。

これからも、色々と教えていただけると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。







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