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簡単なクランク機の作り方

クランク機が絶滅しそうなのでここに残す。僕が設計したところで、今の機体の焼き増しにしかならなそうだし。
「同じことをくりかえすくらいなら、死んでしまえ」
そう、岡本太郎も言っていた。

クランク機ってなにさ

クランク機にはスライダリンク、あるいは四節リンクが搭載されています。かわロボでよく見られるロッドやシールドも当然ながら上記のリンク機構を使っていますが、それらとの違いは、”無限回転するアーム”を、”複数層備えている”点です。つまり連続攻撃ができるってことですね。
機体には団体によって特色があったりしますが、SRDC製のものは大型でリーチが長めのものが多いです。
ここでは区別のために、二層のスライダリンク、あるいは四層の四節リンクを搭載したミドルレンジ以上の大型機を芝浦式クランク機と呼びます。

こんな感じの機体

小型でリーチの短いクランク機はいまでもたまに見かけますが、大型のものはめっきり見なくなったと思います。何なら現役の芝浦式クランク機は僕が作ったやつだけだし。区別する意味もない気がするので以降は単にクランク機と呼びます。ペンギンと同じだね。

貴方がクランク機を作る理由

珍しい機体

さっきも言った通り、今となっては使い手の少ない種類のアームです。今貴方が作れば、最強のクランク使いを名乗れるかも⁉︎

扱いやすい

メジャーなアームであるロッドやシールドは、アームの動く範囲に上下限があります。が、クランク機にはそれが有りません。ただ回し続ければ攻撃できます。
「迷えば、敗れる」一瞬の判断力が求められるバトルにおいて、脳のリソースを節約できるのは大きいと思います。僕はそれでもミスるけど

かっこいい

見りゃわかる。疑う余地もない。
なんかガチャガチャ動いていて楽しいし。

まあこの辺は「それってあなたのかんそうですよね」と言われてもしょうがない感じですね。正しいのは俺。

リンクの作り方

アームのリンクについて考える時、多分CADのスケッチ上に適当な線とか書いていると思います。その寸法のチョー簡単な決め方をお伝えします。

スライダリンク

  • 固定節長さa=50~70 [mm]

  • 中間節長さb=2a+30(クリアランス) [mm]

  • スライダ長さc=2a+5(余裕) [mm]

  • スライダ-駆動軸距離d=b-a-2.5(余裕) [mm]

  • 駆動軸高さh=a+60 [mm]

四節リンク

  • 駆動節長さa=50~70 [mm]

  • 中間節長さb=2a+40(クリアランス) [mm]

  • 揺動節長さc=a+20(リンク余裕) [mm]

  • 固定節長さd=b [mm]

  • 駆動軸高さh=a+60 [mm]

この通り、駆動節の長さを決めてしまえば残りも自動的に決まります。後は自分の都合に合わせてちょこっと調整すれば、もう設計は半分終わったと言っても過言ではないでしょう。もちろん適当に言っているわけではありません。この寸法の根拠を以下に述べる。

実質リーチを考えろ

アームのリーチと言われたときに、皆様が考えるのは、単に延長された中間節の長さだと思います。しかしながら、クランク機にとって大事なのはアーム軌跡の前後動の距離なのです。これを実際に攻撃に使用可能な範囲、実質リーチと言います。

アーム先端軌跡
Lsが実質リーチ

上の図にはアームの軌跡が描かれています。すでにお気づきでしょうが、一方のアームが攻撃を行っているとき、もう一方のアームが上から降りてこようとしているのです。つまり、上図Lsが小さすぎると、相手機体を上から殴ってしまい、ろくな攻撃ができなくなってしまうのです。この問題を解消するには駆動節を長くする他ありません。

駆動節に気を配れ

モーターからの動力を受け取り元気よく廻る駆動節。設計段階でこいつの動向に注意しないと泣きを見ることになります。

よくある干渉

上図のとおり、揺動節やスライダと干渉したり、底板を殴ったりしてまともに回らなくなります。
リンクの長さなどに余裕を持たせる駆動軸の回転中心の位置を調整するなどの対策が必要です。

余裕を持て

多分皆さん"リンク余裕"という単語を聞いたときがあると思います。四節リンクの死点だか思案点だかを回避する為のものです。ないとリンクが反転し、アームがあらぬ方向を向きます。

あとスライダも両端に余裕があると回りやすいです。


大体こんな感じの理由で上記の寸法を決めています。リンクの決め方がわかった所で他のところもみていきましょう。

その他の注意点

クランク機の製作はさながらサボテンの乱立する過酷な大地です。組み立てて実際に動かしてみたら突然生えてきたサボテンのとげに刺さって死ぬ…これからクランク機を作る貴方がそうならないための参考になればと思います。

カムは厚めに

アームのリンク同士の隙間は、設計上存在していても実際に動かすと容易く潰れます。

駆動節のカムと揺動節どうしの隙間(みづらい)

図のカムの厚さは6 mmです。この場合ですと、揺動節同士が衝突し上手く回りません。
調整すれば回る様にはなるんですが、カム厚さを8 mmにする方がより楽です。ポリスライダも忘れずに入れましょう。

なるべく7000番を使え

もしも節自体が曲がってしまったら、前述の問題はもっと起こりやすくなるはずです。どこかに硬くて軽くて曲がりにくい、うってつけの素材はないものか…
そこで使われるのが7000番こと超々ジュラルミン。超が2個ついてるのでチョー硬くて曲がりにくいです。惜しみなく使いましょう。切削加工が難しいとか言ってる場合ではありません。2000番はヤング率が同じな癖にすぐ曲がります。多分ガッツが足りてないんだと思う。

復帰機構は付けた方が良い

クランク機は攻撃用アームでの復帰が難しい機体です。もし相手の攻撃を受けてリング上でひっくり返っても、貴方はただ召されかけのセミめいてジタバタする事しか出来ず…そのままアスファルトに焼かれ…川崎の大地に屍を晒すことになる…貴方の夏はここで終わり…

そうならないためにも復帰機構は付けましょう。

復帰機構の例

四節リンクアームの場合は簡単で、揺動節を伸ばすだけです。
スライダアームの場合は動力を分岐させて適当なリンクを別に設けるのが良いでしょう。

ちなみに復帰を付けると、転倒スタートが楽にできる様になります。

復帰でスタート台を叩くことで素早く安定した入場が可能

ポリカ底板はやめておけ

機体のユニット構成
脚とアームが底板とシャフトでつながっているよ

図の様に脚ユニット間の連結シャフトがアームの揺動節軸を兼ねている場合、底板に変形しやすい素材を使用するのは危険です。底板がたわむことで固定節が変形し、駆動軸の位置関係が変わって反転してしまうからです。

駆動節と中間節が直線となり、死点に入っている

アルミかGFRPなどの変形しづらい素材を用いる、あるいは反転防止を儲けた上でリンク余裕を十二分に取ることが必要です。

モーターは3つで十分ですよ

3つもあれば相手を持ち上げるのに十分なトルクが出せます。(減速比100,アーム長さ350の場合)
相手を弾き飛ばしたい、長いアームを使いたいって場合は4つ積んでもいいかも知れません。コンセプトや重量と相談して下さい。
ちな3つだとQuicrun1060で動きます。実際安い。

未来へ…

ここまで読んだ貴方はこう思うかも知れません。
「でもお前大した戦績ないじゃん!クランク機はザコ!!!」「3機体しか作ってないくせにわかったような口をきくな!」落ち着いて欲しい。落ち着いて想像してみて下さい。

大会会場…振興会館…KHKの食堂…あるいは何処かの大学の一室…貴方はトロフィーや賞状を手にしている。その側わらにはクランク機(他ならぬ貴方自身の手で作り上げた機体だ)がある。それが貴方の未来の姿です。Towards The Future…

おわり

今頃貴方は溢れるインスピレイションに耐えられず、PCを起動しCADソフトを立ち上げていると思います。ここに書いてあることを参考にしても、全くしなくても構いません。是非、クランク機の新たな可能性を見せてください。

以上です。

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