田舎の弱小中学陸上部が市内一位を取った話 ー⑤戦略編ー

どうも、ナカです。

田舎の弱小中学校陸上部を構成する愉快な仲間たちは、キャプテンTの過酷だが愛情と目新しさに溢れる日替わりトレーニングで、メキメキと力を付けて付けていった。が、それくらいで市内を制することが出来るのだろうか?

ここで当時の陸上市内大会のルールを確認しておこう!

短距離の100m走から長距離に3000m、さらには跳躍・投てきといったトラック種目など、様々な種目があるが、各1位~6位入賞を取った人までが順にポイントを与えられる。

・100m走にて1位の学生→6ポイント
・2位の学生→5ポイント
・・・
・6位の学生→1ポイント
・200m走での1位→6ポイント
・・・

と、こんな具合だ。

そして、各学生の合計獲得ポイントが最も多かった中学校が、晴れて市内1位のカップを手にする。(順位は、男女それぞれで決まる)
また、学生は一人当たり2種目までしか参加出来ないことになっていた。

このルールを見てみると、合計獲得ポイントで順位が決まるので、平均的に見れば、学生数の多い学校が大変有利な仕組みである。

当時、最強の名を欲しいままにしていたのは、市内唯一、公立中学校でありながら受験の有ったある附属中学校であり、
その最強附属中学校には、とんでもないバケモノがゴロゴロ在籍していたのだ。

例えば、砲丸投げ種目では、大体の学生が9mくらいの記録で
「ふぅ、やれやれ。今日も麦茶が旨いなぁ。」
とか言ってたものが、最強中学校・O君はバヒューンと13mくらい軽々投げ飛ばす。
同じ中学校の友人から「ゴリ」と呼ばれていたが、そんな生やさしいものではない。『ゴォリィ』と呼びたくレベルだった。

実はそのとんでもない記録を叩き出すバケモノの彼らは、サッカーのジュニアユースチームに所属している面々であった。
そういった校外のチームに加入していると、その中学校のサッカー部には所属できないため
「まぁ、どこでも良いけど走る繋がりで陸上部に所属しとくか」
みたいな感じで、サッカーチームの予定とバッティングしない時には陸上部の練習・大会に参加する、という立ち位置だった。
通常はサッカーで日々厳しい鍛練を続ける、身体能力の塊みたいなメンバーだったんだ。

「なんで他の中学校のそんな込み入った事情を一介の中学生のオマエが知ってるんだ?」
そんな声が聞こえてきそうだが、そこは英数国理社・5教科497点のナカ少年の諜報力の賜物・・・と答えておこう。

また、最強中学校の、中距離走がとんでもなく速い別のO君は、ナカ少年のゲートボールの師匠のお孫さんであった。

「なんで他の中学校のそんな込み入った事情を一介の中学生のオマエが知ってるんだ?ちゅうか、ゲートボールって何だよ。」
そんな声が聞こえてきそうだが、5教科497点の・・・しつこいので以下略。

そんな最強中学校を相手にして、S中学校のキャプテンTと愉快な仲間達は途方に暮れていた。

「やっぱり最強中学校のアイツもコイツも速いなー」
「N中のキャプテンのM君も安定して速いね」
「島で人数も少ないのに、S中のW兄弟もスタミナ無尽蔵だよね」

ボクらは大会が終わった後に各中学校に配られる記録集をいつも熟読しており、各々が勝手に「コイツが俺のライバルだ!」と決めてかかっていた。

そんな中、誰かがこう呟いた。
『この競技3人しか出場してないねー。どんなにショボくても4位に入れて、3ポイントゲットだねー。』

皆『ほぅ・・・。』

確かに 競技によっては大変出場者数が少ないものもある。特に三種競技という種目は数えるほどしか学生が出場してない。
三種競技とはA(100m走・走り高跳び・砲丸投げ)、B(400m走・走り幅跳び・砲丸投げ)の2種類が有ったが、いずれの競技も、一人で走・跳・投の3種目を行い、それぞれの記録を点数化した上で、その合計得点によって順位の決まる、オールラウンド力が求められる競技だ。
この競技に出るのは、様々な種目の練習をしてキチンと準備をしてきたヤル気満点の選手くらいのようだ。

確かに、大会の様子を振り返ってみてもそうだ。
陸上なんて、大体が個人競技であるから、自らが手を抜いても、誰に迷惑が掛かるわけでもない。
多くのヤル気の乏しい学生たちが
「まぁ、何かの種目に出場しとかないとな。すぐに終わる短距離走にしとこ。」
そう考えたのか、やたらと100m・200mの出場者数が多かった。

そして、短距離走の予選を終えると
「はぁー、自分の競技終わった。コンビニでも行こ!」
と 、後は自由気ままに過ごしていたのではないかと思う。何を隠そう、ナカ少年自身が、ヤンチャ先輩の居た時代には、大会で市内中心地に行くと、喜びに胸を膨らませてコンビニに抜け出していたのだから。
最悪、市内中心部の学生たちは、早々に帰宅していたかもしれない。開会式に比べて、閉会式の人数が少な過ぎだ。

ヨシ!これで戦略は決まった。
テクニックもヤル気も必要で出場者数の少ないマイナー競技にこぞって出場し、1位は取れなかろうが、人知れずポイントを稼いでいくんだ!

「それだと、得意種目以外もしっかり練習しとかなければいけないじゃないか」だって?
大丈夫。
キャプテンTが日替わりで、誰かれ構わず皆で色んな競技を練習するから、いつの間にか経験値は貯まっているんだ!

キャプテンTの日替わり面白トレーニングと、他の中学校の研究生活が始まってから、早くも1年。
中学三年生最後の大会を迎える・・・。

次回、⑥大会編に続く。

ー完ー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?