throwcurveサブスクリプション解禁によせて・ 序文

お待たせしすぎました。
いや別にお待たせしてなかったかもしれません。


自分が、2001年から2011年にかけてギター&ボーカルを務めていたバンド・throwcurve(スロウカーヴ)。
10年間で発表した楽曲の大半は未配信状態だったが、このたびCDデビュー20周年という節目を迎え、ようやくサブスクリプション配信を始めるに至った。

これまでも、ここぞ!という配信すべきタイミングは何度もあった。ありがたいことに配信や再販を希望するお声もたびたび届いていた。にもかかわらず見逃し三振を繰り返し、機を逸していたこと、お待ちくださった方々には申し訳なく思う。全ては自分自身のあまりにも怠惰な人間性に起因している。

この世の中にいるほとんどの人は素通りしていく音楽だと思うが、たまに異様に立ち止まってガン見してくる人がいる。そしてなかなかその人たちが立ち去ろうとしてくれない。throwcurveは、そんな幸せなバンドだとつくづく思う。

そして自分にとっては、まさしく20代という時間を全振りして身を投じた、人生そのものであった。
2011年の活動凍結から10余年が経ち、人並みに紆余やら曲折やらも経て、それなりに年齢を自覚するようにもなったここ最近。昨日何を食べたかもパッと思い出せないし、あんなに好きなはずのバンドのメンバーの名前も忘れるし、何なら5分前に誰にどんな内容のメールを送ったかも思い出せない。
そう、順調に老いてきている。

それでも、あの頃のことはどうしても頭から消えることがない。
初ライヴは2001年2月12日の渋谷DeSeO、1バンド目。初自主企画は2002年12月2日、下北沢CLUB251『ミライ・ポップ・フェスティヴァル#01』。デビューCDはタワーレコード限定シングル『前未来』で2003年4月2日発売、ただし渋谷店のみ3月27日先行発売・・・みたいなメモリーは今でもそらで出てくるし、恐らく死ぬ間際に聞かれても即答できるだろう。

それらに紐づいた思い出が、エピソードが、そして音が、いつか緩やかに記憶の海溝に埋もれていってしまう前にアーカイブできるとしたら、今が一番その気力も、手段も、環境も整っている状態かもしれない。そんなふうに考えたのが、今回のアーカイブプロジェクトの出発点だった。

やりたかったことは、大きく分けて3つ。
まずひとつめは、とにもかくにも全タイトルのサブスクリプション配信を行って、音楽を誰でも当たり前に聴ける状態にすること。

ふたつめは、20代の自分たちが残したそれらの音楽について、40代の正直な感覚で振り返り、今の率直な言葉で語ってみるということ。それがこのnoteにあたる。

みっつめは、当時の表現を、今の自分なりの感性で再解釈すること。
これはいろいろなやり方が考えられるが、さしあたってまずは今現在グラフィックデザインに携わることが多い自分が「もし当時のthrowcurveからグッズデザインの依頼をされたら?」という観点で、新たなバンドグッズを作ってみることにした。これはSUZURIを利用して、本日から販売を開始している。


このデザインについての話は本稿では省くが、やってみると楽しかったし、まだ温めているネタもあるのでゆるく続けていきたい。

とまあ、はじめはそんなごくごく個人的な動機から始めたプロジェクトであったが、準備を進めるうちに10数年間で欠落していた時間、記憶、そして感情が思いもよらないほど埋まりはじめ、なんだか今は正直ここからどこへ向かっていくのか自分でもよく分からない心持ちでこれを書いている。

とはいえ、一旦筆を進めたい。

今回サブスク配信を解禁したのは、OWL WORKSというインディーズレーベルに所属していた約5年強の時期にリリースしたCD作品7タイトル。
加えてそれより以前、コヤマ加入前に初めてスタジオレコーディングした自主制作音源『OVERUSED』。さらに今回の配信にあたって、公式作品としてリリースできていなかった楽曲や陽の目を見ることのなかったデモ音源の供養を兼ねて、できるかぎりの秘蔵音源をかき集めて1枚にまとめたレア・トラック・アルバム『DEEP CUT IN THE DUGOUT 2006-2010』。合計9作品・全70曲である。

まずはこれら1曲1曲に関して、思い出せるかぎりの事柄をセルフ・ライナーノーツといった趣きで、このnoteにしたためていこうと思っている。
それは、今回配信した楽曲たちの副読本的にお読みいただけるものであると同時に、あの頃の下北らへんのバンドシーンの温度感を、ちょっとだけ感じてもらえるようなテキストとして機能するかもしれない。
そんな淡い期待もちょっとだけ込めつつ、久しぶりにごくパーソナルな文章をつらつら書き連ねていきたいと思うので、もしよければ音楽とあわせて気長にお楽しみください。


※なお、ナカムラの主観で綴る以上、公平性に欠ける部分や事実誤認、記憶のすり替えが100%ないとは言い切れない(極力ないように務めたいが)。そこらへん、若干の脚色も含めて“これが最高のフィクションってやつね”と思ってご容赦いただきたい。
また特定個人に言及する部分ではとくに表現に細心の注意を払うつもりだが、こちらも万が一何らかの問題が生じた場合は一目散に訂正していきます。
(お気づきの点があればコメント等で教えてください)
それ以外にも加筆修正は随時行う可能性があります。

『DEEP CUT IN THE DUGOUT 2006-2010』
セルフライナーノーツ(前編)に続く
https://note.com/nkmrryx/n/na58b2b1fd3dc


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