野中郁次郎氏の講演を拝聴した

どこで?

放送大学の特別講演で。先日のRSGTで繋がった方からのシェアで知った。感謝。
『ソフトウェア開発手法がビジネスを変革する時代 -アジャイルとスクラム-』というお題の講演であった。

講演会の概要
1)講演「DX(デジタル変革)の潮流とアジャイル開発」: 平鍋健児氏
2)講演「Humanizing Innovation」: 野中郁次郎氏
3)野中郁次郎氏と平鍋健児氏による対談
「変革の時代に我々は何を学ぶべきか」: モデレータ 中谷多哉子氏(放送大学教授)

日時と場所
2020/2/2 大手町サンケイプラザにて

※ 前半の平鍋健児氏の講演もリズミカルで素晴らしいプレゼンだったが、今回は刺激的すぎる野中先生の講義に絞ってまとめておく。勉強不足でまったく球を拾い切れてないので、この後著書を読み込んで補完していきたい。
※ 中谷多哉子氏交えた対談も短い時間ながらツボを外さないストーリーでメモで溢れました。この場を設けられた放送大学に感謝。

野中郁次郎氏をどれくらい知ってた?

「失敗の本質」の著者のお一人である、という事くらいの殆ど知らないと言って良いレベル。しかもその本もまだ読めてない。残念な受講者でごめんなさい。

そんなレベルなので今日のお題でなぜ野中先生が?と思ったが、アジャイル本も書いておられるのですね。というか、Scrumの提唱者ジェフ・サザーランドの考えのベースに野中郁次郎氏の論文があったと。

アジャイルなソフトウェア開発手法としてもっとも広く使われているのが「スクラム」です。このスクラムは、1990年代半ばにジェフ・サザーランド(Jeff Sutherland)氏らによって提唱されたものですが、その考え方の基盤となったのが1986年に一橋大学の野中郁次郎氏と竹内弘高氏が日本企業のベストプラクティスについて研究し、ハーバードビジネスレビュー誌に掲載された論文「The New New Product Development Game」でした。

そうだったのね... ビギナーの無知をお許しください...

何を聞いた?

お題「Humanizing Innovation. 知的機動力経営」
上に書いた通り今日が初見ゆえ、氏の語る言葉の断片を部分的にメモるだけで精一杯。まだ文字として捉えたにすぎず理解には程遠い。帰り途中に山口一郎氏との共著「直観の経営 共感の哲学で読み解く動態経営論」を買い読み始めたので、
それを読みすすめて全容のまとめ記事を改めて書きたい。

言い訳みたいな話で長くなったが、今日はメモの内容をほぼそのままに転載する。

・昨今の日本「オーバーアナリシス(過剰分析)」「オーバープランニング(過剰計画)」「オーバーコンプライアンス(過剰規制)」。借り物モデルの経営ごっこ。PDCAではなく、PdCa(計画のための絵空事、計画95%実行5%、チェックに次ぐチェックのマイクロマネジメント、問題の先送り)。
・現代:身体性の復讐、人間の心、身体に根差し共感を得る。ミラーニューロン、身体化された心、GRIT(やり抜く力)、マイクロソフトのAIフィロソフィ「他者に共感する力を持つ人間こそ」。
・知ることのコミットメント。信念、理念、主観と客観、アートとサイエンスのバランスをもった知識観。本田宗一郎の共感と対話。最初に共感、メンバー目線。知的コンバット
・SECIモデル。共同化→表出化→連結化→内面化 のサイクル。PDCAは計画ありきなのに対し、SECIモデルは体験から始める。体験して共感するところから。個人の暗黙知を表出化し概念化する。それを理論として体系化することで形式知とする。それをまた個人が取り込んで実践して知見を獲得する。マネジメントは集合知。共感ありき。
・相互主観性。我を忘れて物事にかかわる、無我、無心の境地。実践例:エーザイ、京セラ、マイクロソフト。エーザイでは全社員が1%の時間(年間2.5日)を患者と過ごす。京セラのコンパ経営。
メモが不十分なので、著書から少し引用↓

対面でともに作り上げる二人称の相互主観があってこそ、自らを自覚する一人称の主観が生まれます。さらに、二人称の相互主観を媒介にして、より大きな組織や社会レベルでの三人称の客観を構築できるのです。無私の態度で臨む全人的な対話を通じて、言葉では必ずしも表せない深い部分における自他の感覚の共通点と違いを実感することも可能になり、そこから深い意味や価値が生まれてきます。(「直感の経営」p.229 より)

・クリエイティブペア。アップルやマイクロソフト、hpだけでなく、そもそも昔の日本の企業で多くみられる。SONY、トヨタ、ホンダ等。異質な者同士のカップリングがイノベーション。
・The New New Product Development Game で定義したスクラムという言葉の意味。プロダクト開発の形式をリレー、サシミ、スクラムと表記したが、スクラムが当たった。Scrumは極めて重要なメタファー。無限にベターを追求する。マイケルポーターの競争戦略はきれいだが、変化の激しい現代においては静的に整理して分析することは困難。動的な観察が求められる。
・直感の経営。脳は身体が感じてからコンマ5秒の遅れ。現象学的時間、幅のある時間。
・ナラティブアプローチ。プロット(物語)とスクリプト(指針)。ベンジャミンフランクリンの十三徳。トヨタがこの前、初めて行動指針を見直した。
・二項対立から二項動態の経営へ。暗黙知と形式知、感性と知性、アナログとデジタル。双方を両立させ全体と調和し、現実の問題と全人的に向き合う。仲間と共に切磋琢磨。
・つまるところ、知的体育会系(笑)。冷静な頭脳と温かい心が抽象的理論と個人的感情の両極間の動的中庸を実践する。共通善に向けたよりよい無限改善。

対談メモ

・ITの知識を持つ経営者が日本にまだまだ少ない現状。いわゆる説明コスト高すぎというやつ
・リベラルアーツ(教養)がベースにないと、説明のプロになりにくいのではないか?技術者における技術以外の教養の必要性が今後ますます求められる。
・意味付け、価値づけ = クオリア。直感を徹底的に感じて、何が生き生きとした意味を持つのか考える。それをベースとしてサイエンティフィック、数学的に数値化できること。
・エンジニアはITが社会をかえる力持っていると信じている。それの意味づけを仲間とともにしてほしい。学問領域の接近が起きつつある。
・Scrum、知を身体化。まず尊敬、共感。相手のリズムに乗る。無心の境地。
・アジャイルの凄さは、毎日会い、指摘し合い、調整し、やり抜くこと。
・ウォーターフォールはみなくたばる。奴隷船。
・生き方が出ない戦略は無意味。虚しい。数値経営が強まると意味付けが偏る。後から意味をみいだす。生き生きしていない。
・理想のPOは本田宗一郎と言えるかもしれない。
・ソフトウェアエンジニアはアーティスト。腹にくる(届く)言葉を徹底的に言語化してほしい。人間は経験と好意で一体になり得る。たえずリスペクトしながら、切磋琢磨していってほしい。
※拙いメモからの転載ゆえ、誤った認識が多少あると思われます。

講演を聞いて、これからどうする?

断片的な理解であったが、マネジメント数年&Scrumビギナーとして非常に興味深い話だった。まずは、「直観の経営 共感の哲学で読み解く動態経営論」を読み解き、もう少し体系的に今日の話を理解できるようになりたい。

余談(主催者的には本題)

そもそも、今日の講演会は放送大学 情報コースのPR的位置付けもあって開催されたと理解している。放送大学ではITCを広く学べる情報コースがあり、今後、データサイエンスの科目が新設されるらしい。科目単位で入学できるようなので、まずは1つ学んでみてはいかがでしょう、という事でした。結構興味あり。

おしまい。

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