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格差とか学歴とかの話

私が小学生だったころ、その通っていた小学校はニュータウンの端っこ、開発されたばかりの地域にあった。しばらく過ごすと、クラスメイトは大きく3つに分かれることに気づいた。1.戸建てに住んでいる、2.マンションに住んでいる、3.公営の賃貸住宅に住んでいる。ニュータウンの中にはそういう3つのエリアがあったのだ。

中学生になると、1のやつの結構な割合は私立の中高一貫に行ってしまった。彼らとはそれきりだ。私はまあ、公立の中学では頭のいい連中に分類されていたけれど、不良ぶって粋がる連中とも仲が良くて(新興住宅地なので不良ぶっていてもかわいいもんなので)、家に遊びに行くこともあった。彼らはだいたい3で、しばしば両親のいずれかがいなかった。

高校にもなると、クラスメイトは全員「小中では天才と言われていた」連中だった。もう分かるよな、こういう感じで学校上がるごとに篩にかけられていってるんだ。小学校から私立だったような連中とはそもそも会えてすらいないんだ。そしていい学校に行ける連中というのは経済状況とリンクしていて、それが住む住宅に現れていたってわけだ。

私は他県の大学に行って…というのも私の親は「大学生になったら親元を離れるべき」という方針だったからなんだけど…それなりに学業をやっていた。大学まで行けば私は大して頭のいいやつではないんだけど、ある時友人の成績が…出欠が悪いことに気づいた。彼はバイトに忙しかったのだ。

私はといえば十分な仕送りがされていたので、バイトは休みの間社会経験としてやるものだった。彼にとってはそれは生活の糧だった。私には日中の授業の後、図書館に篭ったり趣味をやる時間があった。彼には無かった。

大学の研究室は楽しいところだったが、私の印象に残っているのはある先輩が栄養失調で倒れた事件だ。彼は奨学金を…どこかの月で受け取り忘れたかなんかで…一月を豆腐とアボカドで過ごそうと試み、栄養失調で倒れた。机の上には援助物資が山と積まれた。うん、そう、私は奨学金をもらう必要はなかったので、仕組みには詳しくない。

大学院はお金のあるところだった。知っているだろうか、理系の大学院ともなると、研究室の消費する金額は莫大なもので、学生の払う学費などでは電気代にもならない。なので研究室を支えるのは公的な競争的資金、そして共同研究を行ったりする企業からの資金だ。

そこで、私が博士過程に行くころ、博士の学費は免除しようという話が持ち上がった。どうせ大した足しにはなっていないのだから、大学がそれを出して無料にすれば、頭のいい学生がどんどん来るんじゃない?いい話に思えたが、他の大学が黙ってはいなかった。君のところは元々優秀な学生が来る=競争的資金があるし学振(優秀なやつは学費どころか給料が出るしくみ)を取っている学生も多い、だからこそそういう施策が取れる。そうするとさらに優秀な学生が集中するので…他の大学は学生も減るし競争的資金も減る負のスパイラルに陥りかねない。なんだかんだで半額免除に落ち着いた、と思う。今はどうなってるのか知らない。

教育や研究に公的資金を出すのは大切だよな、私もそう思う。でも例えば大学院の学費を無料にしたり、成績優秀者は無料にしたりしたとしよう。そこにたどり着けるのは、初等教育の頃から私塾に通わせたり、大学に通わせる学費や生活費があったり、つまり教育資金に余裕がある家庭の子供だ。そしてその原資が税金であるならば…お金の流れとしては全体から徴収した金を金持ちの子供に流すことになり…格差の固定化を助長する。だから、これだけではダメってことだね。

さて、私のいた分野は大学の頃は男女半々くらいだった。どっかのウンコ医大みたいなことはする必要がないのだ、自然科学ではね。でもなんとなく、大学院(修士)、博士と上がるに連れて、男性の方が多くなっていった気がする。

おそらくは入試で差別が無くとも、学費を払い続けるかという点で、世の両親が男女にかける期待には差があったんじゃないかと思う。あるいは、女性の方が頭が良かったのだ…彼女達は僕らボンクラ博士どもとは違い、しっかりと学歴による年収格差と性別による年収格差のデータを比較し、ここらが降りどきだと分かっていたのかもしれない。博士余りに気づいたのかも。

こういうのはクソなんだ。離婚して家計が苦しくなり将来が見えなくなった中学生がグレたり、金のない大学生がバイトして成績を落としたり、優秀な女性が博士をとっても結局女性の方が平均年収が低いからと諦めたりするのは、クソなんだよ。

このクソはきっとそこかしこにある。ニュータウンだったから1と2と3の子供は同じ小学校に通っていたけど、もっと地価の高い地域はどうなっていたんだろうか。小中と天才だった連中が集まるような高校など都会にしか無いんじゃないのか。ガラスの天井どころか、不透明で他の階があることにすら気付いていないんだろうな、私たちはおそらく。

そりゃあ人には向き不向きがあってさ、何回教えても微積分が分からない人はいるだろうさ。でもその資質以外で、経済力とか性別とかで、機会を奪われ、天井を決められるのは我慢がならねえよな。センタ試験やウンコ医大のニュースを見ながらそんなことを考えていた。


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