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アニメの話「人工少女の系譜」~「綾波系」はいつから存在したか?~

さて、アニメの話をしましょう。保険の話なんてつまんないしね。

私が中学生ぐらいの時、サブカルチャー…ひらたく言えばオタク業界では一つの重大事件が起こりました。そう、1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』(以下『エヴァ』)の大ブームです。生物的に描かれる巨大ロボット、リアル(?)な兵器描写、フェティッシュなプラグスーツ、性描写を含むドロドロした人間関係と、まさに世紀末的作品で、その後のオタク業界に与えた影響ははかりしれません。

エヴァは様々な魅力を持った作品ですが、その中でもキャラクターの魅力が大きなウェイトを占めていたのは間違いないでしょう。特にメインキャラクターの一人、綾波レイの人気は凄まじく、その後の作品に多くの模倣を生み出し、今日においてもオタクにとっての一つのアイコン、偶像になっていると言えるでしょう。今日はそんな綾波レイとその系譜について語って行きます!

綾波レイとは?

まあ説明はいらない気もしますが、綾波レイ(以下綾波)とは『エヴァ』に登場したキャラクターです。主人公、碇シンジの母親のクローンであり(なんて設定だ…)、特徴的な青い髪に、スレンダーで非常に整った容姿をしており(作画が悪い回はちょっとブサイク)、常にクールというか、無表情で無感情に見える言動をとる人物です。

綾波レイ(1995年、TV版)

現実に居たら、「なんだコイツ、病気かな?」って感じのキャラなのは間違いないのですが、このダウナーで人工的な感じの美少女は、当時のオタクたちにもう…控えめに言って、もの凄くクリティカルヒットしました。当然の結果として、綾波は絵や小説の二次創作、同人誌、フィギュア等… ありとあらゆるコンテンツで受容されました。現在ですらその展開は続いているので、やはりもう単に人気というより、オタクにとっての一つの偶像と言うほかないでしょう。

「綾波系」〜綾波レイの系譜〜

綾波がそこまで人気なら、製作者サイドもその流れに乗るしかないと判断するのは当然です。事実、その後の作品には「綾波系」とでもいうべき多くのフォロワーが生まれました。

ホシノ・ルリ(1996年『機動戦艦ナデシコ』)

1996年に放送が始まった『機動戦艦ナデシコ』のホシノ・ルリは無表情でクールな態度、薄く紫がかった髪、人工授精で生まれたデザイナーズベイビーという設定と、まさに綾波の直系の子孫と言えるでしょう。

ラムダ(1998年『ラングリッサーV』)

1998年に発売されたセガサターンソフト、『ラングリッサーV』のラムダも綾波の存在なしでは生まれなかったでしょう。紫の髪、やはりクールな態度、研究所で生まれた実験体という設定も綾波の影響を感じさせます。体にフィットしたスーツも、エヴァのプラグスーツの影響が見て取れます。

長門有希(2006年『涼宮ハルヒの憂鬱』アニメ版、原作小説は2003年)

「綾波系」と言えば2003年のライトノベル、『涼宮ハルヒの憂鬱』の長門有希も外せないでしょう。やはり無表情で無感情に見える態度、濃い紫の髪、宇宙から来たアンドロイドという設定。2006年のアニメ化において、そのイメージと言動が視覚化され、「綾波系」として強化されたことも特筆すべきでしょう。

完全な余談ですが、私は綾波って正直あんま好きになれなかったんですが、この長門というキャラはとても好きです!自分でも理由はよくわかんないんですが、やはり人間とは複雑な生き物なんだなって。

…まあ、私の趣味はともかく!これらの「綾波系」には共通する要素があります。まず「寒冷色の髪」、そして「無表情、無感情」、最後に「出自の特殊性」です。「寒冷色の髪」というのは現実の人間では存在しえないので、人工物を想起させるよう、視覚的に訴えかけるためでしょう。「無表情、無感情」というのは髪色と同じく人工的なイメージを強化するのと同時に、「そういう感情が無いように見えるキャラが、たまに感情を見せる」という演出のためでもあります。

綾波が笑うシーン(上からTV版、旧劇場版、新劇場版)

こういう演出にオタクは弱く、すぐコロっと落とされてしまうのです。事実、綾波の人気は圧倒的ですし、ホシノ・ルリも長門有希もそれぞれの作品のメインヒロインをはるかにしのぐほどの人気があります(ラムダはマイナーな作品なので割愛)。最後に「出自の特殊性」はミステリアスな印象を与えるとともに、髪色や性格、特殊な能力などの要素に説得力を持たせるためでしょう。

もちろん今挙げた以外にも、「綾波系」とか「綾波レイの影響だ」と言われるキャラクターは大量にいます。じゃあ、綾波が人工的なイメージを押し出した少女キャラ、「人工少女」の始祖なのか?綾波より以前にはこういった特徴を持ったキャラっていなかったのか? って思いません? それが居るんです!

カチュアを忘れるな!

1984年に放送された『銀河漂流バイファム』には、カチュア・ピアスンというキャラクターが登場します。このカチュアという少女は、寒冷色の髪、落ち着いた態度、実は地球人ではないという設定など、後の「綾波系」を思わせる要素を備えています。

カチュア・ピアスン(1984年『銀河漂流バイファム』)

時代性もあってユーモラスなシーンも多いため、綾波ほど暗さは感じさせませんが、個々の特徴は非常に類似しています。っていうか綾波が凄くカチュアの影響を受けてると思うんですが、どうでしょう?

プルツー(1986年『機動戦士ガンダムZZ』)

他にも「人工少女」という要素に視点を向ければ、1986年放送の『機動戦士ガンダムZZ』に登場した、クローンの強化人間であるプルシリーズなどもありますが、監督である富野由悠季の描く強化人間というのは非常に感情的…というかヒステリックで、とても「綾波系」とは馴染みません。やはりカチュアこそ綾波の先祖でしょう。となると、「綾波系」ではなく「カチュア系」と呼ぶべきなのかな?うーん、どうなんだろう?

まとめ

後の作品に非常に大きな影響を与えた綾波にも、カチュアという先祖がいることは確かです。しかし、カチュアが登場した後、その特徴を受け継いだフォロワーが目に見えて増えたわけではありません。やはり、爆発的に人気が出て大量のフォロワーを生み出した綾波をもって、「綾波系」と呼ぶほかないでしょう。

ただ、他人の話に余計なツッコミを入れるのが好きな人(私とか)は、綾波やそのフォロワーのキャラの話題が出たら、「もっと昔にも似たようなキャラが~」ってツッコミを入れるためにもカチャアを忘れないようにしましょう!ちなみに『銀河漂流バイファム』は名作です!カチュアも可愛いし是非見ましょう!

本日のアニメ話でした!


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