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介護の質を優先

 施設にはいると母が明言した時、すでに手は打ってありました。私がどうしても一ヶ月ほど東京に帰らなければならない用事があり、その間の母の世話をどうするか困り果てていたのです。
 ショートステイの期間は2週間。それでは足りません。入院させるかとも迷いました。でも入院なんかしたらベッドに寝かされきりになって歩けなくなってしまう。譫妄もおきるだろうし、認知症がすすんでボケてしまうかもしれない。そんなことにはしたくない。入院なんか、させたくない。
 私の知恵ではどうにも手の打ちようがない。困り果ててケアマネさんに相談。ロングショートステイというシステムがあると教えられました。それであれば問題なく1ヵ月でも2ヶ月でも預かってもらうのが可能。そしてたまたま、最近はじまったばかりの新しいデイサービス施設で、その受け入れをしている。ケアマネさん一押しの施設です。
 さっそく見に行きました。母の状態が安定していたので、夫婦で出かけることが出来ました。
 一目で私は気に入りました。明るいのです。年寄りが集まると暗いオーラが漂いますが、暗さがまったくなくてイキイキとした活気があります。スタッフさんたちがキビキビして明るいのです。
 問題はデイサービスのお泊りですから、個室がないこと。昼間の活動の場を夜になるとパーティションで仕切ってそこを寝室にするらしい。
 私は日中の明るさを考えたらそれでもいいと思いましたが、夫は反対。
「お母さんは自分だけの時間をもちたい人だと思うんだ。常に誰かがいるのは苦痛だと思う。個室のあるところにした方がいいんじゃないの」
夫はそう言いますが、私は反対でした。父のケースで個室の無意味さを体験済みです。
 父は最後の一か月余りを個室で過ごしました。シャンデリアがあり本物の絵画が飾られ、ヨーロッパの輸入家具が設置された施設でした。
 見た目の豪華さにまどわされて契約したのが失敗でした。父は意識もしっかりしていて補助してもらえば歩いてトイレに行けるのですが「手が足りないからオムツにさせてもらいます」と言われて寝かされっぱなし。便が出ても「オムツ交換の時間まで待ってください」と放置。
 病院併設施設なので、医者がいる安心感もあるせいか、人気の施設です。でも介護の質は最悪でした。
 元気であれば個室で過ごす時間は大切ですが、動けなくなった人にとって個室は放置と同じ意味。刺激も皆無です。それを思うと、個室がなくても明るい活気のある方がいい。
 そう判断して契約しました。予定ではもっと先のはずでしたが、ケアマネさんに確認してもらったところ即座に入居可能とのこと。
 もしも母が適応できなくて、どうしても家に帰ると主張したら、引き取ることもできる。そう考えて入居を早めることにしました。

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