『つくる』と『私』のちょうどよいカンケイ
何かしら、よく手作業をしている。
手を動かしていると集中しているうちに、気分がなめらかになる。
何もかも聞こえているようで、そのじつ何も聞こえていない。
そんな時間がたまらなく好きだ。
私は消しゴムはんこを作っている。
去年か一昨年くらいから腹を決めて「消しゴムはんこ作家」を名乗っているが、それで生活を支えられるほどには、腕も名も上がってはいない。
けれど、「小さい挑戦から粛々と」がモットーなので、過度に焦ることもなく(おろおろする時はあるけども)、日々を過ごしている。
「過度な焦り」が続く時期はあった。
その時、私はメンタルを病みに病んでいて、自分を否定することが、すべての考えの基礎になっていた。
それを踏まえて、私のここ10年くらいの変遷をなぞりたいと思う。
◆◆◆
はんこと出会うもう少し前、思い立って石粉粘土でのフィギュア作りに挑戦していた。
そもそもは20代の時に友人の彼女さんに「フィギュアが欲しければスカルピーこねろよ! 自分で作れよ!!」と怒られた時のいらだちがあって、その火種がずっと燻っていたのだった。
(当時フィギュアを3万円分くらい買って帰ったのは友人の方であって、私は何も買っていなかった。フィギュアの話はしていたけども。わりと巻き込まれ事故)
中学の美術の授業で粘土人形を作ったのが楽しかった記憶もあったので、
「いつか絶対、フィギュアを作ってやる……!」
と、私は煽られたことに対して怒りにも似た創作意欲を、長年抱いていた。
けれどそこから10年は経過して、
ゴタゴタしたのち7年間新人賞に投稿していたBL小説を、書くのをやめた。
そして2012年に、私はフィギュアを作り始めた。
スカルピーは少し取り扱いが難しそう(乾燥用のトースターを買う必要があった)なので、自然乾燥できる石粉粘土を使って、フィギュア作りの参考書をまねた。
作っていたのは、アニメ「TIGER &BUNNY」の虎徹さん。
参考にできる画像がネット上に多いのと、実際フィギュアが出ているので、例えば「ズボンのしわはこの姿勢のときに、どう表現されるのか?」などの疑問の答えが実物で存在するので、悩みが解決しやすかろうということで作っていた。
作ると同時に、WordPressを使用してBlogを始め、作る過程をアップしていた。
楽しかった。
粘土の塊をカッターで削って顔にすることにハマった。
最終的には虎徹さんは完成しなかったけれど、オリジナルの女の子の胸像を、サーフェイサーを塗る段階までは持っていけた。
こんなかんじ。
(鹿のツノのついたシカ子さんという名前だった)
(髪の毛作れる気がしない……)
そんなフィギュア作りの合間に始めたのが消しゴムはんこなのだ。
トースターがないから、長い乾燥待ちの間に指先を動かしたいなと思い、
「そういえば消しゴムはんこはどうだろう?」
と、思い付いて検索し、さらに彫ったことのある友人に聞いた。
<このあたりのくだりは、以前書いたnoteをご参照くださいませ>
そうやってはんこを始めてから、8年の歳月が経って、今に至る。
私はいったいどこまでこの山を登り、どこへ行くのだろう。
私の創作活動は、どうなっていくのだろう。
不安はある。
でも、以前のような「過度な焦り」は、息を吹き返したりはしないようだ。たぶんだけどね!
さて。
私の創作活動が、まさに行き当たりばったりの見本のようだというのはご理解いただけただろうか。
こんな感じで、私はいろんなタイプの『つくる』を乗り継いできた。
ひとつの作品を作り上げること。
それがどんなに険しい山であり踏破することが難しいか、どれだけ根気がいるか。それを身をもって知った。
だから言ってしまうのだが、
制作している作品が、正直いわゆる「尻切れトンボ」でもいいのだと思う。
もちろん完成させてこそ、作品は輝く。そりゃそうだ。
完成させることで、胸を張って他人に見せられる。
だが、未完成ものを他人に見せるというのも、モチベーションの維持には大事なことだ。
それだけではなく、「今ここで悩んでる」「これがうまくいかない」などの制作中ならではの感情や困惑を、言葉にして他人に言ってみる。
それだけでも現在の問題点を俯瞰することになるし、整理もできる。
伝えた相手の出してくれた意見を取り入れてもいいし、しなくてもいい。
これだけで、創作はずいぶんとやりやすくなるのではないだろうか。
上げなくていいハードルを自分で上げる必要はない。
いま現在、私ははんこを彫り、文章をこのnoteで書いている。
はんことはまた別の流れで文章を書くことが好きなので、
noteを紹介してくれた友人たちに、とても感謝している。
(行き場のなかった文章を書きたいという衝動が、やっと収まるべきところに収まった……という感じ。ありがたい)
何かを『つくる』、つくりたいという衝動は、簡単に自分の裁量を越える。
何かしらの壁にぶつかって当然なのだ。
だからその失敗に呑まれる必要はないし、やめたくなったらやめてもいい。
作品は仕上がらないだろう。
だがそれが何だというのだ。
てんでバラバラな方向をむいた小さい挑戦が、失敗が、
あとあと別の作品に活かされることなんてよくあることだ。
何も無駄にはならないから、もしこういうことで立ち止まっている人がこのnoteを読んでくれていたら、大丈夫だよーとお伝えしたい。
本当に大丈夫だからねー。
背負い込んでしまった重荷や、自分の首を絞めるような思い込みよりも、
最初に自分の中に生まれた『つくりたい!』という欲求を信じて進むのがいいと、私は考えている。
『つくりたい』という欲求の強さを信じること。
『つくる』ことに飲み込まれて失敗の多さに過剰反応しないこと。
『つくる』ことは、最終的に自分の味方になってくれるものだということ。
なま温く感じる人が多いかもしれないが、これが私の『つくる』という衝動との付き合い方なのだ。
最終的には、たのしまなきゃもったいない! ということ。
それを胸に、私もがんばろうと思う。
◆◆◆
告知:消しゴムはんこ(版画か?)の展示をやります!
2020年11/20(金)~11/23(月)
東京都文京区根津の「たそがれ堂」さんにて、
『カノジョノ』と題して展示&販売をやらせていただきます。
題材は動物と女の子です。
今回は額に入れての展示となります。
詳細はまた後日、noteを書きますので、ご興味のある方はぜひ!
DM含め、現在鋭意制作中です。
DM希望の方は、こちらのメアドまでご連絡ください。
→ niwazonoinfo@gmail.com
↓たそがれ堂さんの詳細はこちら↓
お店:http://tasogaredou.web.fc2.com/
ことりっぷの紹介:https://co-trip.jp/article/8614/
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