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木を植える(2)

植木市や通販で庭木や下草は集まってきたが、大きな課題があった。庭にする場所の土である。家を建てる際、地盤を強固にすべく、これでもかと転圧が加えられていた。その上に、化粧砂として山砂(風化花崗岩)が数十センチほどの厚さで敷き詰められてはいたものの、その下はカチカチである。庭木を植えるには、根鉢よりも大きめの植穴を掘る必要があるが、もともと持っていた畑作業用の鍬やスコップではまったく歯が立たない。

そこで、ホームセンターに行って、ツルハシを買ってきた。思い切り地面に振り下ろす。どん、という音はするが、ほとんど削れず跳ね返ってくるような始末。へとへとになってしまい、家を建ててもらった工務店に泣きついた。「木を植えたいのだけど、庭土が硬すぎてまったく掘れません。なんとかなりませんか…」。変なことを頼む客だと思ったかもしれないが、サービスの一環として掘ってもらえることになった。

しかし、なかなかやってこない。初夏の日差しは日に日に強さを増し、水やりは毎日しているものの、だんだん植木が弱って葉が落ち始めた。「植木が枯れそうなので、早く来てください」と妻が電話した。そうすると、数日後の朝、社長さん自らが削岩機を持って現れた。「仕事が急にいろいろ入ったものですみません」と言いながら、慣れた手つきで準備をし、道路工事よろしく、庭土をガガガガッ、ダダダダッ、ガガガガッ、ダダダダッ、と掘り返しにかかった。その日、仕事から帰ると、図面を見ながら穴をあけてほしいとお願いしたところに、小さな隕石が落ちた跡のような、深さ1m程度、面積数m2程度の穴があけられていた。植栽の「島」の予定地である。

その後、雨が降った。そうすると、社長さんの掘った穴に雨が溜まり、プールのようになった。転圧された庭土は雨水さえ通さず、ものすごく緻密になっていたのだ。穴が空いたはよいが、水はけの悪さによって根腐れしないか心配になってきた。――数日が過ぎてようやく週末になった。再びホームセンターに行き、バーク堆肥の大袋を買ってきた。掘り返された赤茶けた庭土は、見たところまったく有機物を含んでおらず、そのままでは植物が育たないような気がしたので、半々程度に混ぜて植え込みをしようと考えたのである。

そうして、1日かけて庭の骨格となる植栽の島を4つ作った。

2017年8月の庭の様子(植栽3か月後)。芝も張ったが、まだ伸びておらず隙間がある。

一番大きな島(写真左手前)には、シンボルツリーにするつもりだったヤマボウシを中心に、アベマキ、ウバメガシ、ネムノキ、マンサクなどの高木と、ヤマツツジ・イロハカエデを植えた。

進入路からの目隠し用の島(写真右端)には、サブ・シンボルツリーにしたかったマルバノキ、イロハカエデ、シャラノキを植えた。果物が欲しいということでブルーベリーも植えた。

玄関わきの島には(写真奥中央)イロハカエデと下草のコウヤボウキ、その横の小さい島にはミツバツツジ、マンサク、白いドウダンツツジに加え、クサボケ、オミナエシ・ワレモコウなどの野草を植えた。

しかし、それが根付くかどうかはまた別の話であった…。

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