すごいぞ! 全国建築塗装技能競技大会
みなさん、こんにちは。突然ですが、日塗装(一般社団法人日本塗装工業会)をご存じですか? 発足して75年、約2300社の塗装業者が集まる日本最大の塗装団体で、これまで多彩な活動をしています。
でも、一般のみなさんには知らない方も多いんじゃないでしょうか。そこで日塗装公式キャラクターの「ロールンちゃん」とともに、日塗装や会員さんたちの活動や塗装の魅力など、noteで発信していきたいと思っています。日塗装のことは、下記のホームページを読んでみてくださいね。
さて、今回ご紹介する活動は、今年(令和5年)の10月18日(水)・19日(木)、新潟県長岡市のハイブ長岡にて行われた「第27回全国建築塗装技能競技大会」です。塗装のプロ中のプロが、自分たちの技をお披露目するというスゴイ大会です。さっそく、全国建築塗装技能競技大会の内容をご紹介します。
全国建築塗装技能競技大会とは?
塗装職人たちが塗装技能を競い合う、2年に一回の一大イベントです。1968年(昭和43年)に初めて開催されて以来、55年目※を迎えるという歴史ある競技大会でもあります。出場するには、全国から各ブロックの予選を勝ち抜く必要があり、かなりレベルの高い塗装職人たちが集まります。競技大会は2日間に分けて行われ、決められた制限時間内で課題を仕上げます。
※令和5年時点
今回の予選通過者は37名。平均年齢が37歳というから、まちがいなく現役バリバリの塗装職人が出場したことになります。その一方で、57歳のベテラン塗装職人、女性の塗装職人(3名)が出場し、チャレンジする気持ちには世代や性別は関係ないと思わせる大会でもありました。
競技大会では、どんな課題があるの?
さて、全国建築塗装技能競技大会では、どんな課題に取り組むのでしょうか。課題は以下の4つに設定されて、それぞれのテーマに合わせた塗装を行っていきます。
「これだけ見ても、何をするのかわかんないよ…」とロールンちゃんが言ってます。プロが行う課題ですから、ロールンちゃんだけでなく一般のみなさんがわからなくて当然です(笑)。そこでここから課題の解説をしていきたいと思います。
そもそも塗装の塗り方としては、おおよそ「刷毛塗り」「ローラー塗り」が多く、特殊な模様で仕上げる場合にコテやヘラなどを用います。これらを現場によって使いわけながら、実際の住宅や施設などを塗装していくのですね。これを全国建築塗装技能競技大会の課題に当てはめると、こんな感じです。
要はAからCまでの課題は、それぞれの塗り方を競うためのもの。ちなみに櫛引き模様仕上げとは、漆喰塗料を櫛型のヘラを使って波のような風合いに仕上げることです。
残りのD課題(自由課題)は、本大会が決めたテーマにそって、出場者自身の考えた塗り方で表現するものです。ちなみに、今回のテーマは「住宅の内装の壁を創作する」でした。
「なぁーんだ、塗るだけなら、そんなに大変じゃなさそう」とロールンちゃんが言ってます(笑)。もちろん、ただ塗装するだけなら誰だってできますが、そこはプロの競技大会です。当然のことながら、課題には細かな規定が設けられています。そのまま記載すると、専門的すぎて何のことかわからないので、ざっくりとした内容で解説していきましょう。
課題には、細かな規定がある。
塗装をするときは、いきなり塗ることはなく、キレイに塗装するための養生※や素地調整など、下地調整が必要になります。そこでA~C課題共通で、下地調整の課題に取り組むことになります。
※養生=塗装する箇所以外に塗料が付着しないようにビニール等でカバーすること
つぎは各課題に対しても、下記のような工程があり、それぞれ細かなチェック項目が設けられています。専門的なことなので、みなさんは「こんなにたくさんの規定があるんだ!」と感じてもらうだけで十分です。
課題は、思った以上に大変!
ここまでは課題についてご紹介してきました。「でも、どれくらい大変なのか知りたい!」とロールンちゃんが言っていますので、少しだけ突っ込んでお話をしてみたいと思います。
例えば調色では、見本色と同じ色合いの塗料をつくっていきます。塗料は乾燥すると色が濃くなってしまう特性があるので、それを想定しながら調合し、ムラなく塗装していく技能が求められます。単に色合いを合わせるだけのように見えますが、経験や勘、塗装の技能が詰め込まれているんですね。
大変といえば、制限時間内に仕上げることも大きいといえます。競技大会では、初日が3時間半で下地調整と調色まで、2日目は4時間内にすべてを仕上げなくてはなりません。
限られた時間内に、塗装の乾燥時間なども計算に入れつつ、どのような作業配分で進めていくのか。それも背後で審査員が見つめる中、精度の高い仕上がりにする必要があります。相当なプレッシャーとともに、想像を絶する緊張感も、競技大会の大変さの一つだといえます。
高い技能の裏に、日々の努力があった。
刷毛やローラーを使って、驚くほどまっすぐ線を引いたり、ムラなく仕上げたり、コテを使って均等に模様をつくったり、観覧した同業者たちも思わず唸るほどの技能が見られました。みなさんに知っていただきたいのが、こうした高い技能は日々の仕事に加えて、競技大会に向けた練習が必要であるということです。
大会出場者に聞くと、多くが「仕事以外で、練習する時間をつくるのに苦労した」との答えが返ってきました。そんな中で出場者たちは時間をできる限りつくり、自身の技能を錬磨し、競技大会に挑んでいます。そのモチベーションの高さは、とにかく「すごい!」としかいいようがないですね。
自由課題は、まるで芸術!
最後にぜひ見ていただきたいのが自由課題です。まずは解説なしで、課題作品を見ていただきましょう。
ぱっと見て芸術作品にも見える課題ですが、「住宅の内装の壁を創作する」というテーマに合わせて、出場者が考えた図柄なんです。それも事前に描きたい図柄を事前に提出し、競技大会で再現するのがお約束となっています。
意匠性や想像力、芸術性などが問われるとともに、イメージした図柄を塗装として「どこまで忠実に再現できるのか」も大きなポイントです。もし、あなたのお家、住んでいる街の施設を彩ってもらえるなら、こんな素敵に表現できる塗装職人にお願いしたくありませんか? 確かな技能を持ってして、魅力的に忠実に表現できるなんて、まさにプロの仕事! ほんとうに塗装職人はカッコよくて、すばらしい仕事ですね。
大会終了後には、栄誉ある賞が授与!
与えられた課題に対して、「いかに正確かつキレイに仕上げるか」。本大会では持てる技能を使い、仕上がりを競い合うものではありますが、大きな目的は技能のレベルアップです。そのため厳しく審査されるものの、関係者の誰もが出場者への尊敬と温かな眼差しを向けられました。
さらに優秀な成績を残した出場者には、内閣総理大臣賞や国土交通大臣賞、厚生労働大臣賞をはじめ、新潟県知事賞・長岡市長賞、(一社)日本塗装工業会会長賞、各部門賞などが贈られました。
次回のレポートでは、そうした受賞者をはじめ、本大会の出場者の声をお伝えする予定です。どんな思いで出場したのか、何が大変だったのか、これから先の目標は何か・・・。いろんなことを語っていただきましたので、ぜひお楽しみにしていてください。
どんどん魅力を発信していきます!
さて、全国建築塗装技能競技大会のレポートはいかがでしたか? 少しでも本大会の凄さが伝われば、うれしく思います。
最後にみなさんに知っていただきたいのが、競技大会の出場者は全国を勝ち抜いてきた猛者ばかり。しかも、挑戦しようという高い志を持った、素晴らしい塗装職人たちだということです。
日塗装は、そうした魅力あふれる塗装職人がたくさんいます。今後も、もっと多くの方に活動を知ってほしくて、どんどん発信していきたいと思っています。