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小説 桃太郎はふりむかない

昔むかし、あるところにトンピャーピンとプーペーポンが住んでいた。
トンピャーピンは山へ柴刈りに、プーペーポンは川に洗濯に行った。

プーペーポンが川で洗濯をしていると、ドンブラドンブラ、と大きな桃が上流から流れてきた。
プーペーポンはその大きな桃を拾って帰宅した。

自宅には「鬼ヶ島」から引っ立てられてきた、屈強な鬼が数匹、縄で縛りつけられていた。
鬼たちは、だれもが体から血を流したり、殴られて腫れ上がった顔をしていて、激しい戦いの結果、ここに連れてこられたのだと想像できた。

すると、鬼たちの後ろの方から犬、サル、キジが出てきてこう言った。
「桃太郎さんのお手をわずらわせないよう、鬼ヶ島を平定しておきました」

すると、桃がパカッと割れて、中から完全武装して成長した桃太郎が飛び出してきた。
「余計なことをするな!! おれの出番がなくなってしまうだろうが!!!!!」
桃太郎はそう犬、サル、キジを怒鳴りつけたが、三匹は何を言っているのか理解できない顔をしていた。

プーペーポンがその光景に衝撃を受けていると、柴刈りに行っていたトンピーピャンが帰ってきた。
「なんだ、おまえら、もう来てたのか」

トンピーピャンがそう言うと、畳の下からボンボロビェーンが現れて、
「お待ちしておりました、わが主!!」
と言って、空飛ぶじゅうたんにトンピーピャンを乗せると、自分もじゅうたんに飛び乗って、窓から飛んで行ってしまった。

プーペーポンがハッと気が付くと、桃太郎も、鬼たちも消えていて、そこにはだれもいなかった。

プーペーポンは、自分が観た幻覚は「旅に出よ」という神からの命令だと受取り、ブラックサンダー数個と歯ブラシのみをコンビニ袋に入れて旅立った。

行き先はアンドロメダ星雲。

まだまだ先の話である。

おしまい

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