見出し画像

見届けてきました【犬王】

https://twitter.com/inuoh_anime/status/1534837747722371072

ミュージカルアニメ【犬王】観てきました。
湯浅監督と野木亜紀子さん、そして森山未來さんに松重豊さんが揃ってしまったら観るしかありません。
そして以前からとっても気になっているアヴちゃんの歌が聴けるなんて。
どこまでも俺得すぎる映画です。

とはいえ、事前情報は野木さんのTwitterくらいでした。
上映館がとんでもなく少なくて、正直北海道で観られるのかが心配なほどでした。
スケジュール的には絶望的で色々と諦め半分だったのですが、運良く日程が整いました。
これは「見届けようぜ」という神の、いや犬王の思し召しですねえ。

https://twitter.com/nog_ak/status/1534861475512487936

野木さんのツイだけでも十二分に胸熱です



※ここからネタバレ盛大に含みます






とにかく、圧巻でした。
「犬王はフェス」というツイートをどこかで見かけたのですが、まさにそれで。
友魚が琵琶法師となるあたりから、とにかく多種多様な音楽が爆発していきます。
「ボヘミアンラプソディー」を観ている時くらいにぶち上がりました。
(というかあの足踏みは卑怯w)

実は私、どうにもミュージカルという様式は苦手なのです。
大昔に見たそれがあまりにも唐突に歌いだす謎システムで、そこから苦手意識がこびりついたままです。
(最近のミュージカルはそんなこともなく、自然に歌と演技が入り混じっていくので平気です)
少し違和感があったのは友有の「見届けようぜ」が繰り返されるあたり。
ただ、それ以外は苦手意識もなく、どんどんその歌や音楽に飲み込まれていきました。

というか、犬王(アヴちゃん)が最高すぎます。
映画館そのものを飲み込んでしまうような歌唱力、緩急も絶妙で何度背筋が凍り付いたことか。
あの歌があれば、そりゃあ平家の魂も成仏しちゃいます。
あまりに凄まじいその歌に、ちょっと女王蜂も聴いてみたくなっています。

それを傍らで見守りつつ、民衆を巻き込んでいく友一、そして友有(森山未來)。
そちらもまた異なる勢いで、室町時代の琵琶法師然とした姿も凄まじいものでした。
そして、そこからのエクストリーム琵琶語りは圧巻でした。
ただ、何度も繰り返される「見届けようぜ」に少々食傷気味になっていったのもまた事実でした。

フェスさながらの舞台装置。
けどそこにはしっかりと「室町時代で作られた舞台装置」の描写があったりするんですよね。
現代のように電力で動いたり光ったりするのではなく、人力だったり炎だったり。
それがまた面白くて、舞台が変化するたびに必死で追ってしまいました。



https://twitter.com/sushi_wanino/status/1535214899038523393

このツイートが秀逸すぎて吹いた

足利義満の目指すもの。
棟梁の無念。
能面が生み出す力の禍々しさ。
どれもこれも最高に気味悪い存在で、それなのに少しだけ共感してしまう。
絶対悪、とは言い切れない自分がいるのです。
そんな気持ちを抱えるのもまた趣があります。

あと最高に応援したいのは業子さま!
ごく普通にガチ犬王ファンで、一挙手一投足すべてが共感しかありませんでした。
たぶん業子さまとなら現世でもお友達になれる。自信ある。

どこまでも前向きな犬王。
そこに抱えている呪いも、武器に変えて歌う強さ。
悲惨な過去はあまり語られないけど、目に入ってくる惨状は瞼に焼き付いています。
ただの聖人君子ではない。
だからこそ、その強さに圧倒される。

けど戻った顔は美少年でありますようにって期待しましたごめんなさい。
(あの御顔で良いのだと思います、美少年はあまりにも浅はかでしたw)
ただ御顔を見た瞬間、∀ガンダムのコレン・ナンダーが頭をよぎったのはナイショです。

そしてラストの展開ですが。
賛否両論あるようですが、私はあれで良かったのだと思っています。
犬王が最終的に取った選択は、足利義満に仕えること。
その一瞬の形相が、全てを物語っていたのではないかと思ったのです。
もちろん、その場で義満の命に背くことは簡単です。
けどその先には回避できない「友有の死」が待っている。
最後の最後で、友有を選んだ犬王。

結果としてその願いは叶わず、友有は処刑されてしまうのですが。

友有が望んだのは「犬王と作り上げた歌」であり。
犬王が望んだのは「友有が処刑されない世」でした。

お互いがお互いを想い、その道を選んだからこそ。
600年を越えてまた出逢えたのではないか、と。

正直なところ、もう一度観たいと思います。
どうやら「字幕付き上映」が始まると聞き、それを観たい!と悶々していますw
色々と理解するには一度だけでは足りない気がするのです。




そんな色々を思い出しつつ、ふと気がついたことがありました。

友有は何度も何度も「見届けようぜ」と歌いました。
それはもう、ちょっと困惑するほどに。



けど。



友有は、琵琶法師です。
その視力は「平家の呪い」によって失われています。
だからこそ選んだ琵琶法師の道です。


その【見えない】友有が。





「【見】届けようぜ」と叫ぶのです。




そう思った瞬間、背筋がゾッとしました。
自分には決して叶わない、その光景を。

友有は何度も何度も歌ったのか、と。

どうしようもなく、胸が熱くなりました。
友有は犬王と並び立つほどの、とんでもない存在だと。
どれだけ心を強く持てばそんなことができるのか、と。



犬王、とんでもない傑作です。
時間がなくてパンフレットを買えなかったのが悔やまれます。
もう少し上映館数が増えないかな。
これはぜひ、ひとりでも多くの人に観て欲しい。
そんな凄まじい映画でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?