虫垂炎を手術しない場合にどれくらい再発するの?Up to dateで調べてみました。
救急外来にて虫垂炎の既往のある方が、嘔吐と心窩部痛で来られました。右下腹部を触診するとしっかりと圧痛を認めました。
虫垂炎はどうやら十年ほど前に、手術せず抗生剤で治療して”散らした”らしいと分かりました。
虫垂炎の初期の可能性がありAlvaradoスコアは7点でした。
ここで、虫垂炎になったことのある人は再発しやすいのか?と疑問に思い調べてみました。
調べた方法について
今回の疑問はbackground questionに当てはまると考え、二次データベースのUp to dateで検索をかけてみました
臨床疑問:非手術加療された虫垂炎の再発率は?
検索方法:Up to date
結果はどうだったか
そもそも一生でどれだけの人が急性虫垂炎になるのかというと
急性虫垂炎の生涯リスクは
男性で8.6%
女性で6.9%
さすが最も一般的な腹部外科疾患、かなりの頻度ですね。
それでは「非手術加療された虫垂炎」での再発率はどうでしょうか
1年間の追跡調査をおこなった研究がいくつかあるようで、その結果は
・30%は最終的には切除を必要とした
・虫垂切除までの平均時間は4.2〜7ヶ月
ということで、1年以内に非手術的加療を受けた虫垂炎患者の10人に3人は再発し切除が必要になるということです。
さらに、より長期での追跡調査についても触れられていましたが、5年間の追跡調査で臨床的に利用可能と判断されたものは1つだけだそうです。
その研究によると、合併症のない急性虫垂炎に対して抗生物質で最初に治療された257人の患者の5年間の追跡調査で
再発性虫垂炎の累積発生率は
1年で27.3%
2年で34.0%
3年で35.2%
4年で37.1%
5年で39.1%
という結果でした
どうやら再発は1年以内が最も多く、それ以降は再発する人は少なくなっていくようです。
今回対応した患者であれば、10年以上前の既往であったことから再発せずに10年間無事に経過してきた方ということですが、何年たてば再発リスクが既往の無い人と同等になるのかはわかりません。
ただ、3年目から5年目まででも全体の5.1%の人が新たに再発しているということは、10年目でも再発リスクは既往の無い人よりも高いと考えるのが妥当だろうなと思います。
手術加療後も再発することがある
ちなみに、手術したとしても残存断端が長い場合には再発することがあるため、手術したからといって確実に除外できるわけではないことは知っておかなければいけません。
虫垂炎を散らした後に、待機的切除をするかどうか
非手術加療後の再発時に腫瘍が見つかることが多いために、待機的切除が必要ではないかという議論もあるようです。今後どうなるのか知識をアップデートしていく必要がありそうです。
それではまた。
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