見出し画像

「弾いていただきたいギター その④MARTINのD-18(1960年製)」

 アコギ庵の目的の一つに、出来るだけたくさんの方に自分のギターを弾いてもらおうということがあります。MARTINのヴィンテージやSOMOGYI、GREVEN、FIELDSなどそう簡単には弾けないであろうというギターがいくつかあります。それ以外にもジャパンヴィンテージやGUILD、TAYLORなどもあります。まずは写真でお楽しみいただき、興味を持たれたギターは是非弾きに来てください。 (少し予定が先になりましたが、オープンする前にお知らせします。)

 トップはアディロンダックのようです。ブリッジはリプレイスされていますが、最高級のハカランダで作成されています。メッチャ音が引き締まりました。サドルは象牙です。

MARTIN D-18のイメージ
 自分の中では長い間、D-18のイメージ=マホガニーサイド・バックのギターのイメージでした。その大元になったのは1970年代のD-18です。
 初めて買ったMARTINが1972年製のD-41で、2本目のMARTINがD-28でした。この頃に何度かD-18を弾かせてもらう機会があり、その時の印象が18(マホガニーサイド・バックのギター)のイメージを決定づけてしまったのだと思います。一番強く思ったのは”頼りない音”ということです。音が軽くて弱いというのが、その頃の正直な感想です。ちょうどこの頃ギブソンのマホガニーモデルもいくつか弾かせてもらったことがありましたが、同じような印象でした。今思えば本当に”井の中の蛙”だったと思いますが、そのイメージをこの後ずっと引きずることになります。
 その後マホガニーサイド・バックのギターには長い間興味が湧かず、ヴィンテージの世界を知り始めた時にも弾くことはありませんでした。そんな自分のマホガニーのイメージを壊してくれたのは、1959年製のEpiphone FT-79 Texanでした。チューニングして音を出した途端「何じゃ、これは!!」というほどの衝撃でした。“鳴ってる!”というのはこういうことなんや。と本当に心の底からびっくりするような出来事でした。もちろんその場で「これ、買います!」と言っていました。

そのTexanがこれです。現在は友人が所有。

 とりあえずこのギターに出会えたおかげで、マホのギターでもすごいのがあることを知りました。が、その後20年以上、同じレベルの鳴りをするマホのギターに出会うことはありませんでした。
 今から7~8年前のことだと思いますが、MARTINの18で鳴る個体を探してみようと思い立ち、探し始めました。そして出会ったのが1951年製の18です。これはチューニングの時点で「ちょっと違うぞ、これは!」と思わせてくれたギターでした。すべての弦の音が太く、低音もしっかり鳴る。そんなサウンドでした。このギターを知って初めて、D-18がブルーグラスで使われていることに納得したと言っても過言ではありません。それまでは「何であんな頼りない音なのに、ブルーグラスのようなジャンルで使われるんやろ?」と思っていました。マホのギターの音を知るにつれ昔からよく聞かされていた“究極のMARTINは18”とか“最後は18に行きつく”とかの意味がわかってきたような気がします。
 今あらためて思うのは、D-18やD-28などの歴史があるギターは、ある程度時代の違う個体を弾かないと総合的な判断はできないということです。(総合的にまとめてしまうこと自体が間違いなのかもしれませんが)より多くの音(鳴り)を知ることによって様々な観点からギターサウンドをとらえることができ、しいてはそれがギター選びにものすごく役立つと思っています。
 何度も書いていますが、ヴィンテージギターの価格高騰でますますこういったギターを弾ける機会が少なくなって行くであろうと思われます。今までずっとプレイヤーサイドの視点でアコースティックギターを見てきた身としては、すごく寂しい思いを持っていますし残念です。

 まだまだ“弾いていただきたいギター”シリーズは続きます。アコギ庵でできるだけいろいろなギターを弾いていただこうと思っていますし、音を出すながらお話をさせていただくことで皆様の役に立てれば幸いです。

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
宛先 e-mail:mail@acogian.com または twitter(@acogibucho)にお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?