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アコギ回顧録 番外編その⑭「アコギの音どう表現するか?」「最大の敵は「先入観」かもしれない。 」

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

「アコギの音どう表現するか?」
 長い間、ずっと考えている課題です。アコースティックギターの音(鳴り方)を表現するための言葉はたくさんあると思いますが、書き手の思いが読んだ方に上手く伝わるかどうかは未知数です。うまく伝わらない可能性の方が高いのではないかと思っています。個人個人の中にある基準値が、簡単には一致しないからです。
 基準値を一致させること=共通認識(同じ認識)を持つということであろうと思っていますが、自分以外の誰かとこれを作り上げていくのはものすごく難しいです。同じギターを何度も弾いて、その音についての意見交換を繰り返す。そうして少しずつ、擦り合わせていくしかないでしょう。複数本(多い方が良いです。)のギターで複数回。様々な音の違いを確認しつつ共通認識を作り上げていく作業は、かなりの時間が必要になります。
 どこまで行っても、共通認識ができないこともあります。自分がギターを買う時は、最終的に個人個人の感覚(好み)によって決めるので正しいとか間違っているとかの判断はできません。が、この共通認識を作り上げる過程では、できる限り個人の好みの部分を判断材料にしないことが重要です。
 どこまでそのギターのポテンシャルを引き出せるか?弾き手の腕もある程度必要になります。 それと今まで何度も書いてきていますが、ギターがきちんとセットアップされている(最良の状態である)ことが前提条件です。
 そのような共通認識の最もおおまかなものが、″マーチンの音(鳴り方)”、”ギブソンの音”等の表現になっているのではないでしょうか? この″マーチンの音”、”ギブソンの音”も、人それぞれにイメージする音は必ずしも一致するとは限りません。こんなことばかり書いていると、共通認識なんかできるのか?などと思ってしまいそうですが、できる人もいます。かなり時間がかかると思いますが・・・。

アコギの音の表現
明るい、暗い、重い、軽い、
粒立ちが良い、エッジの効いた
ふくよかな、優しい、甘い
音の分離が良い、バランスが良い
煌びやかな、鈴鳴り
ざっとこんなところでしょうか。(まだまだあるとは思いますが)それぞれの言葉からどんなギターをイメージするのか?でその人の基準がわかるかもしれません。
 音を言葉にしてしまうと、個人個人の中でその言葉が一人歩きをしてしまい、勝手に自分に都合の良い解釈をしてしまいがちです。ギターショップ(売り手側)は、そのあたりをうまく突いてきます。言葉に流されないようにしましょう。 スペックもそのギターのサウンドを構成する大きなファクターの一つであるとは思いますが、所詮は言葉に過ぎません。サウンドそのものではないのです。自分で弾いて、聴いて、感じて判断することが大切です。

“樹木に例えてみる”
 自分以外の人にアコギの音を伝えるときに、よく使うのが(例えるのが)樹木です。
木の大きさ=音量
木の幹の太さ=芯音の太さ
枝の太さ、枝の多さ、葉っぱの数=芯音以外の音
 
葉っぱが青々としたものか枯れてしまっているのか?
枝にどれだけ葉っぱが残っているのか?
それぞれの状態が違う場合に、幹を揺らした時どんな音が出てくるのか?
 
 簡単に言うとこんな感じですが、これでも言葉だけではわかりにくいでしょうね。なので、ネットで見つけた写真を載せておきます。それぞれの幹を揺らした時の音(揺らせると仮定しての話で)が、まったく違うということは容易に想像できると思います。

おおざっぱですが、MARTIN D-45がこんな感じでしょうか。ある程度幹の太さがあり、枝の数も葉っぱの数もものすごく多い。幹(芯)の音、枝の音、葉っぱの音。たくさんの音が混ざり合って全体のサウンドを形成している感じです。
D-45のヴィンテージというイメージ
葉っぱ同士がこすれて出る音もザワザワからカサカサという感じ
音の芯が細いイメージ
枯れて抜けがよく、すっきりした感じ

 あくまでも個人の主観なので「まったくそんなイメージが湧かない!」という方もおられると思います。うまくお伝えすることができなくて申し訳ないですが、一つの表現方法としてこんな考え方もあるのだと捉えていただければ幸いです。

「最大の敵は“先入観”かもしれない。 」
自分にも覚えがあります。無意識のうちに、何かしらの先入観を持ってしまっているようなことはありませんか?

マーチンだから
ギブソンだから
ハカランダだから
アディロンだから
好きなミュージシャンが使っているから
ヴィンテージだから
ハンドメイドだから
戦前ものだから・・・Etc.

良いとは限りません!

 自分で弾いて確かめないとダメです。弾かないと音は出ません。何を聞こうが、何と言われようが、弾かない限りそこに音は存在しません。
”出て来た音が全て"です。そして、判断するのは自分自身です!

 最期に 番外編⑪に書いた記事に関係のある資料を見つけたので、それを載せておこうと思います。覚えておいて損はない情報です・30年前の"現代ギター 92年6月号"に掲載されたものです。一部ピントがぼやけている部分がありますが(すみません)、何とか読めると思います。

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 30年前、すでにその時点でハカランダやドイツ松が「ここ数年で2~4倍程度値上がりした。」と書かれています。今ではもう桁が違うほど値上がりしているのは確実でしょうね。それだけギターにとっては素晴らしい材料の一つということなのでしょう。ですが、ハカランダであれドイツ松であれ、それぞれにグレードの差や優劣はあります。その名前がつけば何でも良いというわけではありません。そこはきちんと押さえておきましょう。

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
宛先 e-mail:mail@acogian.com または twitter(@acogibucho)にお願いします。

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