クリティカル祭り
注:この記事はアンディーメンテが主催するゲームぽれん10(http://andymente.moo.jp/html/game/phelen/phelen10/phelen10.htm)のキャラシートが長くなりすぎたのでこの場に出力するものである。
クリティカル祭りは、毎年12月にSol3(地球)軌道市ソル・シティで行われる祭りである。クリティカル祭り実行委員会(ソル・シティと商工会議所)が主催する。
概要
ソル・シティの祖型となる都市、地球軌道塔の建造記念日がこの祭りの起源とされている。当初は市民とその友人たちが集い、祝うだけのものであった。それが時代とともに規模を大きくし、今では国を挙げてのイベントとなっている。
会場ではクリティカルな成果を出した研究者や発明家が表彰され、また研究の最前線を紹介するブースが立ち並ぶほか、多くの屋台も出店される。
また、クリティカル祭り期間中、ソル・シティ周辺の宇宙空間で数多くの宇宙艇によるレースが行われる。このレースには一般市民も参加することができる。
COVID-19の感染爆発により2020年、2021年はクリティカル祭り自体が中止となった。
歴史
クリティカル祭りの起源は、18世紀まで遡ることができる。当時の地球連邦首都は蒸気の力で駆動する鉄道によって結ばれた工業都市であった。当時の惑星間航行は地上に設置された長大なコロンビヤード砲に綿火薬を詰めて貨物砲弾を打ち上げるという原始的な方法に頼っていたため、弾体の運動エネルギー損失が重要な課題となっていた。
この問題を解決するべく、技術者たちは当時の冶金工学/建築技術の粋を集め、大気による運動エネルギー減衰を考慮する必要のない宇宙空間まで達する建造物を考案。
加えて巨大な製鉄炉と月面に存在する月炭資源採鉱のためのボーリングマシン組み立て工場、そして貨物砲弾射出用のコロンビヤード砲(砲としては長大ではあるが地上のものよりははるかに小規模軽量)を建設した。これが世界初の実用的な軌道塔であり、現在の地球軌道上にある祖型となったものである。そしてその落成を記念し祝う日を設け、規模は次第に大きくなっていった。
しかし20世紀初頭、第一次世界大戦が勃発。人類史に類を見ない規模の地上戦と熱核兵器の使用により地球の国土は急速に荒廃してしまう。
終戦後の人々は生存圏を求め宇宙開発に希望を託した。その結果、破壊された旧軌道塔の基部をさらに補強、拡張し、建設された当初とは比較にならないほど大規模な宇宙ステーションが建設されるようになった。これは、人類の科学技術力の象徴としてだけではなく、新たなる希望のシンボルでもあった。
このような背景の中で、旧軌道塔の建設からちょうど200年目の19XX年12月XX日、地球軌道市ソル・シティへと生まれ変わった都市の中央ステーションで第一回クリティカル祭りが開催されることとなった。
第一回クリティカル祭り
第一次世界大戦終戦後の地球は復興への道を歩んでいた。しかしながら戦争とその後の急速な経済縮小の影響は大きく、特にソル・シティ中枢では失業者が激増していた。そのような状況下で開催された最初のクリティカル祭りは、当初の目的とは裏腹に大きな混乱をもたらした。
会場には多くの参加者が集まったものの運営がうまく機能せず、会場内では暴動が発生した。また会場周辺では路上生活者が増え、衛生状態が悪化していった。さらに一部の過激なグループ(後にテロリスト集団として知られるようになる)が会場周辺を占拠し警備当局との衝突が起きた。このためソル・シティでは政府の指導のもと、クリティカル祭りの運営方法の改善が図られることとなった。
また、この時期に会場周辺に屋台が立ち並び、多くの人々が集まるようになったのは、この出来事が影響していると言われている。
第二回クリティカル祭りと分離主義者によるテロ
クリティカル祭りがぽれんとの関係が深まったきっかけは第二回クリティカル祭りでのテロ事件が関わっていると考えられている。当時、ソル・シティとその周辺地域で連邦軍人を狙って連続発生した殺人事件があった。被害者は一様にクリティカルヒットを受け即死しており、被害者名簿には相当の手練れであろうぽれん戦士候補生数名が含まれていた。クリティカル率の異様な高さを疑問視した捜査当局は、犯人がぽれん戦士である可能性を考え調査を開始するも、結果としてこの考えは間違っていた。
この事件は、ソル・シティの地球からの独立を主張する分離主義組織が起こしたものであった。彼らはソル・シティに駐留する政府機関に対しクーデターを起こし、その混乱に乗じて独立を宣言しようとしたが、当時ソル・シティの市長でありぽれん戦士を兼任していたクリスティーナ・フォン・栗田の活躍もあり、実行グループは鎮圧された。この事件をきっかけに、ソル・シティでは分離主義組織の掃討作戦が開始されることとなる。
一方でソル・シティと地球連邦政府には緊張関係が生じた。というのも、地球連邦はソル・シティの独立を危険視する一方で、ソル・シティは地球連邦の介入を望まなかったからである。そのため両者は互いに相手に対する牽制のため、ぽれん戦士たちを派遣しあうこととなった。
その後、分離主義組織のリーダーであった元軍人が捜査線上に浮上、ソル・シティと地球連邦両者のぽれん戦士を中核とする捜査チームが現場判断により協力体制を敷き事件解決に尽力した結果、分離主義組織は壊滅し事件は収束した。
二回クリティカル祭りの閉会セレモニーではこの功績が称えられ、ぽれん戦士の活躍を語り継ぐ伝統として翌年以降もプログラムに加えられることとなった。
残る謎
一連の事件は解決したものの、謎は依然残された。祭り期間中の事故/事件におけるクリティカルヒットが原因の死傷者は11月までの平均の10倍超の報告があり、これは明らかに異常事態だった。捜査チームの解散は延期され、事件の真相究明のため継続されることとなった。
しかし結局この年中に事件は解決することはなかった。なぜなら、クリティカル祭り終了を境にぱたりとその報告が止んだからである。
逮捕された分離主義組織への聞き取り調査が行われるも、いずれも証言内容は曖昧で要領を得ず、現象の全容解明には至らなかった。
しかしソル・シティに潜入していた地球市民統合体の諜報員は、この時点で現象の核心に迫っていた。
第三回クリティカル祭りと12月危機
第三回クリティカル祭りの開会初日、イデオロギーを違えたもう一つの巨大国家連合、地球市民統合体からの外交使節団が来訪することになっていた。
彼らの目的は地球の統一国家の樹立に至る道筋の協議だが、国家間の政治的対立は深刻であり、これは表向きの理由であった。実際のところ彼らの目的はソル・シティで発生しているクリティカル頻発現象を解析し、軍事的優位に立つための切り札として活用することであった。
彼らが到着した日、すでに会場内には地球市民統合体側の工作員が多数潜入し、祭りを楽しんでいる参加者たちのクリティカル率を測定していた。
一方、ソル・シティ側も彼らの存在に気づいており、警戒態勢を整えつつあったが祭りは予定通り進行することとなった。
そしてついに運命の日が訪れる。12月XX日、会場の各所に設置された監視カメラは突如として異常な映像を捉えることとなる。
会場中央付近のステージでスピーチを行っていた地球市民統合体の外交官の肝臓に突然クリティカルヒットが発生(前日に深酒をしていたと言われる)し、彼は即死してしまったのだ。
この瞬間、地球市民統合体はこの現象をクリティカル祭りによるものと断定し、即座に会場周辺の封鎖と地球市民統合体関係者の保護を開始した。同時に、ソル・シティに対して地球市民の生命保護の観点からクリティカル祭りを中止し、祭りに参加している参加者全員の身柄を確保するよう要求した。
これに対してソル・シティ側は、クリティカルヒットとはそもそも祭りの開催期間中にランダムに発生するイベントに過ぎず、祭りとは無関係な事故によって生じた被害については責任を負わない旨を回答した。
しかし地球市民統合体はこの返答を無視し、祭りに参加した参加者および会場周辺で勤務中の警察官や警備員などを人質に取り、地球市民統合体の勢力圏へと移動を始めた。
この事態を受けてソル・シティでは地球連邦政府に救援要請を出し、捕らわれた人々を救出するための行動が開始された。
この救出作戦において特筆すべきことは、地球市民統合体が人質を取ったことにある。通常であればこのような行為は悪手である。なぜならば、相手を刺激して態度を硬化させるだけでなく、人質の安全を保証する義務が生じるからだ。その一方で地球連邦側もまた外交カードの多くを制限せざるを得なくなる。つまり人質の奪還において外交交渉/非友好的方法どちらを採用する場合においても地球市民統合体との交戦の激化を回避する必要があったのである。
このため、地球連邦側としては地球市民統合体に死者を出さない形で、かつ迅速に人質を救出しなければならなかった。この困難な任務を果たすべく最強の兵科であるぽれん戦士の投入が緊急議決されたが、地球市民統合体も当然のことながらぽれん戦士の投入を予測しており、救出作戦を阻止するために地球市民統合軍所属のぽれん戦士の部隊を配備していた。ぽれん戦士同士の戦闘は熾烈なものになると考えられたが、実際には地球市民統合体側もまた戦闘の不可逆化を避けたい思惑から申し訳程度の小競り合いが発生しただけで、作戦は成功した。
ソル・シティ市民の人質は無事奪還され、地球市民統合体は当初の目的を果たした。即ち、クリティカル頻発の秘密『マイティクリティカル』である。
第四回クリティカル祭りと地球合衆国
この年のクリティカル祭りはより盛大なものとなった。地球連邦と地球市民統合体は長い対立の歴史を乗り越え、統一国家地球合衆国が樹立されたためである。
というのも昨年の12月危機終結後の事態収拾のため設けられた会談の場で、より有利な譲歩案を引き出すべく、純化クリティカル祭りとも言うべきマイティクリティカルを投与された地球市民統合体の外交官と、クリティカル祭りに参加していたため知らず知らずのうちその影響下にあった地球連邦の外交官らの交渉がクリティカルヒットしあい、予想外の妥協案が予想外にも利益を最大化する形で合意に至り、その他二国間に多数横たわる諸懸案もまた解決を見たためである。
このマイティクリティカルは、両陣営の交渉クリティカル率を極限まで高めることでより良い解決を導き、統一国家成立という共通の目的のために最大限の努力をするというもので、まさに平和のためのクリティカルヒットだった。
かくして地球合衆国は誕生し、その祝賀式典がクリティカル祭りに合わせて行われたのである。
色鮮やかな衣装を纏ったぽれん戦士に扮する男たちがでこぴんで和太鼓を叩くクリティカル囃子を披露し、勇壮なクリティカル囃子の調べに乗って宙域の平和と豊穣を祈願して踊り狂ったのであった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?