「マラーホフさんから学んだことを伝えたい」 針山愛美さん、ミニインタビュー

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11月30日、突然日本のニュースに登場した世界的ダンサー、ウラジーミル・マラーホフ氏。海外からの入国制限が施行されるギリギリの、最後のタイミングで入国が実現したマラーホフの来日目的は、豊中市と伊東市で行われた公演「One Heart」と、2022年1月19日に豊中市で開催される「With Love From Malakhov」に出演するためだ。いずれもプロデューサーはバレエダンサーの針山愛美さん。マラーホフが2004年から芸術監督を務めたベルリン国立バレエ団で、彼の任期満了の10年を共に過ごしてきたバレエダンサーだ。
今回は短い時間ではあったが針山さんに「One Heart」「With Love From Malakhov」の公演に対する思いなどお話を伺う機会を得たので紹介しよう。

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■マラーホフの存在は人生の指針


――まず「One Heart」2公演、お疲れ様でした。この公演をやろうと思ったきっかけはどういった理由だったのでしょうか。

針山 2022年1月にコロナ禍でずっと延期になっていた公演「With Love From Malakhov」の上演がやっと決まりました。それに向けてマラーホフさんが来日していただけることになったのですが、その際に、マラーホフさんから学んだことを伝えたい、また自分がこれまで考えていた企画――中村恩恵さんや宝満直也さんの作品の上演、和物をテーマとしたバレエの上演、プロジェクションマッピングを使った舞台映像やクラシックや和太鼓など、様々なジャンルとのコラボレーションを実現させたいと思ったのです。やろうと決めた瞬間、すぐに中村さんや宝満さんに連絡をしていました(笑)

――針山さんは2004年にベルリン国立バレエに入団し、その時の芸術監督がマラーホフさんだったと記憶しています。マラーホフさんから学んだこととは、具体的にはどういうことでしょうか。

針山 ありとあらゆること、というのでしょうか。人としての立ち居振る舞いや生活に対する向き合い方などもありますが、特に芸術に対する真摯な、なかでもリハーサルに向かう時の、妥協を許さない姿勢には学ぶことがありました。彼から学んだことは今でも私の人生の指針になっていますし、そのすごさ、人間としての素晴らしさから学んだことを少しでも次世代の方々に伝えたいと思ったのも、「One Heart」「With Love From Malakhov」を企画した理由の一つです。


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■延期を繰り返し上演にこぎつけた「With Love From Malakhov」

――「With Love From Malakhov」の出演者はオーディションで選ばれています。マラーホフさんをはじめとするダンサーさんのパフォーマンスを見るばかりでなく、バレエを踊る人はマラーホフさんの指導を直接受けられるわけですね。

針山 はい。ただ企画後、コロナ禍に見舞われ数回の延期を余儀なくされたため、その間に出演できなくなってしまった人が出てしまったのは残念なのですが……。

――この「With Love…」の公演の趣旨は。

針山 先にお話した件に加え、バレエに触れるきっかけを提供したい、というのがあります。今回は『白鳥の湖』のハイライト版を上演しますが、これはバレエ作品として誰もが思い浮かべる有名な作品の一部を紹介することで、バレエに興味を持っていただきたい、バレエに興味はあるけれどなかなか踏み出せない、という人でも気軽に楽しんでいただけるのでは、という考えからです。

またこの公演で、マラーホフさんが長年温めていた作品を発表する機会を提供したいということもありました。それが「マラーホフによる振付作品」で、曲はグリンカ『リュスランとリュドミラ』を使用する予定です。『パキータ』もマラーホフさんの振付作品で、これは2016年にキエフ国立オペラ劇場で初演されたものです。

――マラーホフ版「パキータ」は、日本ではあまり見る機会がない演目なので楽しみですね。

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■人の心にふれ、感じてもらえるものを伝えたい

――今回の来日について、マラーホフさんは何か仰っていましたか?

針山 日本に戻ってこられてうれしい。ぜひ多くのお客様に、公演を見ていただきたいと話していました。

繰り返しになりますが、今回の「One Heart」「With Love From Malakhov」の2つの公演は、いずれもあまりバレエや芸術に触れる機会がない人たちに、その場を提供したいという思いがあります。難しく考えられがちなバレエですが、「迫力があった」「よくわからないけど面白かった」「なんだかわからないけど感動した」という感想で全然良いのです。そうしたことを通して、バレエや音楽の魅力をもっと広く伝え、身近に感じていただければと思います。

――ありがとうございました。1月の公演、成功をお祈りしています。


■公演情報
With Love From Malakhov
日時:2022年1月19日(水)18:30~
会場:豊中市立文化芸術センター大ホール
演目:
チャイコフスキー:「白鳥の湖」よりハイライト版
パキータ(マラーホフ版)
マラーホフ新作(世界初演)
その他、世界初演を予定
出演:
ウラジーミル・マラーホフ
針山愛美
オーディションによる選抜メンバー

公式サイト
http://www.toyonaka-hall.jp/event/event-26557/

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