カセット文庫の時代
数年前、Google+の方に投下した文章です。
記録の意味もあるので、一部訂正して、こちらにも載せてみます。
【投げ銭式】に変更させていただきました。全文を無料で読むことができますが、読後に参考になった、面白かったと思っていただけたら、ポチッとしていただくこともできますので、よろしくお願いいたします。
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今となってはわかりにくくなっていますが、1980年代、朗読のカセット文庫が売れたことから、初期のライトノベル(その頃はまだライトノベルという言葉がなかったけど)作品をラジオドラマ的に作品化して、カセットで主に書店ルートで売る、という商品が勃興したのです。
それ以前に既に人気漫画を「レコード化」する試みは始まっていて、イメージ曲にミニドラマが当たり前だった時代に、歌とドラマをまともに作った「究極超人あーる」が大ヒットしたのは、今でも印象に残っています。
だからこそ角川のカセット文庫はその「あーる」チームによる「ルナ・ヴァルガー」とか「ガルディーン」が主力だったわけですが、まあそれは余談。
私が書き始めたのは朝日ソノラマのソノラマ文庫をカセット文庫にするという企画で、主導していたのはアニメイトフィルムでした。当時アニメイトフィルムは「吸血鬼ハンターD」のアニメ化を進めていたのでその関係……だったかどうかは記憶にありません。
ただ他社に先駆けてこのカセット文庫はスタートし、かなりのタイトルが出ましたからそれなりに成功だったのでしょう。
恐らく「宇宙船」編集長だった村山実さんが「うちにも脚本書けるのいるから」ということで私を推薦してくださったのかな?
ですから私はまだ二十歳そこそこの時期だったと思います。
一度はアニメで脚本デビューしたものの、その後お声もかからず、とにかく脚本を書きたくて仕方がなかった時期、先輩方の小説を熟読し、その魅力を引き出し、さらに音響の現場(初期は、亡くなった松浦典良さん、後にそのお弟子さんの渡辺淳さん)で、自分の台詞を直接読んでいただけることで、未熟さや役者さんの腕や脚本のなすべきことを学んだ気がします。
私にとってこの実践が、最高の勉強でした。
ちなみに原稿料は一本20万、まあこれぐらいは書いてもいいでしょう。
途中から当時誕生したばかりのぶらざあのっぽが大量参入してきて、たちまち仕事を奪われたのも良い想い出。
アニメイトフィルムさんとはその後「妖魔」などのアニメ、「ガイファード」の企画コンペへの参加、そして「ナデシコ」では再びカセット文庫でのお付き合いをさせていただくという奇縁で結ばれておりました。
一応全部手元に残してあるのですが、画像をアップするのは気が向いたときにということで。
脚本を書かせていただいたカセット文庫
朝日ソノラマ
「D-妖殺行」
後にDを演じる田中さんが、マイエルリンク役
「D-北海魔行」(全三巻)
D自身にナレーションをお願いするという離れ業、打ち上げで塩沢さんに散々叱られたのも良い想い出です
「エイリアン秘宝街」
言わずとしれたトレジャーハンター第一作。個人的にも大好きだったこの作品の脚色が、最初の仕事だったのはラッキーでした。今でも私の原点と言える内容です。
「エイリアン怪猫伝」
自分としては「‥黙示録」をやりたかったのですが、何故かこっちになってしまって、でも必死にやった思いがあります
「東京バッドボーイズ」
岬さんの作品をドラマ化するというのは、単に会話を抜き出しただけでは成立しないわけで、難しかったです
「魔教の幻影」
全てが伏線になっているような内容で、それをどこまで切り捨てていくのか、で迷いました。キャストは豪華ですが、自分の中では忸怩たるものです。
自分で希望を出してたけど、やらせてもらえなかったものとしては「キマイラ」「インベーダーサマー」など。「弾劾凰」もこのレーベルで出させていただきました。ミアの兄が出てくる話、だっけ?
集英社
「聖闘士星矢」
「聖闘士星矢 十二宮篇」(全二巻)
アニメではなく、あくまで原作の音声化ということで、「サジタリアス」とか「ブラックセイント」とか、微妙に用語が変わっています。原作をまとめるのが精一杯でしたが、星矢の長台詞でなんとか盛り上げてみたり。あとで古谷徹さんに「いつも車で聞いてる」と言っていただけて、恥ずかしいやらなんとやら
「魁!男塾」(全二巻)
原作中盤の、作者も読者もわかって笑いながら盛り上がってる感じが好きで、その悪のり感をなんとか再現しようとした記憶があります。
「孔雀王」
OVAではオリジナルストーリーばかりやらせていただきましたが、これは原作のエピソードを使った筈。中原茂さんの珍しい孔雀です。
「薔薇のストレンジャー」
原作の鳴海さんのご指名で、音響も大御所の斯波さん。この仕事が次に繋がりました。
「花の慶次」
斯波さんの力が実感できる、素晴らしい作品。大塚明夫さんの慶次は無二のものだと思います。大塚周夫さんの秀吉と共演されています。この仕事を気に入っていただけて、漫画版「影武者徳川家康」の仕事に呼んでいただきました。
久保書店
「冒険!イクサー3」(全三巻)
聞く「まんがまつり」を目指した作品。この頃から、シリアスなドラマを持ち込む自分のやり方が、カセット文庫の形態には必ずしも合わないことを自覚し始めました。
「イクサー1 黄金の戦士」
原作同様一巻のみで終わってしまい、申し訳ない限り。ただ自分の技術的には完成に近づいた頃なので、聞いてみていただきたい作品です。
ムービック
「プラチナ」
「ANIMAL X」
今ではBLと総称されているもののはしりですね。どちらもSF要素があるので、そこを頼りに書き抜けましたが、そのあとにいただいた某アニメでは途中で脱落してしまいました。BL要素がダメなわけではなくて、原作者さんの思い入れを自分が理解できないと、申し訳ない気持ちが先にきて仕事を続けられなくなってしまうのです。
カセットの時代は途中からCDに移行し、CDのみの仕事でも「サイレントメビウス」「ザウロスナイト」なんていう変わった作品もやってます。ラジオドラマでやった「ぼくのマリー」「きまぐれオレンジロードoriginal」は、今に至る三間雅文さんとの最初のお仕事で、とても印象深いですね。
今でも「十二国記」「UN-GO」のBD特典として書いたり、サウンドドラマは自分にとって懐かしい過去であると同時に、今もユーザーの耳に自分の脚本がナマで届く緊張するメディアです
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