見知らぬ街のカフェで現実から逃げる

ひとり旅は疲弊するから、積極的に行きたいとは思わない、帰省すらも億劫ーそう思い込んでいたが、現実から目を背ける効用は充分にあるらしい。

先日、めでたく学位を獲得し、式典にも出席し、友人と
惜別した。春からは遠く離れた街で働くという友人たちを見ると、異世界にでも飛んでいくかのような錯覚を覚える。

大学に留まる私は、どうしても友人との別れを直視したくないらしい。離れてしまった友人のことを考えては、不眠に陥る。

4年は長かった。
まだお酒も飲めなかった高校生上がりの時代から、二十代になるまでの時期を過ごした仲間と別れるなんて、想像できない。考えるだけで、心に穴が空いた感じがする。

それくらい寂しくなるなら、私も飛べばいいじゃない!と思いきって、雪国にやってきた。

全国的に桜の開花が確認されるが、雪国はまだ肌寒く、道ゆく人々は冬用のコートやニットを身に纏っている。
3月なんて嘘でしょう、と言いたくなるような空気だ。
路肩の雪は溶けたが、峰々には雪がまだ残っている。
テレビに映し出される桜が空々しい。

外の空気と対照的に、駅ビルの中は暖かく、冬の装いが鬱陶しくなるほどであった。

ーー

卒業式の数日後に書いた草稿を発見。
今更投稿してみる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?