北海道日本ハムファイターズ 2023年ドラフト指名を考える② 3位宮崎一樹・4位明瀬諒介・5位星野ひので&総評

前回、1位指名の細野晴希、2位進藤勇也までご紹介しましたので、今回は3位指名からです。

ドラフト3位 宮崎 一樹 (外野手) 山梨学院大学 右投げ右打ち

大学No.1と呼び声高い強打の外野手。遠投112m、50m5秒91の高い身体能力が売りのフィジカルエリート。
ポジションはセンターで、ライトもこなす。高校時代は控えで、本格覚醒したのは大学入学後。
2年春から本格的に出場機会を貰い、3年からは中軸を任されるほどに。
3年春のリーグ戦で盗塁王、秋には打率6割、5本塁打、19打点、24安打と打撃各部門で1位を獲得する無双ぶりを見せた。
大学代表に選出され、チームトップの50m5秒91をマーク。

【打撃】
俊足タイプにありがちな当てに行く打撃ではなく、しっかり振り切れるのが持ち味。引っ張った打球は勿論、外角のボールを腕をたたんでうまく反対方向に乗せる上手さと、力強さを両立した打球を放てる。
選球眼はさほど悪くなく、リーグ戦でも3年秋以外は出塁率も残せている。
左足をすり足気味にしている部分は気になる。
進藤にも言えることだが、関甲新学生リーグからNPB入りした選手が近年打撃面で苦しんでいるので、守備面で我慢しながら打撃を伸ばす方向性と思われる。

【守備】
左中間よりに飛んだ打球も守備範囲を活かし捕球してみせるのはさすが。バックホームも山なりにならず完成度は高い。身体能力依存の守備スタイルではなく、技術面も持ち合わせているのが魅力。

【指名背景】
過去3年で五十幡、矢澤と上位指名している中でまた上位指名外野手か、とも思わなくもないが、早い段階から一軍に出てFA取得も早いであろう万波の後釜が不在で、なおかつ松本剛も年齢的に後釜を考えないといけない時期に来ている以上、そろそろ育てながら出せる選手が欲しかったのも事実。
五十幡はケガが多く、矢澤は二刀流で起用法がいまいち定まらない中で鎌ヶ谷の外野手が不足しておりシンプルに外野手は頭数は欲しかった。
特に右打ちの外野手は木村の引退で江越と万波しかおらず、万波と歳が近いながら後釜的な位置づけになる。進藤同様守備で我慢してもらいながら打撃を伸ばしていく形になりそうだ。


ドラフト4位 明瀬 諒介 (内野手) 鹿児島城西高校 右投げ右打ち

183cm88kgの恵まれた体格に、投げてはリリーフ中心と起用でMAX152km、打っては通算49本塁打と投打に才能が光る。飛距離は今年のドラフトにかかった高校生の野手でもトップクラス。特大のホームランはもちろん、バットの先で拾った当たり損ねもウォーニングトラックまでぶっ飛ばす。
プロ入り後は野手1本で挑戦したいと語っている。

高校では投手も兼任していたため、恐らく負担を考慮されてメインは一塁手起用だったが、肩はあるため、プロ入り後は三塁手としても面白い存在。
ただ、動作を見る限り肩が強いからと外野に置きたいタイプではない。
打撃面は打ち損じも目立ち、まだまだ粗削りな印象だが、右打者育成に定評のある日本ハムの手腕に期待したい。

【指名背景】
清宮が一軍に復帰して以降、阪口等で回していた鎌ヶ谷の一塁手事情だが、外野手も足りないということで阪口が今季外野手を守ることも多く、捕手登録の選手が数合わせに近い形で一塁手に入ることが多かった鎌ヶ谷事情で、なおかつ次世代の右の長距離砲候補が有薗しかいないということで補強ポイントに合致した指名となった。
上位指名候補にまで挙がっていたクラスの選手だが、4位までスリップしたのは意外で、軒並み高校生スラッガーを敬遠しがちな今年のドラフトを象徴する出来事と言えよう。


ドラフト5位 星野 ひので (外野手) 前橋工業高校 右投げ右打ち

高校通算16本塁打の右打ち外野手。近年のドラフトで人気なジャンルでそれなりに需要があると思われた中での5位指名は意外だった。現場のトレンドの移り変わりの早さを感じた。
打撃に関しては癖のないフォームで広角に安打を打てるタイプで、日本ハムが得意とするタイプの選手。走塁は、隙あらば積極果敢に先の塁を狙う貪欲さもある。

守備面は判断できる映像サンプルがなく、未知数といえる。
スペック的に50m6秒2、遠投100mでNPB基準で身体能力が特別高いわけでもなく、チームでも守備位置が両翼メインなので、確かに各球団が上位で突っ込むには怖い存在だったのがこの位置までスリップした理由だろう。

【指名背景】
万波中正が本格的に一軍でレギュラーを掴んで以降、鎌ヶ谷の有望な外野手が不足していた状況で3位指名の宮崎と抱き合わせのような形で右打ち外野手の星野を獲得できたのは多い。宮崎に頑張ってもらっているうちに鎌ヶ谷で体をつくり、本格的な一軍昇格を目指す形で、焦らず育成できるのは利点。

高校生右打ち外野手という部門で唯一今年のドラフトで指名されたのが彼だったので、5位で獲れたのは良かった。

【総評】
初回入札で西舘のくじを外し、外れ1位の前田悠伍のくじも外した中で細野というハイシーリングなNPBでも希少な剛腕左腕を獲得できたのは大きい。
2位で下手したら外れ1位もあると言われた数年に1度と言われる即戦力級の守備力を持つ捕手進藤、3位で大学ナンバー1外野手と呼ばれるフィジカルモンスターの宮崎一樹、4位で高校生右打者飛距離No.1と言われる飛ばし屋明瀬、5位で癖のないフォームで長打を打てる右打ち外野手の星野、といますぐケアしなきゃいけない補強ポイントではないが、選手のチョイスの納得感とその位置で獲れるならおいしいね、という市場価値のある選手をピックアップしていったことにより、スケールとお得感を高い次元で両立させることに成功したように思う。

【上沢がポスティング移籍、加藤と残留交渉中という先発ローテーションの危機の中で、なぜ先発型投手を指名しなかったのか】

報道の通り、今期の左右のエースとしてチームを支えた上沢、加藤の去就が危ぶまれている中で、支配下投手の指名が細野のみだったのはなぜか?ということを個人的な解釈込みで紐解いていく。

その前に、ファイターズを支えた左右のエース上沢・加藤の成績を振り返ってみよう。

上沢直之
24試合 170回 9勝9敗防御率2.96

加藤貴之
24試合 163.1回 7勝9敗防御率2.87

単純にこれだけ長いイニング数投げて安定した成績を残す選手の穴埋めはドラフト指名した投手が穴埋めするのは現実的に困難で、それならそれで、ドラフトで即戦力投手を複数枚確保して穴埋めしないといけないんじゃないかとなりがちだが、大前提として大学生投手を獲得し1年目から即戦力として活躍できるのかという点は疑問に思ってほしい(1年目から上沢、加藤の穴埋めができると思わないほうがいい)

【近年の大学生投手で真に即戦力として活躍した選手の代表例】

過去3年で1番良かったのが
伊藤大海(1年浪人しているので同じ年にドラフト入団した選手より1歳年上)
23試合 146回 10勝9敗防御率2.90

早川隆久
24試合 137.2回 9勝7敗 防御率3.86

今年の新人大卒投手で一番活躍したのが
荘司康誠
19試合 109.2回 5勝3敗防御率3,36

といった感じだ。
ここで例に挙げて居るのは全員ドラフト1位投手。
実態としては良くて一人頭100投球回、5勝防御率3点台できれば即戦力として御の字で現実的に考えると、仮に即戦力投手を1位、2位で奇跡的に2人確保しても、将来的には上沢、加藤と並ぶかそれ以上の投手になるかもしれないが、すぐ穴埋めは難しい。

実際今年のドラフトにおいて、ファイターズの獲れそうな選手で即戦力の先発としてある程度なれそうな選手は名城大の岩井俊介(ソフトバンク2位で指名される)くらいしかおらず、どのみち確保が厳しかった。

いくら大学生投手豊作と言っても1位クラスの格で指名できるのは今年は1人で、順位縛り等が絡んだのもあってか、2位以下で近年にはない動きとして、いきなり独立リーグや社会人投手が指名され始めたのは、大学生投手の最上位とその他の差を表している事象と捉えている。

【なぜ高校生捕手を指名しなかったのか】
日本ハムの捕手陣は現在最年少が田宮の23歳と、何年も高校生捕手をドラフトで獲得していない。
今年のドラフト市場に堀柊那(オリックス4位)、鈴木叶(ヤクルト4位)等いながらどうして若い捕手を獲らなかったのか、個人的にはこう考えている。

まず一つが、今まで高校生捕手を連続で獲得し続けたわけだが、三軍制を敷いていない日本ハムにおいての二軍での出場機会の分配と、一軍で経験を積ませる機会を与えるのが困難な上に、清水が思ったより伸びなかったことが挙げられる。高卒の若い捕手ばかりで清水の対抗馬もめぼしい選手が見つからず、結果的に大学生捕手の古川指名、宇佐見を巨人からトレードで獲得するまで清水と心中したような格好になってしまった。その失敗を活かした形といえよう。

もう1つは球団として、ドラフト1位指名レベルの球を受けてきて、早い段階で使えそうな選手でない限り、高校生捕手ジャンル自体に懐疑的(デプス的に穴なのは分かっていたはずなのに今年堀や鈴木を指名せず松川や松尾は評価していたのが全て)だと判断していることが考えられる。
レベルの高い投手の球を受けている捕手ほど、早く対応しやすい、プロの球についていけるという仮説を立てたくなるのは現状の松川、松尾を見るとちょっと時期尚早ではあるが思ってしまう。


以上、支配下選手の紹介と今年のファイターズのドラフトに関しての総評でした。最後まで見ていただきありがとうございました。