2019年日本ハムのドラフトを振り返る

皆さん、こんにちは!今年のプロ野球は楽しみにしていたドラフト会議が終わり、日本シリーズも終わり、いよいよストーブリーグに突入していきます。

ここでは、2019年の日本ハムのドラフトを振り返っていきます。

●ドラフト1位 河野 竜生(JFE西日本)

左投げ左打ち
身長:174cm 体重:83kg
最速:151km
球種:スライダー、チェンジアップ、カーブ、ツーシーム

選手紹介:今年の社会人NO.1左腕と呼び声高い高卒3年目の投手。
高卒3年目ながら直球は最速151km、平均140km程度、回転数は2500回転以上を記録する。
制球もまとまっており、四球で試合を崩さない、不調でもゲームメイクできる能力を高く買われている。右打者の内角低めに投じるスラッター気味のボールは武器になる。左打者には外角いっぱいの直球がウイニングショットの中心となる。左打者対策としては、チェンジアップの質を向上させてもらいたい。

今ドラフトの目玉、佐々木朗希を4球団競合の末ロッテが獲得。入札した日本ハムは外れ1位で河野竜生を指名し、オリックスとの競合の末、獲得した。チームに不在の左腕のエース候補として白羽の矢が立った格好だ。

2500回転を記録し、コンスタントに140km以上計測するストレートのレベルはプロ顔負け。

2019パ・リーグ 主な左腕左腕 平均球速

大竹(ソフトバンク) 137km

ミランダ(ソフトバンク) 144km

加藤(日本ハム) 137km

田嶋(オリックス) 142km

辛島(楽天) 133km

ご覧の通り、河野の球速は十分にプロ水準といえる。制球もまとまりがあり、ある程度試合を作れるので、日本ハムの手薄な先発陣に割って入る力は十分にあるだろう。


~高卒社会人を多く指名~

2019年ドラフトで、河野・立野・鈴木健矢(2018年にドラフト解禁済み)を指名した日本ハム。

近年のプロ野球の高卒社会人チーム出身投手のある程度成功した例は山岡(オリックス)、鈴木博志(中日)、加治屋(ソフトバンク)と強いて言えば田嶋(オリックス)位しか居なく、過去に日本ハムも指名し、結果的には抽選を外した柿田(元DeNA)、野村(元中日)の失敗を筆頭に中日、オリックス以外の球団では敬遠されがちなカテゴリとなっている。

今回のドラフトは特殊で、高卒社会人チーム出身投手が5人指名されたのに対し、大卒社会人チーム出身投手が2人と、年々評価を落としている大卒社会人チーム出身投手の低評価ぶりを実感させられた。ドラフト解禁年に指名された大卒社会人チーム投手が宮川(西武ドラフト1位)しかいなく、松岡(西武ドラフト3位)ら独立リーグから主に育成、高く評価されれば支配下で指名されるケースが近年増えてきているのが実情である。

独立リーグ出身選手を獲得するメリットとしては、契約金が安く、高卒1年目の成人するかしないかの若さで指名出来る事だ。(大学生は卒業までの4年、社会人企業チームはチームに加入してからドラフト解禁まで3年かかる)実際に近年、独立リーグからのプロ入りを目指す高校生選手も増えてきている。

話が逸れたので、本題に戻ると、後の球界のエースや、日本代表となる逸材は高卒投手、大卒投手が大半で、社会人出身のピッチャーは少ない。

山岡のようにルーキーから文字通り順調に即戦力としてプロでやっていける投手が少なくなりつつある現代プロ野球において、安易に「即戦力」などというフレーズを多用し過度に起用するのは控え、「高卒4年目(鈴木健矢は大卒ルーキーと同じ扱い)」として慎重に起用してほしいところだ。

今回の日本ハムの指名の意図に関するスカウトや監督のコメントを見ていると、やたら「即戦力」という言葉が並んでいるので、1年目から酷使されるのではないかという不安がよぎる。

東や松本ら大卒ルーキーでも近年ルーキーイヤーから100イニング付近投げて故障するケースが多々あるので、75回位を目安に慎重に起用していきたいのが本音だ。松本と同列に語られがちだが、松本の倍近い134イニングを投げた上茶谷は凄い。

河野に関しては1年目は72回 12先発 5勝4敗 防御率4.56くらいできれば上出来だと思う。谷間・スポット先発レベルから起用し始め、6イニング位平均して投げてその中で貯金が作れれば1年目は順風満帆になるだろう。


●ドラフト2位 立野 和明(東海理化)

右投げ右打ち

身長:181cm

最速:152km

球種:スライダー、カットボール、カーブ、フォーク、ツーシーム

完成度の高い変化球を持つ好素材の投手。指先感覚はエースの資質を感じさせる。投球フォームは千賀滉大(ソフトバンク)を参考にしている。社会人2年目にカットボールを習得し、近年のトレンドである某著書で有名な「スプリット・スラット理論」に近い投球スタイルを確立出来れば活路が見えてくるはず。

制球に難があり、都市対抗で打ち込まれ、素材の域を抜け出せないでいるが、好調時の投球を再現性高く出来ればプロ野球でもエースになれる。前述した通り、「即戦力」扱いに拘らず、まずはファームで先発としてローテの一角を担い、後半戦に顔見せする位の期待値で1年目は見たい。


●ドラフト3位 上野 響平(京都国際高)

右投げ右打ち

身長:174cm

ポジション:遊撃手

遠投110m

50m6秒1

高校通算11本塁打

高校生離れした守備力が売りの遊撃手。3年春に初本塁打を記録してから夏までに11本塁打をマークするなど打撃面で成長を遂げている。日本ハム熊崎スカウトからはリーダーシップも高く買われ、次世代の内野手の中心として期待されている。近い選手としては、田中幹也(東海大菅生→亜細亜大)タイプ。

右打ちの内野手が少なく、完成度の高い守備力を有している上野は内野手育成能力に課題を抱える日本ハムにうってつけの存在といえる。

平沼が飛躍し、二軍卒業といっていいような状態になり、鎌ヶ谷の若手遊撃手が難波しかいない現状を踏まえての指名だろう。

近年の高校生遊撃手は身体能力を買われて指名されてプロ入り後にコンバートされるケースがかなり増えているが、上野はプロ入り後にも遊撃手として勝負できる可能性のある守備力を備えているため、難波とともに二軍で遊撃手として起用されるだろう。本拠地移転の頃に一軍定着、レギュラーとして試合に出ている形が理想。


●ドラフト4位 鈴木 健矢(JX-ENEOS)

右投げ右打ち
身長:177cm
最速:147km
球種:スライダー、シンカー、チェンジアップ

ドラフト解禁済みの高卒4年目右腕。大きくテイクバックを取り斜めから角度をつけて投げる、出所が見えにくい独特のフォームが特徴的な変則サイドスローピッチャー。体のバランスの良さ、柔軟性を感じる。体重増加、フォーム変更で最速は147kmまで向上した。右打者の内角を強気に責めていけるマウンド度胸もある。サイドハンドの投手としては若干馬力不足な感じはあるが、貴重な変則サイドハンド右腕として活躍に期待したい。

二軍の本拠地、鎌ヶ谷スタジアムがある千葉県の木更津総合高校出身ということもあり、去年の田宮のような「千葉枠」で指名した選手といってもいい。

日本ハムのサイドスロー投手の指名は河野以来となるわけだが、今のタイミングで変則サイドハンドピッチャーを指名した暁にはヤクルトからトレードで加入した秋吉の存在が大きい。

秋吉も鈴木と共通点が多く、体の柔軟性に富んだ投手で、「でんでん太鼓」のような特徴のある投球フォームで、全盛期より球速が落ちて若干馬力が乏しいが、ピッチングスタイルとしてはベース板を広く使いながら打たせて取る投球で日本ハムのクローザーを務めるまでになった。鈴木も秋吉から学ぶことはたくさんあるだろうし、刺激を受けて成長してもらいたい。

今季の日本ハムは吉井理人投手コーチの退団、マルティネスの全休、上沢の離脱、いわゆるショートスターター、ないし栗山式オープナーによりリリーフ陣の負担が激増し、玉井、秋吉、宮西、石川直也、堀、公文の6人が50試合登板を達成する、という運用面で考えたらどちらかといえば不名誉な記録を作ってしまったほどリリーフに負担をかけた。のわりに順位は5位で、65試合登板した玉井を筆頭に勤続疲労の不安も拭えない。そんなチーム事情なので、オリンピックのインターバル(プロ野球休止期間)も活用し、彼がそれなりに無理なく登板してくれれば助かるはずだ。

余談ではあるが今年のドラフトは3位~4位までの間に松岡、津森、伊勢、村西、津森と5名のサイドハンド右腕がドラフト指名を受けた。松岡以外のピッチャーは鈴木と同い年にあたるため、タイプは違うが同じサイドハンドとして今後比較されていきそうだ。


●ドラフト5位 望月 大希’(創価大)

右投げ右打ち

身長:187cm

球種:スライダー、ツーシーム、フォーク

恵まれた体格から繰り出す140km台後半の速球が持ち味の大型右腕。劇的に飛躍する可能性を秘めている原石。

3年春のリーグ戦で最優秀防御率を記録したが、実績が少なく、投球が単調になるなど課題も多く、早い段階からの一軍起用というより、素材型右腕として獲得したと思う。


●ドラフト6位 梅林 優貴(広島文化学園大学)

右投げ右打ち

ポジション:捕手

身長:173cm

遠投110m

50m6秒2


本ドラフトの隠し球枠。2塁送球1.85秒の強肩を誇る。中国2部リーグ所属ながらMVP、首位打者、ベストナインを獲得し、主将としてチームをけん引、攻守で活躍した。秋季リーグではサイクル安打を達成し、打率は驚異の.643を記録し首位打者となった。

日本ハムは毎年ドラフトで捕手を指名しており、支配下の捕手の人数が梅林を含め8人と、三軍制を敷いているチーム並みに捕手の人数が多い中での指名となっており、出場機会の分配等での不安は拭えない。

清水がヘルニアを患い、二番手以下の捕手のレベルがリプレイスメントレベルに足らず、捕手の人数が多いからこそ、近年育成できていない大卒野手というカテゴリだからこそ妥協に走らず、捕手豊作年の今年のドラフトで上位指名してほしかった部分はある。(後述する7位の片岡、育成1位の宮田ら西川の劣化著しい中堅の後釜候補の指名に関してにも言えることだが)

越えるべき壁は清水ではなく、まずは宇佐見、石川亮。ファームで成果を出して一軍定着を目指してもらいたい。


●ドラフト7位 片岡 奨人(東日本国際大)

右投げ左打ち

ポジション:外野手

身長:184cm

遠投:110m

50m5秒9

札幌生まれ、札幌日大高校出の道産子。通算51試合で.315、2本塁打、18盗塁を記録し、走攻守三拍子揃った外野手である。癖のないフォームで巧打を放つ。

走力に課題を抱える日本ハムにうってつけの俊足の選手で、中堅手としても起用される可能性がある。主に代走、守備固めでも一軍に定着できれば戦力として期待できるチーム事情にあるので、持ち味を最大限に発揮して、梅林同様いきなりレギュラーを目指すのではなく、まずは一軍昇格、定着を目指してもらいたい。

育成指名…育成では宮田(福岡大)、樋口、長谷川(BC新潟)を指名した。

 育成選手、特に大卒社会人は支配下登録まで2年ほどしか待ってくれないのが近年のプロ野球なので、結果が求められる。今回もBCリーグから2名を指名した日本ハム。今後の関係に注目したい。

~指名の総括~

例年の高卒偏重指名からうって変わり、高校生1人という「らしくない指名」をした今年の日本ハムのドラフト。右打ち外野手、三塁手以外のウィークポイントを的確に補っていった印象があるが、その反面投手陣中心の指名で、好素材を逃してしまったように感じる。