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有隣堂・松信健太郎社長 インタビュー: コロナ禍で鮮明になった脆弱なビジネスモデル  取次・書店の共存モデルの早期構築を!

2020年は新型コロナウイルスが世界を席巻し、これまでの生活様式を一変させた一年となりました。2021年の幕が開けても日本では2度目の緊急事態宣言が発出され、今なお、社会生活全般にわたって先行き不透明な状況が続いています。コロナ禍に見舞われ1年が経過しようとする今、書店は今後、どのように経営の舵を切っていけば良いのでしょうか。まずは有隣堂の松信健太郎社長に話を伺いました。
(2月10日取材 本誌編集部・諸山)

note【有隣堂】松信健太郎代表取締役社長

有隣堂 代表取締役社長 松信 健太郎 氏

コロナの対応に追われた一年

――2020年はどのような一年でしたか。

昨年は新型コロナウイルス(以下、コロナ)に始まり、コロナに終わった一年でした。一昨年12月の中国・武漢から始まり、横浜では2月初めのダイヤモンド・プリンセス号の集団感染、4~5月には緊急事態宣言の発出、それに伴う弊社8月期決算の悪化など……。生活レベルでも経営レベルでもコロナにどう対峙していくか、その対応に追われた一年でした。

――そのため、厳しい決算となってしまいました。

上半期終了時点(2020年2月)までは、書店業が厳しいと言われる中、書店部門の売上前年比は99%と健闘し、全社の売上高も同116%と好調に推移していました。しかし、同年4~5月の緊急事態宣言の発出により、ほとんどの書店と音楽教室の休業を余儀なくされました。これにより約40億円の売上が毀損されたのです。何とか、営業・経常利益は残せましたが、その期間の家賃や人件費といったコストを特別損失で計上した結果、最終損益は赤字となりました。

――一方で、巣ごもり需要による児童書や学参書のほか、「鬼滅の刃」(以下、鬼滅)特需など書店は好況という報道がありました。

確かにマーケット全体で、巣ごもり需要があったと聞いてもいますし、鬼滅の影響も大きかったと思います。しかし、弊社の店舗は都心部のインショップ店がほとんどです。4~5月の2か月間、9割もの店舗が休業するという、これまでに経験したことのない事態に見舞われたのです。弊社に関していえば、巣ごもりや鬼滅で取り返すことはできませんでした。

――外商についてはいかがでしょうか。

大まかに申し上げると、書店と音楽教室事業は甚大な影響がありましたが、それ以外の外商に関しては、あまり影響を受けませんでした。ただ、その中でも小さな変化はありました。大学や専門学校の休校・オンライン授業化などの影響で、「有隣堂エデュケーションOnline」への需要が一気に高まりました。これは弊社と契約している大学や専門学校の生徒がテキストや教材などを購入できる専用サイトです。

また、アスクル事業も、法人ではなく個人客からの注文が増えました。外商部門はコロナにより多少の売上増がありました。ただ、書店事業と音楽教室事業の落ち込みを補うほどではありません。

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