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フロホリ2023 感想文(ネタバレあり)

東京03  FROLIC A HOLIC
feat. Creepy Nuts in 日本武道館
〜なんと括っていいか、まだ分からない〜

感情がおさまりつかなくて眠れず、
感想を書き始めたら筆が止まらず、
気が付いたら朝だった。
#東京03CreepyNuts武道館
最高に楽しかった!ただそれと同時に、結構苦しかったっていうあなたと分かち合いたくて。感想文というか、長い怪文書をしたためました。

前置き 私とフロホリ


フロホリ2015「ラブストーリー『取り返しのつかない姿』」
チケット取らず後悔した。それが私の「取り返しのつかない姿」。

満を持して参加したフロホリ2018「何が格好良いのかまだ分らない」

カッコいいとダサいは紙一重で、何が人間として格好良いのかは分からない。格好良くても格好悪くても笑った。ひたすら笑った。そして、フロホリに惚れ込んだ。良い作品を目指して奔走する汗だくの大人たちは格好良かった。各プロの技の結集だった。また観たかったけど、コロナになり、お笑いライブも遠のいてしまった。

そしてフロホリ2023「なんと括っていいか、まだ分からない」正直、結構ふわっとしたタイトルだ。
ラジオ発企画で、CreepyNutsとコラボ。フロホリは、音楽と人間ドラマが緻密に相互に作用する。だからこそ、その場所に、今回のメンバーは適任としか思えなかった。企画発表時に、出演者よりも自信があったのは、私。そして、フロホリとクリーピーの両方のファン。おそらく、オークラさんがその始めの1人だったというだけと思う。(発案者だけど、とっても両サイドのファンでいらっしゃる!っていうことが言いたい)

私も、どのジャンルが好きだと括れない。ビッグバンドジャズもヒップホップもロックもポップもコントも漫才もラジオもテレビもアニメも舞台も好きだ。私もなんと括ったらいいのか分からない。この感想もどういう感情か分からない。痺れた。楽しかった。なんかちょっとモヤモヤする。やっぱり怖い。なんだこれ。好きでした〜最高〜って書きたいだけ。でも、まだほかにこの感情を捉えられそうな言葉がある気がするから、書いてみる。

1日目と2日目。共に幸運にも現地で鑑賞することができた。配信や映像でじっくり観る前に書いておく。記憶が正確でないことは許してください。あまりにすごいボディブローの後で、細部を綴るのは難しい。間違ってたり記載が雑だったりする箇所もあるかと思います。申し訳ございません(軽率な土下座) ネタバレ…というか、観た人に宛てた記事です。出演者感想とか演出の詳細じゃなくて、脚本の大筋についての感想。前者は書き足りない。表現力に対して語彙力が足りない。でも、もう素晴らしい感想が出回ってるから、そこは任せます。


(ここからネタバレ)時系列での感想

未見の方は公式レポをどうぞ

まず、導入。いろんなジャンルから来ているであろう、括れない客席に対して、ご案内があるのが最高。優しい世界。豊本さんがスーッと導入を作ってくれる。
「括れない悩み」は自己紹介であると共に、今回のテーマが示される。舞台上で青年二人が述べる悩みは、Creepyファン側は彼らのことだと解釈したかもしれない。芸能界の誰かのファンであれば、「キャラ」として括られた芸能人が消費されることについてすぐにピンとくるだろう。個人としても、求められる役割と自分のやりたいことの乖離を感じる人もいたかも。なんとなく全員が共有する普遍的なモヤモヤ。「大人ってそんなもんだ」と一蹴された。…死んだ目になるしかない。

その反動での華やかなオープニングソング「括るな」はスカッとする。そうそう!これが見たかったんだ!

「人の目」で、自意識と、演じるということへの言及。客がいてこその舞台。「求められる…でも俺はやりたくないのに…」という葛藤がここでも示される。反対に、客がいなければ…?という役者としてのアイデンティクライシスも問われるけど、吉住さんの悲しみと可笑しさでどうにかなりそう。

「括れないラジオ①」での、休憩無いとツラい。ラジオも曲も演奏もコントと交わっていく。このカタルシス!そうそうフロホリってこれこれ!

「括れない感情」でじっくり東京03がコントするのがたまらなく良い…観客目線の狂言回しだけじゃなくて、暴れる飯塚さんが見れるのが嬉しくてたまらない…。両方同時にできちゃうのも…こわ…すご…。
「括れないラジオ②」は唯一、DJ松永が演者を料理する時間。世界一贅沢な無駄遣い(別で企画化も何卒!)ダブルキャストのラブちゃん、それぞれの持ち場で最強の力を発揮しすぎ…プロって強…。
「居酒屋にて」の「ニンじゃない」は、今までとは逆に、「俺はやりたいけど周りはやってくれるな!」という方の「括り」。

「Change My Life」は野上青年が、才を見出され、括られ、括りに苦しむ。(その過程でR-指定とGentle Forest Jazz Bandの芸を魅せつけられるが…その凄まじさは皆書いてるだろうから割愛。小節数どう管理してるんですか…怖)ラジオ発であり、仕事人の「サントラ」が光る。
「やめる」…とりあえずこういう「すごく格好悪い」角田さんの役が大好きなんだ私は…!ZIGOKUさんとマネさんの「やめる!/ない!」は一生観てたいよね。伏線回収の妙。全然遊びがない…あれ、これってフロホリか…?

キャラを辞めて、ラップはやめない「野上」。
地獄みたいな解釈だけど、彼は括られたキャラ芸で再度ブレイクを果たす。パッケージ・売り出し方・見せ方…が分かりやすくてキャッチーだ。一見、自分に合うし、「ニン」もなくはない、というところで活動の落とし所を見つけた彼。ただ、「一匹狼に憧れるけどモテたら一匹じゃない」「人の良さがバレたディスりMC」「ネガティブキャラなのに成功者」という悩ましい状況が繰り返されているのは火を見るよりも明らか。この点の打破については明言がなく、脚本では「『大人』は受け入れる」の一言。

…え?地獄じゃん。…「のびしろ」の先も、結局いつか苦しくなる?「おさまりつかない」私の不安。

1日目終演後、ここまで考えて、ちょっと落ちてしまった。私が選曲したのはCreepyNutsの「オトナ」。死んだ目で「なぜ息を吸って吐くだけで難しいんでしょうか…」と解決策のないやるせなさへの共感を求めた。(アルバム最後まで聴いた。「かつ天」は名盤だが、またゼロから歩みだしても、結局そんな結末じゃ…と気は晴れなかった)

明けて、2日目。
ヒントをくれたのは佐久間さんの「松永。サントラ、良い曲だね。」本心から出たであろうその言葉。舞台の向こうの世界でも、きっと野上さんやラブちゃんや暢子さんや、RN土下座バカとか、誰かのサントラになっているはず。
そうか、このCreepyの曲たちもフロホリの舞台装置の一部だ。そうか、「のびしろ」までが本編。この「のびしろ」がここにある、その解釈が甘かったんだ。何回も聴いてきたのに(悔しい)。この曲が、本編の最後であり、「大人ってそういうもんなの!そういうの受け入れてやってんだよ!」に対するアンサーで、この話の終着地点なんだ…。

「のびしろ」でラッパーが歌うのは「鏡の中でわろてるお前。括れやしなかったわ、たったの3文字で」。
この青年の鏡の中の姿は、笑っている。しかも、結局どうやら「オトナ」では括れなかった…らしい。「括り」に対して完全降伏したわけでもなさそう。「ここまで来れた。できるようになったこともある。これからできるようになりたいこともある。括りの中から打開できた、または打開できず折衷案を取った。…それって、これからもできるかも。これからできることも増えるかも。」
これは「夢や希望」というクサい単語で括りたくないけど、そういうのに似たあったかい何か。セリフでは収まらなかったけど、音楽に詰まってる。この曲は基本的には「俺」の話なのだが、「『俺ら』まだのびしろしかないわ」と一人称複数に拡張されて、関わる人全員にのびしろを示す、懐の深さ。そして、ある種の能天気な前向きさ。ここで死んだ魚の目は、ちょっと明日もどうにかやるか…くらいの心地よい暖かさにより優しく閉じることになる。

最初の「括れない悩み」へ共感した一同を、楽曲が掬い取っていくとは…。これって、これまでの「フロホリ」の括りを越えてる。
いやフロホリだ。それぞれのプロがそれぞれの「持ち場/括り」で、でもそれを越えた「ニン」じゃないことにものびのびと挑戦して、それを表現できる場所。これはフロホリではある。ただ、それをまとめ上げる緻密さは前回のフロホリを凌駕していた。
結局、今回の公演はなんだったのか。コントライブで、色んなジャンルの音楽ライブで、ストレートプレイで、ラップミュージカルでもあり、ラジオで、顔芸だし、テレビみたいなワイプ芸もあり、アニメもあったし、チュロスとペンラは光ってるし…うん。ここまで書いてみたけど、やっぱり、「なんと括っていいのか、まだ分からない」。

こんなすごいものを作っちゃった方々、
こんなすごいものを観ちゃった我々。
特に、すごすぎてなんかもう打ちのめされたり、
もっとできたのにって思ったりして、
明日からもうやだ…ってなってるハングリーな人。
最高と最低の両方、括れない感情、興奮と不安でおさまりつかなくて、ぐしゃぐしゃな人。
そんな不器用で、意地っ張りで、馬鹿真面目なあなたに幸あれ。

ここまで言葉で書いてきたけど、音楽でも打たれたから、私も返したくなってしまった…注釈でもカッコばかりつけてて格好悪い…(曲はめちゃくちゃ格好良いです)(軽率なスライディング土下座)

真面目な大遊び。またひょっこり続いて欲しいな。
その辺、ご検討ください!!

FROLIC A HOLIC 馬鹿騒ぎ中毒
中毒症状と共に
2023.03.05