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GoToから続く、大手旅行会社優遇

県民割の拡大、全国旅行支援制度など。
本来「旅行業界全体に恩恵のある施策」であるべき、これらの施策は、一部大手旅行会社に恩恵が偏る構造になってしまっている。
GoToキャンペーンの時から指摘されている当問題は解決されることがなく、状況は悪化しているとも感じる。
これら施策に対して真剣に取り組むほど、この一部大手旅行会社に恩恵が偏る構造に、中小旅行会社の私は強い疑念を抱いてしまう。

事務局の運営委託費

GoToトラベル事務局は一部大手旅行会社から構成される団体に業務を委託して運営されている。

「GoToトラベルキャンペーン」の運営事務局の委託先が、日本旅行業協会(JATA)など7団体で構成するツーリズム産業共同提案体に決まったと発表した。
(略)
ツーリズム産業共同提案体の構成団体はJATAのほか、全国旅行業協会(ANTA)、日本観光振興協会、JTB、KNT-CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズ。

観光経済新聞(2020年7月16日)

2020年から始まるGoToトラベル事業に対して、運営委託が発生し、委託費用がこれら一部大手旅行会社に脈々と流れ続けるというのが2年ほど続いている。
GoToトラベル事務局へ支払われる委託費は「1866億円」。7つの団体で等分したと仮定すると、1団体あたり約250億円となる。これだけ多くの税金が一部の企業に投入されるのにも関わらず、GoTo事務局の受託費の全容はブラックボックスとなっており、個別団体・会社別で受託額がどれくらいの規模で受けているのかは分かっていない。
事務局運営の体制・規模の適正については、議論する下地のデータが全く開示されておらず、GoToにおける「一部大手旅行会社優遇」の構造に、中小旅行会社の私は空しく傍観することしかできなかった。

しかし、「県民割拡大」「全国旅行支援制度」など、名前を変えて「一部大手旅行会社に都合の良い」構造を維持させる現状には我慢ができない。

「運営委託費」という莫大な国のお金が一部企業に偏って投入されていることだけではなく、中小旅行代理店にとって不利な「情報開示」「ルール設計」がなされている。

今月の「県民割拡大」「全国旅行支援制度」発表を例に、我々中小旅行代理店がいかに不利を受けているかを整理したい。

「県民割拡大」「全国旅行支援制度」の発表

GoToから続く国の旅行需要喚起施策は、感染状況や国民の意見を反映し、変化を繰り返してきた。この変化については納得しており、変わることに関して不満はない。
ただ、新しく制度が変わるたびに、不利を感じている。
事務局の運営に携わる大手旅行会社は、いち早くこれら制度についての詳細情報をキャッチできるのに、運営にノータッチの中小旅行会社は一般消費者と同じタイミング、同じ情報量でしか情報を知り得ない。

今月新しく発表された県民割の拡大、全国旅行支援制度についても、政府・マスコミの発表で初めて実施されることを知り、詳細については未だに発表待ちの状態だ(6月26日(日)時点)。

「情報の非対称性」を前提とする事業において、この情報格差は顧客との関係性に与える影響も大きく、現状は中小旅行代理店の存在意義を脅かすものとなっている。

「県民割拡大」「全国旅行支援制度」情報開示の時系列

・2022年6月9日
マスコミから「GoTo再開見送り」と「県民割拡大」のニュースが出始める。お客さまからの問い合わせが増え始めるが、旅行会社向けに詳細は何も開示されていない。

「GoToトラベル」代替の「県民割」、旅行先を全国に拡大へ…観光需要の喚起に軸足

読売新聞(2022年6月9日)

県民割、期限延長 対象は全国に拡大へ 「GoTo」再開は先送り

毎日新聞(2022年6月9日)

・2022年6月15日
岸田首相が「県民割の拡大」について発表。補助額は今後検討と発表され、ここでも詳細の開示はなし。お客さまからの問い合わせが殺到するが、案内はできない状況は続く。

「県民割」、7月前半から行き先を全国に拡大…岸田首相「地域観光を一層強力に支援」

読売新聞(2022年6月15日)

・2022年6月17日
観光庁が「全国旅行支援」制度を新たに発表。
割引額や率について開示があったもの(参考)の、例えば「既存の予約がどうなるか?」「どのように申請すれば適応されるのか?」などのお客さまの質問に回答できるような制度詳細の開示は未だにない。

 6月中の感染状況を見極めた上で、感染状況の改善が確認できれば、7月前半より、全国を対象とした観光需要喚起策を実施します。

観光庁(2022年6月17日)


問い合わせ対応に逼迫する中小旅行会社

中小旅行会社の現場が頭を悩ます問題

新制度が発表されたタイミングで、お客様からの問い合わせは殺到した。
しかし我々中小旅行会社は制度運営に全く関わっていないため、情報共有が全くされていない
「お客さまが分からないこと」= 「中小旅行会社も把握していないこと」で、殺到するお客様の問い合わせに対して「まだ何も分かりません」という不毛なやり取りしかできない。
売上に結びつくような販売活動ができず、制度に関するお問い合わせ対応だけで「顧客からの信頼」と「人員リソース」が奪われる状態が続いてしまうのだ。

さらに「県民割の拡大」方針には、とてもショックを受けた。
現状の県民割は、決済方法などの細かいルールが各都道府県でバラバラ。もし全国拡大し、対応が必要となると、各47都道府県のルール内容・改訂情報を細かく観察・対応しないといけなくなる。
特にお金に関するミスがあってはならない旅行販売において、この複雑な割引制度は現場の負担を異常なまでに増やす。「県民割の拡大」が、中小旅行会社には対応できない規模感であることが全く理解されていない。
元々大手旅行会社のように余剰人員がいない上に、先行発表によってリソースが無駄に奪われている私たちに、この対応は不可能だ。

こうした現場を無視した流れは、GoToからずっと続いている。

中小旅行会社からのお願い

今後の旅行需要喚起策については、旅行会社に対しての情報共有フローを整理し、中小旅行会社が必要以上に疲弊しないような進め方を取っていただきたい。

【JATA / ANTA】へのお願い

★ 期間ごとのGoTo事務局の個別団体・会社別の受託額開示
同じ旅行業界から見ても、不適正な税金の使われ方・規模のように感じている。予算規模的に今後も継続されることが予想されるので、早いうちに適正な運営がなされているのかを議論できるようにすべき。

【観光庁】へのお願い

★ 情報開示フローの整備
まずは旅行会社に先に情報開示をしていただきたい。
情報リークの懸念で先の情報開示ができない場合は、消費者・マスコミ向けの発表と同時で構わないので、旅行会社向けに「運用ルール」を展開してほしい。

★ 全国統一ルールでの展開
県民割のような様々なルールが混在する方式を、無理やりに全国展開しないで欲しい。煩雑で、中小旅行会社で対応できるものではない。

以上です。
よろしくお願いします。


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