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境界知能

知的障害は主にIQ69以下を指しますが、「境界知能」はそこまではいかないものの一定の支援が必要といった人たちです(IQ70~84)。
このような境界知能の方は人口の約14%いるとされ、学校などのクラスにも数人いる計算になります。明確な知的障害や発達障害と診断されていると、特別支援学級でその人の特性に合わせた配慮を受けたり、普通級に在籍していても特別支援教育の対象になりやすかったりするのですが、境界知能の方は、両親や学校にも気づかれない事が多く、様々な生きづらさを抱えて生きている事もあります。境界知能の方は勉強が苦手だけでなく、運動も苦手(不器用だったりするので、体育・図工・家庭科・音楽などの分野でも困難を抱えたりして、周りについていけなく取り残されてしまう事もあります)、コミュニケーションも苦手と、子供の時だけではなく、大人になってからも社会参加の制限などもあり、経済面や就労面、結婚、自己実現など様々な領域などで生きづらさを抱える事も少なくありません。
また、境界知能の方が、障害者手帳を取得して様々なサービス(障害者雇用、障害者福祉サービス、公営住宅の優先入居など)を受けられるかは、自治体によってバラつきがあり、確実に受けられる配慮ではありません。

境界知能の人達は、大人、子供に関わらず、自分なりに努力して頑張って、物事に取り組んでいます。その過程で、テストの点数が低かったり、課題が上手く実行出来なかったりして、怒鳴られたり、居残り勉強を余儀なくされたり、馬鹿にされたりしていく中で、自分に怒りを感じたり、無力感を感じたりしていきます。場合によっては、うつ病になったり、社交不安障害、PTSD症状、自傷他害、パーソナリティ障害など、様々な二次的な障害が生まれる危険性も出てきます。また、同世代の周りの人と、同じような経験をしていく事が難しくなり、孤立したり、疎外感を感じ、社会との交流も少なくなってしまう事もあります。
 
現状、世の中に14%もいるとされる、境界知能の方に対しての支援は十分と言えません。
学習面や対人面などで生きづらさを抱える子どもに対して、学習の基礎となる力(見る力、聞く力、覚える力など)やコミュニケーション能力、運動機能を向上させる、「コグトレ」という支援方法は徐々に広まってきていますが、これも確実に提供されるものではないですし、限定的です。また大人の境界知能の方への支援の仕方に関しての、対策・情報も少ないですし、書籍もほとんど見られません。
まず、支援が十分できない理由の1つに、この人は「境界知能」だと適切に判断をする事が困難な事が挙げられます。境界知能という事を明確に本人や周りが気づけないという点もあり、何となく生きづらいなと感じ、徐々に様々な社会での生きづらさや二次的な障害が生じる事もあると思います。また、一回の知能検査などでは点数のばらつきがあり判断が難しかったりすると思います。そもそも、そこまで正確な知能検査を行う機会がないかもしれません。また、境界知能だとしても周りの環境が整っていれば、生きづらさを感じない事もあるかもしれません。この場合「境界知能」というレッテルを貼ってしまうと、ネガティブな影響を及ぼしてしまう可能性もあります。このため、境界知能の方に対して、適切な支援をしていく事は簡単ではないのであろうと思います。しかし、生きづらさを訴えている人や、訴えがないにしても、境界知能の為に様々な身体的・精神的・社会的なサイン・兆候が表れている方に対しては、ある一定の基準を設けて、支援を検討して配慮していく体制や仕組みづくりを整えていく必要性があるのではないかと思います。
個人的には、まず境界知能の方々が抱えるであろう、ライフステージごとの生きづらさや・困難、二次的な障害等を社会に啓発していき、人口の14%の方々に起こり得る事と伝えていく必要があると思います。その後、ライフステージ事に、子供、大人に関わらず、医療や学校の場での境界知能に関する知能検査であったり、境界知能の方が抱える生きづらさの客観的指標を具体的に定義し、家庭・教育現場・地域で境界知能の人の生きづらさ・兆候が表れた際にすぐに把握できる社会を構築していく事が大切になるのではないかと思います。そして、そのような生きづらさを感じる人に対しての、発達支援、福祉サービス、就労支援などを整えていく必要があると思います。
そして境界知能の方も、自分が希望する職業に就く事が出来たり、経済面も一般水準の賃金を稼げたり、周りの人達と同様の文化的な生活を送れる選択肢があるような社会になっていけばと感じています。
 
長々と読んで頂きありがとうございました。

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