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9.8-談笑- vol.3「松本英晃/時速36kmドラマー」

前書き

今回の対談相手は、第3回にしてようやくバンドマン…しかし、ボーカルではなく、ドラマー、時速36kmよりヒデアキが登場。スプリットツアー札幌公演のツアーファイナルから程なくして、下北沢のガストに集合した。ハイボールと、そこに加えてボトルワイン一本というハイペースで飲み明かし、語り明かした。

話題は両バンドの出会いから当時の空気、それぞれがそれぞれに抱えていた気持ちを赤裸々に打ち明けあったり、互いの持っている音楽的なこだわりや哲学、創作論にまで及んだ。そして、2バンドが協力して完遂したスプリットツアーの4公演についても各公演の模様を振り返りながら語り合い、最終的に話は大いに脱線してくだらない話を呂律の回らないおじさん二人がベラベラと捲し立てる地獄へと発展。二時間ほどの対話は無事とは言い難くも、なんとか終わりを迎えた。

時速36km最年少メンバーにして隠れた大黒柱で、一番変態で偏屈で、けれどピュアでシャープな視線を隠しもった逸材、松本ヒデアキ。(彼曰く)「口を開くと碌なことがない」と発言の場を自らセーブしてきた男の胸中やいかに。


和風ハンバーグに舌鼓を打つヒデアキ。

「コポォwww」

ヒデアキ よろしくお願いします…。

カワノ よろしくお願いします。まぁそう固くならないで、雑談雑談で行きましょうや。

ヒデアキ …俺はさ、普通に理由聞いてるけど、そもそもなんで俺なの?笑

カワノ はっはっはっ笑

ヒデアキ 普通こう言うのってボーカルじゃないですか笑

カワノ いや、そもそもさ、付き合いも長くなってきたけど、俺と一番仲良い時速のメンバーって多分ヒデアキじゃん? それにさ、大概バンドのことで口を開く人ってボーカルが多いじゃない。そこ以外の…ドラマーのヒデアキから色々話を聞くっていうのが…面白いじゃない?

ヒデアキ まぁ俺、公の舞台で口を開くことを禁じられてるからね笑 ライブでも一言も喋らず…。「喋りすぎて時間押す」とか、「口をひらけばオタクトークばかり」とか…。

カワノ 活かされぬトークスキルがね笑 こんなに多弁なのに。

ヒデアキ ねぇ笑

カワノ …まぁそもそもね、この対談企画もさ…。

ヒデアキ 毎回読んでるけど、渋めだよね笑 初っ端から個人的な知人出てくるし笑

カワノ そうそう笑 まぁ、さ、インタビューほどかしこまった感じじゃなくてさ、単純に俺が好きなやつ、友達とか…そういう奴らとの個人的な会話でCRYAMYとか、そいつのことについて解き明かす的な…そういうのできりゃいいよね、っていうので始めたからさ。でさ、ツアーもひと段落したわけだから(この収録日より一週間後に追加公演が行われた。)、そこで一緒に回ってきた時速36km…ヒデアキと会話して、色々話せればな、ってさ。…お前、面白いし。

ヒデアキ いやぁ、俺、三日前ぐらいから、「中身のある話できるかな…」って戦々恐々としてたけどね笑 倉田さん(第一回ゲスト。カワノの個人的な友人。)、台本というか、聞くことのリスト作ってきてたし笑

カワノ ふふふ笑 いや、マジで適当でいいよ、そんなの笑

ヒデアキ これの編集とか、大変じゃないの?

カワノ いやね、実は文字起こししたまんまが多いんだよね。綺麗に整えてるわけではないから、よく読むと支離滅裂ってるところもあるし、俺とか、よく「まぁ…」っていうのもそのまんま笑 文字起こししてくれてるやつが「カワノくん、クソ吃りますね…」っってたし笑

ヒデアキ ははは笑 お前の笑いかた、「ふふふ笑」になってんの、面白いんだよね笑 原文、あんたの笑いかたそのまんま笑 俺も半角カタカナでさ、「コポォwww」とか、やってくんないかな笑

カワノ はっはっはっ笑 やめてくれよ、オタクが笑 …まぁ、気楽に喋ってくれたらいいからさ笑

ヒデアキ ではここまでは序文ということで笑

愛憎入り混じる感じ笑

ヒデアキ お酒頼んじゃおっかな。(メニュー見ながら)「アルコール」…「小さなおかず」っ(ねっとりした声でメニューを読む。)。

カワノ ふふふ笑 きもいなぁ笑 …俺のハイボールこねぇんだよな…。

ヒデアキ そうだね、賑わってるしね。

カワノ まぁゆるり待ちますか。

ヒデアキ ではでは…出会いからいきましょうか。

カワノ そうねぇ。…一番最初は2018年かな?

ヒデアキ そう、TOKYO CALLING。ちゃんと顔を合わせたのは2018年の9月だったよね。

カワノ そうだね。あれ結成してね…5、6回目のライブだったんだよね。

ヒデアキ そうだったんだ!

カワノ うん。元々渋谷乙(渋谷にかつてあったライブハウス。CRYAMYは結成当初ここによく出ていた。)によく出てて、下北だとね、daisybarのイベント、金子さん(時速36kmマネージャー。daisybarでブッキングも行っている。)が出してくれてたね。SUPとか、その時が初対面。

ヒデアキ ふーん。

カワノ そこで時速のこと教えてもらったんだよね。

ヒデアキ その頃から知ってくれてたんだね。

カワノ 知ってたよ。最初見たのが「夢を見ている」…。音、悪かった笑

ヒデアキ だろうね笑

カワノ いや、でもいい曲だなって思ってたの。そしたらそこからすぐ「まだ俺が俺になる前の俺に。」が出て、一気にプロダクションが仕上がったな、って。で、コーリングで共演した日に、…まだすごい俺に丁寧だった頃の荻野が笑 「あの、これよかったら…」ってサンプル版くれてさ笑 働いてた店で流したりしてたよ、サブスクやってなかったから、CDで笑

ヒデアキ ははは笑

カワノ まぁ、あと、当時俺はしんのすけとバチってたね笑

ヒデアキ え、マジ!?

カワノ ふふ笑 いや、っていうかさ…この話したと思うんだけど、楽屋でさ、しんちゃんがおってさ、仲良くなろうと思って、俺突然全裸になって、「どうよ、俺の体!」って笑 ウケると思ったんだよね。そしたら、しんのすけ、後々聞いたら、「何こいつ…キモ…」って思ったらしいんだけどさ笑 で、そのしんのすけの乾いた笑いが…俺の、当時の若かりし頃の俺の癇に障って…「なんだテメェ!こっちが下手に出たらいい気になりやがって!」っつって笑

ヒデアキ はっはっはっ!笑 当たり前だよ!


当時の様子。ヒデアキ曰く、「二人ともトッポい」。
この距離だが当時は別に仲良くはなかった。あと二人とも髪型が最悪である。

カワノ そう笑 だからその日は、荻野としんのすけとコミュニケーション取ったくらいで…。

ヒデアキ 俺とカイくんは宇都宮だね。俺たちのツアー。カワノが大変なことになってた日(当日、カワノはドラムセットに突き飛ばされて背中を怪我した。)。

カワノ そう!34(群馬出身のロックバンド。現在活動休止中。読みは「さんじゅうし」。)もいたよね。で、打ち上げで喋った。

ヒデアキ 打ち上げって言ってもさ、俺らすぐかえっちゃったんだよね笑 レンタカーだし、って。で、始発まで待たなくちゃいけないCRYAMYと34を捨てていく、っていうさ笑

カワノ そう、それでまたさらに…。

ヒデアキ 印象悪くするっていう笑

カワノ 「あいつらすかしてるな」ってね笑

ヒデアキ 自分たち主催のツアーであれはやばいよね笑 あの当時、運転できるのがしんのすけだけだったからさ笑 申し訳ないとは思ってたよ笑

カワノ でも、その時粘ってきてたのがヒデアキとカイくんだったんだよね。軽く喋った記憶はある。荻野としんのすけは車で待機してたけど。でもその時の記憶はあんまりないかなぁ。

ヒデアキ 疲れてたしね笑

カワノ どっちかというと34の櫻井さんの話がパンチ効いてたよな笑

ヒデアキ あれは忘れられないけど、載せられないよ笑

カワノ ふふふ笑 で、そのあと群馬とかもあったけど、その日は俺らが即移動で会話も大してできずだったね。だから、なんのかんの、2018年は交流がそこまで深くなかったよね。

ヒデアキ うん。お互いあまり外交が上手くないのもあったから、わざわざ外で会うこともないしね。

カワノ 居酒屋のおっちゃんか、バーのマスターとばっか話してた記憶がある笑

ヒデアキ それにね、当時俺たちは大学生だったんだけど、俺以外の奴らが留年もありつつ、就活の時期だったんだよね。それこそ、バンドをやるのか、それともやめるのか、っていう。

カワノ そっかそっか。よく考えたらお前以外は俺より年上だしね。

ヒデアキ で、ついにdaisybarで「crybaby」レコ発…。すごい覚えてるよ、うん。あれで満を辞してお前ら主催で共演だったし。

カワノ そうだね。全然、ブッキングのライブでは一緒にやったって記憶ないわ。

ヒデアキ うん。

カワノ まぁ、言ったら当時はさ、下北の四天王…SUP,ROKI,NO WEATHER,時速…って位置付けだったから、俺らは人気もないし、当たるわけなかったんだけどさ。俺ら側からすると、君らは格上のバンドだったのよ。


ヒデアキ って言うけどさ、俺たちからしたらキャリアは一年ちょっとしか違わないってのもあったし、その、急激にお前らがさ、出てきて、良くも悪くも…悪くもだけど笑 話題になってさ、俺個人としては…すごい嫉妬してた笑 愛憎入り混じる感じ笑

カワノ あー…俺はさ、…俺たちって、結局今となってはさ、最後まであの、「下北沢村」みたいなところから無視されてきて、結局入れずに終わってしまったワケじゃん。

ヒデアキ ですね。(即答)

カワノ 即答すんなよ!悲しくなるわ!

ヒデアキ 笑 でも実際そうじゃん笑 浮いてたし、嫌われてたよ笑

カワノ うん…、まぁ笑 …結局、その、時速達のいた、下北沢出身のロックバンドの括りには入れずのままここまできてしまって、っていうので、側から見てて下北の爆心地…盛り上がりの最前線にいたのはその四バンドでさ、その中で頭一個抜け出してたのが時速だって感じだった。daisyをソールドさせたのも、お前らが一番早かったし。

ヒデアキ DR.DOWNERとのやつか。

カワノ うん。だから、今も昔もだけど、時速は俺の中で、同期のトップランナーってイメージ。ずっと。

ヒデアキ へぇ。…なんかさぁ、この間カワノにさ、「当時俺はカワノのこと嫌いだったんだよね」って言ったら、カワノすげぇ傷ついて落ち込んでたじゃん笑

カワノ ほんとだよ!結構ね、きたよねあれは笑 ヒデアキは昔から、時速のメンバーの中で俺と一番打ち解けてたのに、内心そう思って無理して接してたのかよ!って笑 なんなら、バンドの友達誰?って言われてさ、友達少ないけど、ヒデアキって言ってたぐらいだったのに笑

ヒデアキ ガハハハ!笑 今さら友情壊れるなぁ笑 …まぁ、そういうのも、俺はさ、本当に、その感じの逆っていうか、すごい、お前のことは羨望の眼差しじゃないけど、そうやって見てたところもあったの。すごいこう…うまく言えないけど。

カワノ でも、そう言いつつ、みんな優しかったじゃん。お前らに限らず、ROKIとか、SUPの連中とか、カズキ(NO WEATHERのボーカルを担当していた大畑カズキ。ソロ活動の他、現在は「すなお」で活躍中。)も共演は少なかったけど会えば話しかけてくれたりしたしさ、…助け合い、とは言わないけど、こう、…村に入れないやつだけど、面白がって気にかけてくれてさ。今思うと、すごい、思いやってくれたのかな、ってさ。

ヒデアキ そうねぇ。それと、今思うとね、あの当時って、やっぱり、俺たち含めてそいつら…ってか、みんな、他のバンドへの対抗心っていうのがすごくあったんだよ。きっと。だから、人がやってることが羨ましく思うことが多かったし、自分のバンドがうまくいってるのかわからないから不安だったのもあると思うし。でも、時を経て今は、自分のバンドで何をやりたいか、っていう、そういうことに意識を向けるようにシフトしていったと思うんだよね。変わっていた。

カワノ あーなるほどね。大ちゃん(山﨑大樹。ROKIのボーカルを務めていた。現在JIGDRESSボーカル。)がこの間言ってたのがさ、2018年、2019年って、みんなに対してフラットに接することが難しかった、ってことでさ。俺はいうてもみんなと比べたら後から入ってきたバンドだったのもあってのんびり構えてのほほんとしてたところもあったから、そこまで感じとれてなかったんだけどさ。まぁ、だから俺は、時速はROKIとツアーを回ったりしてて、側から見てると仲は良さそうだ、っておもってたんだけど、とはいえ…ていうさ。

ヒデアキ うんうん。

カワノ でも、今は大ちゃんもようやくみんなと心ゆるして話せるようになれて嬉しい、って言ってたんだよね。時間が経って。

ヒデアキ 俺もそうだなぁ。多分ね、俺以外のメンバーもそうだと思うなぁ。

カワノ …俺はそれ聞いててさ、少し切なかったんだけどね笑 なんか、その、しのぎ削ってるお前らとのそういう関係に、俺は結局入れなかったからさ笑 最初っから、君たちにはすごく、優しくしてもらってたから笑 ツンケンされるわけでもなかったのが逆に、その、あしらわれて、対等に戦えてはなかった感じが…笑 当時、イラつくというか、しいてもやついてたことがあるとしたら、あの、相手にされてない感じだったかも笑

ヒデアキ なるほどね笑 同じ時間は過ごしていたけれど…立ってる場所が少し違ったっていう風にカワノは感じちゃってたのかもね。

カワノ うん、まさにそうだね。でも…俺は、みんなとはまたちょっと違うっていうか、逆にその、2019年のその感じの悩みとはまた違うと思うんだけど、別のところで悩んでいたかもな。なんか、自分について…っつーか。自分の歌…表現の仕方について、っていう。

ヒデアキ それは俺もみんなも感じてたよ。会話こそ少なかったかもしれないけど、もがいてる感じがライブとか歌からつたわってきてたのもあったし。話戻って、「crybaby」のレコ発、あれを見てさ、この日のライブで、カワノがこれまで悩んでたけど、お前らがライブを通して一気に変わっていったのを生で見てるし。

カワノ うん。よく話してくれるよね。

ヒデアキ CRYAMYはさ、当時、見にきてる人たちにどれだけインパクトを残すかっていう、そういうライブをしていたじゃん。不快にさせてもいい!ぐらいのこともやってたし。

カワノ そうだね、まさに。

ヒデアキ そういうところに終始していたのが、この日をもって変わった気がした。

カワノ うん。歌詞の内容もそうだしね。まぁ…明確に、本質的に自分がやりたいことっていうのがさ、俺は綺麗事だ、っていうのはもう、昔っから自覚してたのね。っていうのもあったから、それを素直にやるっていうことに対して躊躇いが強かったんだけど、その躊躇いがほんの少し解けたのがあの日だったし…「#3」の曲だったね。それまではさ、俺は、ライブでの話とかさ、そういうのでは綺麗事を語ることもあったけど、曲でまでそれをやっちゃうとどうも嘘くさいな、響いて来ないな、って思ってたんだよね。で、その綺麗事をどうやったら真実味を持って歌えるか、っていう、そういうのを悩みつつ…わずかでもできたのがあの日だったかもね。

ヒデアキ 周りのみんな、全員そう言ってるね。だって、あれぐらいからなんだよね、カワノが「俺の言葉や行動には全て俺が責任持つからついてこい」っていう態度を明確にし始めたのがさ。

カワノ うんうん。あの日は時速がトッパーだったんだけどさ、俺、イベントで大事なのって一発目…一番最初にステージで音を出す奴らって思っててさ。

ヒデアキ うん。

カワノ タイムテーブルを組んだ時に、俺たち世代のトップランナーである時速が先陣を切るっていう、これは、すごく俺個人としては、気が引き締まるし最高だな、って思ってたんだよね、実は。

ヒデアキ へぇ、託してくれてたんだな。

カワノ って思ってたら、お前ら、一曲目俺たちのカバーできてさ笑

ヒデアキ ふっはっはっ!笑

カワノ 「あいつら…会うと冷たいのに…お前らっ!」って笑 アツかったよ笑 「お前さん達…言葉では言わんが、行動で示す男よ!」って笑

ヒデアキ あれね、動画あるよ、昔のTwitter笑

カワノ ね!残ってるよ!


ヒデアキ あれそんなに刺さってたのか笑

カワノ いやぁ、あれよかったですよね…。

ヒデアキ でも、カワノはカワノでまた別の悩みはあったけど、その日で一歩前には進めたんだろうし、そのきっかけ作りになったというか、そう思ってくれてたなら俺たちはよかったよ。

通じるのを信じると書いて、通信!

ヒデアキ …気になってたんだけど、その日から歌詞とかってさ、変わったりしたの?例えば歌う対象が変わるとか。特定の誰か一人に向けたものが大勢に向かったり、内省的だったものが外に開けたり、とか。

カワノ あー…僕ねぇ…そもそも歌詞の対象がそういうものに干渉されないんだよね。あくまで事実と出来事とか、自分の真実とか正解とか、そういうのが重いっていうかさ。

ヒデアキ うん。

カワノ これ、俺の持論なんだけど、本気で辛かったり悲しかったことって歌にできないんだよ、辛すぎて。歌詞に絶対できない。例えるなら…世の中、失恋の歌詞や人がいなくなる歌詞って腐るほどあるけどさ、本気でそれが悲しかったら、絶対できんだろ、って思う。

ヒデアキ なるほどね。前にお前も言ってたけどさ、人にそれが伝わる形…歌詞、っていうので行くとさ、あくまでそれができるのは自分の中で折り合いや決着がついてないと無理ってことだよね。外に出せない。

カワノ まさに俺が言いたいのはそれ! だから、俺の歌詞は全て、自分の中で決着や折り合いのついた物を書いてるにすぎない、っていう。だから、あんまり何かの尺度に影響されるとか、っていう訳ではなさそうな気がする。あくまで事実っていう。どんなに悲しいことでもね。…強いて言えば、対象があるとすれば、出来事かも。

ヒデアキ なるほど。

カワノ こういうことがあった、とか、…人であれば、この人とこういうことをした、俺がこの人にこういうことをされた、してもらった、とかね。出来事。うん。そういうことに尽きるかも。それを俺のフィルターを介して歌詞にする、っていう。

ヒデアキ 前にさ、みんなで歌詞についての話をしたときにカワノがさ、荻野の「素晴らしい日々」の歌詞が素晴らしい、それはなぜか、て話をしてくれたじゃん。あれ、俺言われるまで気が付かなかったんだけどさ。

カワノ うん。俺はあれが彼の最高傑作だと思ってるよ。

ヒデアキ カワノが言ってたのがさ、あの歌詞は、荻野が今まさに落ちていってるっていう現状を、その現状のままに書いているっていうことだったじゃん。「俺にはできない、キツイ」って。それができるのがすげぇ、って。それを言われて、気が付かなかった見方ができるようになった。…気になってるついでに聞くけど、カワノから見たしんちゃんの歌詞ってどうなのかな、っていうのも聞きたいかも。どうなの?

カワノ しんちゃんと荻野はキャラが違うんだけど…。これね、この間大森くんとした話なんだけど、彼の歌詞って、奥行きがあるんだよね。


ヒデアキがお気に入りのしんちゃんの写真。
大阪で有料のパスをなくし、泣く数年前の様子。

ヒデアキ うん。

カワノ 奥行きっていうのは…そうね、彼の歌詞って、怒りや悲しみもあるけど、そのベクトルが基本的に自分に向いてるように感じるのね。で、その、自分に向いてる感情の根本は、どれもが…あってるのかわからんけど…その、根本っていうのが、過去の…学生時代なのかなんなのかわからんけど、その、境遇なのかな、って。体験ってよりも境遇。うん。

ヒデアキ わかるよ。

カワノ 俺はそう捉えてるんだけど、すごいのがさ…あいつが歌詞を書くのがいい意味でものすごく上手いからできるんだろうけど、その、根本は同じものを、すごく複雑なフィルターを通して奥深く、なおかつメッセージをダイレクトに届けることができてる、っていう、その、奇跡のバランスが、俺は彼の武器だと思ってるんだよね。フィルターを一枚一枚、聴きながら通過していくのがすごく気持ちがいいと思えるというか…それを奥行き、って言い方してるんだけどさ。

ヒデアキ なるほどね。

カワノ 俺とは全く逆なんだよね、歌詞の構造が。俺は全く奥行きがない、俺の歌詞。

ヒデアキ あぁ、でも、そうかも。

カワノ しんのすけとリスナーの距離…今俺とヒデアキのテーブルを挟んでる距離…って例えると、しんのすけは、こう。(テーブルの真ん中よりカワノ側を叩く。)ここにおく、で、ここにおいた上で相手へ投げる、って感じ。俺は…こうだね。(ヒデアキの額を触るカワノ。)

ヒデアキ はいはいはい。

カワノ まぁ曲によりけりだけどさ、お互い。でも、概して俺の場合はそうだろうね。例えば…「WASTAR」みたいな歌詞は、テーマを同じくした場合は彼は絶対描かないと思うんだよね。もっと彼は歌詞として優れたものを出してくるだろうし、メッセージ性も…なんだろう、もっと多角的に見た上での言葉選びで伝えてくると思う。あの人はさ、客観視がうまいんじゃなくて自分の想像力をめぐらせる意識が高い人だから、それができる。俺は、そういうのは…。

ヒデアキ まぁ…しないよね笑 あくまで己!笑 「当たり前に愛してるよ〜♪」(歌いながらカワノににじり寄ってくるヒデアキ。)ってそのまんま笑

カワノ へへへ笑 そうそう、そんな感じ笑 …まぁ、自分にできないことだから尊敬するよね、そういう感じかな。

ヒデアキ 俺から見たらしんちゃんの印象はね、今、想像力ってワードが出たけど、しんちゃんは自分の世界を他人にまで広げるのがすごく上手だと思ってるんだよね。

カワノ うんうん。

ヒデアキ 極論、道端に落ちている空き缶を見て、それも自分の背景に重ねて、歌にできる、それを伝えられるっていう。で、そこから広げて、自分のバックグラウンドにまで広げても破綻しない…あらゆることを自分に結び付けてもそれが他人に届けられる…それができる人だと思ってる。だから、普遍性があるんだよね、歌に。

カワノ いいこと言った!そうだね。普遍性か、うん、納得だよ。

ヒデアキ 共感を産めるんだよね、そういうのが。

カワノ …こう解き明かしていくと、俺としんのすけはタイプが全く違うね。

ヒデアキ うん。カワノの歌詞は、…正直に言うと、俺は理解ができないんだよね。「なんでこんなこと言うんだろう?」「これは何言ってるんだろう?」ってなる瞬間が多い。それはお前の過去の経験とか、そういうのに基づいてるし、言葉の選びが独特だし、そもそも不思議なバンドだから得体が知れないっていうのがあるからなんだけど、共感とか理解からは、俺からすると正直すごく遠い。遠い分、逆に俺に想像の余地が残されてる側面があるんだよ。自分の中で膨らませたり、自分で歌を自分に寄り添う形で解釈できたり、そういう聴き方を俺はしてるところがあるかな。カワノも、突き放すわけではないけどさ、リスナー…こちらに対して、少し寂しく感じるくらい理解を求めないし。

カワノ なるほどね。…前にも話したかもだけど、俺、自分のことを100%なまなましくかけたら、それは逆に他人からしたら究極のファンタジーになる、っていう…。誰しもに共通することはあるんだけど、人間一人を突き詰めて描写していくと、人間一人の感受性だけを残していくと、最終的には絶対に分かち合えないところが浮き彫りになっていく、っていう、さ。

ヒデアキ してたね。

カワノ でも俺はそれでいいと思ってるし、それが自分の矜持でもあるからね。

ヒデアキ …この間さ、カイジ読んでてさ。鉄骨渡りのシーンだったんだけど、あそこで、「結局人間は通じ合えない!」「通じるのを信じると書いて、通信!」って書いててさ笑 それ思い出したよ笑 通じ合えないけど、でも信じるのよね。うん…。なんか、いい話できたな!


件の鉄骨渡り。絶対に嫌だ。

カワノ ふふふ笑 こういうのやっていこうや笑

フォーマットは既にあれどさ、それはあくまで方法論の一つに収まってしまってるというか…

カワノ ここらでヒデアキの話もしようぜ。ヒデアキはさ、バンド音楽以外の音楽…ダンスミュージックとか、テクノとか、そういうのにも明るいじゃない。詳しい、すごく。下手したら、バンドよりそっち多めに聴いてるくらいだしさ笑

ヒデアキ あー、それはね、俺がそもそも楽器に触れたきっかけがあって…そもそも小さい頃ピアノやってたんだよ!

カワノ えっ、そうなの! …似合わんなぁ。お前の長所のパワーも活かせないじゃんか!

ヒデアキ 笑 お姉ちゃんが教室に通ってたから、その流れで俺もやってたんだけどさ、ピアノ教室って女の子しかいないことって多いじゃん、それが子供心にすごく嫌だったらしくてさ、…最後、泣きながら、「僕が一度でも行きたいって自分から言ったか?」って親に言って、それでやめた笑

カワノ はっはっはっ!笑 小4でアムロレイみたいなキレ方すんなよ笑

ヒデアキ 笑 で、高校入って、わかりやすく高校デビューで軽音部に入ろうと思ってさ…これ本当に最低なんだけど、メガネをかけた地味目な先輩がいてさ、すげえドラムうまかったの。で、俺、それ見てさ、すげぇな、っていうのが30%で残りは…「この人にできるなら俺にもできる!」って笑

カワノ 7割邪念なのやばいけどね、お前笑

ヒデアキ いやぁ、すげぇでも、その先輩、よくしてくれたんだけどさ!感謝してるよ、うん。

カワノ 今、すごい大きなアダで返したけどね、恩に対して。

ヒデアキ まぁ笑 本当に最悪だと思うけど、うん、そういうきっかけ。で、俺はそれまでバンド聴いてなくて…唯一知ってるのがアシッドマン笑 カラオケで歌いやすい曲をネットで「カラオケ 声低い」で調べて出てきたから、って理由なんだけどさ笑 「アルケミスト」と、「ある証明」。

カワノ 今のところ全部薄いなぁ笑

ヒデアキ 笑 でも、バンドはそれぐらい。あとは見てたアニメのアニソンとか、流行ってた東方神姫とか湘南乃風ばっか。…で、軽音部入って、そこの同級生に色々教わったね。当時はGREEN DAYとかOFF SPRINGとか、パンク、メロコアが多かったかな。

カワノ はいはい。

ヒデアキ ハイスタとかもね、そういうのやってた。で、俺も自分で聴こう!ってさ、調べ出して。で、当時ディグる時に活用してたのが、ニコニコ動画に上がってたメドレーなんだけど…。

カワノ あった!「ニコニコ動画組曲」とかね…。

ヒデアキ …それじゃねぇよ!「洋楽メドレー」みたいなのあっただろ!

カワノ あーっ!作業用BGMか!

ヒデアキ お前…今オタクでたぞ笑

カワノ わりーわりー、「1オタク」出てしまったわ。1オタク、頂きましたわ笑

ヒデアキ お前、硬派なイメージ崩れるわぁ笑 お客さん失望するぞ笑 …で、まぁ、話戻すけど笑 そのメドレー聴いてたらね、その中に、生演奏でダンスミュージックをやる、っていう…ペンデュラムなんだけどさ。

カワノ へぇ!そこでペンデュラムなんだ。

ヒデアキ うん。そこからドラムンベースってジャンルにハマったんだよね。「なんじゃこれ!音かっこいいし、歌があんましない!最高!」って。

カワノ うんうん。

ヒデアキ でさ、俺、生粋の逆張りオタクだから、周りがバンドなんか聴いてるのを見ながらさ、俺、教室の陰でニチャニチャしながら「俺はこんなの、聴いちゃってるぜ?」ってさ笑

カワノ はっはっはっ!笑 でも、そこからあの膨大な知識量の獲得が始まっていく訳だな。

ヒデアキ そうそう、高校時代暇だったからさ、家でネットでそういうのばっかひたすら掘っていって、調べて、…で、今に至る、って感じ。

カワノ なるほどね。俺とヒデアキの友達何人かで組んでる、ほぼ毎日動いてる異常なライングループあるじゃん、あのごみみたいな奴笑 毎日誰かがYouTubeとかサブスクのリンク上げてさ、あれがいいこれがいい、ってやってるけど、今日ヒデアキが載せたのが…。

ヒデアキ アランウォーカーとジャスティンビーバー笑

カワノ 笑 全然バンドじゃない笑 …アランウォーカー、ガチでいいからな…。あと…コンヴァージ笑

ヒデアキ でた笑 「外国産凛として時雨」笑

カワノ 「ハードコアだぜ、最高!」って笑

ヒデアキ この間は誰も知らんノルウェーのハードコアバンドをお前が送ってきたりね笑

カワノ いやぁ、あの、北欧のメタリックな感じのあれ、いいんだよねぇ。…でも、そういう感じで各々がさ、音楽をシェアし合ってる環境で、ヒデアキから教わったやつはすごく多いね。

ヒデアキ そうだねぇ。…もう今となってはさ、俺たち邦ロックバンドみたいなの一切聴かなくなっちゃったよね。

カワノ 全然聴かない!もうなんか…ヒップホップとか、エレクトロとか、テクノになってきたなぁ、俺は。音、スッゲェ攻めてる。コアだよ。

ヒデアキ そうだね。音の作り方、俺たちからしたら歪に感じるぐらいバランスとかセオリーを無視してるんだけど、かっこいい。わかるよ。

カワノ この間、MJMさん(元Ballon d'orのボーカル。現在、西新宿で「MOON RIDER KINGDOM」というバーを経営中。)の店で飲んでさ、深い時間魔で音楽の話たくさんしたんだけど、MJMさんが言ってたのがね、「現代においてはロックってもはや聴きやすい音楽のジャンルになった」って言ってたの。確かに!って思ってさ。でも、俺が好きなのはやっぱり、歪つなロックであったり、不安定さとか生々しいロックが好きだった訳だから、それを思い出したくて…。

ヒデアキ あー! だから突然今日、ジミヘン送ってきたのか!

カワノ そうそう!

ヒデアキ 「スタジオ音源、音クソ悪りぃ!」っつってね笑

カワノ 笑 でも、ジミヘンのあの、お世辞にもモダンで整った音像とは言い難いオクタヴィアのファズを聴いてさ…よかったんだよ。そう考えると、海外のヒップホップとか、俄然音、攻めてる。ダンスミュージックとか。ああいうジャンルにもトレンドがあるから、今はそういうのが流行ってると思うんだけどさ、今のそういうジャンルのトレンドって、バスドラムとベースを躊躇なく歪ませるんだよね、すげぇ歪ませる。

ヒデアキ 確かにそうだね。ローが分厚いのは当たり前として、さらに言えば歪んでる。

カワノ 声もハーモニックディストーションをかけてたりね。制作過程のインタビューを読んでも面白いし。

ヒデアキ なんだろう、フォーマットは既にあれどさ、それはあくまで方法論の一つに収まってしまってるというか…だからこそ彼らは型にとらわれてない印象はすごくあるし、それがかっこいいなぁって思うことは多いかな。

カワノ うんうん。(ワインをつぐ。)

ヒデアキ あと…カワノくん、ワインね、蓋開いてないから、出てないよ。

カワノ …あらっ!

ヒデアキ きてるねぇ〜笑

カワノ オタクも出てくるし笑 …しかもあんまり美味くねぇな!このワイン。

理想の音って掴むの難しいんだよな

カワノ 音像の話で言うと、俺たちと時速も変わってきてる気がするね。同じオルタナとか、ハードコアを踏襲しつつ、ギターロックのフォーマットとしてアウトプットしてきたバンドだとは思うんだけど。

ヒデアキ そうだね。俺たちは結構聴きやすい方向にシフトしていってると思う。メロディ重視で、整った方向。

カワノ そうか。整ってるってよりは、分離感がよくなっていってる、って印象なんだけどね、俺は。最近のものは特に、歪みのざらっとした部分のバランスをとるのが上手になってきているというか。極端にとんがったところが抑えられてより洗練とされていくのかな、って。

ヒデアキ この前MVでた「かげろう」はさ、編曲の大部分をカイくんがやってリーダーシップをとった曲だったから、あの曲はギター二本の絡みって言うのが特徴ではあるんだけど、そこが軸になったし、目立つように配置した曲にはしたんだよ。で、ギターの重ねも、何本か足してるんだけど、ギターの迫力は出たしレンジは広がった分、自分達が期待してたほど音のルーム感…アコースティックな生々しさは無くなってしまったというか。

カワノ ギターを重ねれば重ねるほどそれは無くなっていくからね。

ヒデアキ そうそう。曲の重心も必然的に高くなってしまったというか。俺たちはCRYAMYと違って、さほどルームマイクを使わないからさ。それもあると思う。ギターも君たち、ほぼ重ねないし。

カワノ 位相を整えるって意味ではそれも一つのやり方ではあるけど、難しいよねぇ。どうしても何かを立てると、何かは犠牲にしなくちゃいけないから。

ヒデアキ うんうん。もちろんさ、曲の仕上がりにはすごく納得はしてるけど、反省点も同時にありつつ、っていう、そう言う作品になったかな、個人的には。もうちょっといいところを突いていけるものを次は作りたいね。…まぁ、スケジュールが厳しかったのもあったんだけどさ笑

カワノ 俺らは逆に、最近はもう、生っぽさ…昔からそうなんだけど、それを突き詰めるっていう。俺らさ、ギターもほぼ重ねないんだけど、その音をEQしないんだよ。ほぼとりっぱなしたサラの音。

ヒデアキ あ、そうなんだ!

カワノ うん。音圧整えて、いらんノイズを切るぐらい。なんだろう、そりゃやったらやっただけ迫力は出るけど、それをしちゃうと…音圧戦争真っ只中エモパンクのさ、あの、いやらしいコンプ感出ちゃうのが嫌でさ。機械的な、エディットしました!みたいな。…曲はもちろん、好きなんだけどね。

ヒデアキ はいはい。

カワノ それよりは、どっちかといえば、USインディーとか、ポストハードコア…fugaziとかslint のあの感じ。パンクだとワイパーズとか…あと…。

ヒデアキ うんうん。それとか、カワノといえば俺は、cloud nothingsとかね。よく名前あげてたし。

カワノ そうそう!近代的なものだとcloud nothingsとかcribsとか。ああいう、乾いてて、ちょっとしょぼくてもいいから、雑然としてる感じ。…わかりやすく例を出すとさ、エルレの「alternative plans」あるじゃん。あれ、アルバムとシングルでミックスが違うんだよ。

ヒデアキ あ、そうなの?

カワノ そう。シングルバージョンのギターがさ、ぺけぺけでドライなんだよね。で、アルバムバージョンはずしっと重くて密度がある。でも俺、あのシングルバージョンの方が好きなんだよね、あの、いい意味で無加工な、パサパサしている感じ。あれがすごく生っぽくて好きでさ。俺の生っぽさはそう言うのもあるかな。

ヒデアキ なるほどね。

カワノ 今はさっきも出たルームマイクの使いこなしを学んでるところかな。試行錯誤しながら練習とか制作には当たってる。

ヒデアキ うーん、そう言う風にさ、俺たちも次アルバム出すならどう言う音像にしないと、て考えなくちゃいけないんだけど、どーしよっかなぁって…。

カワノ なんか、理想の音って掴むの難しいんだよな。

ヒデアキ 「ハロー」の音源あるじゃん。あれってさっきの話と真逆で、すっごい音、ミチミチなんだよね。生鳴りって言うよりは迫力、みたいな。あれは、曲にすげぇハマってて、正解だったんだけど、じゃあまた次、あの方面でやりたいか、って言うと違ってさ。じゃあ今度、次は奥行きやレンジの幅を取ろう!ってやるとまた反省点は出てきて…ってなるし、うまいことそれぞれのいいところどりができるとすごくいいんだけどなぁって、悩んでるねぇ。

カワノ むずいよなぁ。

ヒデアキ これはCRYAMYとはまた違う悩みだね。目指す方向の違いゆえの。

カワノ そうだねぇ。俺たちはむしろ、現代的なものよりも少しオーセンティックな方面に対して力点を置き始めてるところはあるかもね…。最近、みんなで「sex pistolsのマーシャルの音、最高だな…」とか、そんな話してたし笑

ヒデアキ ピストルズかぁ笑 生っぽいね確かに。ピストルズ再評価期。

カワノ あと、54-71。

ヒデアキ あぁ!BOBOさんの!

カワノ 10代の頃ハマってたんだけど、今更聞き直して、あれ半端ないな、って。大好き。音もかっこいい。空間系のエフェクトが効いてない乾いた音が好きなんだろうな、俺。

ヒデアキ 俺らはなんだろうなぁ…最近曲作っててリファレンスで上がったのは…曲によるけどね、前のレコーディングはね、アジカンとか。ツアーでやった「stars」はオアシスとsyrup16gだったね。

カワノ へぇ! あーでも、確かに、あのスケールでかい感じとか、Cメロ…「君と手を繋いで歩く」のところ…全然関係ないけど、あそこのメロディ最高だよな。

ヒデアキ ふへへ笑

カワノ でもリファレンス元はそっちと比べると俺ら渋いなぁ…。

ヒデアキ まぁなんとなくその感じは曲にも出てるし、しかも、俺たちの曲を聴いてる子たちが好きなバンドからフィードバックを得てる感じはCRYAMYにはないねぇ。全然ない。

カワノ だろうね。…「完璧な国」はね、あれ、実はボガンボスなんだ笑

ヒデアキ やばいなぁ笑

カワノ あの、YouTube上がってる野音のライブのやつね笑 あの感じ。「WASTAR」は2000年代のポップパンクの感じ。

ヒデアキ サビでビートがハーフになって重くなる感じね笑

カワノ そうそう。blinkとか、あの線だね。

ヒデアキ 俺とカワノの個人的な繋がりとしてblink182はでかいよね。blinkっていうか、トラヴィスバーカー笑

カワノ だねぇ笑 最高だよ、あいつ。ドラムのフレーズ、一番参考にしてるよ。

ヒデアキ 俺ら大好きで聴いてるくせにさ、「あいつ、パンクのくせにうめぇな」とか言ってるしね笑

カワノ うふふ笑 フィルのフレーズセンス天才的だし、バスドラムの置き方…。

ヒデアキ うまいよなぁ。インスタでさ、嫁を自分にまたがらせてディープキスしながらクソうまいエイトビート叩いてる動画、あれ最高笑

カワノ ねぇ笑 俺もやりたいよ、ギターで笑

ヒデアキ 女とディープキスしながら「くらし」歌ってたら俺お前のこと嫌いになるよ笑 いっちばん喰らう曲を笑

カワノ キスしながらどうやって歌うんだよ笑

一見人の肌の体温が感じられない曲を聴いて自分がゾクっとしてるのを感じるとさ、そこで俺は人との繋がりをすごく感じるんだよね。

ヒデアキ でも、他はあんまり共通項っていうのはないかもね。俺はART-SCHOOLもsyrup16gも通ってないし。

カワノ 確かに。その辺は俺もリアルタイムではなかったんだけど、先輩たちから教わった音楽だね。エルレとか銀杏BOYZもそうだし。

ヒデアキ 先輩かぁ。…話ずれるけどさぁ、銀杏BOYZはカワノも俺も、お互い好きじゃない? だけどさ、大学のサークルで銀杏をコピーしたんだけどさ、あれを号泣しながら肩組んで歌う見たいな、そういうノリがあったのね。で、俺も先輩とかに肩組まれてさ、「うおー!」とか、とりあえず叫んでみたりしてたんだけど…「こいつら何が楽しいんだ?」みたいな、正直思っちゃったんだよね笑

カワノ はっはっはっ!笑

ヒデアキ 俺たちのドライなところが出た瞬間笑 いや、もちろん曲は好きなんだけどさ。でも、なんかさ、そこまで俺は入り込めなかったんだよ。いったら人の曲じゃん、どれも。それを自分でコピーして演奏して、その上で自分達に落とし込んで、そこまで楽しめるっていうのが…俺にはできなかったんだよね。そこまで高められなかった。

カワノ いや、でもわかるよ。ちょっと冷めてるかもしれないけど、俺も気持ちがわかる。なんていうか、共感とか、そういう次元で好きになったわけじゃないんだよな。銀杏に関していえば、曲も好きだけど、それよりもライブを見て感動して好きになったバンドだから。

ヒデアキ うんうん。

カワノ あの、生で見て、あの凄みとか真剣みに心動かされたっていうか。だからその…肩組んで号泣とかは、正直俺もちょっとないかな、って、思っちゃうね。お互いにもちろん、否定するわけではないけどさ。

ヒデアキ …なんでこの話したかっつーとさ、なんだろうね、どちらかというと邦ロックにありがちだけどさ、なんか、ライブでアツいMCして、すごい共感を誘う歌詞を書いて、オーディエンスの拳が上がるっていう、まぁ、そういう光景ってよくあるじゃん。でもね、俺、ああいうのにでくわしてもさ、俺はあれを全然自分ごととして捉えられないんだよね。あれをすごく冷めた目で見ちゃうんだよ。カワノもそうじゃん?

カワノ そうだね。手とかあげない笑 じーっと見ちゃう。

ヒデアキ そうそう、後ろの方で静かに見る。

カワノ でも俺たち、バンドマンの中でも結構ライブ行く方だよね。

ヒデアキ そうだね。…また話変わるけど、パンクスプリング…。

カワノ えっ! 行かないの!? 行こうっつってたじゃん!

ヒデアキ いや、そうなんだけどさ…あのおじさんメンツ…今またこのメンツを呼ぶのか、ってさ…ちょっと悲しくなったよ正直。

カワノ あー…まぁわかるよ。ちょっとノスタルジー入ってるし…でもね、とはいえ、マイケミは見といた方がいいって!

ヒデアキ いやもう、なんならそのためだよ、金出すの。

カワノ そうだよ! どうせ歌うんだから…「carry on」で声でなくてオクターブ下げるだろうけど…笑

ヒデアキ 笑 俺最近行ったのは、行ったことねぇなっつって、ソニマニとか、あとはunderworld楽しかったね。最高だった。今度さ、STUTS行こうよ、一緒に。しんのすけも行きたがってたからさ。

カワノ おっ、いいじゃん。

ヒデアキ …でさ、また話変わるけど笑 さっきの話じゃないけど、俺がダンスミュージックが好きな理由なんだけどね、ああいうジャンルの曲ってさ、ロックバンドみたいに歌がある曲に比べたら無機質じゃない。どうしても。歌もないし、バックのトラックがループで10分以上回っていくとかもザラにあるしさ。

カワノ そうだね。

ヒデアキ だから、人の体温みたいなものは分かりやすくつたわって来ないんだけどさ、そういうのを聴いてて、テンション上がって体が熱くなってガーってなる…通勤中の朝7時の満員電車の中で、マスクの下で思わず笑顔になって、たまにゾクっとしてさ笑 気持ち悪いかもだけど、でも、そういう、一見人の肌の体温が感じられない曲を聴いて自分がゾクっとしてるのを感じるとさ、そこで俺は人との繋がりをすごく感じるんだよね。

カワノ 素敵じゃないか。

ヒデアキ なんか、無機質なものの方がそれを聞いて感動した時に、むしろ、これを作った人やライブで空間を共有している人たちと繋がった感じがして、熱くなるんだよね。ライブでもさ、各々の人が自分の世界があって、体を揺らして楽しんでるけど、でも同じ曲を通すっていう大きなところで繋がれてる感じ。身体的なつながりや熱を、俺はバンドの音楽よりもそこに感じられるんだよね。だからすっごい好きなんだ。

カワノ へぇ。逆にすごく肉体的な捉え方だね。

ヒデアキ うん。わかりやすい共感ではない部分で通じ合うっていう、そういうの。

カワノ …共感か。あのね、俺、俳優をやってる友達がいるんだけどさ。そいつはね…あんまり俳優っぽくないのかもしれないけどさ、演技で自分のバックグラウンドを見せたい!ってタイプなのよ。考えや思想を表現したいっていう。どっちかって言うと脚本家っぽい感じ。

ヒデアキ うんうん。

カワノ でね、そいつが言ってたのがさ、なんかね、音楽やってる奴が羨ましいところがあってさ、って言ってたのが…。俳優は、脚本や物語によっては、犯罪者も麻薬中毒者も、変わったやつやマイノリティの立場の人間…そういうのも、演じられるんだけど、でも、俺がどれだけ演技を勉強して、いろんな経験をして、その役に全てをつぎ込んでも、限界があるんだ、って。自分自身っていうものは…出せるけど、全てじゃないっていうか。

ヒデアキ うん。

カワノ で、役に及ばない瞬間もある、って言ってて。例えば、って言って話したのが、性的マイノリティの人を演じる時…そもそも、そいつは同性愛者ではない、って、そうなったら、そいつが経験したことは、何も活かせないんじゃないか、って。で、もっと穿った見方をすると、そもそも最初っから同性愛者の方に演じてもらったほうが絶対にいいんじゃないか、勝てないんじゃないか、って。

ヒデアキ なるほど…。

カワノ うん…。その点さ、音楽は…出さなくてもいいけど、自分の人生とか、背景を出そうと思えばいくらでも出せる環境にあるじゃん、って。それがすごく苦しみを伴うのは想像に難くはないが、羨ましいんだよね、って、そういう話をしたんだよね。…でさ、そのあと、そいつ、鋭いこと言うな、って思ったのがさ、バンドっていうのは、パブリックイメージとか、世の中からの見られ方としてさ、むしろ、個人の人間性とか経験値のウェイトが高いとされてるものだからこそ…その、精神的な部分を偽ったり、他人のそういう部分につけ込んだりして、人を騙すことで、汚いやつがのしあがったり、ビジネス臭い側面が良しとされる部分もすごくあるよね、って言ってたな。すごく、俺は…言ってること極端かもしれないけど、自戒として心に刻んでる文句ではあるね、それ。

ヒデアキ なるほどね。穿った見方だけど、言ってることはすごくわかるし、俺たちにすごく刺さってくる言葉だね。しんちゃんやカワノには特に刺さる言葉だと思うし。

カワノ でもね、俺はそういう、面倒で偏屈な思考回路の連中にこそ、芯から信頼がされたいんだよね。信頼されるために、時には歪になることがあっても、歌いまくる、っていう。恥や苦しみもある上で、普通のやつが言えないことも言わなきゃいけないし、うまくやれなくてもそれを覚悟の上でやらなくちゃいけないこともあるし。

ヒデアキ それで言ったらあんた、リキッドルームはその最たるものでしたからね笑 あのライブで示したものが、お客さんに対しても、俺たちに対しても。

カワノ …いや、本当に悪かったよ…。

ヒデアキ へへへ笑

カワノ でもその日にそいつ来ててね、言ってくれたんだけどさ、「あれを見て、信用できるできないじゃなくて、お前を信頼したいって思えた」って言ってくれたんだよね。「俺は信頼できるものが欲しいんじゃなくて、信頼したい誰かが欲しかったんだ、って気づけたし、信頼したいって思えた自分が嬉しかった」って。

ヒデアキ なるほど。

カワノ 俺、それすごい大事なことだなぁって思ってさ。信頼したいって人がいて欲しいっていうのは…俺もそうだな、って、そう言ってもらえて俺も気づけた自分の願望でもあったし。…それにね、俺、今年だったら、年初めのリキッドのワンマンでも言ったことなんだけどさ、同じこといっつもお客さんに言ってるんだけどね、俺はね、音楽の役割として、極端かもしれないけど、目の前の人をその音楽で騙すことで、騙してでも、騙されたそこにいる人間は幸せになったり、今日をやり過ごすことができたり、それでもいいと思ってるんだよ。これはある方向からの信頼を…「俺はお前を騙してるぜ」って開き直っちゃってるようにもとれるから、裏切る形ではあるかもしれないけど、それでもそれは俺の信じる正しさの一個ではあるし。…でも、このアンサーを明確に言うことは俺、その「信頼したいって思える人間」であり続けるためには絶対に必要なことだと思うんだよね。俺が信じているものを提示するっていう行為で。

ヒデアキ うんうん。なるほどね。

カワノ で…話が戻るけど、俺が思うさっきの話でいう共感…もっといえば、体温を感じる瞬間っていうのは、そういう、こんがらがった面倒臭い人間のねじくれた部分で人とどう関わろうって努力する時間にこそあるのかな、ってさ。めちゃくちゃ暖かいとか、距離が近いとか、そういう尺度の問題じゃなくて…ただそこにあるな、っていう。…ロックだどうだとかを超えて、少なくとも、CRYAMYはそうあるべき。

ヒデアキ カワノらしい回答だったね、ややこしいけど、実は何もかも包括してる、っていうさ。

カワノ いや、でもね、そういう意味だとね、俺思うのが、何もかもを抱きしめるって意味だと時速の方がすごいと思うし…多くの人に対して何かを及ぼせるのは絶対に時速の方なんだよ。よりそばにあって、近くで見守られてる感じ。もっと有機的で生き物っぽいっていうかさ。…俺昔から言ってるけどさ、俺らの世代で一番売れて欲しいのは時速だし、そうじゃなきゃおかしい、ってさ。

ヒデアキ そうだね、昔からお前は言ってくれてるね。すごく嬉しいことよ。

カワノ うん。俺らは残念ながら…残念でもないけどさ笑 俺らはきっとそうはならないと思うんだ。その答えはさっきヒデアキが俺の歌詞について言ってたことがほとんど全てというか…普遍的なものを書いてるわけではないし、理解ができない部分も多いし、そう言うのはむしろ、これから多くなっていくし。…俺らはむしろ、そこに置いてあるものに近い。概念とか無機物に近い捉え方。それを見て人がどう思うか、っていう、それに終始するだけっていう、音楽を聴く人との関係性。

ヒデアキ …さっきの話じゃないけど、カイジの「通信」だよな笑 「カイジ、いるか!?」ってさ。「結局のところ、人と人とは繋がれない!」「どれだけ言葉を尽くしても…」

カワノ 暗唱するなよ笑

ヒデアキ いやでも、いいこと言うなって思ってさ。真理じゃん。今の流れで行ったらこれ、Cメロだね笑

ある種、俺たちのそれぞれの答え合わせをして関係をいい意味で清算できるんじゃないか

ヒデアキ …芋(フライドポテト)でも頼むか。

カワノ だね。じゃあ、ツアーでも振り返って行きますか。

ヒデアキ そうだね。…そもそも発端はこっちから声かけたんだよね。

カワノ いや、まぁ、俺とヒデアキで盛り上がっちゃって、ってのがきっかけかな笑 電話でさ、daisybarで当時やってた同い年の同期のバンド…hammer head sharkとか、カズキも今はすなおをやってたりするし、みんなでツアー周りたいなぁって、夢の話をしてさ。加藤(daisybar店長の加藤さん。)バスツアー笑


ヒデアキ うんうん、多分それが発端で、時速のツアーが終わったタイミングで俺がみんなに提案したんだよね。「こんなこと言ってたよ」って。その時に、今までツーマンツアーをやって来なかったけど、待ってる人がたくさんいるのは想像できたし、それを今わざわざやらない理由はないし…今となってはさ、カワノもステージで言ってたけど、音楽性もライブの伝え方も、スタンスも客層も、お互いのバンドの歩んでいる道が別れはじめていってるじゃない? それぞれの道を進み始めたタイミングだからこそ、仲がいいからやるとか、馴れ合いでやるとか、そうじゃなくて、ある種、俺たちのそれぞれの答え合わせをして関係をいい意味で清算できるんじゃないか、って、そういう思いもあってさ。それで、やろう、って提案した感じだね。

カワノ 確かに、その感じは感じてたよ。ライブを見たらわかる通り、俺たち、もう如実に変わって来てるところはあるしね。見えないところで言うと、ヒデアキは俺が作ってる最近のdemoを聴くことも多いしさ。

ヒデアキ あれはねぇ…まだ世に出てないだけで、あからさまにお前の様子がおかしいなぁ、って笑 「えっ、そっちっすか!?」みたいな笑

カワノ ふふふ笑 それに加えてね、俺は金子さんが言ってたけど、このツアーを通してライブハウスに、現場にお客さんが帰ってくるきっかけを作れたらいいなぁって言うのはあったかな。その点ではリキッドルームがあれだけ人で埋まったし、これはやった意味があったなぁって思ったね。

ヒデアキ そうだね。でも…俺らさ、下世話な話、daisybarの申込数を見てさ、これ、もう一回リキッドやれたねぇってなったんだよね笑

カワノ ふふふ笑 まぁ、でも、デイジーでやるからこそ、っていう数や意味もあったと思うしね。でも…あれ、チケットのシステムマジで良くなかったなぁって思っちゃったよ。

ヒデアキ 確かにね。うん、あれは…。

カワノ 蓋開けてみたら多名義で申し込んだり、なんか、転売もあったらしいじゃん。俺、いい気分しなかったなぁ。ちょっと…CRYAMYのライブではなんか、チケット系は何か、手を打とうと思ったね、あの感じ。

ヒデアキ なんか、価値を見出してくれることはありがたいんだけどさ、別にそこまで期待をするほどか、っていうとそうでもないじゃん。俺たちのライブはいつでもやってるし、見ようと思えば見れるわけだから。いくらでも機会はあるじゃんか。まぁ…ツーマンをデイジーで、って言う、それがみたい、その意味もわかるけどさ…わかるけど…。

カワノ なんかねぇ…。あの、人海戦術じゃないけどさ、知り合いの多い奴が得しちゃうあの感じは…悪気はないのはわかるけど…なんかね。せめるつもりはないんだけどね。

ヒデアキ うん、見たいって言う強い気持ちの表れだから、怒るとかそう言うのではないけどさ。

カワノ うん。シンプルにそう言うのが通用するのは…なくなった方がいいよね。…特に、CRYAMY観にくる人、一人で来る静かそうな奴らが多いし、…あの、失礼だけど…友達少なそうな笑

ヒデアキ 笑 後ろの方に溜まって神妙な面持ちでフロアを見てるお前らを見に来てるであろうあの子たちね。

カワノ うん笑 あの子たちをどうしても想像しちゃうとさ、いくら人に求められても俺は喜べんわけよね。あいつらに公平じゃなくね?って。まぁ、仕組みとしておかしなところは無くなってくれた方が…うん、爽やかだよね。

ヒデアキ そうだね! まさに。見る側も、俺ら演者もね。

カワノ うん。

ヒデアキ でもこれも簡単な話じゃないからねぇ。じゃあIDチェックでもやりますか、ってなってくると人件費もかかってくるし、シンプルに手間だしさ。

カワノ そうだね、そもそもIDチェックがいい気分じゃないしね。

ヒデアキ うん、あの確かめられてる感じは俺も慣れないなぁ笑

カワノ 色々俺らも考えることは多いけど…少なくともCRYAMYは、自分達が主催とするライブにおいては今後やるであろうものに関しては何かの手を打とうと思ったキッカケだったかなぁ。…まぁ、デイジーはさ、俺はもう、気楽にやるつもり、本編のツアーと違って。ジョークとかで和ませてね…。だからお客さんにも、気楽に見て欲しいし…まぁその…おそらく俺らを見るのが初めてであろう、時速のお客さん…まぁ…。

ヒデアキ はっはっはっ笑 こう、ね笑(手を水平に振る)お互い対照的なフロアではあったね笑

カワノ 笑 もう、なんか、時速と比べたらシーンってところ多かったかもね笑 気を使わせたかもな、ってさ笑

ヒデアキ でもほら、リキッドのライブレポート、あれすごく素晴らしいレポートだったけど、CRYAMYのところでさ、あそこに書かれてたのが真理だよ笑 だから、あんまり気にしないでもいいと思うけどね笑

カワノ まぁね、よしわるしってわけではなくさ、単純に、そんなかしこまらんと、肩の力抜いていいのよ、っていうね笑 気にしてるわけじゃないんだけどさ。

ヒデアキ はっはっはっ笑


デイジーバー公演終了後の一枚。

カワノ でも、どうでした?ツーマンツアー。

ヒデアキ 俺は個人的にね、すっげえ思ってたのが、絶対にただの仲良しライブにだけはしない!っていう、そう言うのがあったねぇ。これだけは意地でも、っていう。

カワノ いや、俺ねぇ、なんなかったと思うし…俺さ、なんとなくヒデアキはそう言うのが嫌いなのが、わかってたからさ笑

ヒデアキ んふふふ笑

カワノ だから俺、ステージ上でさ、ほぼお前らに言及しなかったじゃん笑 まぁ、リキッドルームではすげえ喋っちゃったけど、大阪と名古屋はさ、なんも喋ってない笑 せいぜい、しんのすけが大阪暴走して…。

ヒデアキ お風呂一緒に入ったのをバラしたやつね笑


お風呂どころか、その後明け方までテレビの有料放送でアダルトビデオを見る三人。
男優が知り合いに似ているせいで罪悪感から、最後はなぜが有料放送で見れたpixiesのライブ映像を見て
微妙な顔で各々の部屋に帰った。

カワノ それを咎めたぐらい笑 普通に気持ち悪いからな笑 馬鹿じゃねぇのって笑 …まぁ、それはさておき、付き合いも長くなってきてさ、俺もそうだけど、ヒデアキがそういう、いやらしい感じを好まないのはわかってるつもりだったからね。まぁ、ストイックに演奏とか、ところどころの言動でね、示すって言うかさ。…1日ずつ振り返っていくか。

ヒデアキ そうね。まずは名古屋。


名古屋でのライブの終演後。
なぜかボーカル2名は股間を触り合っている。危険なツアーだったことを端的に表している。

カワノ 車中でヒデアキが鼻血を出して…笑 波乱の幕開けで笑

ヒデアキ 笑 あと楽屋広かったね。俺はタバコ吸わないのに喫煙所でずっと喋ってた笑

カワノ そうだったね笑 演奏でいうと、名古屋は俺らがトッパー。で、セットリストも…。

ヒデアキ 東名阪で被りなし。

カワノ うん、くじ引きで決めてね。でもね、このセットリスト散らす、って言うのは前からやりたかったからやったんだけど、ちょっと思ってたのがさ、時速はやる前からおそらく真っ向勝負なセットリストで来るだろうな、って俺予想してたの。

ヒデアキ うんうん。実際そうだったね。

カワノ でも、俺らはそういう、変則的なセットが三本続くっていう感じになったからさ、なんというか…。

ヒデアキ そうだねぇ。名古屋、大阪は頭セッションからスタートだったし、東京は「完璧な国」から!?ってなったしさ。

カワノ うんうん。で、さ、だからこそなんだけど、時速側からしたら「こいつら、かわしてきたな」って思われるんじゃないか、ってさ、そう思われたらすごく…ちょっと違うかなってのもあったんだよ。真っ向から当たってないんじゃない?って思われたら嫌だな、って。って言うのもあって、ファイナルの札幌は、逆に今のベスト…「this is CRYAMY」をね、出すっていうセットリストで…行ったけど、札幌は逆に時速が変則的なセットで笑

ヒデアキ はっはっはっ笑

カワノ でもそれも面白かったね笑 いいツアー、いいセットリストで回れたと思うし。

ヒデアキ それで言うとさ、俺たちは名古屋大阪が全く同じセットリストでさ。どちらも来てくれた方には申し訳ないなと思いつつも、でも、同じとはいえ、それぞれ違うライブ、違う側面を見せられた、っていう自負はあるね。実際、名古屋を経て大阪をやった時に、PAの関口さんとか、いろんな人たちに言われたけど、「名古屋を経て大阪では見違えるほど良くなった」て言ってもらえてさ。だから個人的には大阪が一番意味のあるライブができた気がするんだよね。

カワノ うんうん。俺も強いて言うなら、時速は大阪が一番よかったと思う。でも俺らは…逆に名古屋のライブ、すげぇ文句言われたよ笑 曲とかライブの空気が重すぎる、とか、ハズしに行ってた、とかって。言葉としては聞こえてこないだけで、お客さん…フロアの困惑も、肌で感じた側面もあったしね。

ヒデアキ ああ、確かに、表現の仕方がね。外してたってよりは、より徹してたし、俺は本質的な部分が一番わかりやすく出てた気がしたんだけどね。

カワノ まぁ、それぞれ各地のセットリストに極端にテーマがあったんだけど、確かに実際名古屋は重苦しくなってしまったし、伝わってなかったかもなんだけどね。盛り上がる曲でわーっとやりたい、って人もいるだろうけど、でも正直、あれでそういう声が身内から返ってくるのは…ぶっちゃけ腹立ったけどね笑 じゃあお前ら、家でミュージックビデオ見てろ馬鹿野郎っつったし笑

ヒデアキ 笑 名古屋のテーマはなんだったの?

カワノ あれは、自分の中の諦念とか、懺悔とか、そういう、内側で煮えてる気持ちを、最後の新曲と「ten」の流れで、それを消化して、認めてやる、構わないと許すって言うのを見せたかったかな。「確証のない愛」は、いつか見つけられたら実はすぐそこにあったのに気づくよって。大阪はもっと外に向いた怒りとか、納得がいかずにどうしても表面に溢れてしまった感情が先行していって、それを新曲が包んでやることで愛されていた時間みたいな…そう言うのがあったことを思い出して、最後の「プラネタリウム」で、貰った愛を返してやる、ってイメージ。

ヒデアキ なるほど。うんうん、伝わってるよ。

カワノ まぁ東京は…なんだろう…ジョンレノン笑 「愛」。「愛こそが全て」って…笑 まぁ、全公演、「愛」。お前らへの、も含めてさ。たまにはいいだろ、って笑

ヒデアキ 俺は俺で受け取ったものがあったけど、紐解くと裏ではカワノとかみんなの努力があって、そういうコンセプチュアルなライブだったんだね。へぇ、俺らもやってみたいかも、そういうの。

カワノ まぁ意味があったか、っていえば、正直通用したところもありつつ、意味なかったなってこともぶっちゃけあったにはあったけどね。伝わんなきゃしょうがないじゃん。まぁ、名古屋は、そういうのが如実に出たかも、って感じ。最後にフロアが沸いた光景は手応えもありつつ、まぁ、翻って振り返ればあれが全てではなかったし、全てに出来なかったのは俺個人の反省かな。…単純に速い曲聴きたいとか、騒ぎたいみたいな奴は…もう知らんけどさ笑 なんか文句ばっかになっちゃってごめんね。

ヒデアキ いや、でも俺はね、あの日のライブはお前らが俺たちにもお客さんにも今のお前のモードを示してくれた義理堅いライブだったと思ったんだよ。それこそさっきの話じゃないけどさ、俺たちの別れ始めた道のりを、ツアー初日の起点であるあそこではっきり示してくれた、って言う、男気じゃないけどさ、そう言うふうに受け取った。確かに、あのヘビーな空気はこれまでにはなかったものだし、万人受けするものじゃなかったかもしれないけど、でもあれはカワノなりの俺たちへのアンサーだったし、少なくとも時速のみんなは食らったんだよね。それに、それはお客さんにも、限られた人だけだろうけど伝わってると思うし…数じゃないじゃん、深く刺さったか、どれだけ深く届いたか、って。その意味だと俺は名古屋、すごくいいスタートを切れてたし、俺たちもそれにアンサーしよう、ってライブをしよう、って挑めたんだよね。

カワノ そっか…! それなら、やった意味があったかも。うん。…俺はね、名古屋のライブも良かったんだけど、その翌日の大阪の時速のライブ、逆にめっちゃ食らったんだよね。すごい衝撃的だった。あの日は、あのライブを見れたから、CRYAMYの大阪のライブがああ言う形になっただろうし、いいライブができたと思ってるんだよね。


大阪のライブの終演後の一枚。
梅田クアトロの椅子席にて。

ヒデアキ まぁお互い様よ。名古屋と東京は俺らがCRYAMY見た後にライブだったじゃん。名古屋に限らず、お前らが先の日はお前らが先に背中で、態度で示してくれたものが本当に大きくてさ。それを受け取ったからこそ、じゃあ次は俺たちが!てできたっていうさ、すごくそれがあった。でさ、名古屋は、挑みはしたんだけど、正直、あの日はそれが十全にお前らに示せたか、って言われるとそうとは胸を張っていえなくてさ、実は。なんか、至らないところがあって…だからこそ、っていうか、翌日大阪について、みんなでその話したんだよね。「昨日できなかった分を、今日のあいつらの前に示そう」って。

カワノ そうだったんだ。

ヒデアキ で、もうちょっと行けるはずだ!ってやった結果がうまく出せたと思うんだよね。演奏ももっとストイックだったし。だから、その俺らのライブに対してお前らがさ、楽屋で「今日やばかった!」って言うのも、嬉しいけど、俺からしたら「俺らは昨日のお前らのアンサーが今日の俺らのアンサーを引き出してくれたじゃん」って、そう思ったんだよね。

カワノ レイがね、大阪の日、珍しくわかりやすく感動しててね笑 レイはいいやつだし、結構気を使うタイプだから、友達のバンドを結構、無条件になんでも褒めるんだよ笑

ヒデアキ だよね笑 あの、「いいやーん」みたいなの笑

カワノ でも、本当に感動してる時は、あんな感じでしんみりと、本当に感動してるってわかるって言うかね。うん、マジで感動してたし…それで気合い入りすぎたのか、あの日はパキってたね笑

ヒデアキ へぇ。

カワノ 実はね、あの日、俺以外の三人は明らかに緊張してたんだよね。いいライブを目前に見せられたプレッシャーだと思う、し、俺は俺で別の意味で集中を強いられたと言うかね。

ヒデアキ というと?

カワノ あれだけいいもの見たんだから、俺もそれに匹敵する何かを見せなくちゃ、って。そういう、自分への圧迫感。でも…そう言う感じだったけど、本番直前に、よくよく思い返したらしんのすけのあの、お風呂MCを思い出して…笑

ヒデアキ あっはっはっ!笑

カワノ うん…まぁ…コケてもいいか、ってさ笑 俺も汚すか…みたいな笑

ヒデアキ 台無しだよ本当にさ笑 お前も、ライブ終わった後、クアトロのシャワーブースで荻野と全裸になって水の掛け合いしてるし笑

カワノ 結局ツアー中でカイくんのちんちんだけ見れなかったなぁ。…うん、でも、大阪、すごい食らったぜ。

ヒデアキ じゃあ多分、お互いのいいところが出たのが大阪のライブだったのかもね。

カワノ うん。なんか、金子さんと大森くんがさ、札幌の打ち上げで言ってたけど、東京のリキッドとか、ツアーファイナルの札幌とか、一見そこがピークであったように見えて、実はあの二日連続のライブの2公演こそがすごく生々しくて、リアルで、我々の良さが出たんじゃないかな、って言ってたんだよね。それは俺、なるほど、って思ってさ。

ヒデアキ うん、そうだね。

カワノ でね、これはね、CRYAMYには初めての経験だったんだよ。CRYAMYのツアーって、完成形は絶対的にツアーファイナルでさ、それまでの道のりは、いわゆる試行錯誤と研鑽のライブであることが多くてさ。手を抜くとか、実験する、外すとかじゃなくて、全力でやりはするけど、迷いや戸惑いありき、っていう。それを経て、完成形を目指して、獲得した最終形態を最後に何もかも爆発させるっていう、そういうバンドだし、ツアーだし。だから、結果的には最後が一番良かった!ワンマンが最高だ!って、俺もそうだしお客さんもそうだと思うんだけど…このツーマンツアーは不思議でさ。旅の道中…言ったら、俺は北海道までに「GOOD LUCK HUMAN」の答えを掴まなくちゃいけない、ってそれを考えてたんだけど…蓋を開けてみれば、その、最初の二日間、俺が迷いながらぶつかったあの二日にこそ本質が宿ったって言うのは、すごく…いいなぁって思ったし、時速と回ったからこそ、生まれた結果だったのかな、って、すげぇ思った。

ヒデアキ うんうん。

カワノ 多分、これから俺たちが進む道はもっと違っていくと思うんだけどさ…この、2022年という時間に、時速のみんながいてくれたのは、俺にとってすごくでかい出来事になったよ。いい思い出って、人生においても俺はあんまりないし、…断言するけどさ、このバンドは内に閉じこもったり風通しの悪いところが良くも悪くもあるバンドだけど、「仲間」とか「友達」とか…そう言う、外の誰かとの美しい記憶っていうのは、このバンドにとって君たちとの旅が一番最初の一個で、これからも一番重い意味を持ってくれると思う。いい旅でした。

ヒデアキ それはお互い様だしさ、あの、背中で示しあったライブは、すごく大きな意味がお互いあったと思うよ。

カワノ …かなりね、男らしいツアーだったと思うよ…!

ヒデアキ はっはっはっ!笑 ストイックな、ね笑 そうだよね、あの、態度で示す感じ笑

あの時と同じことを今も言ってくれてありがとう

ヒデアキ …で、帰って来て東京。リキッドルーム。


東京公演終了後。
残すはツアーファイナルとなった。

カワノ うん。札幌は各バンドメンバーマネージャーだけの身ひとつで乗り込んだから、ここまで回ったスタッフのみんなとはいったんこれが最後だった。後半戦の幕開けでもあるけど、事実上ツアーの一区切りではあったね。

ヒデアキ そうだね。

カワノ …一個いい話あるんだけどしていい?

ヒデアキ へぇ。どんな?

カワノ 俺、上京してすぐの頃に働いてたのが…バーテンダーしてたんだよね。新宿にお店があって…。

ヒデアキ ああ、古い付き合いのあったていう先輩の店か。

カワノ そうそう! で、さ、いろんな人が来るんだよ。ホストのにいちゃんとか、キャバ嬢も、ゲイバーの店員んさんたちも、普通のサラリーマンも。で、その、いろんな人の中に…今新宿の方でさ、トー横キッズとか言って、問題になってるあれ…あれのまぁ、走りじゃないんだけどさ…まだ10代半ばぐらいで、千葉の実家から家出して、変な男の家に泊まり込んで金もねぇから援助交際してて…って、そう言う子がいたんだよね。

ヒデアキ うんうん。

カワノ 明らかに子供だったから、店で酒出せないんだけどさ、飲めないくせに…あんまり良くないんだけど、でも行くとこないなら、ってさ。店によく来てたんだよね。店長も俺も、未成年のくせにこんなとこうろつくんじゃねぇよ!なんて言いながらね笑 …結局、男がろくでなしだったから、ぶん殴られて住んでたところ追い出されてたっぽくて、どこフラフラしてんのかわからないし、言わないけど、俺らぐらいは可愛がってやろう、って。…当時は俺もギリギリ10代だったから、大して年も変わらんくせにね笑 まぁ、世話焼いてたんだよ。俺も、店長も、常連客も。

ヒデアキ 壮絶な…。

カワノ ねぇ。でさ、ある日、店きて、何言い出すかと思ったら、「もう私は死ぬ!」って大泣きし始めてさ。何があったのかも言わないし、…今思えば店のみんなの気を引きたかったのかもしれないんだけど、店長にも周りのお客さんにも、結構ひどいこと言っててさ…。…俺、それで、俺が精神的に幼かったのもあるけど、すげぇ怒っちゃってさ。「そう言うのやめろ!」って。で、まぁ…「お前に何がわかるんだよ!」って言われちゃってさ。で、俺も、みっともないけど、年下の女の子に向かって怒鳴りつけて、で、店大騒ぎ、みたいな。

ヒデアキ なんて事すんだよ笑

カワノ その子も泣くし、店に飲みに来てた馴染みの姉ちゃんも「どうしてそんなこと言うの!」って泣いてるし、最後は俺も泣くし笑 …まぁ、後日ね、あったときに、「ごめんね」って。でも…その後さ、しばらくたって、お店に来なくなっちゃったんだよ。誰も行方を知らないし…変な話だけどさ、俺は、「もしかしたら」って、そうなっちゃったかもな、って、思ってたんだよね。…亡くなった身近な友達、今となっては俺の周りには多いし、そういうこともあるかも、って。…でも、いなくなっていった人たちのことは全員今でも気にして生きているし、その子も例外なく、もう5年近く時が経ってるけど、気にして生きてたんだよ。

ヒデアキ その子に関しては、もっと寄り添っていれば良かった、とか?

カワノ うーん、それもそうだけど、やっぱ、年齢が若かったこともあってさ、厳しい言動を取っちゃったこととか、「命大事に」みたいな…そりゃそうなんだけどさ、そこに対して頑なでありすぎた自分が許せんかったり…一番は、年が一番近かった自分が、正論ぶつけるだけですげぇ残酷な…対立する側に回っちゃったことが悪かった、申し訳なかった、ってさ。

ヒデアキ そっか…。

カワノ で、さ。本題なんだけど…その子がね、来てたんだよ、リキッドの日。チケット買って。

ヒデアキ えっ!?いたの!?

カワノ そう笑 ライブ終わって数日後に、電話かけてきてさ笑 店の常連だた女の人がいたんだけど、その人とちょっと前に再会してたらしくて、で、その人伝で連絡先と、今何してるとか、聞いてさ。

ヒデアキ すげぇな…でも、良かったじゃん!

カワノ ねぇ、俺も嬉しかったよ。生き延びてたのか、って。声もさ…もう忘れてるぐらいだったんだけど、下の名前で俺のこと呼んだ声で「おっ!!!」って。…色々あったみたいなんだけど、今はちゃんとした仕事ついてるよ、って。

ヒデアキ うわ…やばいね。

カワノ うん。「あの時はありがとう」って。で、バンドやってるって聞いて、「ライブ見にいったよ」ってさ。でね、俺が音楽やってるのを初めてみて、感動した、って。でね…あの曲よかったって言ってたのがさ、「GOOD LUCK HUMAN」だったんだよ。

ヒデアキ うんうん。

カワノ 歌詞を聴いてね…すげえ感動した、って。サビの歌詞、「裸の涙は…」って一節。俺ね、全然覚えてなかったんだけどさ、俺が店で怒鳴りつけた夜に、全く同じこと言ってたんだよ、って。「お前のこと心配して泣いてる奴のことが信じられないのか!何も思わんのか!」「俺がベラベラ怒鳴ってるのは信じなくてもいいけど、お前のために泣いてる人たちの涙はお前のこと好きな何よりの証拠だろうが!」って。…俺、そんなこと言ってたとか、金八先生かよ、ってちょっと笑っちゃったんだけどさ笑 でもね、あれを忘れたことはなかったし、あの時と同じことを今も言ってくれてありがとう、あれを聴いて、生きててよかったよ、って。うん…。

ヒデアキ うんうん…。

カワノ だから俺..もう東京のライブはねぇ、それだけで…いやぁ、やってよかったなぁ、ってさ笑

ヒデアキ はっはっはっ笑 いや、でも…よかったよ…あの曲作ってさ…。お前、みんなにはさ、照れ隠しで「あの曲はふざけて作ったんだよ」とか適当なこと言ってたけど…。

カワノ みんなでやった、あれ…ファイナルファンタジー、あれをやりながら書いた、とかね笑


プレイ前は「RPGをやったことがない」と豪語するヒデアキだったが、
いざプレイを始めると感情移入しすぎてキレたり泣いたり大忙しであった。

ヒデアキ そうそう笑 「あれはティーダの歌なんだ」って笑 高田純次かよ笑 …でも、そっか。名阪の、我々の営みがありつつ、東京ではすごくいい出来事もあった、と。…いいツアーだなぁ笑

カワノ ねぇ笑 …で、最終日、北海道。狂気の札幌…。


最終日。
具合が悪くなるまで飲み続け、夜はふけていった。

ヒデアキ いやぁ、最後だし、初北海道だったし、…ぶっ飛んでたね笑

カワノ もうね、ライブ翌日、ね、打ち上げ終わって、翌日二日酔いの末に…。

ヒデアキ 新千歳空港で俺がほぼポカリの透明なゲロを笑 「透明だから大丈夫」って会田さんがフォローするっていうね笑 謎の理論だよな笑

カワノ 笑

ヒデアキ 最悪だったよ…何も食べられなかったし、家着いたのが夕方だったんだけど、気がついたら気絶して二十四時間何も食えずに…笑 飛行機でもさ、胃腸がグロッキーすぎて、乗ったはいいけど、寝ては目が覚め、ネットフリックスでダウンロードしてた動画見てたんだけど、じっと画面見てたら気が狂いそうになってさ…ずっと、こう…虚空を見つめて…ふと時計見たら二分しか経ってない、みたいな…。二時間半…辛かったよ…。…あと、たかしこ、空港に全部お土産忘れて、品川からとんぼ返りするし笑 見てらんなかったよ笑

カワノ 情けない笑 …また行きたいね、2バンドで。

ヒデアキ そうだねぇ。個人的には北海道、俺は思うようなライブができなくてさ。悔しかったんだよね。

カワノ お前が強く叩きすぎて、ハイハットぶっ壊れたしなぁ。

ヒデアキ それもあるけど笑 うまく音も作れなかったしさ。…不満が拭えなくて、お前らのライブ始まったのに、四曲ぐらい楽屋から出られなかった笑

カワノ いやぁ、って言うけど、お前ら、いいライブだったけどねぇ。

ヒデアキ CRYAMYは札幌が一番よかったね。…まぁ最初の方見てないけど笑

カワノ ふふふ笑 しんちゃんがさ、終わった後駆け寄ってきて、すぐいったのがさ、「LOSTAGEだったよ…」だったからね笑

ヒデアキ ははは笑 相当よかったんだろうな笑

カワノ 俺としんちゃんLOSTAGE大好きだからな笑

ヒデアキ それはわかるけど、具体的な名前出しすぎだろ笑 そこはもっと言葉あってほしかったわ〜笑

カワノ いや、まぁ嬉しかったけどね笑 打ち上げも楽しかったし。

ヒデアキ 荻野、号泣ね笑 「俺…お前らとツアーまわれて、本当によかったよ〜」っつって笑 あいつさぁ、一番斜に構えてるくせにスイッチ入ると一番感極まっておかしくなるからな笑

カワノ 帰った後のラインでも「愛してる」だったからね笑 カイくん、「なんだこいつ…」っつってたからね笑


正確にはこうでした。
荻野、熱い男よ。

ヒデアキ 笑

カワノ 心残りはカイくんだけ俺と全裸になってねぇんだよな…。

ヒデアキ あの肉体を堪能できなかったか…。いい体してるんだよなぁ。

カワノ いや、でもさ、俺、北海道のライブで最後の方、上半身裸だったじゃん。あれみたカイくんがさ、「カワノ、意外といい体してるよな…」って褒めてくれたんだよね。


カイくん。脱ぐとすごいでおなじみ。
いつも俺の食生活を心配してくれるが、半分ぐらいは筋肉目当てだと思う。

ヒデアキ なんだよそれ笑

カワノ 「胸筋が厚いのがいい」「努力の見える肉体」とか言ってね笑 もうなんならこれが一番嬉しかったね…。札幌で最後まで一緒にいたのも、俺とたかしこと、カイくんとしんのすけだったし。

ヒデアキ あの後どうしたの?

カワノ ああ、俺さ、すごいヘロヘロだったじゃん。で、その四人で一緒に買ったんだけど、ホテルの前まで来て、名残惜しくなってさ。で、コンビニでカップ麺買って、明け方近くまで駐車場で食いながらだべってた笑 朝起きたら俺もゲロゲロだったよ…。

ヒデアキ まぁ俺は俺でリアルに吐瀉したから何も言えないけどね…。インビジブルゲロ…インビジをしてしまった笑

カワノ まぁでも、すげぇ楽しかったなぁ、このツアー。今までのツアーで一番楽しかったよ。

ヒデアキ そうだねぇ。ステージ上の取り組みではさ、変な馴れ合いはないように、ってやったけどさ、それはそれとして、そこ以外ではすごく楽しい時間過ごせたよね。

カワノ 名古屋大阪もさ、番外編で言うと、帰りマック…。

ヒデアキ ああ! 飯食う時間なくて、でもどうしてもなんか食べたくてさ、しょうがないからドライブスルーで、って探したのに、三件ぐらい空いてなかった笑 車でカワノ、すげぇ嬉しそうに「侍マック、いっちゃおうかしら…」とか言ってたのに、店見つからなさすぎて車の中で大不機嫌になってさ笑 めちゃくちゃ怒鳴ってたからね笑

カワノ 笑 俺だけじゃなくてしんのすけもクソキレてただろ笑 「24時間営業店のくせに休んでんじゃねぇよ!」「なぁ!気分悪りぃ!」って笑

ヒデアキ はっはっはっ!笑 暴論だよ笑 でも結局なんとか見つけてね。…カワノ、持ち帰りなのに待てなくて店内で食べ始めたけど、嬉しすぎて顔くしゃくしゃで、ババアみたいになってたからね笑


ババア。

カワノ ふふふ笑 大阪のマックもね…。

ヒデアキ あーそうそう! たまたま見に来てたお客さんがいてさ、「写真とってください!」って撮ったんだけど、撮り終わった後に便所で席外してたたかしこが帰ってくるという笑 意図的にじゃないにしても、ハブッたみたいにさ笑

カワノ 笑

時速もCRYAMYも、誰かを育てるというか、そう言うこともやって行かなくちゃいけないよな、って思うんだよね

ヒデアキ カワノも、スタッフのみんな(今ツアーは物販スタッフとローディーに時速チームからカチネキとコウタくんの二名が同行してくれた。)とも打ち解けててよかったよ。…彼ら、初対面だけどさ、カワノ、気難しいから、金子さんが「あいつ不機嫌になったら終わりだ…」ってビビってたし笑 後カワノ、カチネキ最初苦手だったからな笑

カワノ いやいや笑 まぁ…俺基本的にさ、声大きい女性、口数の多い女性、声の高い女性が…苦手だからまぁ…役満で…。酔ってる女性も…。全て俺の弱点だったね。

ヒデアキ はっはっはっ!笑

カワノ でも、普通にいい子だし、なんなら砕けた調子で人当たりもいいし、ねぇ…なんか…俺が偏見で接していたのかもしれない…って反省したよ笑

ヒデアキ まぁ、カチネキはお前との初対面の時がね笑 すげぇ酔っ払ってたし、愚痴モードだったからさ笑

カワノ いやぁ、でも、いい子だったしさ。楽しく過ごせましたよ。こうたくんもさ、元々、大学入ったぐらいの頃、俺らのライブをお客さんで見に来てた子だったらしいしさ。今でこそ、いろんなデカい現場にもたくさん顔を出すぐらい頑張ってるみたいだし。

ヒデアキ いやぁ、あいつはねぇ、堅実にいい仕事をするし、頼りになるのよ。なんか、こう、FOHで関口さんが卓をいじってる間にセッティングやらチューニングやら、全部やってくれるし、ギターも弾けるからアンプの調整もできるし、すごい頼りになるのよ。運転とかもやってくれるし。

カワノ ね。俺らも世話になったし…時速チーム、いいチームじゃん、って思ったよ。

ヒデアキ 金子さんの運転ディスってたけどね笑 「下手っすね…」って笑

カワノ ははは笑 でも、まぁ、ああいう俺の知らない子たちと交流するって言うのは、シンプルに楽しかったけどね。基本的に俺らはPAしか連れて行かないから…他の分野で人の力を借りるって言うのが初めてだったけど、みんないい奴らだったしさ。

ヒデアキ いやいや、逆にこっちはさ、関口さんはじめ、CRYAMYチームの音響スタッフに力を借りてさ、すげぇよかったんだよ。モニターのソンジさんとかも、初対面なんだけど、相談もしやすいしさ。要望にも応えてくれたし、どの公演もやりやすかったんだよね。

カワノ うんうん。…思ったのが、その…俺らもそういう、周りのスタッフを固めて行ってもいいのかな、って思ったんだよね。時速みたいに。

ヒデアキ ああ、サウンド以外の部分も含め、ってことね。

カワノ うん。すごく助かったんだよね、今回。

ヒデアキ 必要だよね…。会田さんの負担とかも考えるとね。あの人、全部やるし。

カワノ そうだね、結構…大変かも。

ヒデアキ 俺らも普段は金子さんが全部やるから負担も大きくてさ…大きな会場になると、やっぱりスタッフは必要になってくるね、っていう感じなんだよね。

カワノ そうだねぇ。後、それもだし、そろそろ俺たちも人を育てる、って言う側面で、誰かを連れて行くっていう、そう言うのも必要なのかな、ってさ。

ヒデアキ あぁ、そうだねぇ。それは俺も思うな。

カワノ うん。例えば、20歳そこそこで、気骨と根性がある男がいたらそいつを全国連れ回してね…。後々のキャリアにもつなげていってほしいしさ。…俺ら、都内のワンマンに限ってはね、ガチガチに、音響から照明から撮影からスチールからローディーまで、全部連れて行ってさ…通称「フルボディCRYAMY」笑

ヒデアキ ああ、全武装した、ハンパないやつね笑

カワノ そう笑 音も普段以上にハンパじゃないし、照明もキレッキレで、カメラも動画もあるし、楽器テックの八木さんっていうすごいおじさんが…レコーディングにもテックで来てくれたりするんだけど、多忙を縫って肝心なライブには絶対来てくれて音作ってくれるんだけどさ…「俺、忙しいから今後は平日にワンマンやれよ」って言ってたけど笑 まぁ、それぐらい多忙な人笑 でも、その八木さんも若い頃の一番最初のキャリアは、当時ツアーをバリバリ回ってたロックバンドのツアーにくっついて行って、現場で学ぶ、っていうスタートの人でさ。

ヒデアキ へぇ。やっぱり、すごい人たちも、最初はそういうところからスタートするんだ。

カワノ うん。やっぱり、そう言う話とかも聞いてるとさ、俺たち…時速もCRYAMYも、誰かを育てるというか、そう言うこともやって行かなくちゃいけないよな、って思うんだよね。分野を問わずね。

ヒデアキ …お前、偉そうに音のこと言ってるけど、アンプフルテンだけどね笑

カワノ 笑 いや、あれはちゃんと、理論に基づいてるから! マーシャルはフルテンが一番いい音になるの!

ヒデアキ 笑

周りの奴らをフックしていく

カワノ まぁ、あとはさ、俺ら最近、レーベルでラジオとか、こう言う対談の企画とかもやり出したけど、これもさ、自分達のためではあるんだけど、じゃないところで言ったら…どっちかって言うと、人に還元したいな、って言うのが重きにはあるんだよね。

ヒデアキ そうだね。前々から話を聞いてきたけど、「NINE POINT EIGHTでオウンドメディアを作りたい」って言うのは、自分達でしがらみなくプロモーションとか自己発信ができるような機能を整えたい、って意味もあるけど、もっと周りの人たちに還元できる仕組みも作りたい、って言うのがお前らにとっては大きいもんね。

カワノ そうそう! もうちょっとこういう取り組みを続けて行って、頑張って行ってさ…例えば、対談とかもさ、燻ってる同期のバンドとか、後輩たちが何かしらのリリースがあるけど、どこも取り上げてくれなかったり、お金がなくてプロモーション打てない、ってなった時に、「じゃあ俺らで話聞くからうちで載せる?」とか、ラジオで曲流したりとかできるじゃん。

ヒデアキ うんうん。

カワノ インディーに誇り持って取り組んでる先人たちもさ、自分達でそう言う仕組みを作って周りに還元して行ってたのも俺は見てきてるし、その模倣じゃないけどさ、俺には俺のできること、周りの届いてる人がいると思うし、俺たちもそう言う取り組みをやることが大事かな、ってさ。…もっと言えば、NINE POINT EIGHTでさ、他のバンドのリリースとかも手伝ってやれるようになりたいんだよ。

ヒデアキ おお。

カワノ 製作費もさ、ちゃんと出せるぐらいになったら、俺が好きな、まだ燻ってる奴らをうちから出して、で、ずっと一緒にやるって言うよりは、それで話題になったら「じゃあ別の大手に移って、やってくるっすわ!」とかも、やれるわけじゃん。「いつか恩を返せよ!」って。

ヒデアキ アメリカのディスコードの動きに近い感じだね。日本だとピザオブデスか。周りの奴らをフックしていく、っていう。

カワノ そうそう。

ヒデアキ …がんばってほしいし、すごいワクワクするんだけどさ、お前には重大な問題があるよ。…友達と後輩がいない、お前には。

カワノ …結構はっきり言うね…。

ヒデアキ 笑

カワノ いや、でもね、これは結構悩みではあるけどさ…いねぇのよ! 後輩とか、俺らが好き!ってバンド!

ヒデアキ いやぁ、0ではないんだろうけど…露骨にいないよね、お前らに関しては。

カワノ そうだねぇ…。

ヒデアキ そもそもさ、最近の若いバンドマンはCD買わないよ。ライブも行かないだろうし。だし、お前らのライブで何かを受け取って、っていう人たちはさ、ぜったい音楽やってる人少ないと思う笑 音楽をやるって言う、そのフィールドまで手が伸びない、ある意味ギリギリの人たちを支えてる音楽じゃん、お前らってさ。

カワノ 本当にこう…自分でもさ、最近わかってきたけど、マジで閉鎖的なね…。

ヒデアキ それこそお前らが頑なにやろうとしないけど、サブスクの是非、って話題にもなってくるしね。…俺さ、地元の蔦屋が閉店するって、セールやってたんだよ。ニコニコで大量のCD買ってさ。持ってるやつもあるし、音源自体はサブスクでいくらでも聴けるんだけど…モノで持っておきたくてさ。

カワノ うんうん。

ヒデアキ だから、その、思ったのがさ、結局、そうやって自分の手で掴んだものしか記憶にも残らないし、大切にできないんだよね。俺。

カワノ うんうん、わかるよ。

ヒデアキ 友達から勧められた曲とか、サブスクとかで聴いてもさ、なんか、後々自分に残るものって、結局自分の手で選んで、形に残したものだったりするから。だから、そう言うきっかけとか機会は、時勢もあるけどさ、残した方が絶対いいと思った。

カワノ そうだなぁ…。

ヒデアキ いやぁ、でも、そうは言っても、お前らの立場を考えるとさ…リリースもフィジカルにこだわって時代からはどんどん逆行して、同期や後輩にも好かれず…茨の道だな笑

カワノ 悲しいよね笑 …なんで俺、好かれてないと思う?笑

ヒデアキ うーん…嫌われてるとは思ってないけど、多分、CRYAMYは好きだ、って言うのがあるかもだけど、…一番マイルドな大森くんですらそこまで口数が多いわけじゃないしさ、…とっつきにくさが、すごいよね。

カワノ まぁ、確かにな…。

畑健二郎ゾーンに行って、マグカップを…

ヒデアキ 俺も少なくともさ、三年前はお前の口から「ニコニコ動画組曲」って単語が出るとは思ってなかったからね笑

カワノ ふふふ笑

ヒデアキ 1オタク出ると思わんかったもん笑

カワノ (アイドルマスターの曲を歌い始める)

ヒデアキ 信じられんと思うよ、みんな笑 ライブしか見てないやつ笑

カワノ いやぁ、でもさ、俺って、所詮ライトオタクなんだよ。昔はよく、オールドスクールなアニメの話とかしてたんだけどさ…ULTRA CUBのカーミくんにさ、飲み会でアニメの話されて…で、俺、浅知恵で知ったかぶりして相槌打ってたんだよ。

ヒデアキ 笑 確かに、カワノは知識が隔たってるだけで、決してアニメオタクとは言い切れない部分あるしね。「けいおん」しか知らない、みたいな笑 有名なやつを表面だけストロークしたぐらいの浅さ。

カワノ でさぁ、カーミくんがなんか、その、異常にタイトル長い…忘れたけど、萌え系の…。

ヒデアキ 萌え系笑

カワノ うん…なんかその、そう言う話をし出して…俺、わからんからさ、知ったかぶりしてたら、ボロが出てきてさ…キャラクターの名前間違えて、すげぇキレられてさ…。

ヒデアキ はっはっはっ!笑 好きだったんだよ、多分それが笑

カワノ 「いや、実はよく知らんくって…。すんません…」みたいな笑 「お前、浅いよ」みたいな、一番言われたくないやつを笑 もうね、それ以降、怖くなっちゃって、できないの笑 まぁ、だから、今となってはヒデアキぐらいよ、浅はかな知識を披露する相手は笑

ヒデアキ 逆に失礼だなぁ笑 俺は怒らないけどさ笑

カワノ まぁ…所詮俺はライトオタクだよ…。

ヒデアキ まぁ、俺は中学生の頃、「小説家になろう」でモンスターハンターの二次創作小説読んでたけどね。

カワノ 怖すぎるだろ…。二次創作小説って久々に聞いたわ…笑

ヒデアキ 俺の「1オタク」出しといたよ笑

カワノ 俺ねぇ、初恋の女の子が腐女子でねぇ。だから、その、実態を全く知らなかったんだけど、「夢小説」って単語だけ知ってたよ笑

ヒデアキ 笑

カワノ 大人になってからふと気になってさ、調べたら、「ああ!なるほど!そう言う仕組みね」って笑 当時はやってたのが確か、「家庭教師ヒットマン」…。

ヒデアキ ああ、流行ってたね! 俺もアニメ見てたもん。日曜にやってたしさ。漫画も人気だったし。いやぁ、あれね、少年漫画として楽しんでいる男の子たちと、あの…少し成長の早い…知りすぎてしまった女の子たちが…笑

カワノ 笑

ヒデアキ この絶妙な勘違いで生まれた交流ね笑 俺、中学生の頃、女の子たちとリボーンの話しててさ、「女の子だけど、ジャンプ読むんだね!」って、楽しく喋ってたけど、裏側は..こう、ね笑 奇跡のマーケットがそこにあったと笑

カワノ ふふふ笑 この、朧げな記憶を辿っていくとさ…六道骸か、雲雀くんか、みたいな…。

ヒデアキ あと山本、な。


当時異常に流行っていた「REBORN」。
甘酸っぱい?当時の記憶が蘇る。

カワノ 懐かしいなぁ…。いや、ね、俺、こう言う、穿った知識は豊富だったんだけどね笑

ヒデアキ そう考えるとね、俺は小学生の頃に畑健二郎(漫画家。代表作に「ハヤテの如く」がある。)に人生狂わされてるからね。

カワノ お前好きだよねぇ。


ヒデアキの人生を狂わせたと言われている「ハヤテのごとく!」。
サンデーはあだち充作品以外フルシカトだったカワノは未読。

ヒデアキ 好きだけど、一生恨んでるよ笑 小6の時にさ、「次世代ワールドホビーフェア」って言うのがあってねぇ。おもちゃとか、漫画のキャラのグッズが売ってる、年一のイベントがあったんだよ。いろんなのが一堂に介したお祭りみたいな、デカいイベントでさ。で、俺、友達と行ったんだけど、友達はデュエル・マスターズコーナーとか言ってさ、「うわー!」って楽しんでたんだけど…俺は友達ほっぽって、畑健二郎ゾーンに行って、マグカップを…。

カワノ わっはっはっ!笑

ヒデアキ 購入してね笑 うん…そういうの笑

カワノ いやぁ、いいねぇ笑

ヒデアキ えっ、これ使うの?笑

カワノ うん笑

ヒデアキ まぁ俺はNG出さないから笑

最初に心を許しちゃってるからね、もうその時点で終わりは見えてたよ

カワノ こう、ね、自分の遍歴を探っていくと、俺はあまり「萌え」に興味がなかったのかもしれないね…。

ヒデアキ ああ、確かにそのイメージ。

カワノ 俺ら世代のああ言うアニメさぁ、不自然に女の子多かったじゃん。一人の男取り合って、みたいな。あれがねぇ、嘘くさくていやでね。もうちょっと泥臭いのが好きだったのよね。

ヒデアキ そうだねぇ、お前はロボットアニメとか、ガンダムに詳しいイメージずっとあるね。

カワノ うん、そうそう、昔のやつね。…ガンダムに出てくる女ってさ、異常な奴が多くてさ…そこにこう、俺はね、おっ!みたいな。


カワノのお気に入りはハマーン様。
基本的には性格のキツイ女が大好物である。

ヒデアキ 荻野がめっちゃ好きなんだよね、ガンダム。だから断片的な情報はすげぇ知ってる。「カミーユ?また知ってる女の名前が…」って。

カワノ いや、カミーユは男だし、第一話で「名前が女みたい」って言われて人ぶん殴ってるからね笑 で、ガンダム盗んで生身の人間にマシンガン打ちまくる笑

ヒデアキ じゃあ俺終わったじゃん笑 終わったよ、もう笑

カワノ 時速のジェリド・メサ笑

ヒデアキ いやぁ、見たくなってきたな。

カワノ 実際Zガンダムが一番好きだね、俺も。…そうねぇ、強いて言えば、萌え系で好きだったのは「トラどら」だね。

ヒデアキ お前さぁ、女の子の目がでかいアニメを「萌え」として認識してるだろ笑 すげぇ偏見笑

カワノ いや、そんなことないだろうけどさ笑 こう、ヒロインが複数人いて、目が大きくてさ、線が細くて頭がでけぇみたいな…。

ヒデアキ ジジイの認識じゃん笑 だからだよキレられるの笑

カワノ でも、そう言うバイアスというか、そういうの抜きで俺の心をとらえたのは「トラどら」だったね。

ヒデアキ あぁ、生々しいしね、お話も。…お前、あの四人の中で誰が好きだった? ってか、俺が誰好きか、当ててみ?

カワノ カァーッ! お前はねぇ…いや、みのりん?

ヒデアキ いや、あみちゃん。

カワノ ああ、俺はね、俺もあみちゃんだったんだけどさ、最近はこう、ね、俺、みのりんなんだよ。周りに気を使いすぎるあまりにえきらぬ女心じゃないけどさ…。みのりんはね、時速で言うとしんちゃんなんだよね。

ヒデアキ はっはっはっ!笑 やめろよまじで笑 急にしわっしわになったな笑


カワノ家でプレイされたパワプロ11。「萌え」の女子を攻略したパワフル大学のしんちゃん。
このあと暴走したヒデアキによって彼女を家に誘うしんちゃんであったが…。

カワノ 笑 もうね、この年になるとね、みのりんはねぇ…なんも変なことせんから晩御飯連れてってあげたいよ。いっぱい食べや、っつって笑 すき焼きあるよ、って。

ヒデアキ ジジイ笑 いやぁ、俺もなぁ、昔っから好きになるの、大体負けヒロインなんだよね。

カワノ そうだねぇ。我々、「5等分の花嫁」も、ね…。

ヒデアキ 俺1番で、カワノは3番ね。

カワノ そう、ヘッドホンロン毛のやつ。

ヒデアキ あれはねぇ、最初に心を許しちゃってるからね、もうその時点で終わりは見えてたよ。

カワノ いやぁ、でもねぇ、俺ああ言う子好きなのよ…声ちっちゃい女…ねぇ。

ヒデアキ ちょっと自己犠牲入っててね、儚げな。

カワノ そうなのよ。でもね、アニメ化されたじゃないですか。…長女の声優、花澤香菜さんでね…。

ヒデアキ そうだね。

カワノ まぁそうなってくると話変わってくるからね。

ヒデアキ はっはっはっ笑

カワノ 俺はもう、二大巨頭でね…坂本真綾さんと、花澤香菜さんにはジーザスを誓ってるからね…。真綾さんに関しては、歌手として知って、昔からCD買ってね、音楽的にも影響大だしね…。

ヒデアキ さらば、ナカノミク!っつってね笑

カワノ …またオタクでちまってるよ笑 …ところでさ、最近の声優わからんくない?

ヒデアキ お前知らなそうだなぁ…。水瀬いのりとか…。

カワノ 水瀬稲荷?

ヒデアキ いのりだよ笑 あの、5等分の、五女。

カワノ へぇ…みのせ稲荷…。

ヒデアキ 水瀬いのり!笑 酔っ払ってきて爺さんみたいになってるじゃん笑 耳死んでるよ笑

あのイントロのギター…

カワノ 最近のアニメも見てないんだよなぁ…。

ヒデアキ 俺もそうだなぁ。唯一見たのが、「リコリスリコイル」。

カワノ リコミスリコイルか!

ヒデアキ いや、「リコリスリコイル」! お前わざとやってるだろ笑

カワノ いや、でもそれは知ってるよ! 曲だけ知ってる。あの、イントロのギターが異常にでかいやつ。

ヒデアキ ああ、「花の塔」。EDでしょ。

カワノ そうそう、あのイントロのギター…。

二人 トゥルットゥルットウルッ〜(呂律の回っていない口で全く合っていない音程でイントロを歌い出す二人。)

ヒデアキ ははは笑 馬鹿みたいな笑

カワノ …でも、Aメロいいんだよね、メロディもいいし、歌詞も…。

ヒデアキ 「君が持ってきた漫画」…。(歌い出すヒデアキ)

カワノ ちょっとsyrupっぽい感じが、ね笑

ヒデアキ (続きの歌詞を歌うヒデアキ)

カワノ …ここはきもいから切ろう!

ヒデアキ 笑

個人的には頼れる兄貴だと思ってますから…

カワノ …くだらん話しとる間にもう二時間近くはなしてるよ笑

ヒデアキ ガストも閉店だしね笑

カワノ なんかある、最後?

ヒデアキ ちょっとマジな話なんだけどさぁ、新曲、すごいよかったよ、「GOOD LUCK HUMAN」。

カワノ いやぁ、嬉しいねぇ。

ヒデアキ いや、でもさぁ、一個言いたいのがさ、「GOOD LUCK HUMAN」、できた日にすぐお前送ってきたけど、ふざけて「あれはファイナルファンタジーの歌なんだ」とか、言わない方がいいよ笑 オタクっぽいし、まず嘘だし笑

カワノ いや、でも、実際あれ、できる前の日にファイナルファンタジーやってたからね笑 主人公の名前、「ヒデアキ」にしてさ笑 お前が何回もリセットしてブリッツボールの大会で優勝して…。


画面の向こうのヒデアキはちょっぴり自己評価高め。

ヒデアキ いやぁ、感動的だったよね。で、帰るか、っつってお前が帰ったら、その日の晩に弾き語りと歌詞が届いて…。

カワノ 「FF明けの一曲」とか言ってね笑 でも、作業日だったってのもあるけどさ、実際あれから一晩で作ったから間違いじゃないんだよ。

ヒデアキ にしても、なんでこのタイミングで最高傑作の歌詞を出してくるんだよ、っつって笑

カワノ しんちゃんもさ、「カワノ、この歌詞を書くまでにお前はすごい時間をかけてきたと思うんだけど…最高傑作だよ」みたいな、感想送ってくれてさ。「…しんちゃん、これ、わりかしすぐできたんだ…」って笑

ヒデアキ ははは笑

カワノ でも、まぁ、ふざけてそうは言うけどさ笑 …まぁずっと、考えて、思ってきたことや人たち、その、そういう物事や人について、なかなか上手に言葉で言い表せなくて…それがようやくできた歌詞だったな、ってさ。そう思ってるし、うん…そう考えると、一晩で仕上げて書いた歌詞と曲ではあるけど、その裏には俺のもっとたくさんの膨大な時間があるんだよね。

ヒデアキ …なら尚更ふざけちゃダメだよ! 照れ臭いのかなんなのか知らないけどさ…笑 真摯になれば良いものを…。

カワノ いや、ねぇ、本当に笑 …じゃあ、しめますか笑 なんか、あるかい?

ヒデアキ そうねぇ…こう言う場面でいうのは卑怯だけど…カワノは対等な友人でありつつ、最近は結構ね…個人的には頼れる兄貴だと思ってますから…本当に、感謝してるよ、色々ね。

カワノ あら、嬉しいねぇ。…じゃあ今日は僕の奢りで…。

ヒデアキ オイオイ笑 まぁまぁ行ったけど大丈夫かよ笑

カワノ 大した額じゃねぇよ! まぁ、取材費ってことでさ…また奢るから、飯行こうな。

ヒデアキ うん笑 でも、これからもこうやってお前が道を示してくれるだろうから、俺たちも自分の道を突き進んでいける気がするよ。

カワノ うん。まぁ、なんだろうね、みんなが堂々と自分の道を歩いていけるように、胸張って生きていけるように…俺が堂々としてることで、ね、「僕も、私も、堂々としてて良いんだ」って思ってもらえるなら…冥利につきます。…ってことで、ワイン、ボトル一本、あけましたね!笑

後書き

いつも彼と話すたびに思うことだが、ヒデアキは実はものすごく物事を深く考えるやつだ。大体初対面の人間と会話する時や、あまり良くないんだけど、他人をあしらう時、俺はどうしても過剰に気を遣ったり、逆にヘラヘラしてやり過ごそうとしてしまうのだけれど、出会った当時からあいつと喋る時は変な気を回した記憶がない。
単純にヒデアキの懐が深いと言うのもあるんだろうけど、彼は俺が真剣なモードにスイッチが入っちゃってブツブツ物を言う時、それを茶化したり困った顔をしたりしないし、なんならこちらに問いかけてきたり、自分の答えをスッといったりする。日頃から何かを深く捉えて考えているやつ特有の、堂々としてて迷いがない感じ。だから気が合うし、最近ようやく本当の意味で仲良くなってきた気がする。

対談の後、駅前でしんのすけと合流して、三人で駅前に座り込んでアコースティックギターで弾き語りをした。それなりの人だかりに囲まれて歌を歌ったんだけど、しんのすけが歌ってる横顔を愛おしそうに眺めている彼の目から、純粋にしんちゃんの歌が好きなことが伝わってきて、なんの関係もない俺も嬉しくなったもんだ。
互いの歌を聴きながら思ったことだが、俺たちは多分全然違うところに向かっていくんだろうと思った。同じ街で、同じライブハウスに育てられたけど、もう向かう先は別れていっている。でも決してそれは悲しいことではない。多分、たまに手を振り合って、お互いに背中を押しあえると思う。

カワノ

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