見出し画像

【インタビュー】CRYAMY 1st LP 「#3」release【後編】

前書き

12/21日の新宿LOFTでのNINE PINT EIGHT主催イベントよりリリースされるLP「#3」。前編インタビューでは本作を制作するにあたっていたカワノの創作における変化や内面について深く語ってもらった。

後編は多種多様な面子の入り混じるカオスなリリースパーティーとその意図についてや、夏場から制作を進めていたCRYAMYによる雑誌「CRYAMY MAGAZINE」の全貌、突如会場限定でのリリースが告知されたスタジオライブ音源「NAKED」のことについて大いに語ってもらった。(インタビュー収録時はまだ制作の途中だった模様です)

前編では眠そうに、ゆっくりと語っていた様子からは一変、一見口にするのも憚られるような内容も(若干勢い任せに)捲し立てるカワノと、長考を挟みながらも、時に嗜めるように、時に寄り添うように進行を進めるインタビュアーの攻防が見てとれた。大いに話は脱線と暴走を繰り返していて、「文字に起こす俺の気持ちにもなってくれ…」と言わんばかりの様相であったが、一方で丁寧に言葉を選び、思考を整理しながら語るカワノの意向をできるだけキャッチするように努めてこのインタビューは完成した。

インタビューの最後では、あまりにも生々しくて書けなかった話も多かったが、カワノの思うこの2022年の苦しみの総括や、未来へと向ける眼差し、そして今後、より鋭く深化していくであろうCRYAMYの気配を感じることができると思う。今回のインタビューは、読者にとって「#3」やそのリリースライブにまつわるインタビューというよりも、もっと違う、近い未来にある「何か」を予告するかのような対話だったのではないだろうか。

一連のリリースとそのリリースパーティを楽しむ上で、今回のインタビューがその助けになることを願ってやみません。

5.リリースパーティーについて

ー…では話戻って…、リリースパーティは新宿LOFTとバーステージの二会場で開催か。思ってたよりも出てくれるアーティストも多いね!


リリースパーティーat新宿ロフト

カワノ ありがたいことにみんな即決してくれて助かりましたよ。お客さんは…このラインアップは困惑するだろうけどね笑 それも分かった上で、良い感じっしょ?

ーははは笑 そりゃあ意外なラインナップだもん笑 だって、これまで全然やったことない人たちばかりだよね?

カワノ ああ、そうだね。基本的に今回は一度もやったことなくて、かつ俺が好きな人たちを集めた、って感じ。…あぁ、でも、小林(小林私)くんだけ去年一度対バンしてるかな。去年出したCDのデザインをやってくれた松尾ってやつがいて、そいつがライブの企画を組むことになって、俺たちをよんで来れたんだけど、そこでね。かっこよかったから話しかけて、ライブの後、ちょっと仲良くなって、「またやりたいっす!」みたいな。だから、前々から「誘うよー」って言いながら機会がなくってさ…。バンドと弾き語りではなかなか機会もないと思って、なんでもありなこういう日になることだし、これを機に。

ーなるほどね。

カワノ 他の人たちは本当に初見だ。全然これまで関わりないね。でも、俺が掘って見つけてはまって…っていう感じでもないかも。…2年前ぐらいからさ、俺あんまり、邦楽聴かなくなっちゃったんだけどさ、今年入ってから「これじゃいかん!」と笑 意識的に聴くようにしてて。でもあんまりハマるのがなくてさ…。結局、YOASOBIばっか聴くっていう笑

ー笑 ぽくねぇ笑

カワノ ははは笑 で、これは詳しい人にいろんなおすすめの音楽教えてもらって聞いた方がいいなって、聞いたりしてたんだけど、その中でもこれは!っていうのを是非とも共演したいな、と声をかけた感じ。pavilionは金子さん(daisybarブッカー兼時速36kmマネージャー)から教えてもらって、前からかっこいいなぁって思ってたんだよね。すばらしかはw.o.d.のタクちゃん(Vo,Gt)と夜中長電話してる時に勧めてもらったり。khakiはドラムやってるなすよしってやつがいて、よく遊ぶんだけど、そいつが教えてくれた。


ーなるほどねぇ。

カワノ 嬉しいのがねぇ…サイサリ(PSYSALIA 人)は改名前から好きだったけど、改名してから出してる曲がとにかくかっこよくてさ。復活したタイミングで友達で「サグい」っつってすげぇ話題になったんだけど、俺にハマっちゃって、絶対共演したい!って。ダメ元でオファーしたら出てくれることになった。超嬉しい。まだ生でライブは見たことがないから、楽しみなんだよねぇ。

ーふーん。こうしてみると、全アーティスト毛色もジャンルも全く違うね。

カワノ うん。っていうか、あえてそうした感じもはっきり言ってある。どうしても普通に活動していくと、出てるライブハウスとか近いジャンルで繰り返し括られたり、誰かしらが都合よく用意した枠組みに入れられてそこで固められたりっていうのが最近って普通なんだけど…結構そういうの、うんざりしててさ笑

ー…あんまり角が立たない言い方で答えて欲しいんですけど、そうなんですね?笑

カワノ はっはっはっ!笑 いや、別に怒ってないんだけどさ笑 なんと言いますかねぇ…でも一番は、俺が食傷気味になっちゃうんだよね。退屈でさ。人に勧められたり、イベントのオファーのメールとか見ても、「ああ、またこのバンドか…」みたいな…。そのバンドが嫌いとか、…まぁ好かんのもあるけど笑 まぁ、別に、そういうわけじゃないんだけどね。なんか…偉そうに「シーン」とか言ってまとめてくるあの、安っぽい感じ。いやだねぇ。

ーなるほど。

カワノ みんな個性があるんだしさぁ、って。…っていうのとかさ…煩わしいのが…昔は特にねぇ、よくあったのよね。ブッキングイベントで、初対面のバンドの人たちと異常に繋げてこようとする主催者。バンドやったことあるやつはみんな絶対に覚えがあるだろうけど、「君たちとあのバンド、合うと思うんだよね!」「バンドは繋がりだから!先に生きてくるから!」とか言ってさ…。別に…仲良くなる時はお前みたいなのが居なくてもなってるよ…って。いちいち紹介するなよ…っつってさ。

ーあぁ…いるねぇ笑

カワノ 笑 で、まぁ、最近、そういうのに近いこともあって…フェスとかイベントのバックヤードとか、友達のライブ見に行った後の楽屋とかで、レコード会社の人や売れてるバンドに挨拶させようとする謎の勢力。すげぇ酔っ払って話しかけてきて、偉そうにアドバイスのつもりなのかわからんけどさ、「打ち上げ出て仲良くなっておいた方がいいよ!写真撮ってSNSあげてもらったほうがいいよ!」とか「酒の力借りて対バン決めてこい!上に行け!」みたいな笑

ー謎の勢力笑

カワノ 交渉術の指南みたいな…さ。音楽じゃねぇじゃんそんなの!って笑 あと、たまにライブ後、外ウロウロしてると話しかけてくる人にも、大して好きでもないバンドとさ、「○○さんと繋がってツーマンしてください!」「○○さんと仲良くしてください!仲良くなってください!」とか…。…これが一番きつい笑 悪気ないから笑 

ー色々大変なんだなお前も…。

カワノ まぁ、僕ももう良い年ですから…どれもただただニコニコしてかわすけどね笑 でも正直…指図されて構築する人間関係なんか、気持ち悪りぃじゃん。あの感じよ、ホラ…小学校ぐらいの時おったろ、仕切り屋の、「クラスみんな仲良くしてください!」みたいな、「無意味な責任感」を振りかざす女子…ああ、あいつ、名前忘れたけど、思い出しただけで腹立ってきたわ笑

ーくくく笑 

カワノ 良かれと思ってなのか知らないけど…なんか、自分の気持ちよさとかお楽しみのために人を操るのマジで躊躇ねぇな、って思っちゃうんだよね。「なんで俺がお前の理想のお人形遊びに付き合わなきゃいけないんだ?」ってさ。「今からリカちゃん人形でも買いにいくか?」っつって笑 …なんか、そういうのの、デカいバージョンみたいなのが…構造的にも生じてるのがいやだ。

ーこわいこわい笑 …カリカリしてきたからやめます?この話笑

カワノ ふふふ笑 まぁそういうのがあったかな。でもさぁ、好きにやれば良いけど…でも、俺はそこに全面的に巻き込まれる筋合いはない。別にそこにやらしく組み合わせを合わせて俺ら主導でそういうライブをやる意味もわからないし、逆に俺が周りからそれを強いられるのも変な話だろ? シンプルにさ…繋がったり、関わったり、…理由はさ、「いいやつだから」「音楽が好きだから」って、色々あるけど、人間の交流は、俺は自分で選ぶよ、っていう…今回のライブはそういうちょっとした意思表示でもあるのかな、ってさ。もう一回言うけど、俺は誰のお人形でもないんだから。

ーなるほどね。

カワノ まぁ、この日に限らず、今年のライブは特にだけど、やりたい人とやる!っていうのはまぁそうだけど、そこだけじゃなくてさ、いろんなジャンル…誘ってもらったら下も上もいろんな世代の人たちと分け隔てなくライブをしましょう、いろんなとこ行ってみましょう、っていうのはやってみましょう、って、そういう感じで動いた年ではあったかも。楽しかったよ。

ー確かに。お前らの今年のライブスケジュール振り返ってみると、出てるイベント結構趣旨も内容もバラバラだね…。ハッキリ言って意外な組み合わせめちゃくちゃ多くない? もちろん、近しい関係の人たちともやってはいるけど、それ以外…いわゆるギターロックの年下の若い子たちともやってるし、8ottoみたいなどオルタナもあれば、鋭児のようなミクスチャーもいて、KOTORIやa flood of circleみたいな格上とも2マンで当たってるし。会場もさまざま…。本数もそこそこ多いけど、なんかすごいな笑

カワノ うん。そういうので揉まれてみてさ、「ああ、音楽って自由だな」って思ったんだよね。何やってもいいし、何が好きな人でもいいな、って。…だし、初めましてのお客さんも、共演したバンドの人もなんだけどさ、意外とそういうところでも、噛み合わないこともあったかもしれないけど、初めましての人たちに確かに受け入れられる瞬間があったりとか。おもしれぇな、って。もちろん時速と回ったツアーとか、友達と結託して何かをやるっていうのも超楽しかったけどね。そういうの以外の場所で感じたことも今年は多かった。

ーなるほどね。

カワノ そういうわけで、色々いい経験にはなったと思うわけよ。意外な組み合わせだからこそ、フロアの感じも日によって全然違うしさ。…で、そういうのの面白さがあったから、今回のリリースパーティーはこういう日になったわけよ。この一年を再現するわけではないけどさ、ジャンルもタイプも年齢もバラバラで集めたらおもしろいかな、って。俺も楽しみだし。…めっちゃ普通なこと言うけど、来る人も、最近はライブハウスで遭遇した知らないバンドにハマるとか、あんまり聞かないけどさ、そういうのもあるといいよね。

ーなるほどね。俺らも、ふらっと立ち寄ったライブで全然知らないバンドやアーティストに出会って好きになる、ってこと、多かったしね。ああいうことだよな。

カワノ そうだねぇ。そういうのって、例えば友達から「これ超良いよ!」ってサブスクのリンクを送られてきて聴くよりも深く記憶に残るっていうか…。ライブハウスでも、クラブでも、その場で遭遇した印象って耳でただ聞いただけより強いし、大事だよ。でも…そういう意味だと、本当はDJとかも入れたかったんだよ笑 好きな曲ガンガン流させて笑 「なにこの曲、めっちゃいい!」みたいな、さ。で、DJも、マジでもう、一度もそういうのやったことないような奴らに無理やりやらせる感じで笑

ーははは笑

カワノ 流石に今回は2会場で転換リハだから厳しいと思ってやんなかったけどさ。…まぁいずれ、ライブじゃなくってシンプルなDJイベントはやってみたい、シンプルに好きな曲、爆音でかけたいじゃない?笑 チャゲアス、でかい音でライブハウスで聴きたいわ笑

ーまぁ、なんでもやればいいよ笑 自由に動いてるのはいつものことだからさ笑 …音楽だけじゃなくてパン屋さんの出店もあるんだね。

カワノ そう。「シンボパン」さんに来ていただきますね。昔から良くしてもらっててさ。

ーこちらはどうやって出会ったの?

カワノ 昔働いてたバイト先かな。健太郎さん(analogfishのBa,Vo)が紹介してくれたんですよ。…健太郎さんはそもそも、10代の頃からの知り合いでね。バンドマンとしての知り合いっていうのじゃなく、俺のバイト先に遊びに来てた街の優しいおじさん、みたいな笑 もちろん俺は「うわ…analogfishだ!本物だ!」って思ってたけどね笑 で、健太郎さんがシンボパンで働いてたり、の縁もありまして。で、一緒にお酒飲んで、仲良くなって…。会うたびすごいよくしていただいてですね…。

ーへぇ。

カワノ 当時、生活苦の僕を気遣ってねぇ…。本当に金がない時だったんだけど、お店のパンをバイト後の僕のためにいくつも持ってきていただいたことがあって。その、もらったパン齧って飢えを凌いだ日もあったんだよな。懐かしい。

ーめちゃくちゃお世話になってんじゃん笑

カワノ 笑 だもんで、まぁ、いずれバンドで何か一緒にできたら、ってずっと思ってたからさ、こういうカオスな1日が作れたわけだから、是非ともお力添えいただけませんか?ってお願いして快諾していただいた、って感じ。

ー面白いねぇ。でもお前らが仕切ってこういういろんな人を集めるイベントやるのってなんか新鮮だな。印象…っつーか事実だけどさ笑 お前らって昔からマスへのアプローチや縦横のつながりを無視して、…なおかつ、人とあまりつながらないで「俺たちは好きにやらしてもらうよ」って、良くも悪くも孤立して動いてるイメージだったからさ。

カワノ いや、まぁそこは相変わらず、今後もそうだと思うよ。まず、このイベントもさ…もちろん、俺たちはこの日にライブで表現したいものはあるけど、それはどの人もお互いさまだから。イベントそのものを仕切る、ってよりはただフラットに力添えしてもらって、ただライブを見に、見せに集まってもらうって感覚が近い。捉え方としては…俺らを中心に、ってよりは、俺らがきっかけになっていろんな方向に進んでいけるよ、っていうイベントになればいいかな、って。

ーああ、なるほどね。

カワノ 本来こういうたくさんの演者が入り乱れるイベントって、画一的なラインナップで過剰にエンタメ化するより、発見とか驚きが一番にある方が、俺はそっちの方が楽しんでもらえる気はするしね。それに、いつもどのイベントもそう思ってるけど、ライブは、いろんな人がいようが、音を出せば30分だろうが2時間だろうが「俺らのライブ」って思ってるし。それに、ほら、それこそ俺が仕切ってる感じが出ちゃうとさ、全体主義っぽくなるだろ?

ーああ、なるほどね。…今日、良く出るね、全体主義笑

カワノ 俺良くわかってないけどね笑 イメージで語ってる笑 …で、まぁ、そういうのもあって、今回は、仲の良い友達とか、培ってきた人間関係で固めるとかさ…言い方悪いけど、おともだち采配はなし、っていう形にした。「仕切って集める」って意味だとそっちの方がぶっちゃけ楽なんだけどさ、どうしても俺の狭い交友関係で回すと、内輪ノリの空気出ちゃうし。

ーそうだねぇ。さっきも出たような驚きとか発見はないか。

カワノ それに、親しい友達や近いジャンルの人間を今回は集めなかった、そこの外に目を向けてみたっていうのは…対バンの幅を広げるとか、シーンを作るとか、そういういやな意味でもなく、かといって友人を突っぱねるわけでもなくてね…、どちらかといえば、そうだねぇ…さっきの話にも繋がってくるけど、これは、これからは誰かの用意したものじゃなくて、俺は俺が選んだ人間関係でやるんだ、これからやってくんだ、自分で選んだ新しい仲間作っていくんだ、っていう意思表示っていうのもやっぱ、あるからね。

ーほう。

カワノ さっきの話じゃないけどさ、やっぱりどうしても、ここまでバンドを続けてるとさ…すごいこう…バンドの世界…に限らずだとも思うけど…まぁ、ともかくさ、人間関係のいやな感じ…まぁ、そうね…例えば…腹の黒いところを隠しあって利用し合うとか、具合よく立ち回るために売れてる人やビジネスみたいな人に媚び諂うとか、下げたくもない頭を下げさせられるとか、人間関係も武器にしちゃうとか…そういうの躊躇ないやつ多いし、むしろそれが普通みたいな…さ。…中にはさ、ひどいと、友達だったやつも利用するとか、平気で手のひら返して裏切るとか、自分が有利になるように嘘つくとか…いたからねぇ。ここ数年、すげぇそういうの、嫌だなぁって出来事が多くってさ。…まぁ、はっきりいうと、仮に俺が無自覚にある「シーン」みたいなのに組み込まれてたとして、そのシーンがもうとにかく嫌になっちゃんだよね。一刻も早く離れたかった。

ー…まぁこれは日頃からお前が言ってるし、前回ヒデアキ君(前回の対談相手、時速36kmドラマー)も言ってたけど…そもそも別に、下北の街にも馴染めなかったわけでしょ?笑 友達にすらボロクソに言われてたし笑

カワノ ふふふ笑 …まぁ、どこにも属せないだけならまだ良いんだけどさ…メジャーもインディーも一緒くたで広そうに見えてすごく狭い世界だから…ある種サラリーマン的な、って言っていいのかわからないけど…おべっかや打算、くだらん人間の駆け引きとか、そこでうまくやることを強制されるわけよね。そういうのに結構…疲れちゃってね。

ーそうだねぇ。お前に限らずだし…バンド関係に限らず…トラックメイカー、ボーカロイド、アイドルのプロデューサー、職業作家…いろんなやついるけど、俺たちの周りの奴らもすごく苦しめられてる空気ではあるかもね。俺たちの周りにはいろんな奴、ジャンル、活動拠点の奴らがいるけど、ある奴は周囲にチューニングを合わせる苦しみもあるし、ある奴はお前みたいに全部無視してストレスを受け続けることに歯向かうカロリーもあるし…。

カワノ そうだね。

ー…でも、苦汁は舐めてはいるけど、みんなさ、そもそもの、そういう変な構造への憤りは、共通して抱えてるところではあるか。

カワノ ひねくれ者の集まりだからなぁ、あそこは笑 まぁ、もちろん、そういうよくない空気のものっていうのも、すごく一部の限られた世界ではあると思うけどね。しかも器用な奴は上手くやれちゃうだろうけど。でも、その狭いところで、俺も足を引っ掛けられたり、ハメられて「しまった、やられた!」ってことめちゃくちゃあったし。俺らの仲間もそうだしさ、…そうじゃない直接の知り合いに限らず、音楽に一切の関係のないくだらないことで病んだり、傷ついたり、無駄なパワー使ったり…ああいうのはもう、絶対、よくないから。俺もだし、周りの奴らもだし。…別にそういう構造にはむかったり、攻撃を加えたり、そういうのはやらなくても良いからさ、誰からも指図されずに、自分で取るも捨てるも好きなように選べて、…好きに生きられるように…って思うかな。

ーうん。

カワノ …人間関係とか、人との繋がりとか、そういうのってさ、すごくこう、数字とか括りとかでみられがちだけど、本来はそれを構成してる一個一個、全員が孤独で、一人で立ってることが前提にあって、その上で成り立つものだと思ってるから。…でも最近は楽しいよ。本当に居心地の良い人たちと過ごせてる時間が多いし、変な話…音楽でさ、みんなともいろんなことがやれたら面白そうだなって思う笑 せっかくインディーレーベル作ったわけだしね。自由にさ。

ーははは笑 っていうけど、毎日忙しそうだけどな笑

カワノ …まぁ、喋ってていろんなこと浮かんできちゃったから大仰に語っちゃいましたけど…ひとまずこのイベントは、レコードのレコ発だし、何より忘年会っすから。純粋に良いな、っていう人らを集めてやるっていうのが一番で、別にこのイベントだけで一石投じた気になるつもりはないけど、…まぁ、でも一方で、俺はさ、リリースもそうだし、ライブもそうだけど、このバンドのあらゆること…伝わってるかどうかはわからないけど、絶対に意味のない、ノリだけのことはやらないっていうのはお客さんも友達もみんな、わかってる奴にはわかってると思うしさ。

ーそこは君のお得意のペラ回しでこの日も伝えてさ…いやぁ、この日も30分押すかねぇ?笑

カワノ 馬鹿かお前笑 出番最後だからそんなにやっちゃったらライブハウスの音出し終わっちゃうよ笑 …まぁ、今後これを発展させたような、いろんなバンドに集まってもらうライブをまたいつかやるのかどうかは、まぁまぁやるだけで大変だったし、正直全然考えてないから全くわからないけど…とりあえず、なんにせよ最初の1回目だから、こういうイベントにしたかったんだよね。

ーそっか。いや、でも…いいイベントだと思うし、全貌が見えたところで、改めて楽しめる人、多いんじゃないかな。

カワノ だといいね。うん…何よりも、まずは来る人は全員、余計なこと考えずに、自分の楽しみ方で楽しんで、自分のノリで動いて、自分の気持ちに正直にライブを見てくれればいいよ、誰がどうとか考えずにね。流石にまだフルキャパではないけど、ライブハウスが、今年の夏終わったぐらいからかな、制約はまだあるけど、以前のように人が入ってもOKって形に戻していきましょうね、お客さんにもある程度の自由を許していきましょうねってなってきたし。一方で、だからこそ、肌感覚として今、一番ライブのあり方が難しい時間だから…月並みですが、いい日にできるように頑張りまーす、って感じ笑

ーそれで言ったら、このリリースパーティーに関してお前が書いてた文章も、よかったよ。現状のライブハウスについて、あれは、良い言葉だと思った。

カワノ うん…。今ライブハウスに足を運んでる人たちはさ、すごくこう、ライブっていうものに足を運ぶことが難しくなってしまった時代を経て、改めて集まってくれる人たちだからね。そういう人たちにとって、性別も年齢も立場も何も関係なく、各々が思い思いに過ごせる場所があればいいと思うからさ…。まぁ、御託並べるのはこんなもんで、あとは当日…お楽しみに、って感じ笑

6.雑誌「CRYAMY MAGAZINE」について

カワノ …そうそう、雑誌の方もそろそろ完成しそうだよ。LOFT公演で発売予定っすね。


CRYAMY MAGAZINE表紙

ーおっ!ついにか。これもまたメンバーの手作り感のあるやつだもんね。カワノ、前からやりたがってたし。

カワノ 面倒くさくてやってなかったけどね笑 後、我々みんな、そういうなんか、企画立ててやる、みたいなの苦手だから笑 でも、ハードコアパンクの畑のバンドがやってるジン(バンドの手作りによる小冊子。ライブ写真やステートメントなどを掲載したものが多く、80~90年代に流行していた。)みたいな、こういうのは今年の頭にやった「CRYAMY新聞」でもやったから、その発展系かな。ボリュームアップバージョン。

ー内容はどんな感じなの?

カワノ 俺以外の各メンバーをフィーチャーして企画立てたよ。レイはギターマガジンのインタビュー記事のフォーマットパクって、彼のギターにまつわるあれこれを語ったインタビューが載るかな。機材や足元の写真なんかも載せて。…まぁでも、収録してからも都度都度、ライブごとに色々変わったりしてるから、リアルタイムにはならなさそうだけどね笑

ーへぇ、でもギター演奏してる子たちは気になってるところかもね。

カワノ あぁ、でも、これインタビューでも話になったんだけど、使ってる機材自体はマジでオーソドックスなものばっかりなんだよね。音作りが外道を極めてるだけっていう笑 まぁその辺も語ったりしてるよ。他にはたかしこの日記とか。

ーへぇ、面白そう笑 …純粋に疑問なんだけどさ、彼はマジで無口なの? メンバーとは喋る、とかでもなくさ。

カワノ 無口っていうか、ぶっ壊れてるよ、心が。

ー笑

カワノ いや、マジで。本当にあれはねぇ…イカれてる、うん。一応最年長なんだけどね、要介護なんだ、彼。昔色々あってさ…その結果産まれてしまった悲しきモンスター…笑 最近は呼びかけると返事はするようになったから、ポジションとしては、Siriだね。俺、スマホがアイフォンじゃないから…適当だけど、Siriってあんな感じのイメージなんだよね。

ーめちゃくちゃいうな笑

カワノ まぁ、でも逆に面白いかなって笑 得体の知れない、俺ですら何考えてんのかわからんようなやつが日記で日々のことを振り返る、っていうのが。ちょっと俺も楽しみだよね、あれ。結構センチメンタルな感じだったら俺、笑っちゃうかも笑 「人の心、持ち合わせてたんですね!?」って。

ー悪いところ出てるなぁ笑 ドラムの彼は何をするの?

カワノ 大森くんには曲を作らせてね…。QRコードで買った人たちが聞けるようにしてる。なんか、熱心に作ってたし、聴いてあげてほしいな。

ーおもしれー。多分初めての作曲だよね?

カワノ だと思うよ。だから、結構無茶な要求だった笑 作曲をするように言伝てさ、二ヶ月近く粘ってたみたいなんだけど、なかなか苦労したらしくて、すごい憔悴しきっててね笑 3年ぶりぐらいに個人でラインが来て、「ちょっと相談乗って欲しいんですけど…」「はい、じゃあマックで…」みたいな。

ー笑

カワノ スタジオも上の空で「話聞けよ」ってフジタくんにキレられてたし笑 歌詞を書くのがしんどかったみたい。まぁ、俺も気持ちはわかるからアドバイスをする感じの流れだったんだけど…俺がずっとthe smithsとthe 1975の歌詞がいかに素晴らしいかを語って終わるという…。

ーあぁ、だめだよ、そういうのは。友達とやれよ、そういう、不毛なトークは笑

カワノ ねぇ笑 でも、無事完成まで漕ぎ着けたみたいなので、お楽しみに、って感じ。ドラマーが作る曲って概して面白いって印象だから、俺も聴くの楽しみだしね。…どうしようね、変拍子とかだったら笑

ーまぁ、「カワノくん、こういうの作ってよ」って無言の圧力でしょうね笑

カワノ やだなぁ笑

ーでもみんな頑張ったんだなぁ。日々制作で忙しいだろうに…。俺からもお疲れ様でした、って言いたいですよ。

カワノ どうもねぇ、ご丁寧に笑 まぁやってみて思ったけど、もうしばらくやりたくないけどね…。マジで大変だし、改めてユーチューバーとかテレビマンとか、バンバン毎日いろんなことやっててすげぇなって思ったよ、俺にはできない…。

ーそういうカワノは何やんの?

カワノ なんもせん。

ーは?笑

カワノ いや、なんもせんよ笑 っていうか、これまで日記とかも書いたりしてたしさ、このレーベルのさまざまな企画やったりとか、そもそも曲も作ってかなきゃいかんし、俺はもう、忙しいんだから…だから、なんもせん!

ーいやいやいや…。そこはがんばんなさいよ。

カワノ 笑 まぁ、会田さんには「なんかあったほうがいいよ…」って言われたから、なんか書こうかと思ってるけど、まぁ基本的には俺が何か発信するとかはないかな。(結局後日、打ち合わせの流れで一筆したためました)…あとは他で言ったら、お客さんからハガキを募ったり、交流のある人たちからコメントもらったりとか、そういうのかな。

ーこのデジタル全盛期にはがき募集はやばいけどね笑

カワノ ねぇ笑 まだどんぐらいきてるか、とかも聞いてないんだけどさ、一通も来なかったらどうしようね笑 たくさんきたらそれはそれでスペース限られてるからどうしよう…ってのはあるけど…。まぁ、ジャンプの巻末のさ、お便りコーナー的な…ああいう、軽くみんながノっていけるページがあればいいな、って。…まぁ、なんのかんの、そんな具合で進めていってるから、後はデザイナーのジンボウさんと打ち合わせして作っていく感じ。完成まで暫しお待ちを、っつってね。

ーいやぁ、楽しみだね。特に他三人のメンバーはあまり知らないことも多かったりするし。SNSもあまり活発じゃないバンドだしさ。最近ラジオとか、このウェブメディアは始めたりもしてるけど。

カワノ まぁねぇ。そういう意味ではすごく面白いと思ってるよ。単純に手作りでやることの面白さ、っていうのも集約されてるし。こういうレーベルのコンテンツもさ、半年も経ってないけど、回してみて反省や改善点とか、…例えば今はこういう形で回してるけど、近々ブラッシュアップしてこうやっていこう!とか、新しくこういうのやろう、とか、そういうのもあるし。…フィジカルでの雑誌のリリースもあるけど、引き続きこっちももっとうまいこと使っていきたいかな。

ー…最近気づいたけどさ…お前、結構真面目になってきてるよね。年々、ね。

カワノ ふふふ笑 いいことじゃん笑

7.ライブCD「NAKED」について

カワノ あ、そうだ、これも伝えておかなきゃって思ってたんだ!思い出しだよ。…まずは、…これ聴く? 最近ずっといじっててさ。(イヤホンを渡す)

ー…音バキバキじゃん笑 これ、なんかのライブ?

カワノ ううん。練習スタジオでやった練習の音。練習してる音をそのまんま録音して俺がミックスした。これ、すっごい急きょだけど、LOFTの日に出す。

ーえっ! またリリースするの!?

カワノ 正規音源ではないから正式で本格的なリリースって感じでもないけどね笑 会場限定で売るやつだし、内容もスタジオレコーディングの新曲でもないしさ。


STUDIO MIX「NAKED」

ーへぇ…スッゲェ急遽じゃん笑 …これは、どんなコンセプト?

カワノ ああ、俺らね、…俺らの制作って大体スタジオ借りて反復練習か、ライブハウス夜中に間借りしてプリプロ音源録音してアレンジ詰めて…って感じなんだけどさ、この音源はライブハウスでプリプロの合間っていうか、余った時間でざらっと1ライブ分一気に演奏して、それを録音してパラデータもらって、俺が持ち帰って友達と遊びながら突貫でミキシングした、って感じ。だから、コンセプトっていうのはこれと言ってなくて、単純に思いつき先行。ただ、ラフに録音した俺編集のライブ音源の作品、って感じかな。…厳密にいうとライブやってないから、ライブ音源でもないんだけどさ笑 練習風景のパッケージング、が正しいか。

ーなるほどね。お前、ソロの作品とかも作って、音響やレコーディング周りの勉強も今年に入って熱心にやってるしね。

カワノ そうそう。まぁそういうものの、俺の勉強の成果としての、アウトプット先としてやってみようかしら、ってスタートかも。…まぁ、この機会に…ワタクシのような素人の…素人作業で…笑 もちろん、しっかり商品として耐えうるレベルには作り込んでるけど、そういうラフな演奏を届ける場があってもいいのかな、って。

ーなるほど。じゃあ今回はそういう、クオリティっていうよりも、悪い意味で雑なものに近いものを出す、と。なんかそれは、一種、お前らなりの「お試し」って感じもありつつ?

カワノ うーん、そこはちょっと違うかも! 確かに、いい意味でのラフさやインスタントさは求めたんだけど、「お試し」「低クオリティ」っていう感じではないかな。お試しでいいならiPhoneでとったボイスメモわたしゃあいいわけだし。あくまで荒々しさとか雑然とした感じは欲しいし、そういうのが俺らにもあって良い、とは思いつつも、適当にならないように…作品として成立する最低レベルをあえて狙って、って。だからやっぱりニュアンスは、さっきあげたものたちとは微妙に違うっていうかね。…ああ、そうねぇ、今思うに…これは既存の曲のリミックス版みたいな捉え方もできるんじゃないかな。

ーほうほう。というと?

カワノ そもそもがこの作品、練習してるスタジオでレコーダー回しっぱなしにして、その素材を持ち帰って俺がシコシコとミックスしてたわけなんだけどさ…この作品において頭で書いた設計図的には、さっきも言ったけど、ライブ音源ってよりも練習風景のパッケージングで、さらに言えば狭いスタジオで一発で演奏…マイクの音被りもすごいし、ライブハウスのでかいスピーカーほどの解像度はない、デッドな環境の、本当に日々俺らが練習してるガレージみたいなスタジオの空気が素材になってるわけで…。だから、…ちょっと難しい話になるけどしてもいい?

ーどうぞ笑 それきくために来てるんだから笑

カワノ どうもね笑 …で、まぁ、話戻ると…そうね…。…本式のスタジオレコーディングとか、ライブの音とかはさ、俺のテーマは「生々しさ」とか、「ドキュメンタリー」とか、「リアリティの再現」、「感情表現」なんだけどさ…まぁこの辺は長くなるから一旦置いとくとして笑 でも、この、初めて作ってみたこういう、練習スタジオのデッドな環境のレコーディングっていう変則的なものは、さっきあげたようなものの再現とか実現がすごく難しい…と。だから、俺の設計図的には…そこを逆手にとって、そこに偶然生じたいびつさとかそういうものを生かす方針をとった、って感じ。音被り然り、部屋の反響しかり、モニターの悪条件然り、ね。

ーうん。

カワノ そうすれば、そもそも実際のライブではないから、実際の現場でしか事実上再現できない臨場感や生っぽさっていう要素を、いっそ振り切って再現しようなんて思わずに、そこで食っていた帯域とか処理とかを一才カットしてもいい…し、逆に音もとんがってる部分をバリバリに増幅したり、ノイジーな感じにしたりさ。俺たちの音や演奏なんかも、あくまで練習だから、いい意味で気が抜けた緩いものになるし。実際…ギターが割に適当だったり、俺も歌詞とか、飛ばしまくってるしね笑 音も、プロに頼むんじゃなくて、俺が自分で、練習スタジオのコントロールルームとか、家のパソコンとかで友達の力も借りて一緒に作ってるし。強いてやろうとしたことって言えば、あの…小箱で鳴らした時のデッドな質感っていうのを再現したつもりかな。サスティーンもなくてリバーブも広い箱でかかる天然のものっていうよりはライブハウスの卓でかけたしょぼい感じ。ぎゅっと狭い空間でぐるぐるしてる、閉塞的な、さ。

ー面白そうだね。

カワノ まぁあと、これを商品としてパッケージングするもう一個意味があるとしたら、一個一個のライブに希少性とか、そこに足を運ぶ特別な意味を持たせたくってさ。それは物販で言えばTシャツとか、そういうものでも補えるとは思うけど、そういうのじゃなくって、あくまで音楽的なもので。今年、死ぬほどライブやったんだけど、お客さんも俺たちもさ、なんか、そういう日の記憶が作業っぽく過ぎて行くことが嫌でさ。その日のライブの思い出にプラスして、ちゃんとしたCDとかじゃない、もっと雑な音でも何か持って帰って欲しくて、さらにそれがライブに直接足を運んだ人間の特権になればいいな、って。こういうの手に入ったら、単純に俺なら嬉しい。

ーうんうん。

カワノ それと、売り方もちょっと特殊だね。お金を払ったら、そのCDはジュエルケースとかでパッケージングされてるわけじゃないんだよね笑 歌詞カードもなしで、CDを裸で渡すだけ笑 一応物販には不織布の布カバーはあるけど、買う側もラフに円盤一個を受け取っておしまい笑 なんか、ガワのあれこれにも俺たちはリリースの度にこだわってきたつもりだけど、そこも一切を廃しちゃう、っていう別の特殊性って感じ。

ーすげぇな笑 グレイトフル・デッドみたい笑(当日のライブを会場に設置してあるカセットレコーダーに焼いて客に渡していた) じゃあ当日は円盤だけを裸で握りしめる奴らもいるわけだ笑

カワノ そういうことだね笑

ー録音はいつものところ?

カワノ そう。マイクいくつか立てて、各楽器の音拾って、パラデータでもらえるように別々にチャンネル組んで録音。で、素材として高山さんがざっと録音したのをチャンネルで分けてまとめてくれて。で、ミックスは、俺と宅録やってる友達何人かとスタジオ借りて、飲みながら雑然としすぎてるところはざらっとまとめてさ。それこそユウヘイ(筆者)とか笑


夜な夜な繰り返されるCRYAMYの制作風景。
営業終了後、ライブハウスを貸し切って行われている。
「NAKED」は制作作業の合間、このようにして録音された。

ーああ、あの夜な夜なのお前らの馬鹿騒ぎはそういう笑

カワノ そうそう笑 「俺はカワノくんの奴隷じゃないっすよ!」とか言いながらね笑 とか言いつつ結構ノリノリだったけど笑 単純に音いじるのみんな好きだからね。あーでもないこーでもないってやりましたよ。

ーははは笑 まぁあいつら、普段はあんなんだけど、本業はトラックメイカーだからな。

カワノ それも面白くてねぇ。性質上、俺とあいつらじゃ扱うトラックの質が違うわけじゃん。俺は生楽器をマイクで拾ってきたもの、あいつらはPC上で組んだ音やプラグインのすでに用意された音を加工したものやサンプリング…って。

ーそうだね。やっぱそこは全然違うの? 音とか、そういう、エンジニア作業において。

カワノ うん。実際一緒にいじってみて、話半分で聞いてたことが、少なくともわかった気にはなったし、勉強になった。やっぱり生楽器のデメリット…クラブミュージックではマストで出してる生のドラムやベースで補えない帯域のウルトラローの厚みだったりとか、レンジの住み分けのはっきりした感じとか、迫力や爆音の密度って観点だとどうしても現代音楽やトラックミュージックには勝てないなぁ、って。バンドサウンドがヒップホップ化していくのもわかるし、最近の…特に日本人は、エンジニアリングが「DAWの技術選手権」みたいになっていく理由も、今ならわかる。

ーへぇ。

カワノ うん。でも、面白いのが、dBやレンジで測れないところの迫力で…なんか、むしろバンドサウンドの方がでかく聴こえたり、ドラマチックになる局面があったりね。生楽器の特徴とかメリットっていうか…ちょっとオカルトだけど、ある。うん…端的だけど、俺もかなり自分の中の固定概念とか、崩されたし、これはバンドにとってでかいフィードバックになると思う。

ーいい経験。

カワノ うん。で、ある程度生感を伴った、まだまだ半端なドキュメンタリーなものを最後の仕上げの本格的なミックスでぶっ壊してジャンクにする作業は最近仲良くなった友達の、ボーカロイドで曲を作って発表してる式浦躁吾(「式浦。」名義で活動中)ってやつと家のパソコンでこれまた飲みながら地道に。

ーへぇ! おもろいな。マジで全員畑違い笑

カワノ そうそう。元々は共通の友達…ヒデアキとイセノちゃん(JIGDRESSギター)が前から仲良くてさ。去年、なんかのタイミングで同じ場に居合わせて、速攻仲良くなってね。すごいいいやつでねぇ。で、ある日、酒場で音楽談義をしてたんだけど、せっかくだからこの機会に一緒にやる?って声かけた感じ。

ー意外な組み合わせだけどね。それこそバンドとボーカロイドって、お前のいう対極な感じもしないでもない。

カワノ でも、彼は元々、ライブ見に来てたりとか、CD買ってくれたりとか、俺らの音楽好きでいてくれててね。全然、お互いに作ってるものの毛色は違うんだけど、あっちがまず、すごい俺への理解があるからすげえ早かった。「これかけて潰そうぜ!」とか、「ここ邪魔だから削ったら良くない?」とか言いながらさ。やっぱ、トラックメイカーもボカロもそうだし、ソロシンガーとか、あの人たちって宅録のプロだからさ、機材も詳しいし、俺の疑問もサッと答えてくれる。…まぁ最終日、俺と式浦、…彼の曲だけ聞くと意外かもしれないんだけどさ、めちゃくちゃロックとかハードコアが好きで、趣味が変なんだけどさ笑 「メチャクチャにしようぜ」っつって、完全に二人とも、ブレーキを失って盛り上がりすぎて音上げまくっちゃってさ笑 「超サグいぜ!」って納品して、そのあと酒飲んでピザ食って寝たんだけど…翌日、「音がデカすぎてCD規格に合ってないっす、全部ホワイトノイズになっちゃってますね…」って笑

ーはっはっはっ!笑

カワノ エフェクトで歪みをかけたつもりが、音がデカすぎてスピーカーが歪んでいただけだった笑 結局後日、音を下げる方向で作業するという笑 日程にも余裕持たせたつもりが、結局いつも通り納期ギリギリでしたね…。


ダメな例。

ーへぇ。今回の製作はすごい手作り感あるね。イッチバン最初の、246スタジオとかで録るみたいな、デモ音源みたいなノリ、っつーかさ。

カワノ そうだね。ぶっちゃけ、金かければかけるだけこういうレコーディング方法にした意味がないというかさ、あの雑然としたライブのフロアで味わう生々しさとは全然違う、もうちょっと荒んでて、人間との距離も近からず遠からずの微妙なイメージの…素朴で整ってない感じがほしくて。…ステージの中音で、でかい音出しすぎてだんだん耳のハイが落ちていってるような、あの感じを目指したかな。一緒に作った友達連中もみんな、元々CRYAMYの音楽が好きで、お客さんとしてライブを見にきてたり、CDを買ってくれてた人たちだから曲もわかってるし、音楽的に共通言語が多いから話が早いんだよね。みんな自宅でDTMを駆使して曲を作ってる人たちでもあるから音響の知識もまた違った意味ですごく抜群だしね。ありそうでなかった、不思議な音源になったと思うよ。俺も勉強になったしさ。

ーなるほど。…正直、中身は全然想像つかないんだけどさ、かえって楽しみになってきたよ笑

カワノ そうだねぇ。あとは…中のトラックもさ、曲ごとに分けたりしてない。40分弱のトラックが一個だけ。

ーああ、曲間を作ってないのか。

カワノ まぁそういうこと。厳密には曲ごとに分けて録音してないから、一回のライブ全部一発どりしたってイメージが近い。もちろん、エディットも一気にやってる。かなりラフな編集しかしてないから、音像は狂ってるけど、人間的なところは徹底的に残したからダイナミズムは相当あると思う。

ーじゃあなんの曲が入ってるか、とかは…。

カワノ 聴いて見てのお楽しみ、だね。中身を全部聴き切るまで曲目も不明だし、曲ごとに飛ばせないからレコードライクな作り方でもあるし…例えるなら、ライブ始まる前の「今日どの曲やるんだろう」みたいな…そういう、あれに近いワクワクも味わってほしいな。

ー…やっぱお前、変なやつだな!

カワノ 変なやつになろうとしてんのかもよ?笑 まぁあとさ、シンプルに…人と気楽にものを作るの楽しいね笑

ー根源的な話だな笑

カワノ ほら、CRYAMYはさ、常に殺伐としてるから…。笑顔とか、ない笑

ーまぁ、それに関してはお前だろ、悪いの笑 大概お前んち行った時も、モニター睨みつけて、地獄みたいな表情でエディットしてて…。メガネなんかかけちゃってるから、「目悪かったっけ?」て聞いたら、「伊達だよ!!!!悪いかよ!」って怒鳴られた笑

カワノ ははは笑

ー形から入るタイプ笑

8.最後に

カワノ …いやはや、結構喋りましたね。すんませんね、長い時間お付き合いいただいて。

ーまぁ言うてもまだ昼だけどね笑

カワノ 来るの早すぎだったんだよ笑 …飯行く?夜。時間、今からちょっと潰してさ。

ーああ、いいねぇ。

カワノ まぁ、もう散々喋ったからさ、今から何人か声かけてみますんで。

ーはいよ。…(暫し談笑)…じゃあ、最後に、締めましょうか。なんか、最後に言っておきたいことあれば。

カワノ そうだね…。…っつわれっとなんも出てこないね笑

ー笑

カワノ まぁ…そうだねぇ。…まぁ、2022年、お世話になりました皆さん…っつう、ね笑 うん…良いお年を、みたいな…。

ーはっはっはっ!笑 まぁそうなるよな笑 随分話もしたしさ。…今年も終わるけど、今年はお前…バンドもそうだけど、色々大変だったから、ひとまず年末年始はゆっくり休みな。一時は見てられないぐらいだったから。

カワノ まぁ、そうねぇ。本当に…変な話さ、去年とかはね、アルバムを出して、ツアーもこなして、結構ねぇ、絶頂だったかもね、俺笑 確かにあのアルバム(red album)に関しては、自分の理想像との乖離を…あえて明確にはしたんだけど、それによってすごく悩んではいたけどさ…あくまでそれは、俺個人の葛藤でしかなかったわけで。まさか、今年入ってここまで、っていう、ね。社会も、世の中も、俺の身の回りもいろんなことがあってねぇ…。うん…前にも言ったけどさ、俺、終わっていくこの2022年は忘れらんない年になったよ。

ー…正直ここで、文章として形にするにはデリケートな話もたくさんあったし、まぁ本来はさ、言うても俺は部外者だし、お前とこうやって連絡を取り合うようになったのも去年の半ばごろだったから、もっとお前をよく知る適切な人間がいるとは思うんだけど、ちょっと異常なぐらいだったからね。

カワノ ああ、そうだねぇ。まぁ、俺はあまり表面にそう言うのが出ない人だとは思ってるから…その分口にした時、ショッキングに受け取られることも多いけど笑 それは非常に、何も口にせずとも伝わったのがそれというのは、的をいてるし、あんたね、さすがっていうか笑 …変な話、俺、今年にあったいろんなものを経て…やっと東京の人間になった気分なんだよね。

ーへぇ。お前もう、何年住んでるんだっけ?

カワノ 8年。…もっと言えば、実家を15で出て、一人で暮らすようになって、そこから色々転々としてるから、10年近くフーテンをやってる計算になる。まぁ、…だからこそ、東京暮らしもクソもないぐらい、生まれた土地を故郷っていう感覚は人よりも薄いかもしれないんだけどさ。…ぶっちゃけさ、東京きてからの俺の人生…それ以前に比べると、全然、普通に、大したことねぇなって思ってんの、俺。超波風立たぬ、平穏、みたいな笑 激することもなく、徹底的に落ちることもない…。昔の方が心は毛羽立っていたし、煤けてたなぁ、ってさ。

ーははは笑 俺からしたらバンドやるために上京してきて、っていうストーリー、結構刺激的に感じるけどね笑 むしろそっちの方が激しそうだけど。

カワノ うーん、まぁ、そう外からは見えるだろうし、刺激はあっただろうけど…俺は東京という街で…っていうか、バンドを組んで以降の東京か…振り返れば、そこにはCRYAMYの楽曲の核になる強烈な出来事…それは痛みとか喪失なんだけど….全然、なかったと思ってる。実際、形として残ってないし…ギリギリ…ダンくん…CRYAMYのさ、「物臭」を送った、俺の東京時代での…おそらく最初で最後の唯一の親友…ってぐらいのやつ、そいつぐらい。だけど、そいつはバンドを組む前にもう、去っていった人間だからね。だから…俺の曲は、全てが東京とCRYAMY以前の、俺の全てで完結してるんだよね。

ーあぁ。でも、確かに…言われてみれば、そんな気がしないでもない。し、たまに「あの歌詞どういう?」っていうのも、大抵お前が10代の頃の出来事だったり、バンドを組む前に出会っている人たちを元にしているよね。…あくまで視線は東京にやってきたお前がその出来事を消化した上で向けてはいるんだけど。

カワノ もちろん、演奏は俺たちだし、最初話したみたいに曲の変化や歌詞の深度みたいなものの変遷っていうのがあったし、バンドを組んでからの時間ともオーバーラップしてるわけだから全く関係がない、って話じゃないんだけどさ。東京で生まれた曲とはいえ、東京とか、そこでの出来事が直接の原因になって産んだものでは絶対にない。ここにくる前の出来事を長い時間をかけて落とし込んだものにすぎない、たまたま暮らしているのが東京だっただけ、っていう。

ーあくまで経験や長い時間の思案に基づいてはいるけど、東京という街でのお前っていうのは薄いってことなんだろうね。…まぁ、いろんなことはあったにせよ…はっきりいって、比較的そこまで大したことじゃなかった…歌にしたいって感じるほどのものはなかった、ってことか。

カワノ うん。だし…こんなこと言ったらすげぇ悪いけどさ、俺はこの、東京という街で、2022年以前は大きなものを何も失わなかったわけよ。友人も、恋人も、心も、神経も。…そりゃ、友達も、彼女も、それに、心も神経も、離れる、すり減らすっていうのは全くなかったってわけじゃないけどさ。多少なりとも欠けてはいってるけど、実際それのどれもが…別に…いなくなられても、傷ついても、全然問題なかったものばかりだった…。人間関係なんて、他の出会いで全然埋まっていってしまうし、落ち込んだ心や痛んだ神経も気晴らしも腐るほどできちゃうぐらい…っていう。これは東京が人やもので溢れてるから、簡単に代替を見つけられてしまうからなのかもせんけど…なんというか、そういう、2022年以前のこの街での経験や出会った人たちっていうのは、俺の記憶とか思い出には、強烈にはなっていかないし、色褪せる速度も尋常ではないっていう。…怒るかなぁ、これ言ったら笑 みんな、見てないこと祈るけど笑

ーいやいや、怒るっつーか、お前、ひでぇ話だよ笑 …え、何、もしかしてさ、俺もその一部だったわけ?

カワノ …(くすくす言いながら押し黙る)

ー笑ってんじゃねぇよ! いやあ、それは怒るわ笑

カワノ ガハハハ!笑 冗談だよ笑 …いや、あんたはもっと昔からの付き合いだからノーカウントでしょうよ! 別にあんた、東京括りで見てないし笑 でもまぁ、今はこうなってるから結果オーライじゃん笑

ーお前…いつか絶対俺の曲かけよ! 泣いちゃうよ、まじで…。昔からさぁ、お前んこと結構可愛がってたじゃん…。

カワノ 気持ち悪い女みたいなこと言ってんじゃねぇよ! …まぁ、うん…でも本当にそうでさ…だから、東京…俺はここに来る前と比べると、そういうものはなく…マジで普通に生きてきたなぁ、って、そんな感じ。…今も、俺の中で後悔とか、取り戻したい人や物事って全部この街に足を踏み入れるまでの人や出来事だけの気もするし…。だから変な話、これまでは矛盾でもあるわけだよね。俺はこの街で生きていて、決定的な喪失もなく、忘れられない傷を負うでもなく、死ぬほどする後悔というものもなく、なのに歌の内容は、それを躊躇なくメロディにしてる、っていう。今まさにあるものではなくて、過去でもあるし事実でもあるけど…それ以上に、その…具体的な実感なき幻とか、ファンタジーの領域っぽい。

ーあぁ。なるほど。過去のこと…今のお前の暮らしのリアルというよりも、感情の発露の源は全て過去に置いてきたもので…それだから、現在発露させているものも、自分では少し離れた感じになってしまっている、と。

カワノ まぁそんな感じ。瞬発力がねぇな、って。…でも、それもいいことでもあるんだけどさ。それは何か本質を伝える上で、深い苦痛や長い時間をかけた情念の濃い結晶になり得るっていう、物凄い良さ。けど、少しなのかもしれないけど、矛盾を覚えてる自分もいたんだよね。他にも俺は、たくさんの矛盾や撞着と格闘はしているけど…この話に関しては、これがデカくってさ。

ー…ただ、今年に関しては…。

カワノ ま〜〜〜〜〜〜あ、大いに崩れたね、俺の…いろんなものが。一月、初っ端から、どっかーーーーん!って笑 全然普通じゃねぇ! 失ってはいけない、離れてはいけない人間…ほぼ毎月毎月、次から次へと積み木が崩れるかの如くどうしようもないことばっかりが、ねぇ笑 2月のリキッドのワンマンの日なんかさ、俺、ライブ始めるまでマジで完全に逝っちゃってたからね、頭笑 「もうどうでもいい…帰りたい…」みたいな笑

ーははは笑

カワノ 不思議なもんで、ステージ上がれば俺は…「成せばならぬ、なぜなら男だから」というあの…いつものやつで、…だし、あの日はさ、伝えなくてはいけないこととかもありましたから、なんとかやりきったけど…。それだけなら良かったけどさ…まぁ…それ以降も次々と…ねぇ、本当に色々あったんだからっ!

ーそんな可愛く言われても笑 まぁ…わかってるけどさ。

カワノ ふふ笑 うん…でも、そういうものを…まあぶっちゃけさ、味合わなくても良かったような出来事を、一気に今年、東京って街で味わって、…一気に俺のチューニングが変わっていった。漠然とだけど、真に東京の俺、になったし、ならざるをえなかったし。なんていうか…客観的に見ても、人間がこう…いろんなものに覚めていくのってこういうことなんだ、っつーさ、大袈裟だけど、思った。

ーうんうん。

カワノ でもそれは、この街に適応するって意味ではなく、下手したらずれまくって、…むしろ、ここでなんとか自分を殺さず生きていくということだから、もはや何者にも合わせるのを放棄していくぐらいの回転というか。…で、そうなってくるとさ…今振り返ればさ、その、過去の色々…東京以前の、今の俺を構築した出来事も、味会わなくても良かったもので溢れてるんだけど、それがようやくね…よくも悪くも、逆にそっちがどんどん俺の中でズレ始めたんだよ。

ーほぉ。…それは、今までの話を踏まえると…過去の楽曲を歌うことへの違和感…ってことになるよな。

カワノ …正確に言えば…過去の歌が遠のいていってる。あの、強烈で鮮烈だった俺の喜怒哀楽…一種俺を縛り付けていたものでもあったけど…あれが、一気に色褪せ始めた感じ。…当時は自分の血肉そのものだ!ってぐらい、思ってたはずなんだけどね。…それは違ったみたい。ああ、これは、実は記録でしかなかったんだ、っていう気付き。

ー記録か…。

カワノ なんかね、すぐすぐこの…先ほどから例えとしてあげてる東京に…チューニングは急激に変わってるけど、決してフォーカスが一瞬であったわけじゃないんだよね。そんなに器用ではないし、そこの格闘はまた長い時間続くと思う。そうではなくって、昔が…過去は過去であることに変わりはないけど、その距離がどんどん離れていってるイメージ。時間は経過してるんだから、当たり前っちゃ当たり前だけどさ。

ー…むずくなってきたな笑 要はその…スッゲェ簡単にいうとさ…この一年のことを受け止めたことで、さっき言ったような曲たちをやるのに必然性とかリアリティがなくなってきて、代わりに他の曲…まぁ言ったら、これからやっていくであろう曲に重心が傾いてる…多分こんな簡単な話じゃないけど、そういうことだよね?

カワノ そう!ベラベラ喋ったけど、それぐらい簡単でいいや笑 結構さ、俺なりに、過去のものも今の自分のものとして落とし込もうとは頑張ったんだけどさ…、惑っている今はどうしても苦悩の連続で…たくさんライブをやったけどね、難しかったよ。本当、己との格闘だった笑 良いものを見せられてる実感がなくて…毎回毎回、イライラしてたし笑 タカさん(CRYAMYのPA)がライブごとに相当心配してくれたけど、本当、どうしようもなくてねぇ。

ーでもカワノは自分でも言ってるし、これまでもそうだったけど、「俺は昔に作った曲でも絶対に胸張って歌える」ってやつだと思ってるんだけど、…今はそうじゃないってこと?

カワノ いや!それともまた違くてさ…。…もちろん、これまで作った全ての曲、おっさんになっても…まぁおっさんになってもは絶対やってないけど笑 全然、誇って、胸を張って歌えるけどさ、また次元の違う話というか。全然、多分こんなこと考えないでいればバーっとやれちゃうんだけど、歌うことの必然性とか連続性とか…より厳しい目で見ると、…「やれはする」んだけど、半端に「やるべきじゃねぇ」…で、最終的には「そんな感じでやっちゃっていいんすか?」って思うっていうか。

ー…相当厳しい目線を向けてる感じするけどね。

カワノ …俺ねぇ、2022年以前に作った曲をさ、…ほんの1,2曲を除いて、全部消したんだよね。今後作る気は一切ない、っつって。

ーえぇ!

カワノ もうね、全部。消えた。歌詞も、…俺コンビニとかで売ってるようなノートにダラダラ書いてるんだけどさ、捨てたわけじゃないけど、もうどこ行ったかわからんのよ。ふっつーになくした。触ってるのが今年に入ってしばらくしてから書きだめてる方のやつだから。…まぁ言い訳じゃないですけど、今年入ってからの制作物…新曲のリリースが結局年内になかったのはそういうこと笑 本当にね、曲が…CRYAMYでやる上での曲ができなかった。

ー…俺はそういうのお前の悪いところだと思うけどねぇ笑 破滅主義というか…なんというか、極端なんだよな。頑固通り越してやたら自分にスパルタで…でもそういう態度は俺からするとキャパ狭いんだよな、お前笑 喧嘩売るわけじゃないけどさ、どうかと思うところはある笑

カワノ ははは笑 いや、それは間違ってないね笑 リセット癖、みたいな。…でもそれは、漠然として見えていたものの明瞭度が上がっていくにつれて、そこに誠実に、正常にリーチするためには削ぎ落としていかなくちゃいけない、って思ってるんだと思う。そこにリーチするために、もっと純度を高めなくっちゃ、いらないものは捨てなくちゃ、って。

ー…でも過去の成果もさ、その都度純度は追求して作ってきたわけじゃん。それは…。

カワノ いや、もちろんそうよ。だけど、それはその時のベストであって、じゃあ今顧みたら及んでいない、っていう、ただそれだけのシンプルな話でさ。…だし、自分のやってることをそれぐらい厳しく見れんくなったら、終わりだと思うし。

ーそっか。

カワノ でも…本当にね、ずっと喋ってきたけど、今年たくさんのことがあって、俺自身もすごく揺らいで、その中でなんとか乗り越えてきたわけだけどさ…。そういうのを、経てきてさ、一番シンプルに思ったのは、…時間は有限じゃないし、命も有限ではない…だから、そこに何かを及ぼそうとする、そこで誰かと深く関わろうとする、ってするとさ…ずっと避けてきたけど…生き急いでいかなくちゃいけないんですよ、絶対。じゃないと人の速度には間に合わない。

ー今以上に、ってこと?

カワノ うん。タラタラやってたら手が届かなくなってしまう。急いで力をつけなくちゃ手遅れになってしまう。…もうこれは…ぬるい言葉では言わない。うん…いい意味でも悪い意味でも、これまで通りじゃいられないし、いるつもりはないし…我慢できねぇな、って。…時間っていう軸でたくさん話をしてきたけど、俺が本来向かってるのって、一人一人の人であり、その人の人生であり、その人の生きる世界であるから…そう考えたらさ、そんな大きな、複雑な、しちめんどくせぇものに対するには、今までのままじゃ時間が圧倒的に足りねぇな、って。そんなもん随分前からわかってたはずなんだけど、また改めて気付かされた。…俺はぶっ飛ばしていかなくちゃいけないんだよね。

ーなるほど。…これはちょっと話がずれるかもしれないけどさ、…これ言って良いのかわからないけど、お前の近頃作ってるデモとか…よく聞かしてもらうじゃん、「これどう?」っつって、みんなで聴いて。俺はそういうものの成果を実際に聴くに…マジでそういう風に生きていこうとしてるんだな、って。俺は思ってんだよね。「#4」で確かに変わったけど…それ以上の…っていうか。

カワノ みんなに心配されるやつね笑 「カワノ、お前は一体どこにいこうとしてるんだ?」って笑

ーいやぁ、するよあれは笑 だってもう、バンド変わってるじゃん笑

カワノ 俺はむしろ、「ああ、やっと音楽、楽しくなってきたな」って…マジで思ってるけどね、今の俺の方が愛せるぜ、マジで。

ー笑 でも、そういうものを作って、大勢の人をうなづかせる自信はあるでしょ、あんた。かなり大袈裟な言い方だけど、あの音楽…パッと聴いた感じ、たとえ、これまでのお客さんや築いてきたキャリアを捨てることになっても…って姿勢に見えなくもないけど、…それでも、生き急ぎながらも、なんかお前は未来見てるんじゃねぇかな、って。

カワノ まぁ…これは珍しく俺が自分で誇りに思ってることだけどね…俺は自分で決めたことはこれまで全て成し遂げてきたし…断言するけど、一点の曇りも汚れもなくCRYAMYはここまできましたからね。その上で、現実、負った傷も壊してきたものもあるけど、俺はそれも美しいし…クールだと思うね。…まぁ、叩けば埃も出るし、よく見ればくすんでるけど、それすら許されるぐらい、良い感じ、ってさ笑 だし…そこで真の意味で獲得できた関係とか繋がりは、絶対に失わないんじゃないかな。…まぁ、全部なくなったら、これまでかけてきた時間が培ってきたものがその程度だったってことで。…まぁともかく、今後どうなるかなんて当事者の俺ですら知ったこっちゃないっすけど笑 何より、俺が正しいってものを出すのが芸術…音楽だし、さ。

ーははは笑 お前自身がそこに誇りを持てるんなら、それは事実だろうね。…昔お前に言ったけどさ、お前、何者でもないのに、なんか妙に堂々としてるというか…いい意味で態度でかい笑 だけど、なんか…みてて賭けたくなっちゃうんだよなぁ。

カワノ ふふ笑 クソ褒めてるし、絶対カットせんどくわ笑 うん…まぁ、本当にね色々あったから…今もすげぇ悩んでるけどさ…まだ年内、やることは山ほどあるし、ライブも残ってるし…自分なりに結論を出して、すっかり綺麗に終えるつもりでいるよ。…この一年…忘れないためにもだし、それ以前も、これから先の未来も、全部引きずっていくために、ね。…まぁそんな感じの、2022年でした! 「#3」、良いEPだから、レコードで聴いてね! よろしく!

INFORMATION

CRYAMY 1st LP 「#3」 NPE-009 (12inch/3,000円)


1st LP Release party at Shinjuku LOFT チケット販売中
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2238947


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?