あのひとの命日


ドアをあけて

闇の中へすべり出た

ほのかに漂う甘ったるい匂い

おずおずと夏の夜が横たわる

どこかで叫び声が聞こえた

発情した猫のような 

生きていたなら

飽きてしまうこともできただろう

未だ離れないでいる意識

私の肉はくたびれ ぽんこつ

取引されないままの敗残者

ひっそりと 百合のような白い手が

ひやっと 蛇のように

どうかしているどうかなりなよと

異業たちが耳元で囁くから

ゆるい夜気の

ループに入っていく





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