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ブックサンタになった理由。


幼い頃、祖母と買い物に行くと帰りに本屋に立ち寄って、本を一冊買ってもらっていた。

「漫画以外の本にしなさい(伝記はOK)」
とだけ言い、祖母は自分で読む本を選びに行く。

どんな本にしようか。いつもワクワクした思いで本を選んでいた。

小学校低学年の頃は、かわいい表紙の本が好きだった。
高学年になると、実写化されている本を登場人物の俳優を思い浮かべながら読むのが楽しかった。

本を選び終えると、祖母が持っている買い物かごに入れる。そのかごはいつも本でいっぱいだった。
祖母がどんな本を読んでいたかはあまり覚えてはいないが、毎回クロスワードは必ず入っていた。
クロスワードは遊びなのに、なんで漫画は買ってもらえないんだろうと子どもながらに思っていた。

中学生以降、祖母の買い物に付き添わなくなると、休み時間に図書室に入り浸り、高校生の頃は少ないバイト代を握りしめ、好きな作家の新刊を求めて本屋に足を運んでいた。
祖母の影響で気づけば私は本が好きな人間になっていた。

そんな祖母は昨年の春に亡くなった。
用意周到な祖母は、
「私が死んだら必要なものはこの箱に全て入っているわ」
とニトリの収納ボックスを度々紹介していた。
その箱(Deathボックス(父命名))には契約した墓や相続について、その他諸々の書類から額縁に入れた遺影まで入っていた。
遺影に使われた写真は大学生だった父が祖母の誕生日の記念に撮ったものだった。遺影に30年前の写真を使う祖母のマインドがかなり好きだ。

話はそれたが、Deathボックスの中には家族に宛てた遺言があった。
私へのメッセージはたった一言、

「心豊かな人生を歩んでください。」

シンプル。非常にシンプルだけど、色々なことを述べても、伝えたいことはこの一言に終着するのかもしれない。
そして漠然としていて、どう生きたら心豊かなのか明らかにするのが難しい。

祖母との一番の思い出は、前述の通り幼少期に本をたくさん買ってもらったことだ。

荒んだ中学時代は本を読み、現実とは異なる世界に身を置くことで、自分の心を守っていた。
高校時代は、自分と同じように本が好きな人と出会い、心を通わせた。

そして読書を通して、自分では言語化できない思いに気づき、救われたことが何度もある。

本は読む人の心を豊かにしてくれるのだ。

どうしていつも本を買ってくれるのか、祖母に理由を聞いたことはなかったけれど、今なら分かる。

12/24にブックサンタとして、私は本を購入した。
本を受け取る誰かの「心豊かな人生」を願って。




#ブックサンタ

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