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読む「ドキュメント7.2時間」(ポッドキャストウィークエンド後記)

ポッドキャストをやっているとよく「普段どんなポッドキャストを聴くんですか?」と質問される。そうなる度に「あまり聴かなくて……」と申し訳なさそうに答えている。

実際、Spotifyが個人個人に公開している年間聴取データによると、僕が2023年に聴いたポッドキャストは累計200分程度らしい。
ちなみに音楽だと3753曲、アーティストは1510組らしい。1曲3分だとしても、1年のうち7.8日は音楽を聴き続けていたことになる。さらにSpotifyのサブスクとは別に普段からウォークマンも持ち歩いているので、実際にはそれ以上だろう。

自分でもこの差に唖然としながら、12/16、小田急線に揺られ、”Podcast Weekend”へと向かっていた。ポッドキャスターが集うマーケットイベントとして第3回を迎える今年、主催の「雑談」からお声がけいただき、ありがたいことに公式会場リポーターとしてX(旧Twitter)でのスペース配信を相方と任されていた。

僕らに課せられた使命は会場に来たくても来れない地方や仕事の方に向けて会場の雰囲気を届けること。しかも僕らが普段やっているポッドキャストにちなんで「7.2時間」配信することになっていた。

とはいえ、それしか決まっていない。台本も概要と注意事項などを必要なアナウンスを書いた1ページしかない。

朝9時。すでに準備する人で会場BONUS TRUCKには人で溢れていた。学園祭とかお祭りみたいな雰囲気だなーと感じつつ、11時。ゆるっとポッドキャストウィークエンドの1日は幕をあけた。

イベントの可愛い看板

オープニングは相方の本田くんとほぼ普段通りの雑談をしつつ、そのまま会場レポートへ。あまりにも人が溢れかえっていて全員へインタビューするのは諦めつつ、出会う人にひたすらに声をかけていった。

途中機材トラブルがありつつもなんとかこなし、配信ブースに戻り、ゲストパートへ。このゲストパートも誰が何時に出るかなどはほぼ決まっていないので、飛び込み(&呼び込み)で話してもらうことにした。

自己紹介・自身のポッドキャスト&ブース紹介・ポッドキャストウィークエンドの感想

定番の質問を重ねつつ、そこからきっかけを見つけて話を広げていく。どのゲストも自身の番組で普段からしゃべり慣れているからか、正直MCとしてはほぼ相槌を打つくらいで番組が成立してしまった。

だからこそ、番組を進行しつつ、頭の半分では違うことを考えていた。出演してくれた20名あまりの方々の番組コンセプトが誰もが被っていないのだ。

もちろん大きなジャンルの重なりはあるものの、「マインドギャル」「絶対大丈夫」「平成コンテンツ」「海外文学」「民俗」「オーディオドラマ」「英語&日本語のミックス会話」「未来に向けて」「人が好きなのに卑屈」「お役立ち」「俳優による映画解説」「プロリスナー」などなど、多種多様な番組のコンセプトとそれを体現するようなパーソナリティの姿がそこにはあった。

スペースでは全て紹介できなかったが、かなりの数のブースが出店していた

そもそも、ポッドキャストはYouTubeとは違い収益化の方法が確立されていない。さらにM1のような明確にみんなが目指す目標や権威があるわけでもない。
(もちろん”JAPAN PODCAST AWARDS”をはじめとする賞はある。ただそれらの賞は現時点では目標ではなく、キュレーションとしての役割が高いと考えている)

ただ、本当に好きでやっている。そうやってできた番組の数々に被りがなく、どれもが個性的ということは、実は人間誰しもがありのままでやりたいことができれば多様である、ということの証明なのではないか。

朝井リョウが2012年に出版した小説『何者』に体現されるように、何者かにならないと社会を生き残れない空気感が2010年代以降ある気がする。ちなみに朝井リョウの小説から数年後、YouTubeは「好きなことで、生きていく」というCMを打ち出し、1億総クリエイター時代とも言える誰もが発信者になれる時代が幕をあける。
しかし、YouTuberの企画疲れ・ネタ出しの限界などの問題も表出し、何かをクリエイトし続けることの難しさも同時に現れてきたような気がする。

そんな流れの裏側で、かつてのインターネットラジオはポッドキャストと呼び名を変え、着々と広まっていった。
この収益化もなく、好きでやっている有志の活動の一つの成果が、ポッドキャストウィークエンドのような、いい意味で全くまとまりのないイベントだとするなら、「何者」にならなくても、「クリエイター」にならなくても、そもそもありのままで人は面白いということの証明なのではないだろうか。

気がつくと夜も更け、ポッドキャストウィークエンドの1日は終了していた。心地よい疲労感と達成感が漂う会場でそのまま打ち上げへ。普段は交流がないポッドキャスター同士が色々な話題で盛り上がる中、会場では着々と片付けが進行する。

祭りのあとのような更地になった頃、ひとり会場をくるっとまわりながら、また来年があるなら出たいなーと思った。

あと、来年はもうちょっとポッドキャストを聴こうかなと思った。

最近はNHKの番組「ドキュメント72時間」について毎週ポッドキャストを更新しています。もしよかったらこちらもお聴きください。


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