包み  2

 なるほど、彼女は意外と綺麗な箸の使い方をするんだな。箸の先で掴まれ、難なく彼女の口まで辿り着く餃子を目で追いかける。また箸の先が餃子へとのびた。

「ねえ、餃子食べきっちゃうよ?」

 餃子があと2つになったところで餃子の皿から彼女の胃までの綺麗な流れは完全に止まり、僕の視線は彼女へと移る。

「こう見えて僕はね、明日のデート、緊張してるんですよ。胸がいっぱいでもう食べられません。」

 彼女はわははと笑うと、本来の目的である、A子との初デートに緊張している僕をほぐす、頼もしい先輩の姿になった。

「A子ちゃんとは京都市動物園に行って、えーっと中華料理食べに行くんだよね」
「そうです、祇園の盛京亭へ」

 盛京亭は僕の好きな中華料理屋だ。デート向きとは言えないが、以前からその店の話をしていたため今回この店を選んだのは彼女の意向だ。
 チェーン店を信じているが、初デートではその店の空気感だって、なんだって一緒に味わいたい。

「明日も中華食べるのに、王将でよかったの」
「中華料理に胃を慣らしてるんですよ」

 そう言うと彼女はまたわははと笑った。

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