2/12③

いや、もう手紙がどうのこうのとかも一切合切忘れよう。この件は無かったことにしよう。

元々は僕の勘違いから始まっているので僕の勘違いで終わるべきだ。

なんかこう、この件が割とよくある日々のすれ違いから起きて無し崩し的に収束していくのを目の当たりにして、徹頭徹尾、何もかも勘違いなんだなと思うと合点がいく。

なんか、この件は短編映画の脚本とかにならないかと考えてしまった。「犬も食わないホットドッグ」なんてタイトルはどうだろうか。

脚本化するにはキャラクタは多少脚色して「卯建の上がらない小汚い見た目の冴えない主人公。おっさん。」「とても可愛らしいカフェの店員さん」。

主人公は毎日休日に公園に行くのが日課になっている。公園の散歩が彼の生き甲斐みたいな所まである。
公園内のカフェでは高齢の男性店員が味気ないホットドッグと泥水みたいなカフェラテを作る。それが日常だ。

ところがある日、久しぶりにカフェに行くとそこには眩しい笑顔の可愛らしい店員さんが。ホットドッグもカフェラテもこれが同じ物なのかと疑うほどにうまい。

数日間、公園とカフェに通う後、突如カフェの店員さんに話しかけられる。挨拶だけなら良かったが、ずいぶんと話が長くて驚く主人公。

次第に主人公は日課の公園への散歩が、カフェの店員に会うことが目的になり始める。

主人公は、店員さんと別にどうこうなりたい訳では無いが、なんか悶々とし、ある日感謝の気持ちを書いた手紙を用意する。

手紙を渡そうと何度も機会を窺うが、仕事のシフトが合わなかったり、雪が降ったり、最終的には今日こそ必ずと意を決した日がたまたま祝日でカフェは大忙し。

店員さんは主人公に意も介さず終始忙しそうにしている。

クシャクシャになった手紙と食べかけのホットドッグを公園のゴミ箱に投げ入れて、主人公はいつもの日常に戻る。

いつもの公園の遠景が映されてエンドロール。めちゃくちゃ僕の好きなタイプの映画じゃねーか。

最近は暇つぶしのYouTubeにもゲームにも嫌気が差していて、映画を観て暇を過ごしているが、ここに来て良質の映画に出会えまくっていてとても良い。

イランの映画監督、アッバス・キアロスタミの作品が素晴らし過ぎる。なんと晩年に日本人キャストで日本の映画も撮っていて、AmazonPrimeに無いので迷わずDVDを注文した。日本人としてなんか誇らしい気持ちになった。

監督の代表作となる作品類は僕は公開当時二十歳にもなっていなかったので、おそらく全く理解出来なかったはず。

そういう意味でも時を超えて、今の自分がキアロスタミ監督の作品に出会えたことを素直に喜びたい。


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