お勉強87:顎骨壊死についてまとめ


いわゆる顎骨壊死に対する知見
https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/article-abstract/2773839

今回はゾレドロン酸に関するデータ
3年使うと発生率はだいたい3%とのこと。
(下記のデータよりやや高い印象)

頻度が上がる因子としては
・多発性骨髄腫の患者
・ゾレドロン酸の頻回投与(5週以内の繰り返し)
 ※確か今は12週の非劣勢が証明されているはずです
・歯が少ない・喫煙中・義歯ありなど口腔内衛生に関する
 因子が出ています

デノスマブのデータも出てきたら気になるところです。

癌腫(乳がんは少なめ、骨髄腫は多め)での差など
いろいろ面白いデータも出ています。

以下、過去にまとめた顎骨壊死のお勉強データ
(2016年時のデータです)
参考は
・骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理
 顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016
・Hospitalist 2016vol4No.3
 薬物関連顎骨壊死(MRONJ)の記事

※用語の整理
 そもそも始まりはビスフォスフォネート(BP)で
 BRONJ(BP-Related Osteonecrosis of the Jaw)
 が報告されたのが始まり。
  そのあと、RANKLに対するモノクローナル抗体
 デノスマブでも顎骨壊死(ONJ)が発生し、これを
 DRONJ(denosumab-rerataed ONJ)
 と呼ぶように。
  これら骨吸収薬阻害薬の副作用のONJをまとめて
 AROMJ(anti-resorptive ONJ)
 MRONJ(medication-related ONJ)
 と呼ぶようになった。(一緒だが、流派があるらしい)

※頻度・リスク因子
 BRONJに関しては
 骨粗鬆症で使う場合の発生率は一般の場合とほとんど
 差が無いようである
 癌患者においてはBRONJ/DRONJとも1%程度との事
 リスク因子としては、
 ・前述のとおり癌患者であること
 ・肥満
 ・喫煙
 ・飲酒
 ・ステロイド/エリスロポエチン
 ・血管新生阻害薬(サリドマイドは議論あり)
  スニチニブ・ベバシズマブ
 ・TKI
 歯科的な因子としては
 ・投与後のインプラント、抜歯、根尖/歯周外科手術
 (治療前のインプラントは衛生状態をちゃんとしてれば○)
 ・不適合義歯
 ・根幹治療や矯正治療はリスク因子ではない

※歯科医師でない医師が気付くべき症状
 (ステージ0の症状)
 ・いわゆるVinvent症状(下唇からオトガイ部の知覚異常)
  ☆予兆症状として重要
 ・口腔粘膜潰瘍/腫脹 膿瘍形成
 ステージ0がもっと進むかというとそうでもないが、
 発生すると難治なので過剰診断のriskはあるが
 こういう症状が出たら歯科医に送ってOKと個人的には思う

※発症メカニズム
 ・粘膜異常?
  そもそも下顎におきやすいのは粘膜が薄いから?
 ・感染?
  Actinomyces(放線菌)が
  組織的に検出されることが多い 
  ただ、原因というよりMRONJが起こった所に
  放線菌が住み着いているだけ、という考えもある
  BPで免疫系が変化して口腔内細胞の細菌叢が変わる
  というせつもある
 ・血管新生抑制? 
  上述のようにVEGF関連の薬剤との関係指摘

※歯科侵襲的治療をやる場合
 ・BP休薬に関してはしなくてもいい、という意見多し
  ただ、4年以上使用している人はリスク高いとの事
  4年以上使っている人は2か月ぐらい休むことを
  医師と歯科医で相談
 ・最近はむしろ徹底した口腔衛生管理をして
  休薬しないという方向性も模索されている

※治療
 ・骨壊死領域の進展を抑える
 ・疼痛・排膿・知覚異常などの緩和、感染制御
 ・患者教育
 ・DRONJはデノスマブをやめるだけで治ることもある
  (薬剤の滞留期間が短いからという説)
 ・以前は保存的療法が支持されていたが、
  むしろ進行期では積極的に外科治療を行う方が
  良いという知見がそろってきているようだ。
  ポイントとしては、
   ☆抗生剤投与、
   ☆腐骨・壊死骨の除去 術創を閉鎖創にする
   ☆癌の患者はmetaじゃないかちゃんとチェックする
 ・露出骨内の症状のある歯は抜いちゃってもいいらしい
  (抜歯しても壊死過程が増悪しないと考える)
 ・リコンビナント副甲状腺ホルモンについては議論あり
  (がんの場合骨メタの人に使っちゃダメ)
 ・MRONJ発生したら基本骨吸収抑制薬は止める
 ・基本予後不良(死ぬときに3-4割は治っていない)

※マニアックな話
 BPで外耳道骨壊死の報告有
 日本では歯科と医師とのあいだでのONJの管理連携が
 非常に甘いと言われている。
 骨粗鬆症患者ではリスクが低いのに癌患者でなぜリスクが
 高くなるかについてはかなり謎

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