肺癌Ⅲ期治療、今後どうなる、放射線腫瘍医が勝手に妄想

毎年恒例になりつつありますが、
今年もⅢ期肺がんネタで〆ます。

PACIFICで安定していた「切除不能」局所進行肺がんが
周術期治療の変化で変わってきている

まずは肺がん周術期治療各薬剤の開発状況

術後

この中でIMpower010とKeynote091(PEARLS)は結果が出ており、
(一応)ポジティブ試験として扱われている。
ただ、どちらもPD-L1の発現率で効果が違うのは
よくよく考えておく必要がある。

アテゾリツマブはすでに日本でも承認済み
Keynoteは術後ケモは必須でなかったので、そのあたりは
差っ引いて考えることが必要

https://www.m3.com/clinical/news/1095977

こちらも参考に。


術前ここからは術前。

CM816はポジティブスタディーで結果も良く、

現在術前ニボは承認申請待ち
PD-L1の発現率で多少差があるが、
かなりプラセボとはっきりと分かれている印象。

NADIM-2は

よく似ているが、コントロールは術後治療無しで
かつステージ対象が違い、(CM816 より進行期)
ニボのアジュバントが入るところが大きな違い。
こちらも成績はとても良い。

AEGEAN試験もpCR率は上がることが報告されている。

https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2022/2022070701.html

生存などについてはまだ待ちだが、
この試験はCM816の倍ぐらいの人数のⅢ相試験なので
色々分かることを期待する

日本でもCRT+デュルバルマブのSQUAT trial
(いわゆる四者併用)

https://research-er.jp/articles/view/117241

が行われてかなりのpCR率やORR率を上げている

術前・術後の比較については

も参考になる

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と、ここまでが前置きで
これを踏まえて私見

<EGFRmut以外>
・術後ICIの微妙なエビデンスに比べると
 データは少ないが、術前ICIに優位性がありそう。
 リンパ節郭清前、という点がポイント?

・術後ICIはincidentalなN2のみになるのでは?
 と予想。でもとりあえず術後ケモが基本。

・IV期である程度の安全性やirAE管理が
 できるようになりつつあるので、術前ICIの危険性は
 低いと個人的には考える

・PACIFICとのすみわけで考えると
 「手術可能」肺がんは術前ICIにシフトしていくのは
 ほぼ時代の流れと考える。IBを含むかどうかは
 結構議論の余地はある。

・まだ周術期ICIは日本ではデータが少なく、
 いっぱい日本のリアルワールドデータが
 出てきていて、再現性が示されている
 PACIFIC試験の安定感はすごいので、
 一律に「切除不能」を手術に持っていくのは
 危険。ダウンステージングを目的に
 術前ケモICIを推進していくのは注意。
 
・それを踏まえたうえで、singleN2~multipleN2は
 結構術前ICIを組み合わせて手術、術後もケモ+ICIと
 いう治療戦略と比較してとくにmultipleN2において
 PACIFICがどうか、は今後の課題。

・ただ、PACIFICをサルベージラインとして残しておく、
 という放射線腫瘍医としては消極的だが、
 取れそうなら、ope先行の手段はアリと思う。

・放射線腫瘍医としては原発が大きい場合や
 下葉の腫瘤がある場合はopeに期待するものも大きい。
 (極論だが)郭清が不十分で局所再発したり、
 Nが取れない場合でも原発が除去されていれば
 V20を下げて、PACIFICレジメンが使えるわけで。

・4者併用は魅力的だが、その4者で決めきる、という
 覚悟が必要なので、いわゆるサイズではないcT4に
 4者併用、というのは結構博打なような気もする。
 JCOG1109じゃないが、心血管有害事象のことも考えると
 https://note.com/nijuoti/n/n13755568903a
 4者併用の使えるポイントはパンコーストとか
 胸壁のT3とかではなかろうか。

・PACIFICと術前ICIの境界線のような症例は
 今後出てきて、それはお互いサルベージコミコミ
 になり、集学的治療の力が必要か。

・インダクションケモICIと考えて、反応が悪ければ
 (分はかなり悪そうだが)PACIFICという考え方もはやるかもしれない。
 放射線腫瘍医としては敗戦処理感が否めないが…
 逆に頭頚部のように
 反応が良ければPACIFICに、という考え方も一理あり。
 (が、頭頚部ほど非手術治療にメリットがあるかと言われると、無い)

<EGFRmut>
・個人的にはADAURAには否定的。
 たしかに患者さんの安心感は否定しないが、
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35997576/

 再発してから使ってもMSTは約5年もあるので、
 3年間無条件にみんな使う、というのは
 医療経済的にもどうなのか…
 COIの塊のような先生が講演して推しているのを効くと
 なんだかゲンナリする

・一方neoADAURAには期待している。
 効く確率はかなり高いし、
 手術の良い補助になる気がする

・EGFRmutでもCRTをすること自体は否定されないが、
 CRT後ICIしてもあまり効かないらしい。
 かといってADAURAのようにアジュバントTKI
 というのもなぁ…
 (まぁ、ADAURAより確実に再発率高いので
  ADAURAがまかり通るなら、EGFRアジュバントも
  ありでしょうが…)

今年度もご愛顧ありがとうございました。
来年もよろしくお願い申し上げます。

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