お勉強313:腎がんも定位照射!


腎がん定位照射 IROCK 長期報告
多施設、多国 コホートメタ解析
日本では山梨の大西先生も共著に入ってます

原発性腎がんが適応(転移・尿管/腎盂がんは除外)
プライマリーエンドポイントは担当医の判断での局所制御
セカンダリーエンドポイントは有害事象、腎機能、再発形式

生存で見るのはPFS,がん特異的生存率、局所・遠隔制御

190人が対象。
(18歳以上、二年以上フォロー、周囲に照射歴無し
 PS不問、原発性腎がん、転移無し)

1Fr照射とそれ以外を分けて解析している
割合としては4:6ぐらい
BEDはこった出し方をしていて
いわゆるα/β=10 (BED 10) 以外に
細胞株で報告されているα/β=6·9と 2·6でもBEDを出している

eGFRでCKDの進行度や、両腎ある場合はレノグラムも
とって腎機能をしっかり年次経過も見ている

放射線治療医にとってはなじみゼロだが、
RENAL Nephrometry Score
(R)adius (tumour maximal diameter)
(E)xophytic/endophytic properties
(N)earness of tumour to the collecting system
(A)nterior (a)/posterior (p) descriptor
(L)ocation relative to the polar line
でも評価
(部分切除の難しさの程度の評価らしい)


局所評価は腎機能が許すなら造影CT
遠隔転移は可能なら造影で胸部から腹部までのCT
最初の一年は3~4か月ごと
二~三年目は3~6か月ごと
以降は6~12カ月ごと

メディアンフォローアップは5年、年齢中央値はSABR時73.6歳
腫瘍径は中央値4cm 男性七割
75%が手術が難しいと判定
(ただ、半分ぐらいは心血管系有害事象とのことで日本では?)
8割ぐらい生検で診断がついている ほとんど明細胞がん
RENALscoreは中央値7点で「中等度の手術の難しさ」と書いてる。
ベースのeGFR中央値は60と結構腎機能は保たれているが
50%ぐらいCKDのステージ3以上、
3割程度が片腎というなかなか厳しい背景

4%がSABR後透析となっている。(うち2/7が片腎)

局所制御は5年で94.5% 
1Fr照射(ほとんどが25か26Gy/1Frのよう)が
複数回照射より局所制御が良いらしい
分析すると一応α/β=10だと中央値で
一回照射87.5Gy,複数回照射96Gyだが優位差はなし
α/β=2·6だと、優位に一回照射の方がBED高いらしい 
複数回照射は一回8Gy、回数は4Frが中央値

1回照射は全員手術不能、片腎が半分

一回照射と複数回照射で有害事象に差はなし

肝心の局所制御だが、3,5,7年での局所制御失敗は
5.5/5.5/8.4%とかなりの好データ
臨床的な最初のfailureは
局所のみ2%(一例のみ手術で救済されたとの事)
遠隔のみ7% 両方4%

状態が悪い患者さんの背景もあるのか、
190人中66人が死亡しているが、癌死は10人のみ
多いのは心血管死だが、腎不全で3人死んでいる
腎がん特異的生存率は3,5,7年で
95.5/92/92%とかなり良好
PFSはやっぱり落ちてきて、3,5,7年で
72.1/63.6/48.5% メディアンは6.7年

非常に興味のあるeGFRの低下は中央値で
1,3,5年でで 5.5/10.3/14.2 minper 1.73m2とのこと
(統計学的にも有意な低以下だったと)

腫瘍の局所制御を中央値の4cmで分けると
小さいものは5年局所制御95.4%、大きくても92%だったとの事

RENALscoreは局所制御には影響しないが、G2以上の有害事象
及び長期の(3年以上の)腎機能低下に影響していたとの事

片腎の人は56人で、一回照射が多かったとの事
うち2人がSABR後透析へ。

治療関連死亡は無しだが、
G4の急性十二指腸潰瘍・晩期の胃炎あり
(どちらも複数回照射)

筆者らは
・一般的なRFA適応外の4㎝程度の腫瘍でも
 局所制御は良かった
・5年でeGFR 14.2の低下ならば
 ベースを考えると十分腎機能は温存できている
・色々交絡因子はあるのだろうが、1回照射の方が制御いい
 (腎がんオリゴメタでも同様の報告はあるのだそう)
・いわゆるRAPN/RFA/凍結療法とほぼ同等の成績と主張
・SABRを下大静脈腫瘍栓のネオアジュバントや
 転移ある腎がんの腎摘出のネオアジュバントや
 さらにはこういう群の腎摘出の代わり
 という方法を提唱している人たちもいるらしい
・尿路狭窄をRFAでは起こすという報告もあるが、SABRでは
 5年ぐらいではない
・少なくとも腫瘍位置でSABRの非適応部位、というのはなさそう

腎臓のSBRTには非常に未来があるな、と思わされる
研究でした。ただ、腎臓は非常に動くのでなかなか難しい。
意外とMRIリニアックで1Fr照射、が一番いい気がします
(流行るかも) 片腎の人には非常に魅力的な
オプションと思います。

通常のリニアックの照射は、
マーカー入れるならRFAやクライオすればいいわけで…
(まぁ、マーカーは一瞬だし、近くに入れればいいだけだので
 リスクと侵襲は段違いでしょうが)
息止め?


泌尿器腫瘍学会でも泌尿器の先生はそれなりに
ご興味を持っておられるようでした。
今後、腎がんの放射線治療は未来が明るいかもしれません。

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