お勉強163:「難しい」SBRT④ (最終回)


https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1556086421021122

オリゴに対するSBRT

<症例>
COPDの既往がある58歳男性
origometaのNSCLCで紹介された
胸部Xpでは左肺門部に腫瘤が認められた。
PET-CTでは、左下葉に8.0×6.7cmの大きな空洞性の腫瘤があり、
#7と#4Rに不定形の取り込みがあり、
また、2つの仙骨転移が認められた。(1-2cm程度)

EBUSガイド下の生検では、
#12L内に扁平上皮癌が確認されたが(PD-L1:58%)
#7と#4Rはともに陰性であった。
最終病期はT4N1M1cであった。
フローボリューム曲線では、FEV1が97%、DLCOが81%。
PSは1。

<問題点>
1.oligometaのNSCLCはどのように定義されるか?
2.oligometaのNSCLC患者はSBRTの使用を含む局所統合治療の恩恵を受けるか?
3.oligometaのNSCLCにおける SBRT を評価する現在の前向き研究の限界は何か?
4.SBRT を受けるoligometaのNSCLC患者をどのようにして適切に選択するか?

<ポイント>
IV期のNSCLCは歴史的に不治の病と考えられており、
そのためほとんどの患者は緩和目的で治療されていた。
生存期間は緩和的な化学療法と放射線治療で、
OSは1年未満であることが多かった。
この現状は免疫療法や他の標的薬剤が導入されてから改善した。

オリゴメタスタティック・パラダイムは、
限られた数の転移を有する患者のサブグループが、
「治癒目的」のアプローチの一部として
局所統合治療(LCT)を受けることで
利益を得る可能性があることを示唆しています。

オリゴメタスタシスの定義には議論があります。
患者は診断時に発症することもあれば(synchronous)
後になってから発症することもある(metachronous)。
しかし、最近の系統的な文献レビューでは、
oligometaのNSCLCの場合
文献に記載されている大多数の患者の特徴を反映して、
転移の数は3つまでとすることが推奨されている。
しかし、非侵襲的SBRTの使用が増加しており、
最近では優れた局所制御と長期生存が報告されている。

このような状況で2つの治療法を直接比較した研究はないが、
Schanneらは最新(2011年以降)の放射線治療と
外科手術の研究結果を比較してOSに差がないと報告している
「生物学的」oligometaのNSCLCを
「放射線学的」oligometaのNSCLCと
区別することを目的としたバイオマーカーが必要である。
oligometaのSBRTは、多くのプロスペクティブ試験で
評価されている。 毒性が許容範囲内であるにもかかわらず、
OSおよび無増悪生存期間(PFS)の中央値が改善した
ことが複数報告されている。

Gomez 氏らによる NSCLC 患者の同期転移を対象とした
多施設共同の第 II 相試験では、
一次治療である全身性抗がん剤治療後に
進行しなかった患者を SBRTまたは維持療法に
無作為に割り付けし、PFS/OSを改善したことが報告されています
(MST:41.2 ヶ月対 17 ヶ月)
Iyengar 氏らによる別の第 II 相試験では、
局所治療 により PFS の有意な改善(9.7 ヵ月対 3.5 ヵ月)が報告されている.
NSCLC 患者も対象とした
無作為化第 II 相 SABR-COMET 試験では、
緩和的な標準治療よりも SBRT を用いた方が
全生存期間が延長したことも報告されています

oligometaのNSCLCにおける SBRT の使用をめぐる
エビデンスは発展途上であるが、
重要な限界があるレトロスペクティブシリーズと
小規模な第 II 相試験に基づいている。

さらに、免疫療法が
当時の標準治療の一部ではなかったことから、
近年の治療状況の変化は、
これらの試験には正確に反映されていません。

SBRTは腫瘍の微小環境を変化させ、
免疫チェックポイント阻害に対する
反応を促進する可能性もある。

最後に、NSCLCとドライバー変異を有する患者、
オリゴプログレッションの設定において、
標的療法にSBRTを追加することに関する
エビデンスは限られています。

要約すると、ESMO ガイドラインによると、限られた
synchronous / metachronous のメタのIV 期 NSCLC 患者は、
局所療法(SBRT または手術)で治療し、
長期の PFS を得ることができますが、
臨床試験に参加することが望ましいとされています。
現在、これらの環境下で、
日常診療におけるSBRTの役割を確立するために、
多くの第3相試験が実施されています

<実際の症例経過>
患者が呼吸器症状を引き起こしている
巨大で局所的に進行した原発腫瘍を有しており、
治療に適していることを考えると、BSCは不適と考えた。

治療の選択肢としては、
標準的治療(免疫療法と化学療法の併用)、
症状コントロールのための緩和的胸部放射線治療、
標準的治療に加え「根治的な」と局所治療の追加などが挙げられた。

局所治療では、原発巣への根治的放射線治療と仙骨の転移巣へのSBRTが、
手術よりも好まれました。

高度に選択されたoligometa患者を対象とした研究では、
治療成績の向上が示されているが、エビデンスは限られている。
このような不確実性を考慮して、彼はSARON試験(NCT02417662)に登録された。

SARON試験は、synchronous のoligometaのNSCLCにおいて
標準的治療に放射線治療(通常およびSBRT)を追加することで
OSが改善するかどうかを調査する無作為化第III相試験である。

この患者は標準的治療として
導入のパクリタキセル、カルボプラチン、ペンブロリズマブを
2サイクル投与した。評価CTとMRIでは病勢が安定していた。
その後、介入群に無作為に割り付けられ、
標準的治療をさらに2サイクル行った後、
原疾患に対する放射線治療(20分割で55Gy)と、
2つの仙骨転移に対するSBRT(3分割で24Gy)を受けた。

仙骨転移は仙骨神経叢に近接しているため、
当初は30Gy×3分割の線量が提案されたが、低減された。

治療に関連する毒性はなかった。
最初の診断から22ヵ月後の現在disease freeである。

<個人的見解>

結構、オリゴメタ・オリゴプログレッションは
積極的にやっている方だと思う。

肺がんオリゴメタ
⇒術前ケモラジで原発切除+オリゴメタにSBRT
⇒オリゴプログレッションにRT

のゴリゴリ局所療法てんこ盛りで
長期化学療法フリーな人や

TKI効く人のオリゴプログレッションを
次々RT,ってのもやって頑張っている人とかもいる。

とりあえず、1-2個のオリゴメタは
積極的に挑戦していくべきだし、
よく効く薬(TKIやICI)
のオリゴプログレッションは
RTで叩きに行く価値はあると思う
(というか、ほかのところ効いているのに薬を
 変更するのはもったいなすぎる)
ICIが効かなかったオリゴプログレッションに
RTしたらほかのプログレッションが縮んだ経験もあり。

分割回数や、適切な線量はまだ??
前立腺とかは意外に3Gy*13Frとかで長期に粘れたりする

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