お勉強301:膀胱温存療法話



筋層浸潤性膀胱癌に対する標準的治療は根治的膀胱切除術(RC)である。
しかしながらその侵襲などを考え、高齢者やunfitの患者には
最大限の経尿道的最大摘出術(maximum TURB)後の
化学放射線療法(CRT)
による3者併用膀胱温存療法は、
最近の研究で有望な結果を示している。

(海外の)ガイドライン上では
一部の患者ではRCに代わるものとして受け入れられると考えられている。
(一応文章には膀胱部分切除を加える4者併用療法についても記載あり)

今回、単一施設のレトロスペクティブCRTコホートにおける転帰を、
RCと放射線治療のみ(RT)コホートと比較して報告する。

施設はオランダのロッテルダムのエラスムスメディカルセンター
CRT患者n=84、およびRT患者n=95であった。
2010年から2017年のcT2-4N0M0患者を解析。
RTは66Gy/33fr 

RC患者n=93はpT2-4N0M0の患者群(手術期ケモは無し)
2008年から2018年の患者を解析

基本的にはRC推奨。RCにunfitな患者や膀胱温存療法を
希望する患者はmaximumTURBTをして、遠隔転移がないのを確認したのち
8週以内に治療開始。CRTの場合は5-FU+MMCのレジメン
虚血性心疾患、重度の肝心機能不全、5-FUの代謝酵素以上で
副作用が強く出る可能性のある患者は除外
ケモ不耐の患者は66Gy/33Fr
CTVは排尿後膀胱 PTVは基本1.5cm
基本は3D-CRT

基本フォローは急性期評価を3カ月まで
1~2週おきに行い、2年目まで3カ月に1回膀胱鏡と細胞診
2年後は年に二回膀胱鏡 5年後まで
という事だったが、高齢者やfrailな患者さんはこの限りではなかった。

主要評価項目は、2年までの局所制御(LC)
および5年までの全生存(OS)であった。
副評価項目としてはG2以上の急性期有害事象。
GU評価としては膀胱炎・血尿・膀胱痙攣・尿量蓄積量・頻尿等
GI評価としては下痢・切迫感

局所再発は組織学的に尿道がんが証明されるか
膀胱鏡で乳頭状の腫瘍が発見されるか、
尿細胞診でハイグレードの尿路上皮がんが見つかるか。

死因がはっきりしない場合は最終フォローの時点で
再発・転移していたら、癌関連、
6カ月以内に再発の所見なければ癌関連でない、とした。

急性泌尿器(GU)毒性および胃腸(GI)毒性は、
RTおよびCRTコホートについてCTCAEバージョン4でスコア化した。
毒性の危険因子を決定するためにロジスティック回帰を使用した。
CRT群におけるLCとOSのリスクファクターを決定するために
Cox回帰を行った
(過去文献上指摘されているリスク因子は解析因子に入れた)

ベースライン特性は治療群間で異なっており、
特にRT群では合併症スコアが悪く、年齢が高かった。
(RCの患者の条件が非常に良かった)

80代がRCだと4%だがCRT/RTは4割ぐらいある
RTは2割がPS2
TStageはさすがにRCがT3が多い。

CISは基本的に膀胱温存療法に向かないとされるが、
CRTに36%もいる

インダクション・ネオアジュバント化学療法の結果RCからCRT
へと切り替えた患者が9人いた。
35人自己意思でRCからCRTを希望
CRT/RT 1/4人RTを完遂できず。
ケモは3人で完遂できず(RTは完遂できた)

CRTのスケジュールは96%の患者が完了した。
2年後のLCは
CRT群83.4%(90%CI 76.0-90.8)、
RC群70.9%(62.2-79.6)、
RT群67.0%(56.8-77.2)
であった。

一見CRTがいいように見えるが、
CRT,RTはダラダラ下がり続け、
RCは2年あたりから全然下がらない
やはり長期的にはRCがいい印象。

CRT群では、高TステージがLCとOSの悪化と有意に関連していた。
PSも優位ではないが影響。
RC群ではTStageやPSなどはCRTに比べると影響は小さかった。

5年後のOSは、
CRTが48.9%(38.4-59.4)、RCが46.6%(36.4-56.8)、RTが27.6%(19.4-35.8)であった。
CRTではTStageが予後因子。
RCでは特に予後因子は抽出されず
ロストフォローや合併症などを加味して考えると
死亡原因で膀胱がんが占める割合はCRTで64% RCで93.9% RTで53.2%と
推定された。

GU/GI毒性≧G2がRT群43例(48.3%)、CRT群38例(45.2%)に発現した。
(GU症状≧G2は治療前に既に存在している人もいた)G3(入院必要)は4例

RC群では4例で生命の危機に陥る合併症、1例が術後30日以内に死亡

CRTを使用した膀胱温存療法は耐用可能で、RCと同等の
それなりのLC/OSを示した
一応高齢者やunfitの人にはCRTはRCと同等な治療法では?という結論

個人的な意見としては、
・標準治療はやはりRC
・しかし、慎重に対象を選べば、3者(4者)併用療法はアリ。
(CIS・水腎症・T4を除くなど)
・とくに75歳以上や、ややfrailな患者では選択肢と思う
・線量に関してはもう少し少なくても良いのでは?
・日本でケモするならGEM+CDDP? CDDP動注?
・膀胱がんはまだIGRTで伸びしろがだいぶんあると思う。

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