お勉強397:食道がんの周術期治療にRTはいらない時代?

https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.22.02279

胸部食道・胃食道接合部がん
(したがって日本でいう「胃がん」も含む)に対する
ネオアジュバント治療のネットワークメタ解析
(RCTのみのよう)
位置(15%ぐらいがEGJ tumor)や、組織型(Sq:Adはほぼ1:1)を中心に解析

先行手術(S)、化学療法後に手術(CS)、化学放射線療法後に手術(CRS)のRCT
(公開も未公開も含むらしい)治験責任医師から患者個々のデータをもらって解析と。
Individual Participants Data:(IPD)解析というやつらしい
主要エンドポイントは全生存期間。
年齢、性別、腫瘍部位、組織型で調整した1段階混合効果Coxモデルで解析とのこと

難しすぎてよくわからないのでググってみると、こんな記事が

https://www.ism.ac.jp/editsec/toukei/pdf/62-2-313.pdf

読むとちょっと(ほんとにちょこっと)わかった気になります。
でも、これを読んでも論文の統計解析のところは???です。

ネットワークメタアナリシスについてはこちら

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hct/9/3/9_20-002/_pdf

要は、直接比較した試験がないときに、HRなどから
傍証的に比較試験をする、という手法

35件のRCT中26件(5,807例中4,985例)でIPDが得られ、
CS-Sでは12件、CRS-Sでは12件、CRS-CSでは4件の比較に相当した。
年齢中央値は大体60歳、男性が8割
照射線量はCRS-Sだと 35-50.4Gy/10-23fr
CRS-CSだとなぜか低めで30-40Gy/15-20fr

CSおよびCRSはSと比較してOSを改善。
それぞれハザード比(HR)
HR=0.86(0.75~0.99)、P=0.03、
HR=0.77(0.68~0.87)、P<0.001であった。

OSに関するCRS対CSのNMA比較では、
HR=0.90(0.74~1.09)、P=0.27
(一貫性P=0.26、異質性P=0.0038)であった。
細かく見ると、局所はCRS少な目、(有意差なし)
再発なし死亡はCRS多め(これは有意差あり)

CS対Sでは、OSに対するより大きな効果はGEJのほうが、胸部腫瘍よりみとめられた(P = 0.036)。
CRS対SおよびCRS対CSでは、OSに対するより大きな効果は女性で観察された(それぞれP = 0.003、0.012)。
組織型はどの比較でも有意差はなし

R0や周術期死亡はS/CS/CRSで差は認められず

ネオアジュバント化学療法および化学放射線療法は、組織型によらず一貫してS単独療法よりも優れていたが、
CRSでは性別により、CSでは腫瘍部位により治療効果の大きさに多少のばらつきがあった。
CSとCRSの間にOSの強い差は確認されなかった、という結論。

最後の部分には放射線腫瘍医から
https://twitter.com/5_utr/status/1687857539336269824
という反論あり

考察にはNeo-AEGIS、JCOG1109についての言及あり
現時点でCRS>CSというデータには乏しいよね、
という要旨。個人的にはやはりradiationが
手術への上乗せを十分示せていないのかな、と思う。
このメタアナリシスにはかなり古いデータも入っているようで、
CRS>Sはそれが誇張されている可能性もある。

いちおう消化器がん大好き
放射線治療医としてこんなこと言ってはアレだが
II~III期の食道がんにおいて、少なくとも
(リンパ節領域も含め)局所制御を補うという観点で
手術に放射線治療を加えることは、
必要ではないというのが現実なのかもしれない、と
ここ最近のエビデンスなどからは
最近少し(悲しいながら)受け入れ始めている。

もちろんその一方で食道温存の希望が一定数あり、
QOLも(放射線治療医側から見ると)明らかに
食道温存がいいと思っているので、CRTのチョイスを
「生存がいいから」説明しないというのは反対である。
(風のうわさではこういう病院も多いらしいが…
https://diamond.jp/articles/-/278927
 を読んで、放射線腫瘍医は怒るのが普通と思う)

むしろ外科医の期待はCT3brやT4
のコンバージョンに移りつつあるんだなぁ、と感じている。

もちろんJCOG1109のUtの成績や他病死のデータ、
昨今の放射線治療で心臓が明らかに
ダメージを受けている証拠が積み重なっている
ことなどから考えてもRTの上乗せが乏しいのは
「RTの害」によるところも大きいので
大胆だが(術前なら)IFRTにしちゃうとか
陽子線照射・IMRTなどで我々の復権も狙うべきとは思う。

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