お勉強459:タルラタマブ、承認申請だってよ

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/202405/584312.html

というわけで、一瞬前にも取り上げましたが
tarlatamab について復習がてら。


第二相、単群試験DeLLphi-301試験

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2307980

タルラタマブは、がん細胞上のDLL3とT細胞上のCD3に結合し、
がん細胞の溶解を誘導する二重特異性T細胞エンゲージャー免疫療法
(いわゆるBiTEと呼ばれる免疫療法)

MHC class Iの発現欠損がPD-L1阻害薬の免疫回避の
経路として働いているが、BiTEはMHC class I
非依存的に働いてくkれるらしい

DLL3は通常は細胞外に発現していないが、
神経細胞系に発現しているらしく、
(9割ぐらい発現しているらしい)
以前から小細胞肺がんの治療標的として注目されていた。

対象は再発または治療抵抗性の小細胞肺がん
2line以上の治療後。
10㎎と100mgの2容量使って副作用を比較している。
10 mgの用量でより良好な有効性と安全性がみられているので
途中からは10mgにFIX

経静脈的に2週ごとに投与
対象は既治療のSCLC
220人が参加。
(オールカマーの試験だったが
 8割ぐらいで調べるのが可能な人を調べたら
 DLL3の発現は96%で見られたと)

主要評価項目はブラインドの中央評価での
RECISTでの奏効率(CR+PR)
一年目までは6週ごと
それ以降は12週ごとに画像検査

奏功率は
10 mg群で40%(97.5% CI: 29-52%)
100 mg群で32%(97.5% CI: 21-44%)

観察期間中央値約10か月で
驚くべき点としては
奏効例の59%で奏効期間が6か月以上持続

データカットオフの時点で約半分がまだ治療効果が継続中

無増悪生存期間中央値は
10 mg群で4.9か月
100 mg群で3.9か月
2割ぐらいでプラトーになっているようにも見える

主な有害事象は、
サイトカイン放出症候群(CRS) 投与後2W以内が多い
半分ぐらい出るが ほとんどG1-2
(熱±低酸素や低血圧)

あとは
食欲不振、
発熱
血球減少など

副作用全体で
G4以上は2割程度 G5もいる
副作用で治療中止は3%のみ

注意が必要なのは
ICANS(immune effector cell-associated neurotoxicity syndrome)
死亡例はいなかったが全体で10%ぐらいの発現頻度
(10㎎の投与なら8% 100mgだと28%)
G3以上は10mg投与なら無し!

ICANSはCAR-T療法で一躍有名になった

こちらを参照。
ちなみに普通の免疫チェックポイント阻害剤でも報告有

https://x.com/M_Torasawa/status/1715647207054234092

こちらもまとまってます


全生存期間の中央値が14ヶ月以上

今後第三相やさらなるフォローアップのデータが
出てくるであろうとのこと

※現在一番ファーストラインでよいと言われているうちの一つ
プラチナ+エトポシド+デュルバルマブ
(Caspian Regimen)

のMSTは13ヵ月(95%CI:11.5-14.8)
(アテゾリズマブのIMpower133は12.3ヵ月)

7割ぐらいの人がPD-1/PD-L1の治療を
前もって受けており
第二相試験であることを差っ引いたとしても
既治療で、進行した患者で
タルラタマブ投与からMSTが14ヵ月というのは
「爆発的に良い」としてもいいだろう

ICANSやCRSをあまり経験していない
呼吸器内科医がICU入りもありうる
これらの有害事象を管理しつつ
比較的多い、再発SCLC患者全員に使えるのか??
というのは課題。

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