お勉強444:脳転移、タグリッソでも、早めの局所治療が良い。

https://www.lungcancerjournal.info/article/S0169-5002(24)00073-4/abstract

EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者において
しばしば話題となる「脳転移どっち先問題」に関する研究。

オシメルチニブ投与前に局所治療(放射線治療や手術)群と、
オシメルチニブ単独群
で全生存期間(OS)と
中枢神経系無増悪生存期間(CNS-PFS)を比較した後ろ向き多施設共同研究。
日本からの報告です。


今回のEGFR遺伝子変異は19delとL858Rと限ったよう。
T790Mも除外のよう
2018年8月~2021年10月の間の
121例の患者を解析
局所治療先行群45例
オシメルチニブ単独群76例

IPTW分析を用いて交絡因子を調整した結果
(交絡因子としては、年齢・性別・PS・喫煙歴
 組織型・ステージ・mutation type・脳転移個数
 脳転移最大の大きさ・症状の有無・ステロイド使用
 脳以外の転移の有無)

年齢中央値は72歳
脳転移1個が31% 最大径中央値は1㎝
21%が症候性 15%がオシメルチニブ前にステロイド使用

局所治療45例中
22例がSRS
10例がSRT
7例がWBRT
3例が手術
3例がSRS+手術
1例WBRT+SRS
脳転移の最大腫瘍径は局所治療群のほうが大きく
(15㎜ vs. 8mm)
症候性も多く(42% vs. 9%)
ステロイド使用も多かった(27% vs. 8%)
一方、脳転移のみの症例は局所治療群で多い傾向(11% vs. 1%)

観察期間中央値26.3か月で
局所治療先行群のOSおよびCNS-PFSが有意に長かった
OSの中央値:未達vs 31.2ヶ月、CNS-PFSの中央値:未達vs未達
OSのHR0.37 CNS-PFSのHR0.36
(OSですら結構初期から差がある)

サブグループ解析(IPTW後の)でもほとんど
局所治療群が良い(大きさや個数によらない)
※小さくて、個数が少ない方がHR低い
※L858RはHRの信頼区間が大きくちょっと微妙。
オシメルチニブ前に局所治療のほうが良いのかも、という結論

筆者らはオリゴメタの文脈で
・腫瘍負荷を減らす
・効かないクローンの減少
をこの結果の一因としている

プレクリニカルモデルでは
EGFR変異細胞はRT感受性で
それも局所治療の効果が高い要因かもと言っている
+αでSRS/SRTでBBBが破壊されてオシメルチニブ透過性が
良くなったのではないかというのは個人的にはやや眉唾だが…

IPTWしているが、
局所治療先行群では、症状のある脳転移が多く、
ステロイド使用率が高かったことから、
より予後不良な患者が含まれている可能性があるのに
この結果は意外。

後ろ向き解析で限界はあるも、局所治療を先にするほうが
たとえオシメルチニブであってもある、というのは
結構重要なポイントではなかろうか
(それなりにWBRTも入っているのに、である)

ちなみに似たような報告がJCOにも(古いが)
出ている
https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2016.69.7144

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